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東京驛
東京驛を
一番で
立てば、
無理にも
右樣の
計略の
行はれない
事もなささうだが、
籠城難儀に
及んだ
處で、
夜討は
眞似ても、
朝がけの
出來ない
愚將である。
碎いて
言へば、
夜逃は
得手でも、
朝旅の
出來ない
野郎である。あけ
方の
三時に
起きて、たきたての
御飯を
掻込んで、
四時に
東京驛などとは
思ひも
寄らない。
七日前に
東京驛から
箱根越の
東海道。——
分つた/\——
逗留した
大阪を、
今日午頃に
立つて、あゝ、
祖母さんの
懷で
昔話に
聞いた、
栗がもの
言ふ、たんばの
國。