-
トップ
>
-
小犬
「いわぬことか、いいものを
拾ってきた。」といって、
洋傘を
開いてさして
歩きますと
頭の
上で、クンクン
小犬のなき
声がしました。
其時小犬ほどな
鼠色の
小坊主が、ちよこ/\とやつて
来て、
啊呀と
思ふと、
崖から
横に
宙をひよいと、
背後から
婦人の
背中へぴつたり。
脊戸に
干した
雨傘に、
小犬がじやれ
掛ゝつて、
蛇の
目の
色がきら/\する
所に
陽炎が
燃える
如く
長閑に
思はれる
日もあつた。