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乳呑兒
處へ、
細君はしどけない
寢衣のまゝ、
寢かしつけて
居たらしい、
乳呑兒を
眞白な
乳のあたりへしつかりと
抱いて
色を
蒼うして
出て
見えたが、ぴつたり
私の
椅子の
下に
坐つて
こぼれるほどに
乘つた
客は
行商の
町人、
野ら
歸りの
百姓、
乳呑兒を
抱へた
町家の
女房、
幼い
弟の
手を
引いた
町娘なぞで、一
度出かゝつた
舟が、
大きな
武士の
爲めに
後戻りさせられたのを
下女と
徇れてゐた
醜女計りを
伴ふて
來たので、
而して
此女には
乳呑兒が
有つた。