東京とうきやう)” の例文
土地とちにて、いなだは生魚なまうをにあらず、ぶりひらきたるものなり。夏中なつぢういゝ下物さかなぼん贈答ぞうたふもちふること東京とうきやうけるお歳暮せいぼさけごとし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
其頃そのころ東京とうきやういへたゝむとき、ふところにしてかねは、ほとんど使つかたしてゐた。かれ福岡ふくをか生活せいくわつ前後ぜんごねんつうじて、中々なか/\苦鬪くとうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
震災しんさい以來いらい東京とうきやう梅園うめぞの松村まつむら以外いぐわいには「しるこ」らしい「しるこ」あとつてしまつた。そのかはりにどこもカツフエだらけである。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
樵夫そまやとふてぼくさがす、このくら溪底たにそこぼく死體したいよこたはつてる、東京とうきやう電報でんぱうつ、きみ淡路君あはぢくんんでる、そしてぼくかれてしまう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
子供こども片足かたあしづゝげてあそぶことを、東京とうきやうでは『ちん/\まご/\』とひませう。土地とちによつては『足拳あしけん』とふところもるさうです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
勝手かつてばたらきの女子をんなども可笑をかしがりて、東京とうきやうおにところでもなきを、土地とちなれねばのやうにこはきものかと、美事みごと田舍ゐなかものにしてのけられぬ。
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
竹村たけむらはそのときあねなる彼女かのぢよのうへを、すこしきいてみた。彼女かのぢよ東京とうきやう親類しんるゐせて、女学校ぢよがくかうてから、語学ごがく音楽おんがくかを研究けんきうしてゐるらしかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
大評判おほひやうばん怪窟くわいくつ※それは、東京とうきやう横濱よこはまとの中間ちうかんで、川崎かはさきからも鶴見つるみからも一らずのところである。神奈川縣橘樹郡旭村大字駒岡村かながはけんたちばなごほりあさひむらおほあざこまおかむら瓢簟山ひようたんやま東面部とうめんぶ其怪窟そのくわいくつはある。
東京とうきやううちはうるさいから車に乗つて、千住掃部宿せんぢうかもんじゆくで車よりりて、これから上州じやうしう沼田ぬまたさがしにきました。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたしいまわたし少年時代せうねんじだいことおもひだす。明治めいぢ十九ねんわたしはじめて九しうから東京とうきやう遊學いうがくときわたし友人いうじん先輩せんぱい學生間がくせいかんに、よくういふはなしのあつたことおぼえてゐる。
そしておたがひ東京とうきやうたことがほとんどおなじくらゐときで、彼女かれはうすこはやくらゐのものであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
道子みちこはうむられたものむすめで、東京とうきやう生活せいくわつをしてゐるのだとこたへ、「おはかいのなら、ちやんとしたいしてたいんですが、さうするにはどこへたのんだら、いゝのでせう。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
東京とうきやうの或る固執派オルソドキシカー教会けうくわいぞくする女学校ぢよがつかう教師けうし曾我物語そがものがたり挿画さしゑ男女なんによあるを猥褻わいせつ文書ぶんしよなりとんだ感違かんちがひして炉中ろちう投込なげこみしといふ一ツばなし近頃ちかごろ笑止せうしかぎりなれど
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
此の風では、街頭まちすなほこり大變たいへんなものだらうな。いや、東京とうきやうの空氣は混濁こんだくしてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ふまでもない、四馬路スマロ東京とうきやう銀座ぎんざだ。が、君子國くんしこく日本にほんのやうに四かくめん取締とりしまりなどもとよりあらうはずもなく、それは字義通じぎどほりの不夜城ふやじやうだ。人間にんげんうごく。燈灯ともしび映發えいはつする。自動車じどうしやく。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
丁度ちやうど東京とうきやう高等官かうとうくわん連中れんちゆう紅療治べにれうぢ氣合術きあひじゆつ依頼いらいするのとおなことである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
