其時そのとき)” の例文
すると其時そのとき夕刊ゆふかん紙面しめんちてゐた外光ぐわいくわうが、突然とつぜん電燈でんとうひかりかはつて、すりわる何欄なにらんかの活字くわつじ意外いぐわいくらゐあざやかわたくしまへうかんでた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其時そのとき小犬こいぬほどな鼠色ねづみいろ小坊主こばうずが、ちよこ/\とやつてて、啊呀あなやおもふと、がけからよこちゆうをひよいと、背後うしろから婦人をんな背中せなかへぴつたり。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其時そのとき貴方あなたひとに、解悟かいごむかひなさいとか、眞正しんせい幸福かうふくむかひなさいとかこと効力かうりよくはたして、何程なにほどふことがわかりませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いゝよ親方おやかたからやかましくつてたら其時そのときこと可愛想かあいさうあしいたくてあるかれないとふと朋輩ほうばい意地惡いぢわる置去おきざりにてゝつたと
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おもひそかはゝ委敷事くはしきことを語りければはゝおどろき今度の御呼出およびだしは吉三郎と對決たいけつさせんとの事なるべければ種々いろ/\御尋おんたづねあるならんが其時そのとき委細ゐさい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
家族かぞくともあそびにつてたが、其時そのときに、いま故人こじん谷活東子たにくわつとうしが、はたけなかから土器どき破片はへん一箇ひとつひろして、しめした。
然らば其時そのとき汝は宇宙うちう存在そんざいするすべての誠実せいじつなる人と一致いつちせしなり、一致のかたきは外が来て汝と一致せざるに非ずして汝の誠実せいじつならざるにあり。
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
わたし其時そのときまさに、日本國にほんこくといふ範圍内はんゐないつては、同郷どうきやう同藩どうはん同縣どうけんなどいふ地方的偏見ちはうてきへんけんから離脱りだつしたコスモポリタンであつた。
不圖ふと小六ころくんなとひ御米およねけた。御米およね其時そのときたゝみうへ紙片かみぎれつて、のりよごれたいてゐたが、まつたおもひらないといふかほをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
君等きみら其時そのとき擧動ふるまひ賞讃しようさんするのをるにつけても、じつ斷膓だんちやうねんえなかつたです——なに、あの卑劣ひれつなる船長等せんちやうら如何どうしたとはるゝか。
さいさい自分じぶん研究けんきうして熟考じゆくかうしてうへ愈々いよ/\わからねば其時そのときはじめて理由りいう説明せつめいしてかすくらゐにしてくのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
此差このさおよそ二年半餘はんあまりにして一月ばかりなるゆゑ、其時そのときいた閏月しゆんげつき十三ヶ月を一年となし、地球ちきうすゝんもとところ行付ゆきつくまつなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
あいちやんは心中しんちゆうすこぶ不安ふあんかんじました、たしかにあいちやんは女王樣ぢよわうさまとは試合しあひをしませんでしたが、何時いつ其時そのときるだらうと思つて居ました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おもへば四年よとせの昔なりけり、南翠氏なんすゐしとも学海先生がくかいせんせい別荘べつさうをおとづれ、朝よりゆふまでなにくれとかたらひたることありけり、其時そのとき先生せんせいしめさる。
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ところもの其人そのひとほねみなすでちたり、ひと其言そのげんのみ君子くんしは、其時そのときればすなは(二)し、其時そのときざればすなは(三)蓬累ほうるゐしてる。
……それからもう十一ねん其時そのときになァ單身立ひとりだちをさっしゃりましたぢゃ、いや、ほんこと彼方此方あっちこっち駈𢌞かけまはらッしゃって
其時そのとき六十九になる、仕事師しごとしかしらといふほどではないが、世話番せわばんぐらゐの人に聞くと、わたし塩原しほばらいへ出入でいりをしてゐたが、こまかいことは知りませぬといふ。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
著者ちよしや事件じけんがあつて二月にがつのち其場所そのばしよ見學けんがくしたが、土砂とさ圓錐えんすい痕跡こんせき其時そのときまでもることが出來できた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
其時そのときむらうち一人ひとり老人としよりがありまして、其塲そのばけてまいり、おあしんだとはなしきいたがついては、わたくし實驗じつけんがあるから、れをば何卒どうぞツてれ、其法そのはうまうすは
さあ御出おいでと取る手、振り払わば今川流、握りしめなば西洋流か、お辰はどちらにもあらざりし無学の所、無類珍重ちんちょう嬉しかりしと珠運後に語りけるが、それも其時そのときうそなりしなるべし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、其時そのとき何故なにゆえか変電所の四角な窓が、爛々らんらんと輝いていた事を青年は不図思い浮べた。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……幽暗ほのくら路次ろじ黄昏たそがれいろは、いま其処そことほごとに、我等われら最初さいしよ握手あくしゆの、如何いか幸福かうふくなりしかをかた申候まをしそろ貴女きぢよわすたまはざるべし、其時そのとき我等われら秘密ひみつてらせるたゞ一つの軒燈けんとうひかりを……
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ジロリと此方こなたの頭の先から足の先まで見下みおろしましたこのやうな問答もんだう行水ゆくみづの流れえずむかしから此河岸このかしかへされるのですがたゞ其時そのときわたくしの面白いと思ひましたのは、見下みおろした人も見下みおろされた人も
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
併し、まさかほんとうに唾を吐きかける訳にも行きませんので、三郎は、節穴を元の通りにうずめて置いて、立去ろうとしましたが、其時そのとき、不意に、チラリとある恐しい考えが、彼の頭に閃きました。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
銀子さん其時そのとき始めて世の中に失望と云ふことの存在を実験したのです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
