眞白まつしろ)” の例文
新字:真白
しばらくすると、毛蟲けむしが、こと/″\眞白まつしろてふになつて、えだにも、にも、ふたゝ花片はなびららしてつてみだるゝ。幾千いくせんともかずらない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日本につぽんやまのうさぎには二通ふたとほりあつて、そのひとつは平常へいじよう褐色かつしよくをしてゐますが、ふゆになると眞白まつしろかはるもの、もひとつは一年中いちねんじゆうとほして褐色かつしよくのものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
鏡に映つた兒どもの、つらには凄いほど眞白まつしろ白粉おしろひつてあつた、まつげのみ黒くパツチリとひらいたふたつの眼の底から恐怖おそれすくんだ瞳が生眞面目きまじめ震慄わなないてゐた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
眞白まつしろ薔薇ばらの花、乳色ちゝいろで、無邪氣むじやき眞白まつしろ薔薇ばらの花、あまりの潔白けつぱくにはひとおどろく、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
くびからした眞白まつしろぬのつゝまれて、自分じぶんてゐる着物きものいろしままつたえなかつた。其時そのときかれまた床屋とこや亭主ていしゆつてゐる小鳥ことりかごが、かゞみおくうつつてゐることいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二人ふたり旅行りよかうへてかへつてたのは十一ぐわつまちにはもう深雪みゆき眞白まつしろつもつてゐた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何處どこでも眞白まつしろだよ」おつぎはたけ火箸ひばし落葉おちばてながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しづめておのれ今頃登山とざんなすからは強盜がうたうか但し又我が如き心願にて夜參りする者なるか何にもせよいぶかしと星明ほしあかりにすかし見れば旅人とおぼしく菅笠すげがさ眞白まつしろに光りたりこゝに又彼の石川安五郎は上新田村の無量庵むりやうあん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その眞白まつしろな白い腕を
眞白まつしろ 小白こしろ
小さな鶯 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
まむかうのくろべいもさくらがかぶさつて眞白まつしろだ。さつとかぜしたけれども、しめたあとまたこもつてせつぽい。濱野はまのさんもせきしてた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞白まつしろ雪溪せつけいとなあはせて、このお花畠はなばたけるときのかんじは、なんともへず、たつとく、かわゆく、うつくしいものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
海といふものに就ての私の第一の印象は私を抱いて船から上陸した人の眞白まつしろ蝙蝠傘かうもりがさの輝きであつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
んなことかさなつてくうちに、何時いつにかちて仕舞しまつた。さうしてたかやまいたゞきが、あるあさ眞白まつしろえた。さらしの河原かはらしろくなつて、はしわたひとかげほそうごいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
兎角とかく一押いちおし、と何處どこまでもついてくと、えんなのが莞爾につこりして、馭者ぎよしやにはらさず、眞白まつしろあを袖口そでくち、ひらりとまねいて莞爾につこりした。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つまりうさぎ外敵がいてきよわ動物どうぶつですから、ふゆゆきつて野山のやま眞白まつしろになれば自分じぶんのからだをもおなじようにしろくしてほかから容易よういつからないようにするのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
最早もはや最後さいごかとおもときに、鎭守ちんじゆやしろまへにあることに心着こゝろづいたのであります。同時どうじみねとがつたやうな眞白まつしろすぎ大木たいぼくました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眞正面まつしやうめんに、凹字形あふじけいおほきたてものが、眞白まつしろ大軍艦だいぐんかんのやうに朦朧もうろうとしてあらはれました。とると、あやは、なんと、ツツツときつゝ。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眞白まつしろなのは、てのひらへ、むらさきなるは、かへして、指環ゆびわ紅玉ルビイかゞやかふへ、朱鷺色ときいろあしして、かるとまるまでにれたのであつた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分じぶんかへりましたとき兩臂りやうひぢと、ちゝしたと、手首てくびみやくと 方々はう/″\にじんで、其處そこ眞白まつしろくすりこな振掛ふりかけてあるのがわかりました。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うかするといし手水鉢てうづばちが、やなぎかげあをいのに、きよらかな掛手拭かけてぬぐひ眞白まつしろにほのめくばかり、廊下らうかづたひの氣勢けはひはしても、人目ひとめにはたゞのきしのぶ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ところがだあ、へゝゝ、ばんからおまへあかりくらくすると、ふつとをんな身體からだ月明つきあかりがさしたやうにつて、第一だいいちな、いろ眞白まつしろるのに、さめるだ。
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞白まつしろうでについて、綿わたがスーツとびると、可愛かはいてのひらでハツとげたやうに絲卷いとまきにする/\としろまつはる、娘心むすめごころえにしいろを、てふめたさう。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あと、ものの一町いつちやうばかりは、眞白まつしろ一條いちでうみちひらけました。——ゆきうづヲばかりぐる/\とつゞいてく。……
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
淺黄あさぎ手絡てがらけかゝつて、透通すきとほるやうに眞白まつしろほそうなじを、ひざうへいて、抱占かゝへしめながら、頬摺ほゝずりしていつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