下町したまちはうらない。江戸えどのむかしよりして、これを東京とうきやうひる時鳥ほとゝぎすともいひたい、その苗賣なへうりこゑは、近頃ちかごろくことがすくなくなつた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけ福岡ふくをかから東京とうきやううつれるやうになつたのは、まつたこの杉原すぎはら御蔭おかげである。杉原すぎはらから手紙てがみて、いよ/\こときまつたとき、宗助そうすけはしいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
東京とうきやうてから、自分じぶんおもひつゝもみづかかなくなり、たゞ都會とくわい大家たいか名作めいさくて、わづか自分じぶん畫心ゑごころ滿足まんぞくさしてたのである。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
友伯父ともをぢさんはもう十二さいでしたから、そんなやまなか子供こどものやうなかみをして行つて東京とうきやうわらはれてはらないと、おうち人達ひとたちひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
軒下のきした縄張なはばりがいたしてございますうち拝観人はいくわんにんみなたつはいしますので、京都きやうと東京とうきやうちがつて人気にんきは誠におだやかでございまして、巡査じゆんさのいふ事をく守り、中々なか/\なはの外へは出ません。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「しるこ」は西洋料理せいやうりやうり支那料理しなりやうりと一しよに東京とうきやうの「しるこ」をだい一としてゐる。(あるひは「してゐた」とはなければならぬ。)しかもまだ紅毛人こうもうじんたちは「しるこ」のあぢつてゐない。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すてふでながくいてともなかりしか可笑をかし、桂次けいじ東京とうきやうてさへるいはうではいに、大藤村おほふぢむらひかきみ歸郷きゝようといふことにならば、機塲はたばをんな白粉おしろいのぬりかたおもはれると此處こゝにての取沙汰とりさた
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それとも、かつてつてたひととして思出おもひだすこともなくおたがひわすれられてゐたかもしれない。そして、またもしも電車でんしやで、おたがひ東京とうきやうてゐたならば、かほあはせるやうなこともあるかもしれない。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
近頃ちかごろ東京とうきやうける、あるひ日本にほんける麻雀マアジヤン流行りうかうすさまじいばかりで、麻雀倶樂部マアジヤンくらぶ開業かいげふまつた雨後うごたけのこごとしで邊鄙へんぴ郊外かうぐわいまちにまでおよんでゐるやうだが、そこはどこまでも日本式にほんしき小綺麗こぎれい
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
人相にんさうわる望生ぼうせい。それが浴衣ゆかたがけに草鞋わらじ脚半きやはんかま萬鍬まんぐわつてる。東京とうきやうだとつたり、また品川しながはだともこたへる。あやしむのは道理だうりだ。それがまたいしるといふのだから、一そう巡査じゆんさあやしんで。
ぢやが、お前様めえさまやま先生せんせいみづ師匠ししやうふわけあひで、私等わしらにや天上界てんじやうかいのやうな東京とうきやうから、遥々はる/″\と……飛騨ひだ山家やまがまでござつたかね。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御米およねひさしくはふつていたが、また東京とうきやう掛合かけあつて見樣みやうかな」とした。御米およね無論むろんさからひはしなかつた。たゞしたいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
東京とうきやう仕事しごと如何どうです。新聞しんぶん毎々まい/\難有ありがたう、續々ぞく/\面白おもしろ議論ぎろんますなア』と先生せんせいぼくかほるやくちひらきました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
とうさんは九つのとしまで、祖父おぢいさんや祖母おばあさんの膝下ひざもとましたがそのとしあき祖父おぢいさんのいゝつけで、東京とうきやう學問がくもん修業しうげふることにりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
のみならず僕等ぼくら東京とうきやうためにもやはりすくなからぬ損失そんしつである。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しやくぐらゐあと退さがつてつて様子やうす、それが東京とうきやうの人だと
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
如何いかひとにもわらはれけんおもへば其頃そのころ浦山うらやまきみさま東京とうきやう歸給かへりたまひしのちさま/″\つゞ不仕合ふしあわせ身代しんだい亂離らり骨廢こつぱいあるがうへに二おやひきつゞきての病死びようしといひきことかさなる神無月かみなづきそでにもかゝる時雨空しぐれぞらこゝろのしめるれを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東京とうきやうつたり、品川しながはつたり、何方どツちなんだ』
