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竹村
「あいつは
己の
財産に
惹着けられてゐるんだ。」
大久保はいつかさう
言つてゐたけれど、
竹村には
其意味が
全然不可解であつた。
階下へ降りますと御飯から立つ湯気の
香が夜の家いつぱいに満ちて匂つて居ました。これは
竹村と云ふ姉の家へ贈る弁当の
焚出しをして居るからなのでした。
今我れ
松野を
捨てゝ
竹村の
君まれ
誰れにまれ、
寄る
邊を
开所と
定だめなば
哀れや
雪三は
身も
狂すべし、
我幸福を
求むるとて
可惜忠義の
身世の
嗤笑にさせるゝことかは