白鷺しらさぎがすうつとくびばしたやうに、くるまのまはるにしたがうて眞白まつしろいとつもるのが、まざ/\とえる。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白鷺しらさぎがすらりとくびばしたやうに、くるまのまはるにしたがうて眞白まつしろいとつもるのが、まざ/\としろい。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところへ、細君さいくんはしどけない寢衣ねまきのまゝ、かしつけてたらしい、乳呑兒ちのみご眞白まつしろちゝのあたりへしつかりといていろあをうしてえたが、ぴつたりわたし椅子いすもとすわつて
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ざつ十日とをかばかりおくれてますです。ゆきですからな。かぜによつては今夜こんやにも眞白まつしろりますものな。……もつと出盛でさかりのしゆんだとつても、つきころほどにはないのでしてな。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日蔭ひかげ泥濘ぬかるみところが——そらくもつてた——のこンのゆきかとおもふ、散敷ちりしいたはな眞白まつしろであつた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、すさまじさとつたら、まるで眞白まつしろな、つめたい、こな大波おほなみおよぐやうで、かぜ荒海あらうみひとしく、ぐわう/\とうなつて、——とつても五六しやくつもつたゆきを、押搖おしゆすつてくるふのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
障子しやうじかして、たゝみおよ半疊はんでふばかりの細長ほそなが七輪しちりんに、いつつづゝした眞白まつしろ串團子くしだんごを、大福帳だいふくちやう權化ごんげした算盤そろばんごとくずらりとならべて、眞赤まつかを、四角しかく團扇うちはで、ばた/\ばた
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御利益ごりやくで、怪我けがもしないで御堂おどうからうらはうへうか/\と𢌞まはつて、ざう野兎のうさぎ歩行あるきツくら、とちんかたちくと、たちまのちらつくくらがりに、眞白まつしろかほと、あを半襟はんえり爾側りやうがはから
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のちに、むらひと入口いりぐちしげつた、白木しらきみや、——鎭守ちんじゆやしろとほつた。路傍みちばたに、七八臺しちはちだい荷車にぐるまが、がた/\とつてて、ひとひとつ、眞白まつしろ俵詰たはらづめこなうづたかんだのをときは……
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やあ、えらいことりました。……柳原やなぎはらやけあとへ、うです。……夜鷹よたかよりさき幽靈いうれいます。……わかをんな眞白まつしろなんで。——自警隊じけいたい一豪傑あるがうけつがつかまへてると、それがばゞあだ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すでひざつて、かじいて小兒こどもは、それなり、薄青うすあをえりけて、眞白まつしろむねなかへ、ほゝくち揉込もみこむと、恍惚うつとりつて、一度いちど、ひよいと母親はゝおやはらうち安置あんちされをはんぬで
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うで、うで、めいぶつで。」と振向ふりむいて、和笑にやりとしながら、平手ひらてまたたゝいて、つゞけざまにドン/\とたはらつと、ふにやおよぶ、眞白まつしろなのが、ぱつ/\とつ——東京とうきやうほこりなか
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こひは、それこひでせう。が、たまのやうな眞白まつしろな、あのもり背景はいけいにして、ちういたのが、すつとあはせた白脛しろはぎながす……およ人形にんぎやうぐらゐな白身はくしん女子ぢよし姿すがたです。られたのぢやありません。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
先刻さつきから、人々ひと/″\布施ふせするのと、……ものやはらかな、おきなかほの、眞白まつしろひげなかに、うれしさうなくちびる艷々つや/\あかいのを、じつながめて、……やつこつゝんでくれた風呂敷ふろしきを、うへゑたまゝ
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つたとき洋傘かさ花籠はなかご持添もちそへて、トあらためて、眞白まつしろうでげた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雨戸あまどを一まいツトけると、たゞちに、東西南北とうざいなんぼくへ五眞白まつしろやまであるから。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
眞俯向まうつむけにおもかぜなかを、背後うしろからスツとかるおそつて、すそかしらをどツと可恐おそろしいものが引包ひきつゝむとおもふと、ハツとひきいきとき、さつとけて、まへ眞白まつしろおほきかげあらはれます。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かど青木堂あをきだうひだりて、つち眞白まつしろかわいた橘鮨たちばなずしまへを……うす橙色オレンジいろ涼傘ひがさ——たばがみのかみさんには似合にあはないが、あついからうも仕方しかたがない——涼傘ひがさ薄雲うすぐもの、しかしくものないさへぎつて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何處どこ大商店だいしやうてん避難ひなんした……店員てんゐんたちが交代かうたい貨物くわもつばんをするらしくて、がたには七三しちさんかみで、眞白まつしろで、このなか友染いうぜん模樣もやう派手はで單衣ひとへた、女優ぢよいうまがひの女店員をんなてんゐん二三人にさんにん姿すがたえた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むらかゝると、降積ふりつもつた大竹藪おほたけやぶ弓形ゆみなりあつしたので、眞白まつしろ隧道トンネルくゞときすゞめが、ばら/\と千鳥ちどり兩方りやうはう飛交とびかはして小蓑こみのみだつばさに、あゐ萌黄もえぎくれなゐの、おぼろ蝋燭らふそくみだれたのは、ひわ山雀やまがらうそ
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いけはひつくりかへつてもらず、羽目板はめいたちず、かべやぶれ平時いつものまゝで、つきかたちえないがひかり眞白まつしろにさしてる。とばかりで、何事なにごとく、手早てばやまた障子しやうじめた。おとはかはらずきこえてまぬ。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すんなりとげた眞白まつしろうでそらざまなのが睫毛まつげかすめたのである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)