しろ)” の例文
にぶ砂漠さばくのあちらに、深林しんりんがありましたが、しめっぽいかぜく五がつごろのこと、そのなかから、おびただしいしろ発生はっせいしました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
友染いうぜんきれに、白羽二重しろはぶたへうらをかさねて、むらさきひもくちかゞつた、衣絵きぬゑさんが手縫てぬい服紗袋ふくさぶくろつゝんで、そのおくつた、しろかゞや小鍋こなべである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したからないが、かわいそうに……。だけど、ほうたいだらけのまっしろなあのかおには、ぞっとするわ。まるでけものみたいだもの
番目ばんめには露國文豪ろこくぶんがうトルストイはく傑作けつさく千古せんこゆき」とふのと、バンカラ喜劇きげき小辰こたつ大一座おほいちざふのが、赤地あかぢしろいてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのころ良人おっとはまだわこうございました。たしか二十五さい横縦よこたてそろった、筋骨きんこつたくまましい大柄おおがら男子おとこで、いろあましろほうではありません。
うつくしいてて、たまのやうなこいしをおもしに、けものかはしろさらされたのがひたしてある山川やまがは沿うてくと、やまおくにまたやまがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あのしろ着物きものに、しろ鉢巻はちまきをした山登やまのぼりの人達ひとたちが、こしにさげたりんをちりん/\らしながら多勢おほぜいそろつてとほるのは、いさましいものでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
御主おんあるじ耶蘇様イエスさま百合ゆりのやうにおしろかつたが、御血おんちいろ真紅しんくである。はて、何故なぜだらう。わからない。きつとなにかの巻物まきものいてあるはずだ。
「こいづば鹿しかでやべか。それ、鹿しか」と嘉十かじふはひとりごとのやうにつて、それをうめばちさうのしろはなしたきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
やがて夕方ゆうがたになりました。松蝉まつぜみきやみました。むらからはしろゆうもやがひっそりとながれだして、うえにひろがっていきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
最初飼った「しろ」は弱虫だったので、交尾期には他の強い犬に噛まれて、つねに血だらけになった。デカは強いので、滅多にひけは取らぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
奈美子なみこしろきれあたまをくる/\いて、さびしいかれ送別そうべつせきにつれされて、別室べつしつたされてゐたことなぞも、仲間なかま話柄わへいのこされた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しなおもて大戸おほどけさせたときがきら/\と東隣ひがしどなりもりしににはけてきつかりと日蔭ひかげかぎつてのこつたしもしろえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
輕氣球けいききゆううへでは、たちま吾等われら所在ありか見出みいだしたとへ、搖藍ゆれかごなかから誰人たれかの半身はんしんあらはれて、しろ手巾ハンカチーフが、みぎと、ひだりにフーラ/\とうごいた。
夢中むちゅうはらったおれん片袖かたそでは、稲穂いなほのように侍女じじょのこって、もなくつちってゆく白臘はくろうあしが、夕闇ゆうやみなかにほのかにしろかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
度目どめのおかみさんには、おんなまれました。はじめのおかみさんのは、のようにあかく、ゆきのようにしろおとこでした。
おもひせまつて梅川うめかはは、たもとをだいてよろ/\よろ、わたしはうへよろめいて、はつとみとまつて、をあげたときしろゆびがかちりとつたのです。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
そばにはしろきれせた讀經臺どきやうだいかれ、一ぱうには大主教だいしゆけうがくけてある、またスウャトコルスキイ修道院しうだうゐんがくと、れた花環はなわとがけてある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
林は奥へ往くにしたがって、躑躅つつじと皐月が多くなった。しゅべにしろといちめんに咲き乱れた花は美しかった。憲一はその花の間をうて往った。
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と見てるとかね七八なゝやツつづゝ大福餅だいふくもちなかうへからあんもちふたをいたしてギユツと握固にぎりかためては口へ頬張ほゝばしろくろにして呑込のみこんでる。金
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
おもって、っていました。そのうちふえはだんだんちかくなって、いろしろい、きれいな稚児ちごあるいてました。弁慶べんけい
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
くきうへ黄色きいろ五瓣ごべんはなをつけるみやまだいこんや、はゝこぐさにしろふらんねるのようなつてゐるみやまうすゆきそうなどえます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
すると人足にんそくの一にんか『かひところ此所こゝばかりぢやアりません。御門ごもんはいつて右手みぎて笹山さゝやまうしろところにも、しろかひ地面ちめんます』と報告ほうこくした。
かへつてたのはうさぎで、綺羅美きらびやかな服裝なりをして、片手かたてにはしろ山羊仔皮キツド手套てぶくろを一つい片手かたてにはおほきな扇子せんすつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ちょっと米法山水べいほうさんすい懐素かいそくさい草書そうしょしろぶすまをよごせる位の器用さを持ったのを資本もとでに、旅から旅を先生顔で渡りあるく人物に教えられたからである。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
寢息ねいきもやがて夜着よぎえりしろ花咲はなさくであらう、これが草津くさつつねよるなのである。けれどもれては何物なにものなつかしい、吹雪ふゞきよ、遠慮ゑんりよなくわたしかほでゝゆけ!
