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我我
霧の
深い六
月の
夜だつた。
丁度N
原へ
出張演習の
途上のことで、
長い四
列縱隊を
作つた
我我のA
歩兵聯隊はC
街道を
北へ
北へと
行進してゐた。
甲板球戯は
我我に最も好く時間を費させ
且つ運動にもなるが、
昼間に限られた遊戯であつて其れも
倦き易い日本人には二時間以上続け得ない様である。
寝られぬまゝに
夜は更けぬ。時計一点を聞きて
後、
漸く少しく
眠気ざし、精神
朦々として
我我を
弁ぜず、
所謂無現の
境にあり。
時に予が
寝ねたる
室の
襖の、スツとばかりに開く音せり。