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冬
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ふゆ
ふりがな文庫
“
冬
(
ふゆ
)” の例文
高窓
(
たかまど
)
の
障子
(
しょうじ
)
の
破
(
やぶ
)
れ
穴
(
あな
)
に、
風
(
かぜ
)
があたると、ブー、ブーといって、
鳴
(
な
)
りました。もう
冬
(
ふゆ
)
が
近
(
ちか
)
づいていたので、いつも
空
(
そら
)
は
暗
(
くら
)
かったのです。
風はささやく
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
さうした
紅
(
あか
)
に
黄
(
き
)
に
色
(
いろ
)
どられた
秋
(
あき
)
の
山
(
やま
)
や
林
(
はやし
)
も、
冬
(
ふゆ
)
が
來
(
く
)
ると、すっかり
葉
(
は
)
がおちつくして、まるで
枯
(
か
)
れ
木
(
き
)
ばかりのような
寂
(
さび
)
しい
姿
(
すがた
)
になり
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
春の雪は
消
(
きえ
)
やすきをもつて
沫雪
(
あわゆき
)
といふ。
和漢
(
わかん
)
の春雪
消
(
きえ
)
やすきを
詩哥
(
しいか
)
の
作為
(
さくい
)
とす、
是
(
これ
)
暖国
(
だんこく
)
の事也、寒国の雪は
冬
(
ふゆ
)
を
沫雪
(
あわゆき
)
ともいふべし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
朝
(
あさ
)
になると
缺
(
か
)
かさず
通
(
とほ
)
る
納豆賣
(
なつとううり
)
の
聲
(
こゑ
)
が、
瓦
(
かはら
)
を
鎖
(
とざ
)
す
霜
(
しも
)
の
色
(
いろ
)
を
連想
(
れんさう
)
せしめた。
宗助
(
そうすけ
)
は
床
(
とこ
)
の
中
(
なか
)
で
其
(
その
)
聲
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
きながら、
又
(
また
)
冬
(
ふゆ
)
が
來
(
き
)
たと
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
した。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
私
(
わたし
)
は
心
(
こゝろ
)
に
迎
(
むか
)
へなければならなかつた……それは
力
(
ちから
)
の
弱
(
よわ
)
い
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
だからだらうか?
否
(
いや
)
! どうして
彼女
(
かのぢよ
)
の
力
(
ちから
)
を
侮
(
あなど
)
る
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
よう。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
▼ もっと見る
保名
(
やすな
)
の
体
(
からだ
)
がすっかりよくなって、
立
(
た
)
って
外
(
そと
)
へ
出歩
(
である
)
くことができるようになった
時分
(
じぶん
)
には、もうとうに
秋
(
あき
)
は
過
(
す
)
ぎて、
冬
(
ふゆ
)
の
半
(
なか
)
ばになりました。
葛の葉狐
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
道子
(
みちこ
)
は
一晩
(
ひとばん
)
稼
(
かせ
)
げば
最低
(
さいてい
)
千
(
せん
)
五六
百円
(
ぴやくゑん
)
になる
身体
(
からだ
)
。
墓石
(
ぼせき
)
の
代金
(
だいきん
)
くらい
更
(
さら
)
に
驚
(
おどろ
)
くところではない。
冬
(
ふゆ
)
の
外套
(
ぐわいたう
)
を
買
(
か
)
ふよりも
訳
(
わけ
)
はない
話
(
はなし
)
だと
思
(
おも
)
つた。
吾妻橋
(新字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
其
(
そ
)
の
時
(
とき
)
畑
(
はた
)
には
刷毛
(
はけ
)
の
先
(
さき
)
でかすつた
樣
(
やう
)
に
麥
(
むぎ
)
や
小麥
(
こむぎ
)
で
仄
(
ほのか
)
に
青味
(
あをみ
)
を
保
(
たも
)
つて
居
(
ゐ
)
る。それから
冬
(
ふゆ
)
は
又
(
また
)
百姓
(
ひやくしやう
)
をして
寂
(
さび
)
しい
外
(
そと
)
から
專
(
もつぱ
)
ら
内
(
うち
)
に
力
(
ちから
)
を
致
(
いた
)
させる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
金銀
(
きんぎん
)
珠玉
(
しゆぎよく
)
巧
(
たくみ
)
を
極
(
きは
)
め、
喬木
(
けうぼく
)
高樓
(
かうろう
)
は
家々
(
かゝ
)
に
築
(
きづ
)
き、
花林曲池
