“擧(あ)” の例文
新字:挙
あはれ新婚(しんこん)の式(しき)を擧(あ)げて、一年(ひとゝせ)の衾(ふすま)暖(あたゝ)かならず、戰地(せんち)に向(むか)つて出立(いでた)つた折(をり)には、忍(しの)んで泣(な)かなかつたのも、嬉涙(うれしなみだ)に暮(く)れたのであつた。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
是(ここ)に於(おい)て齊(せい)の軍(ぐん)の善(よ)く射(い)る者(もの)をして、(五三)萬弩(ばんど)、道(みち)を夾(はさ)んで伏(ふく)せしめ、(五四)期(き)して曰(いは)く、『暮(くれ)に火(ひ)の擧(あ)がるを見(み)ば倶(とも)に發(はつ)せよ』
『お絹(きぬ)さん!』と僕(ぼく)は思(おも)はず手(て)を擧(あ)げた。お絹(きぬ)はにつこり笑(わら)つて、さつと顏(かほ)を赤(あか)めて、禮(れい)をした。人(ひと)と車(くるま)との間(あひだ)は見(み)る/\遠(とほ)ざかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
快活(くわいくわつ)なる水兵(すいへい)の一群(いちぐん)は其(その)周圍(まわり)を取卷(とりま)いて、『やあ、可愛(かあひ)らしい少年(せうねん)だ、乃公(おれ)にも借(か)せ/\。』と立騷(たちさわ)ぐ、櫻木大佐(さくらぎたいさ)は右手(めて)を擧(あ)げて
その證據(しようこ)には、婦人雜誌(ふじんざつし)に出(で)て居(ゐ)る女學校(ぢよがくかう)の校長(かうちやう)の説(せつ)などを讀(よ)むと、色々(いろ/\)の本(ほん)の名前(なまへ)を擧(あ)げてゐても、ことごとく尤(もつと)もらしい出鱈目(でたらめ)である。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いや、それは大丈夫だ。——若旦那殺しの下手人を擧(あ)げるのも大事だが、俺は今晩中に一萬兩の金を搜し出して見せるよ」
その中(うち)でも名高(なだか)いものには、ドレスデンの繪畫博物館(かいがはくぶつかん)、ミュンヘンの繪畫館(かいがかん)、同彫刻館(どうちようこくかん)などを擧(あ)げなくてはなりますまい。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
また數少きも、天使の糧(かて)(世の人これによりて生くれど飽(あ)くにいたらず)にむかひて疾(と)く項(うなじ)を擧(あ)げし人等よ 一〇—一二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
象次郎曰ふ、復古は難(かた)きに非ず、然れども門地(もんち)を廢(はい)し、門閥(もんばつ)を罷(や)め、賢(けん)を擧(あ)ぐること方(はう)なきに非ざれば、則ち不可なりと。二人の本領自ら見(あら)はる。
以上(いじやう)を概括(がいくわつ)して其(その)特質(とくしつ)を擧(あ)げると、神佛(しんぶつ)は尊(たうと)いもの、幽靈(ゆうれい)は凄(すご)いもの、化物(ばけもの)は可笑(おか)しなもの、精靈(せいれう)は寧(むし)ろ美(うつく)しいもの、怪動物(くわいどうぶつ)は面白(おもしろ)いものと言(い)ひ得(う)る。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
この作の表現形式(へうげんけいしき)や構圖(こうづ)の不統一な事を擧(あ)げて、作のテエマの效果(エフエクト)が薄(うす)いと云ひ、私は作の構圖(こうづ)や形式(けいしき)に對する缺點(けつてん)を蔽(おほ)ふ丈けに、作の内容が深(ふか)い爲(た)めに
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「是(これ)でも元(もと)は子供(こども)が有(あ)つたんだがね」と、さも自分(じぶん)で自分(じぶん)の言葉(ことば)を味(あぢ)はつてゐる風(ふう)に付(つ)け足(た)して、生温(なまぬる)い眼(め)を擧(あ)げて細君(さいくん)を見(み)た。御米(およね)はぴたりと默(だま)つて仕舞(しま)つた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
どりゃ、太陽(ひ)が其(その)燃(も)ゆるやうな眼(まなこ)を擧(あ)げて今日(けふ)の晝(ひる)を慰(なぐさ)め、昨夜(さくや)の濕氣(しっき)を乾(かわか)す前(まへ)に、毒(どく)ある草(くさ)や貴(たふと)い液(しる)を出(だ)す花(はな)どもを摘(つ)んで、吾等(われら)の此(この)籃(かご)を一杯(ぱい)にせねばならぬ。
