こゝろ)” の例文
四谷よつやとほりへ食料しよくれうさがしにて、煮染屋にしめやつけて、くづれたかはら壁泥かべどろうづたかいのをんで飛込とびこんだが、こゝろあての昆布こぶ佃煮つくだにかげもない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
らうこゝろをつけて物事ものごとるに、さながらこひこゝろをうばゝれて空虚うつろなりひとごとく、お美尾みを美尾みをべばなにえとこたゆることばちからなさ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つぎゆふべ道子みちこはいつよりもすこ早目はやめかせ吾妻橋あづまばしくと、毎夜まいよ顔馴染かほなじみに、こゝろやすくなつてゐる仲間なかま女達をんなたち一人ひとり
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
這麼老朽こんならうきうからだんでも時分じぶんだ、とさうおもふと、たちままたなんやらこゝろそここゑがする、氣遣きづかふな、こといとつてるやうな。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いかにもねばりづよい、あきらめにくいかなしみのこゝろが、ものゝまとひついたように、くね/\した調子ちようしあらはれてゐるのがかんじられませう。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
もしみぎのような性質せいしつ心得こゝろえてゐると、こゝろ落着おちつき出來できるため、危急ききゆう場合ばあひ機宜きゞてきする處置しよち出來できるようにもなるものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ロレ いや、そのことば鋭鋒きっさきふせ甲胄よろひおまさう。逆境ぎゃくきゃうあまちゝぢゃと哲學てつがくこそはひとこゝろなぐさぐさぢゃ、よしや追放つゐはうとならうと。
見るに衣裳なり見苦みぐるしけれども色白くして人品ひとがら能くひなまれなる美男なればこゝろ嬉敷うれしくねやともなひつゝ終に新枕にひまくらかはせし故是より吉三郎もお菊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きみばかりでない、ぼく朋友ほういううち何人なんぴといま此名このな如何いかぼくこゝろふかい、やさしい、おだやかなひゞきつたへるかの消息せうそくらないのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
てんにでもいゝ、にでもいゝ、すがらうとするこゝろいのらうとするねがひが、不純ふじゆんすなとほしてきよくとろ/\と彼女かのぢよむねながた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
それでの一ちやうはう晝間ひるまめたといふほど、ひどい臭氣しうきが、ころくさつた人間にんげんこゝろのやうに、かぜかれてつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
『それも駄目だめだ』とこゝろひそかにおもつてるうちあいちやんはうさぎまどしたたのをり、きふ片手かたてばしてたゞあてもなくくうつかみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
代助はこゝろのうちに、あるひは三千代が又一人ひとりで返事をきにる事もあるだらうと、じつ心待こゝろまちに待つてゐたのだが、其甲斐はなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しよめしなぞべると、かれはいつでもこゝろ空虚くうきようつたへるやうな調子てうしでありながら、さうつてさびしいかほ興奮こうふんいろうかべてゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それで、時々とき/″\お手がみやおうたをおおくりになると、それにはいち/\お返事へんじをさしげますので、やう/\おこゝろなぐさめておいでになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
ハテ、めうことをんなだとわたくしまゆひそめたが、よくると、老女らうぢよは、何事なにごとにかいたこゝろなやまして樣子やうすなので、わたくしさからはない
しかそのもつとおそれをいだくべき金錢きんせん問題もんだいそのこゝろ抑制よくせいするには勘次かんじあまりにあわてゝかつおどろいてた。醫者いしや鬼怒川きぬがはえてひがしる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
正しい藝術を、みんなのこゝろかてのたしに——こゝろかてといふほどにならずとも、せめてこやしぐらゐにでもなるやうに——それが望ましいのだ。
むぐらの吐息 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
すべひとたるものつね物事ものごとこゝろとゞめ、あたらしきことおこることあらば、何故なにゆゑありてかゝこと出來できしやと、よく其本そのもと詮索せんさくせざるべからず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
そんなことを、あまり熱心ねつしんに、そして感傷的かんしやうてきはなつたのちは、二人ふたりとも過去くわこやまかはにそのこゝろいとられたやうに、ぽかんとしてゐた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
本人ほんにん自營獨立じえいどくりつこゝろさへさだまつてれば、どんな塲所ばしよしても、またどんな境遇きやうぐうしよしても差支さしつかへなく、變通自在へんつうじざいでありませう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
の一こと/″\涙含なみだぐんだ。このやさしい少女せうぢよ境遇きやうぐうかはつてたのと、天候てんかうくもがちなのとで、一そう我々われ/\ひとこゝろやさしさがかんじられたのであらう。
なほ此後こののちもこれにつくさんのれうにせまほしとておのれにそのよしはしかきしてよとこはれぬかゝるかたこゝろふかうものしたまへるを
うもれ木:01 序 (旧字旧仮名) / 田辺竜子(著)
なんゆへきはめて正直せうじきなるこゝろもつて、きはめて愛情あいじようにひかさるべき性情せいじようしかしてはゝいもと愛情あいじよう冷笑れいしようするにいたりしや
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
