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苗賣
下町の
方は
知らない。
江戸のむかしよりして、これを
東京の
晝の
時鳥ともいひたい、その
苗賣の
聲は、
近頃聞くことが
少くなつた。
こちらで
氣をつけて、
聞迎へるのでなくつては、
苗賣は、
雜音のために、どなたも、
一寸氣がつかないかも
知れぬと
思ふ。
紅花の
苗や、おしろいの
苗——
特に
註するに
及ぶまい、
苗賣の
聲だけは、
草、
花の
名がそのまゝでうたになること、
波の
鼓、
松の
調べに
相ひとしい。