きた)” の例文
このとき、子供こどもは、ふところなかから角笛つのぶえしました。そして、きた野原のはらかって、プ、プー、プ、プー、とらしたのです。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さきには、きたしょうめて、一きょ柴田勝家しばたかついえ領地りょうち攻略こうりゃくし、加賀かがへ進出しては尾山おやましろに、前田利家まえだとしいえめいをむすんで味方みかたにつけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
佐久間玄蕃さくまげんば中入なかいり懈怠けたいのためか、柴田勝家しばたかついへしづたけ合戰かつせんやぶれて、城中じやうちう一息ひといき湯漬ゆづけ所望しよまうして、悄然せうぜんきたさうへとちてく。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まゐりましたところ堺町さかひちやうでうきたまちといふ、大層たいそうづかしい町名ちやうめいでございまして、里見さとみちうらうといふ此頃このごろ新築しんちくをした立派りつぱうち
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
きたにはゴビの大沙漠だいさばくがあつて、これにもなに怪物くわいぶつるだらうとかんがへた。彼等かれらはゴビの沙漠さばくからかぜ惡魔あくま吐息といきだとかんがへたのであらう。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
しろまつかげきそうな、日本橋にほんばしからきたわずかに十ちょう江戸えどのまんなかに、かくもひなびた住居すまいがあろうかと、道往みちゆひとのささやきかわ白壁町しろかべちょう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
きりふかい六ぐわつよるだつた。丁度ちやうどはら出張演習しゆつちやうえんしふ途上とじやうのことで、ながい四れつ縱隊じうたいつくつた我我われわれのA歩兵ほへい聯隊れんたいはC街道かいだうきたきたへと行進かうしんしてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
うしてほとん毎日まいにちごとつてうちに、萱原かやはらを三げんはゞで十けんばかり、みなみからきたまで掘進ほりすゝんで、はたはうまで突拔つきぬけてしまつた。
支那しなでは、たゞいままをしたように新石器時代しんせつきじだいのものがるばかりではなく、その北方ほつぽう黄河こうがながれがきたまがつて、またみなみへをれてるあたりでは
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
きたは涙を押へて、淋しく頬をゆがめました。何も彼も酒に代へる癖のあつた伊之助が、多分賣るか流すかしたことでせう。
その順序を言えば、長男棠助、長女洲、次女国、三女きた、次男いわお、四女やす、五女こと、三男信平しんぺい、四男孫助まごすけである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
きたけばくほど、たとひひくやまでも温帶林おんたいりん寒帶林かんたいりん灌木帶かんぼくたい草本帶そうほんたいと、たかさにしたがつて、それ/″\えてる植物しよくぶつかはつてくのがにつきます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
大正十二年たいしようじゆうにねん關東大地震かんとうだいぢしんおい熱海港あたみこう兩翼りようよくすなはきた衞戍病院分室えいじゆびよういんぶんしつのあるへんみなみ魚見崎うをみざきおいてはなみたか四五尺しごしやくしかなかつたが、船着場ふなつきばでは十五尺じゆうごしやく
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
盗人ぬすびとたちは、きたからかわ沿ってやってました。はなのきむらぐちのあたりは、すかんぽやうまごやしのえたみどり野原のはらで、子供こどもうしあそんでおりました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
さらつもりつゝある大粒おほつぶゆききたからなゝめ空間くうかん掻亂かきみだしてんでる。おつぎは少時しばしすくんだ。大粒おほつぶゆきげつゝちる北風きたかぜがごつとさむさをあふつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
で自分にも告々と老が迫ツて來るのにつれて、故郷の老母を思ふ情が痛切になツて、此の四五年きたそらをのみ憧れてゐる。由三は能く其の心を了解してゐた。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
曳馬野ひくまの——萬葉集まんにようしゆうなどにえてゐる土地とちで、濱松はまゝつからきたへかけての平野へいや地方ちほう——のあたらしくてゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
勿論もちろん旋風つむじかぜつねとて一定いつてい方向ほうかうはなく、西にしに、ひがしに、みなみに、きたに、輕氣球けいきゝゆうあだか鵞毛がもうのごとく、天空てんくうあがり、さがり、マルダイヴ群島ぐんたううへなゝめ
ここおい闔廬かふろ孫子そんしへいもちふるをり、つひもつしやうす。西にし彊楚きやうそやぶつて(一三)えいり、きたせいしんおどし、諸矦しよこうあらはす。孫子そんしあづかつてちからり。
かりそめの旅にはあれど、夕されば内にも堪へず、に出でてひとり在りけり。向ひ吹く川の瀬の風、川風の吹きのこごえに、我が向ひ辿る高崖、遥か見るきた山脈やまなみ
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
きたからつめたいかぜて、ひゆうとり、はんのはほんたうにくだけたてつかゞみのやうにかゞやき、かちんかちんとがすれあつておとをたてたやうにさへおもはれ
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
親爺おやぢの云ふ所によると、かれと同時代の少年は、胆力修養のめ、夜半やはん結束けつそくして、たつた一人ひとり、御しろきた一里にあるつるぎみね天頂てつぺんのぼつて、其所そこの辻堂で夜明よあかしをして
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
主人の妻、大納言のきたかたはこう云う座敷の有様を、御簾みすのうちにいてさっきから隙見すきみしていた。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、とうとうさるはくらげの背中せなかりました。さる背中せなかせると、くらげはまたふわりふわりうみの上をおよいで、こんどはきたきたへとかえっていきました。しばらく行くとさる
くらげのお使い (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