周圍(しうゐ)の凡(すべ)てが杯(さかづき)を擧(あ)げてくれる其(そ)の夜(よ)の當人同士(たうにんどうし)を念頭(ねんとう)に浮(うか)べる時(とき)彼等(かれら)は淡(あは)い嫉妬(しつと)を沸(わ)かさねば成(な)らぬ。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もし手近(てぢ)かな例(れい)が欲(ほ)しければ、小規模(しようきぼ)ではあるけれども、浦賀海峽(うらがかいきよう)の左右(さゆう)兩岸(りようがん)を擧(あ)げることが出來(でき)る。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
又(また)日本(にほん)は日清(につしん)日露(にちろ)の兩役(りやうえき)の時(とき)の如(ごと)く戰爭(せんさう)に於(おい)ては擧國(きよこく)一致(ち)の好成績(かうせいせき)を擧(あ)げて居(を)るが、經濟問題(けいざいもんだい)の爲(ため)に斯(かく)の如(ごと)く擧國(きよこく)一致(ち)の好成績(こうせいせき)を擧(あ)げたことは未(いま)だ曾(かつ)てないのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それは隅(すみ)から隅(すみ)まで數多(あまた)の畦畝(うね)になつて居(ゐ)ました、其球(そのボール)は生(い)きた針鼠(はりねずみ)、槌(つち)は生(い)きた紅鶴(べにづる)で、それから兵士等(へいしら)は二列(れつ)になつて、緑門(アーチ)を造(つく)る爲(ため)に手(て)を擧(あ)げ足(あし)を欹(そばだ)てました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
センチユリー・ヂクシヨナリーに、形容詞(けいようし)としてコスモポリタンといふ言葉(ことば)の用例(ようれい)が擧(あ)げてある。
來年(らいねん)邊(あたり)はカフカズへ出掛(でか)けやうぢや有(あ)りませんか、乘馬(じようば)で以(もつ)てからに彼方此方(あちこち)を驅廻(かけまは)りませう。而(さう)してカフカズから歸(かへ)つたら、此度(こんど)は結婚(けつこん)の祝宴(しゆくえん)でも擧(あ)げるやうになりませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一事を擧(あ)げて之を日本人及びアイヌの所業(しよげふ)に照らし、一物を採(と)つて之を日本人及びアイヌの製品(せいひん)に比(ひ)し、論斷を下すが如きは、畫報(ぐわはう)の記事(きじ)として不適當なるの感無きに非ざれば
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
思ひ胸に迫りて、吁々(あゝ)と吐(は)く太息(といき)に覺えず我れに還(かへ)りて首(かうべ)を擧(あ)ぐれば日は半(なかば)西山(せいざん)に入りて、峰の松影色黒み、落葉(おちば)を誘(さそ)ふ谷の嵐、夕ぐれ寒く身に浸(し)みて、ばら/\と顏打つものは露か時雨(しぐれ)か。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
その趣味(しゆみ)の澁(しぶ)い例(れい)を擧(あ)げると、三上(みかみ)がその著名(ちよめい)なる東京市内出沒行脚(とうきやうしないしゆつぼつあんぎや)をやつて、二十日(はつか)も歸(かへ)つて來(こ)ないと時雨(しぐれ)さんは、薄暗(うすぐら)い部屋(へや)の中(なか)で端座(たんざ)して、たゞ一人(ひとり)双手(もろて)に香爐(かうろ)を捧(さゝ)げて、香(かう)を聞(き)いてゐる。
片折戸(かたをりど)を靜(しづ)かに音(おと)なふは聞(きゝ)なれし聲音(こはね)なり、いと子(こ)厨(くりや)のかたに聲(こゑ)をかけて、玉(たま)よ雪三(せつざう)が參(まゐ)りたりと覺(おぼゆ)るに、燈火(ともしび)とくと命令(いひつけ)ながら、ツト立(たち)て門(かど)の方(かた)うち見(み)やりしが、闇(やみ)にもしるき白(しろ)き手(て)を擧(あ)げて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
擧(あ)ぐるは玻瓈(はり)の盞(さかづき)、それのみかは