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
金魚鉢きんぎょばちは、ぐるりに、しろすなをしきつめてある。すなをはらいのけると、めたとせたはちが、すぽりとつちからきとれるようになつているのがわかつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
すると軌道レール沿ふて三にん田舍者ゐなかもの小田原をだはら城下じやうかるといふ旅裝いでたちあかえるのはむすめの、しろえるのは老母らうぼの、からげたこし頑丈ぐわんぢやうらしいのは老父おやぢさんで
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
もと猿樂町さるがくてううちまへ御隣おとなり小娘ちいさいの追羽根おひばねして、いたしろ羽根はねとほかゝつた原田はらださんのくるまなかおちたとつて、れをば阿關おせきもらひにきしに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
〔譯〕毀譽きよ得喪とくさうは、しんに是れ人生の雲霧うんむ、人をして昏迷こんめいせしむ。此の雲霧を一さうせば、則ちてんあをしろし。
道子みちこ自分じぶん身近みぢか突然とつぜんしろヅボンにワイシヤツををとこ割込わりこんでたのに、一寸ちよつと片寄かたよせる途端とたんなんとつかずそのかほると、もう二三ねんまへことであるが
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あかと、ほねしろの配色の翅をつけた一匹の蝶は、落寞とした空間に、見るもあやうげにかかっている。
蝶の絵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
かういふ場所ばしよでは、しろ貝殼かひがら一番いちばんよく目立めだつので、われ/\はこれを貝塚かひづかんでをるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それで 一休いっきゅうさんは、しろい ゆきを うばの くろい かおに つけてやろうと、ふざけたのでした。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
着し座す其形勢ありさまいと嚴重げんぢうにして先本堂には紫縮緬むらさきちりめんしろく十六のきく染出そめいだせしまくを張り渡し表門には木綿地もめんぢに白とこんとの三すぢを染出したる幕をはり惣門そうもんの内には箱番所はこばんしよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
唐金からかねなべしろみを掛けるようなもので、鋳掛屋いかけやの仕事であるが、塩酸亜鉛があれば鉄にも錫が着くと云うので、同塾生と相談してその塩酸亜鉛を作ろうとした所が
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
よるよ、やれ、はややれ、ローミオー! あゝ、よるひるとはおまへことぢゃ。よるつばさりたおまへは、からすいまりかゝるそのゆきしろゆるよりもしろいであらう。
東がしろんでから、二人が立つてゐた附近あたりへ往つてみると、小さな合葬の墓があつて無縁になつてゐる。
行儀ぎやうぎよさで、たとへば卓子テーブルうへにも青羅紗あをらしやとかしろネルとかをいて牌音パイおとやはらげるやうにしてあるのが普通ふつうだが、本場ほんば支那人しなじん紫檀したん卓子テーブルうへでぢかにあそぶのが普通ふつう
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そを懸命に踏みこらへて、左褄高々とからげ、はぎしろき右足をもたげて、踏絵のおもてに乗せむとせし一刹那
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
子家鴨こあひるいままでにそんなとりまったことがありませんでした。それは白鳥はくちょうというとりで、みんなまばゆいほどしろはねかがやかせながら、その恰好かっこうのいいくびげたりしています。
これで三かげつつづけてしろい三かくをもらったひとは、一つうえのクラスにすすむことがゆるされました。
踏切ふみきりのちかくには、いづれもすぼらしい藁屋根わらやね瓦屋根かはらやねがごみごみと狹苦せまくるしくてこんで、踏切ふみきばんるのであらう、ただりうのうすしろはたものうげに暮色ぼしよくゆすつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しろソースのペラオメシ 秋付録 米料理百種「西洋料理の部」の「第二 白ソースのペラオ飯」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
といったが、指に挟んでいる朝鮮貝のしろ一石、盤面の宙をさまようことやや久しく……。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足のかたちでもこし肉付にくつきでも、またはどうならちゝなら胸なら肩なら、べて何處どこでもむツちりとして、骨格こつかくでも筋肉きんにくでも姿勢しせいでもとゝのツて發育はついくしてゐた。加之それにはだしろ滑々すべ/″\してゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さきはひのいかなるひと黒髪くろかみしろくなるまでいもこゑく 〔巻七・一四一一〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
隣室りんしつには、Aの夫人ふじん、Cの母堂ぼだうわかいTの夫人ふじんあつまつてゐた。病室びやうしつはうでのせはしさうな醫員いゐん看護婦かんごふ動作どうさしろふくすれおと、それらは一々病人びやうにん容態ようたいのたゞならぬことを、隣室りんしつつたへた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
曙染あけぼのそめ振袖ふりそで丈長たけながのいとしろ緑鬢りよくびんにうつりたる二八ばかりの令嬢の姉なる人の袖に隠れて物馴れたる男のものいふに言葉はなくて辞儀ばかりせられたる、蓄音機と速撮はやどり写真としき事のみ多し。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
すては、かゆい髪を掻いて見せた。その二の腕は噛みつきたいほど、ふくれてしろがこぼれた。すての顔色は驚きもおそれもみせずに、貝ノ馬介が見つめるままの生ぐさい、色気のあるものであった。