きたかたと申しますと、——成経様はあの女と、夫婦になっていらしったのですか?」
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこでペンペのはなしをいたラランは、ふか自分じぶんわるかつたことをいて、ペンペをほほむつてくれた旅行者りよかうしやたちにすべてを懺悔ざんげした。翌朝よくてう旅行者りよかうしやたちは天幕テントをたゝんできたほうつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
高倉たかくらみや宣旨せんじ木曾きそきたせきひがしに普ねく渡りて、源氏興復こうふくの氣運漸く迫れる頃、入道は上下萬民の望みにそむき、愈〻都を攝津の福原にうつし、天下の亂れ、國土の騷ぎをつゆ顧みざるは
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
わたくし地上ちじょうったころ朝廷ちょうていみなみきたとのふたつにわかれ、一ぽうには新田にった楠木くすのきなどがひかえ、他方たほうには足利あしかがその東国とうごく武士ぶしどもがしたがい、ほとんど連日れんじつ戦闘たたかいのないとてもない有様ありさまでした……。
越前えちぜん福井ふくいは元きたしょうと云っていたが、越前宰相結城秀康ゆうきひでやすが封ぜられて福井と改めたもので、其の城址じょうしは市の中央になって、其処には松平まつだいら侯爵邸、県庁、裁判所、県会議事堂などが建っている。
首のない騎馬武者 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あいするおまへちゝ、おまへはゝ、おまへつま、おまへ、そしておほくのおまへ兄妹きやうだいたちが、土地とちはれ職場しょくばこばまれ、えにやつれ、しばり、こぶしにぎって、とほきたそらげるにくしみの
扨も檢使にはかゝり合の者一同召連めしつれて北の番所へ(幕府ばくふの頃は町奉行兩人有てみなみきたと二ヶ所に役宅やくたくあり)かへりしかば中山出雲守殿へ檢使の次第を言上いひあげ且夫々の口書を差出さしいだしけるに出雲守殿も長庵が佞辯ねいべん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
如在沉香亭北看 〔沈香亭じんこうていきたりてるがごと
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
康頼 きたかたはどうされました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
きたむかへるわが畏怖おそれの原の上に
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
きたいへ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
不思議ふしぎあねは、まちなかとおって、いつしか、さびしいみちを、きたほうかってあるいていました。よるになって、そらにはほしまたたいています。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あめにしづくの拍子木ひやうしぎが、くもそこなる十四日じふよつかつきにうつるやうに、そでくろさもかんで、四五軒しごけんきたなる大銀杏おほいてふしたひゞいた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その皆の眼は折ふし来合せたきた政所まんどころおもてをお気の毒で見るにたえないというようにらしあっていたが、北の政所は、花桶に眼をとめると
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きたまくらに、しずかにじている菊之丞きくのじょうの、おんなにもみまほしいまでにうつくしくんだかおは、磁器じきはだのようにつめたかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
つひには中央ちゆうおうヨーロッパからきたヨーロッパにだん/″\ひろがつてつたといふことだけはたしかにわかるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
この鎌倉横町というのは、前いった図を見るに、元柳原町と佐久間町との間で、きたかた河岸かしに寄った所にある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
此時このときリスボンには津浪つなみ襲來しゆうらいし、こゝだけの死人しにんでも六萬人ろくまんにんのぼつた。震原しんげん大西洋底たいせいようていにあつたものであらう。津浪つなみきたアメリカの東海岸ひがしかいがんおいても氣附きづかれた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ぼくまたしてもおもいした、吉彦よしひこさんがかねをつくときった言葉ことばを——「西にしたにひがしたにも、きたたにみなみたにるぞ。ほれ、あそこのむらもここのむらるぞ。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
海岸かいがんからだん/\に山地さんちへかゝり高山こうざんのぼつていくにつれ、だん/\と温度おんどひくくなるのは、ちょうど緯度いどみなみからきたすゝむにしたがつてさむさがますのとおなじです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
武村兵曹たけむらへいそうわたくしとは、ぼうだつして下方したながめたが、かぜみなみからきたへと、輕氣球けいきゝゆうは、三千すうしやく大空たいくうを、次第しだい/\に大陸たいりくほうへと、やがて、れし朝日島あさひじま
きたからればしろはしらであつた樹木じゆもくみき悉皆みんな以前いぜん姿すがたらうとしてずん/\とゆきころがした。にはからさき桑畑くはばたたゞぱいしろい。地上ちじやう數寸すすんふかさにゆきつもつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「いや、突然つかぬことをお聞きするようだけれど、あの、そち大納言だいなごんきたかたな?………」
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はるになるとかりが、きたほうかへります。そのあとに、かりはねが、田圃たんぼなどによくのこつてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
佐伯さへき叔母をばたづねてたのは、土曜どえう午後ごごの二時過じすぎであつた。其日そのひれいになくあさからくもて、突然とつぜんかぜきたかはつたやうさむかつた。叔母をばたけんだまる火桶ひをけうへかざして
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
えうへいつよくし(一〇六)馳説ちぜい(一〇七)從横しようくわうものやぶるにるなり。ここおいみなみは百ゑつたひらげ、きた陳蔡ちんさいあは(一〇八)しんしりぞけ、西にししんつ。諸矦しよこうつよきをうれふ。