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禮服
或は
曰く——
禮服や
一千兩を
土用干——
此の
大禮服は
東京で
出來た。が、
帽を
頂き、
劍を
帶び、
手套を
絞ると、
坐るのが
變だ。
恭助は
太く
疲れて
禮服ぬぎも
敢へず
横に
成るを、あれ
貴郎お
召物だけはお
替へ
遊ばせ、
夫れではいけませぬと
羽織をぬがせて、
帶をも
奧さま
手づから
解きて
と
云ふ
瞳が、
疊みかけた
良人の
禮服の
紋を
離れて、
元二が
懷中の
本に
移つたのであつた。