(
くわりんきよくち
)
は
戸々
(
こゝ
)
に
穿
(
うが
)
つ。さるほどに
桃李
(
たうり
)
夏
(
なつ
)
緑
(
みどり
)
にして
竹柏
(
ちくはく
)
冬
(
ふゆ
)
青
(
あを
)
く、
霧
(
きり
)
芳
(
かんば
)
しく
風
(
かぜ
)
薫
(
かを
)
る。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この
子家鴨
(
こあひる
)
が
苦
(
くる
)
しい
冬
(
ふゆ
)
の
間
(
あいだ
)
に
出遭
(
であ
)
った
様々
(
さまざま
)
な
難儀
(
なんぎ
)
をすっかりお
話
(
はな
)
しした
日
(
ひ
)
には、それはずいぶん
悲
(
かな
)
しい
物語
(
ものがたり
)
になるでしょう。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
冬
(
ふゆ
)
の
夜長
(
よなが
)
に、
粉挽
(
こなひ
)
き
唄
(
うた
)
の一つも
歌
(
うた
)
つてやつて
御覽
(
ごらん
)
なさい。
唄
(
うた
)
の
好
(
す
)
きな
石臼
(
いしうす
)
は
夢中
(
むちう
)
になつて、いくら
挽
(
ひ
)
いても
草臥
(
くたぶ
)
れるといふことを
知
(
し
)
りません。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
さてこの
夫婦
(
ふうふ
)
の
家
(
うち
)
の
前
(
まえ
)
の
庭
(
にわ
)
に、一
本
(
ぽん
)
の
杜松
(
としょう
)
がありました。
或
(
あ
)
る
日
(
ひ
)
、
冬
(
ふゆ
)
のことでしたが、おかみさんはこの
樹
(
き
)
の
下
(
した
)
で、
林檎
(
りんご
)
の
皮
(
かわ
)
を
剥
(
む
)
いていました。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
右
(
みぎ
)
の
如
(
ごと
)
くし三月四月五月を
春
(
はる
)
とし、六月七月八月を
夏
(
なつ
)
とし、九月十月十一月を
秋
(
あき
)
とし、十二月一月二月を
冬
(
ふゆ
)
とするなり。
改暦弁
(旧字旧仮名)
/
福沢諭吉
(著)
私
(
わたし
)
は
去年
(
きよねん
)
の
冬
(
ふゆ
)
妻
(
つま
)
を
迎
(
むか
)
へたばかりで、一
体
(
たい
)
双方
(
さうはう
)
とも
内気
(
うちき
)
な
方
(
はう
)
だから、
未
(
ま
)
だ
心
(
こゝろ
)
の
底
(
そこ
)
から
打釈
(
うちと
)
けると
云
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
狎
(
な
)
れてはゐない。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
「我が
影
(
かげ
)
の我を
追
(
おひ
)
けり
冬
(
ふゆ
)
の
月
(
つき
)
」と人之を
疑
(
うたが
)
ふ時は
柳
(
やなぎ
)
の
掛
(
かゝ
)
り
紙鳶
(
たこ
)
も
幽靈
(
いうれい
)
かと
思
(
おもひ
)
石地藏
(
いしぢざう
)
も
追剥
(
おひはぎ
)
かと
驚
(
おどろ
)
くが
如
(
ごと
)
し然ば大橋文右衞門の女房お政は
夫
(
をつと
)
の身の上を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
名はお
冬
(
ふゆ
)
といって、それが格二郎の、日毎の出勤を楽しくさせた所の、実を云えば、最も主要な原因であったのだ。
木馬は廻る
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
冬
(
ふゆ
)
の
月夜
(
つきよ
)
なにかに
田町
(
たまち
)
あたりを
集
(
あつ
)
めに
廻
(
まわ
)
ると
土手
(
どて
)
まで
來
(
き
)
て
幾度
(
いくど
)
も
泣
(
な
)
いた
事
(
こと
)
がある、
何
(
なに
)
さむい
位
(
くらゐ
)
で
泣
(
な
)
きはしない、
何故
(
なぜ
)
だか
自分
(
じぶん
)
も
知
(
し
)
らぬが
種々
(
いろ/\
)
の
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へるよ
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「はっはっはっ、いくら
透明人間
(
とうめいにんげん
)
になっても、人間はやはり人間だよ。ま
冬
(
ふゆ
)
にはだかでいられるものか」
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
此
(
この
)
某町
(
ぼうまち
)
から
我村落
(
わがそんらく
)
まで七
里
(
り
)
、
若
(
も
)
し
車道
(
しやだう
)
をゆけば十三
里
(
り
)
の
大迂廻
(
おほまはり
)
になるので
我々
(
われ/\
)
は
中學校
(
ちゆうがくかう
)
の
寄宿舍
(
きしゆくしや
)
から
村落
(
そんらく
)
に
歸
(
かへ
)
る
時
(
とき
)
、
決
(
けつ
)
して
車
(