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
草(くさ)は靡(なび)きぬ手(て)を擧(あ)げて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
見(み)よ、頭(かしら)なき其(そ)の骸(むくろ)、金鎧(きんがい)一縮(いつしゆく)して戟(ほこ)を横(よこた)へ、片手(かたて)を擧(あ)げつゝ馬(うま)に跨(またが)り、砂煙(すなけむり)を拂(はら)つてトツ/\と陣(ぢん)に還(かへ)る。陣中(ぢんちう)豈(あに)驚(おどろ)かざらんや。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
『これが、私(わたくし)の秘密(ひみつ)に製造(せいざう)しつゝある、海底戰鬪艇(かいていせんとうてい)です。』と、櫻木海軍大佐(さくらぎかいぐんたいさ)は徐(おもむ)ろに右手(ゆんで)を擧(あ)げて、其(その)船體(せんたい)を指(ゆびざ)した。
されば我は、わがはや誤らず疑はざるを自白せんため、物言はんとてほどよく頭(かうべ)を擧(あ)げしかど 四—六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
例(たと)へば、平安京(へいあんけう)の大内裡(だいないり)の十二門(もん)の名(な)の如(ごと)きで、その二三を擧(あ)ぐればミブ門(もん)、ヤマ門(もん)、タケ門(もん)は、美福門(みぶもん)、陽明門(やまもん)、待賢門(たけもん)と書(か)かれて、つひにビフク門(もん)、ヨーメイ門(もん)
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
反(かへ)つて(四八)浮淫(ふいん)の蠧(と)を擧(あ)げて・之(これ)を(四九)功實(こうじつ)の上(うへ)に加(くは)ふるを疾(うれ)へ、以爲(おも)へらく、(五〇)儒者(じゆしや)は文(ぶん)を用(もつ)て法(はふ)を亂(みだ)し、而(しかう)して(五一)侠者(けふしや)は武(ぶ)を以(もつ)て禁(きん)を犯(をか)す。
ロンドン以外(いがい)では、スコットランドのエヂンバラを始(はじ)めイギリスの大都市(だいとし)、地方(ちほう)の町(まち)や村(むら)にある博物館(はくぶつかん)を一(ひと)つ/\數(かぞ)へ擧(あ)ぐるならば數百(すうひやく)にも達(たつ)するくらゐであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
あの時は、お越を擧(あ)げようかと思つたが、どうも證擔がアヤフヤだ。附木(つけぎ)に書いた下手な字も、お越は全くの明文盲(あきめくら)のふりをして居たので、手のつけやうがなかつた。
此外(このほか)に幅(はゞ)僅(わづか)に一二寸程(いちにすんほど)の地割(ぢわ)れが開閉(かいへい)したことを記(しる)したものはないでもないが、それも餘計(よけい)はない。一例(いちれい)を擧(あ)げるならば、西暦(せいれき)千八百三十五年(せんはつぴやくさんじゆうごねん)の南米(なんべい)チリ地震(ぢしん)である。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
彼等(かれら)の生活(せいくわつ)は廣(ひろ)さを失(うし)なふと同時(どうじ)に、深(ふか)さを増(ま)して來(き)た。彼等(かれら)は六年(ねん)の間(あひだ)世間(せけん)に散漫(さんまん)な交渉(かうせふ)を求(もと)めなかつた代(かは)りに、同(おな)じ六年(ねん)の歳月(さいげつ)を擧(あ)げて、互(たがひ)の胸(むね)を堀ほ》り出(だ)した。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それが汽車(きしや)の通(とほ)るのを仰(あふ)ぎ見(み)ながら、一齊(せい)に手(て)を擧(あ)げるが早(はや)いか、いたいけな喉(のど)を高(たか)く反(そ)らせて、何(なん)とも意味(いみ)の分(わか)らない喊聲(かんせい)を一生(しやう)懸命(けんめい)に迸(ほとばし)らせた。するとその瞬間(しゆんかん)である。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
種(たね)とか——擧(あ)げ來(きた)れば山程(やまほど)ある——お前(まへ)は其麽(そんな)物(もの)が畫(ゑ)に描(か)かれたのを見(み)たことがあるか?