今度こんどたびは、一體いつたいはじめは、仲仙道線なかせんだうせん故郷こきやういて、其處そこで、一事あるようすましたあとを、姫路行ひめぢゆき汽車きしや東京とうきやうかへらうとしたのでありました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大島小學校おほしませうがくかうたものが、いま東京とうきやう三人さんにんます。これがぼく同窓どうさうです。此三人このさんにんあつまるくわい僕等ぼくら同窓會どうさうくわいです。其一人そのひとり三田みた卒業そつげふしていま郵船會社いうせんぐわいしやます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
東京とうきやう何處どこだ』
あるひいはく——禮服れいふく一千兩いつせんりやう土用干どようぼし——大禮服たいれいふく東京とうきやう出來できた。が、ばういたゞき、けんび、手套てぶくろしぼると、すわるのがへんだ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『そら先達せんだつて東京とうきやうからかへつて奧野おくのさんにならつたしかならひたてだからなんにもけない。』
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
のきしたるは、時雨しぐれさつくらくかゝりしが、ころみぞれあられとこそなれ。つめたさこそ、東京とうきやうにてあたかもお葉洗はあらひころなり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
爾來じらい數年すねん志村しむらゆゑありて中學校ちゆうがくかう退しりぞいて村落そんらくかへり、自分じぶんくにつて東京とうきやう遊學いうがくすることゝなり、いつしか二人ふたりあひだには音信おんしんもなくなつて、たちまち又四五年つてしまつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
蓮根はす蓮根はすとははず、蓮根れんこんとばかりとなふ、あぢよし、やはらかにして東京とうきやう所謂いはゆる餅蓮根もちばすなり。郊外かうぐわい南北なんぼくおよみな蓮池はすいけにて、はなひらとき紅々こう/\白々はく/\
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
東京とうきやうきやくれてけといふから一緒いつしよると下手へたくせれないとおこつてことれないとつておこやつが一ばん馬鹿ばかだといふこと温泉をんせん東京とうきやうきやくにはういふ馬鹿ばかおほこと
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
東京とうきやうかへつてのちべばこたへてあらはるゝ、双六谷すごろくだに美女たをやめざうを、たゞひらいてるやうに、すら/\ときざた。麻袋あさふくろのみ小刀こがたなは、如意によい自在じざいはたらく。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東京とうきやうにも歌人うたよみ大家先生たいかせんせい澤山たくさんあれど我等われらのやうに先生せんせい薫陶くんたう大島小學校おほしませうがくかうもんまなさふらふものならで、我等われら精神感情せいしんかんじやう唱歌しやうかうたいだるものるべきや、はなは覺束おぼつかなく存候ぞんじさふらふ
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
東京とうきやうへば淺草あさくさのやうなところだと、かねいて大須おほす觀音くわんおんまうでて、表門おもてもんからかへればいのを、風俗ふうぞく視察しさつのためだ、とうらへまはつたのが過失あやまちで。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東京とうきやう——番町ばんちやう——では、周圍しうゐひろさに、みゝづくのこゑ南北なんぼくにかはつても、その場所ばしよ東西とうざいをさへわきまへにくい。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今晩こんばん——十時じふじから十一時じふいちじまでのあひだに、颶風ぐふう中心ちうしん東京とうきやう通過つうくわするから、みなさん、おけなさるやうにといふ、たゞいま警官けいくわんから御注意ごちういがありました。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こと此頃このごろながし、東京とうきやうときから一晩ひとばんとまりになつてならないくらゐ差支さしつかへがなくば御僧おんそう御一所ごいつしよに。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今年ことし非常ひじやうあつさだつた。また東京とうきやうらしくない、しめりびた可厭いや蒸暑むしあつさで、息苦いきぐるしくして、られぬばん幾夜いくよつゞいた。おなじくあつかつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)