淫慾いんよく財慾ざいよくよくはいづれも身をほろぼすの香餌うまきゑさ也。至善よき人は路に千金をいへ美人びじんたいすれどもこゝろみだりうごかざるは、とゞまることをりてさだまる事あるゆゑ也。
「お父樣とうさま、しばらくおいとまいただききたうございます」とおそるおそるちゝまへにでて、おねがひしました。そしてこゝろうちでは、どうか聽容きゝいれてくれるといいが。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
第十 常居ゐま濕氣しめりけすくな日當ひあたりよくしてかぜとほやうこゝろもちし。一ヶねん一兩度いちりやうどかなら天井てんじやうまたえんしたちりはらひ、寢所ねどころたかかわきたるはうえらぶべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
『平民の娘』おふさは、たんにモデルとして彼のうつツてゐるのではい。お房は彼の眼よりもこゝろく映ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
このぢいやのおほきなさむくなると、あかぎれれて、まるで膏藥かうやくだらけのザラ/\としたをしてましたが、でもそのこゝろ正直しやうぢきな、そしてやさしい老人らうじんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
〔譯〕周子しうしせいしゆとす、こゝろ本體ほんたいを守るを謂ふなり。※説づせつに、「よく無し故にせい」と自註じちゆうす、程伯氏ていはくしこれに因つて天よくせつ有り。叔子しゆくしけいする工夫くふうも亦こゝに在り。
「でも、人の命を助けたことなんか、こゝろすみつこに、しまひ忘れる筈はないぢやありませんか」
文学者ぶんがくしやを以てだいのンきなりだい気楽きらくなりだい阿呆あはうなりといふ事の当否たうひかくばかりパチクリさしてこゝろ藻脱もぬけからとなれる木乃伊ミイラ文学者ぶんがくしやに是れ人間にんげん精粋きつすゐにあらずや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
二人ふたりものおいこゝろはせ何事なにごとにももとめばてんいま我父わがちゝ彼等かれらのためにこれをたまふべし。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その髮の毛が、一本ずゝけるのに從つて下人のこゝろからは、恐怖が少しづつ消えて行つた。さうして、それと同時どうじに、この老婆に對するはげしい憎惡ぞうをが、少しづゝ動いて來た。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
横笛愈〻こゝろまどひて、人の哀れを二重ふたへに包みながら、浮世の義理のしがらみ何方いづかたへも一言のいらへだにせず、無情と見ん人の恨みを思ひやれば、身の心苦こゝろぐるしきも數ならず、夜半の夢屡〻しば/\駭きて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
一方筑摩家に於いては、輝勝一人を除く外政高の死の真相を知っていた者はないのであるから、淡路守の胸中を疑う筈はなく、家中一統いっとうこゝろから今度の和睦と祝言とを喜んだに違いない。
彼れが秘密を見現すは今なり、と余は思切ッて同行せざるの遺憾をのぶるに「そうさ、なに構うものか、来るなら一緒においでなさい、随分面白いかも知れませぬから」く聞きて余は嬉しさにこゝろ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
風体ふうていによりて夫々それ/″\の身の上を推測おしはかるに、れいるがごとくなればこゝろはなはいそがはしけれど南無なむ大慈たいじ大悲たいひのこれほどなる消遣なぐさみのありとはおぼえず無縁むえん有縁うえんの物語を作りひとひそかにほゝゑまれたる事にそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
こゝろうちでは、そんなことをしてゐる寒山かんざん拾得じつとく文殊もんじゆ普賢ふげんなら、とらつた豐干ぶかんはなんだらうなどと、田舍者いなかもの芝居しばゐて、どのやくがどの俳優はいいうかとおもまどときのやうな氣分きぶんになつてゐるのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
をとこもさすがにすここゝろうごかされたけれども、まだどうあつても結婚けつこんなどの出來できやううへでないので、仕樣しやうがないから葉書はがきりツぱなしで、つちやらかしておいた。ところ葉書はがきつぱりる。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
なぜといふに、自分じぶんしゆきみおもたてまつると、其聖墓そのおはかこゝろうちにもうはいつてゐるからだ。亜孟アメン。どれ、日射ひあたりのいゝ此処ここへでも寝転ねころばうか。これこそ聖地せいちだ。われらが御主おんおるじ御足みあし何処どこをもきよくなされた。
なんともいへない無邪氣むじやきかほつきや樣子ようすをしてゐるところなど、いかにもむかしひとかざのないこゝろうかゞはれるばかりでなく、當時とうじひと風俗ふうぞくだとか服裝ふくそうなども、これによつてることが出來できますから
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
りがたやこゝろくももはれわたりうきよのくもはとにもかくにも
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
過ぎにしも過ぎせぬ過ぎしひと時に、ごふの「こゝろ」の
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
色音いろねえつ、——ひざまのこゝろあがりに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
らむ心地こゝちして、此時このときなりとこゝろばかりは
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ふかみのこゝろ——おもむろにとろみて濁る
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こゝろのほのほえぬ
ゴンドラの唄 (旧字旧仮名) / 吉井勇(著)
いとゞしこゝろいたむかな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
さかしきこゝろきよなり
花枕 (旧字旧仮名) / 正岡子規(著)