其時そのときまた、きり……きり……きり……きり……
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
其時そのときこそこまはえあれ駒主こまぬし
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
其時そのとき
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
其時そのときや、よるがものにたとへるとたにそこぢや、白痴ばかがだらしのない寝息ねいききこえなくなると、たちまそとにものゝ気勢けはひがしてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、わたくしかたしんじてゐます。來世らいせいいとたならば、其時そのときおほいなる人間にんげん智慧ちゑなるものが、早晩さうばんれを發明はつめいしませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其時そのとき野々宮さんは廊下へりて、したから自分の部屋ののき見上みあげて、一寸ちよつと見給へ藁葺わらぶきだと云つた。成程めづらしく屋根に瓦をいてなかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其時そのとき日本帝國にほんていこく』から何程なにほど利益りえき保護ほごとをけてゐるのかとはれたら、返事へんじには當惑たうわくするほどのミジメな貧乏生活びんばふせいくわつおくつてゐたくせに。
其時そのとき越前守は平石次右衞門吉田三五郎池田大助の三人を膝元ひざもとへ進ませ申されけるは其方共そのはうども家の爲め思ひくれだんかたじけなく存るなりよつて越前が心底しんてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たとへば、それがあさの九であつたと假定かていして、丁度ちやうど其時そのとき稽古けいこはじめる、時々とき/″\何時なんじになつたかとおもつてる、時計とけいはりめぐつてく!一時半じはん晝食ちうじき
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其時そのときは、この武村新八郎たけむらしんぱちらう先鋒せんぽうぢや/\。』と威勢いせいよくテーブルのうへたゝまわすと、さらをどつて、小刀ナイフゆかちた。
御座ございますけれどわたし其時そのとき自分じぶんかへりみかんがへはませぬゆゑ、良人をつとのこゝろをさつすること出來できませぬ、いやかほあそばせば、それがさはりまするし
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幻花子げんくわし新聞しんぶんはういそがしいので、滅多めつたず。自分じぶん一人ひとり時々とき/″\はじめのところつては、往事むかし追懷つひくわいすると、其時そのとき情景じやうけい眼前がんぜん彷彿ほうふつとしてえるのである。
其時そのとき俄盲目にはかめくら乞食こじきと見えまして、細竹ほそたけつゑいて年齢としころ彼是かれこれ五十四五でもあらうかといふ男、見る影もない襤褸すぼろ扮装なりで、うして負傷けがいたしましたか
はう心配しんぱいして電報でんぱうまでけたのであるから其時そのとき返電へんでんをしてもらへば無益むえき心配しんぱいけつしてしません。一寸ちよつとしたことであるが日本にほん婦女子ふぢよしには往々わう/\斯樣かやう等閑なをざりおほいのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
基督きりすと兵卒へいそつなり、兵卒は其時そのとききたまでなにをなすべきかを知らず、しゆめいならん乎、高壇かうだんつ事もあるべし、官海くわんかいたうずるやもはかられず、基督信者は目的もくてきなき者なり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
さうとはらずチッバルトどのをおなげきゃるとのみ思召おぼしめされ、そのなげきのぞかうとてパリスどのへ無理強むりじひの婚禮沙汰こんれいざた其時そのときひめ庵室いほりへわせられ、この祝言しうげんのがるゝ手段すべをしへてくれい
其時そのとき、汽笛のような音響がした。死の谷に立ちのぼる白気はっき愈々いよいよ勢いを増した。怪人は一同に別れを告げて去った。一行は見す見すこの恐るべき殺人犯人を見遁みのがすより外に仕方がなかった。
科学時潮 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
其時そのときあつまツてツた、一どうものよろこびはくらいりましたか、商家抔せうかなどではおうおわし取扱とりあつかつてるから、醫者いしやぶもはぬとようときは、實驗上じつけんぜう隨分ずいぶんもちひて宜敷よろしほうようぞんじます。
それ外日いつぞや友人いうじんところで、或冬あるふゆさけみながらおそくまで話込はなしこんでゐたときこと恋愛談れんあいだんから女学生ぢよがくせい風評うはさはじまつて、其時そのとき細君さいくん一人ひとり同窓の友クラスメートに、散々さん/″\或学生あるがくせい苦労くらうをした揚句あげく熱湯にえゆのまされて
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
惜しくはないか、其時そのとき
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
繰返くりかへして三度さんど、また跫音あしおとがしたが、其時そのときまくらあがらなかつた。室内しつない空氣くうきたゞいやうへ蔽重おほひかさなつて、おのづと重量ぢうりやう出來できおさへつけるやうな!
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけえんから跣足はだしんでりて、小六ころくあたまなぐけた。其時そのときから、宗助そうすけには、小六ころく小惡こにくらしい小僧こぞうとしてうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしちゝわたし立派りつぱ教育けういくあたへたです、しかし六十年代ねんだい思想しさう影響えいきやうで、わたし醫者いしやとしてしまつたが、わたし其時そのときちゝとほりにならなかつたなら
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『さァ、やつだい一のせつへた』と帽子屋ばうしやつて、『其時そのとき女王クイーンあがり、「とき打殺うちころしてるのはれだ!其頭そのあたまねてしまへ!」とさけびました』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
加減かげんうちでもこしらへる仕覺しがくをしておれとたび異見ゐけんをするが、其時そのときかぎりおい/\と空返事そらへんじしてつからにもめてはれぬ、とつさんはとしをとつて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)