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
霜解(しもどけ)の庭(には)を掻(か)き立(た)てゝ居(ゐ)た鷄(とり)がくるりと指(ゆび)を捲(ま)いては足(あし)を擧(あ)げて驚(おどろ)いた樣(やう)に周圍(あたり)を見(み)て
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
過去(くわこ)六箇月(かげつ)間(かん)に國民(こくみん)が一致(ち)協力(けふりよく)して國民經濟(こくみんけいざい)の立直(たてなほし)に努力(どりよく)して、從來(じうらい)見(み)ることの出來(でき)なかつた成績(せいせき)を擧(あ)げたことから推論(すゐろん)すれば、必(かなら)ずや日本國(にほんこく)の經濟(けいざい)の基礎(きそ)を打立(うちた)てゝ、國民(こくみん)の繁榮(はんえい)
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それも亡くなられるほんの三四ヶ月前に万世橋(はし)のミカドホテルの球突塲(たまつきば)で一戰(せん)を試(こゝろ)みたのだつたが、持點(てん)も前に擧(あ)げた人達(たち)よりも聊(いさゝ)か群(ぐん)をぬいた六十點(てん)で、その突(つ)き振(ふり)たるや快活(くわいくわつ)奔放(ほんほう)
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
足下(こなた)が予程(わしほど)に齡(とし)が若(わか)うて、あのヂュリエットが戀人(こひびと)で、婚禮(こんれい)の式(しき)を擧(あ)げて只(たんだ)一時(とき)も經(た)たぬうちにチッバルトをば殺(ころ)して、予(わし)のやうに戀(こ)ひ焦(こが)れ、予(わし)のやうにあさましう追放(つゐはう)された上(うへ)でなら
A ヤア、君(きみ)も女(をんな)の事(こと)になると、大(だい)ぶん精密(せいみつ)な數字(すうじ)を擧(あ)げてくるね。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
「貴方(あなた)、お手(て)をお擧(あ)げ下(くだ)さい。家内(かない)とは一方(ひとかた)ならぬ。」と云(い)ひかけて厭(いや)な顏(かほ)もしないが、婦(をんな)と兩方(りやうはう)を見較(みくら)べながら
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
『日出雄(ひでを)や、お前(まへ)は今(いま)此(この)災難(さいなん)に遭(あ)つても、ネープルスで袂別(わかれ)の時(とき)に父君(おとつさん)の仰(お)つしやつたお言葉(ことば)を忘(わす)れはしますまいねえ。』と言(い)へば、日出雄少年(ひでをせうねん)は此時(このとき)凛乎(りんこ)たる面(かほ)を擧(あ)げ
試(こゝろ)みに世界(せかい)に於(おい)て名(な)ある活火山(かつかざん)を擧(あ)げてみるならば、南米(なんべい)エクワドル國(こく)に於(おけ)るコトパクシ(高(たか)さ五千九百四十三米(ごせんくひやくしじゆうさんめーとる))は、圓錐形(えんすいけい)の偉大(いだい)な山(やま)であるが、噴火(ふんか)の勢力(せいりよく)も亦(また)偉大(いだい)で
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
博物館(はくぶつかん)の優劣(ゆうれつ)をきめることは餘程(よほど)困難(こんなん)ですが、なんといつてもヨーロッパにおいて有名(ゆうめい)な博物館(はくぶつかん)は、まづ第一(だいゝち)にイギリスのロンドンにある大英博物館(だいえいはくぶつかん)を擧(あ)げなければなりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
暮色(ぼしよく)を帶(お)びた町(まち)はづれの踏切(ふみき)りと、小鳥(ことり)のやうに聲(こえ)を擧(あ)げた三人(にん)の子供(こども)たちと、さうしてその上(うへ)に亂落(らんらく)する鮮(あざやか)な蜜柑(みかん)の色(いろ)と——すべては汽車(きしや)の窓(まど)の外(そと)に、瞬(またた)く暇(ひま)もなく通(とほ)り過(す)ぎた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
正式(せいしき)の通知(つうち)が來(こ)ないので、何時(いつ)纏(まとま)つたか、宗助(そうすけ)は丸(まる)で知(し)らなかつたが、たゞ折々(をり/\)佐伯(さへき)へ行(い)つては、何(なに)か聞(き)いて來(く)る小六(ころく)を通(つう)じてのみ、彼(かれ)は年内(ねんない)に式(しき)を擧(あ)げる筈(はず)の新夫婦(しんふうふ)を豫想(よさう)した。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
午餐過(ひるすぎ)からおつぎは縫針(ぬひばり)へ絲(いと)を透(とほ)して竿(さを)へ附(つ)けて與吉(よきち)に持(も)たせた。與吉(よきち)は外(ほか)の子供(こども)のするやうに其(そ)の針(はり)を擧(あ)げて見(み)ては又(また)水(みづ)へ投(な)げて大人(おとな)しくして居(ゐ)る。暫(しばら)く時間(じかん)が經(た)つと又(また)姉(ねえ)ようと喚(よ)ぶ。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「金澤町の越後屋から、養子の金次郎を擧(あ)げて行つた野郎がある相ですよ」
解禁(かいきん)の確定(かくてい)した今日(こんにち)に於(おい)ては日本(にほん)の貨幣價値(くわへいかち)は元(もと)に復(ふく)して百圓(ゑん)の貨幣(くわへい)は百圓(ゑん)に通用(つうよう)するやうになつて前(まへ)に例(れい)に擧(あ)げた一ヤール五圓(ゑん)五十五錢(せん)の輸入(ゆにふ)の羅紗(ラシヤ)は五圓(ゑん)で買(か)へるやうになつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)