くるま
)
に
乘
(
の
)
らず、
夏
(
なつ
)
と
冬
(
ふゆ
)
の
定期休業
(
ていききうげふ
)
毎
(
ごと
)
に
必
(
かなら
)
ず
画の悲み
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
玄關
(
げんくわん
)
の
先
(
さき
)
は
此
(
こ
)
の
別室全體
(
べつしつぜんたい
)
を
占
(
し
)
めてゐる
廣
(
ひろ
)
い
間
(
ま
)
、
是
(
これ
)
が六
號室
(
がうしつ
)
である。
淺黄色
(
あさぎいろ
)
のペンキ
塗
(
ぬり
)
の
壁
(
かべ
)
は
汚
(
よご
)
れて、
天井
(
てんじやう
)
は
燻
(
くすぶ
)
つてゐる。
冬
(
ふゆ
)
に
暖爐
(
だんろ
)
が
烟
(
けぶ
)
つて
炭氣
(
たんき
)
に
罩
(
こ
)
められたものと
見
(
み
)
える。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
譬
(
たと
)
へば、
緩漫
(
なまのろ
)
い
冬
(
ふゆ
)
の
後
(
しり
)
へに
華
(
はなや
)
かな
春
(
はる
)
めが
來
(
く
)
るのを
見
(
み
)
て、
血氣壯
(
けっきさかん
)
な
若
(
わか
)
い
手合
(
てあひ
)
が
感
(
かん
)
ずるやうな
樂
(
たの
)
しさ、
愉快
(
こゝろよ
)
さを、
蕾
(
つぼみ
)
の
花
(
はな
)
の
少女
(
をとめ
)
らと
立交
(
たちまじ
)
らうて、
今宵
(
こよひ
)
我家
(
わがや
)
で
領
(
りゃう
)
せられませうず。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
部屋
(
へや
)
には、
冬
(
ふゆ
)
だというのに、あたたかな
空気
(
くうき
)
がほかほかとここちよくながれ、
部屋
(
へや
)
にもろうかにも、ガス
灯
(
とう
)
がいっぱいついていて、
夜
(
よる
)
もまるで
昼
(
ひる
)
のようにあかるいのです。
福沢諭吉:ペンは剣よりも強し
(新字新仮名)
/
高山毅
(著)
その
近所
(
きんじょ
)
には
今
(
いま
)
でも
狐
(
きつね
)
や
狸
(
たぬき
)
がいるそうで、
冬
(
ふゆ
)
の
夜
(
よる
)
など、
人
(
ひと
)
が
便所
(
べんじょ
)
にゆくため
戸外
(
こがい
)
に
出
(
で
)
るときには、
戸
(
と
)
をあけるまえに、まず
丸太
(
まるた
)
をうちあわせたり、
柱
(
はしら
)
を
竹
(
たけ
)
でたたいたりして
ごんごろ鐘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
『それを
説明
(
せつめい
)
する
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
方法
(
はうはふ
)
はそれを
行
(
おこな
)
ふことである』(
若
(
も
)
し
皆
(
みな
)
さんが
冬
(
ふゆ
)
の
或
(
あ
)
る
日
(
ひ
)
、
自
(
みづか
)
ら
其
(
そ
)
れを
試
(
こゝろ
)
みんと
欲
(
ほつ
)
するならば、ドード
鳥
(
てう
)
がそれを
如何
(
いか
)
にして
行
(
や
)
つたかを
話
(
はな
)
しませう)
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
或
(
あ
)
る
年
(
とし
)
の
冬
(
ふゆ
)
は
雪沓
(
ゆきぐつ
)
を
穿
(
は
)
いて、
吉備国
(
きびのくに
)
から
出雲国
(
いずものくに
)
への、
国境
(
くにざかい
)
の
険路
(
けんろ
)
を
踏
(
ふ
)
み
越
(
こ
)
える。
又
(
また
)
或
(
あ
)
る
年
(
とし
)
の
夏
(
なつ
)
には
焼
(
や
)
くような
日光
(
ひ
)
を
浴
(
あ
)
びつつ
阿蘇山
(
あそざん
)
の
奥深
(
おくふか
)
くくぐり
入
(
い
)
りて
賊
(
ぞく
)
の
巣窟
(
そうくつ
)
をさぐる。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
乃
(
すなわ
)
ち
使
(
つかい
)
を発して兵を徴し、百八十万を得、
将
(
まさ
)
に発せんとしたりと。西暦千三百九十八年は、タメルラン西部
波斯
(
ペルシヤ
)
を征したりしが、
其
(
その
)
冬
(
ふゆ
)
明の太祖及び
埃及
(
エジプト
)
王の死を知りたりと
也
(
なり
)
。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
冬
(
ふゆ
)
ごもり
春
(
はる
)
の
大野
(
おほぬ
)
を
焼
(
や
)
く
人
(
ひと
)
は
焼
(
や
)
き
足
(
た
)
らねかも
吾
(
わ
)
が
情
(
こころ
)
熾
(
や
)
く 〔巻七・一三三六〕 作者不詳
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
時
(
とき
)
は
冬
(
ふゆ
)
の
初
(
はじめ
)
で、
霜
(
しも
)
が
少
(
すこ
)
し
降
(
ふ
)
つてゐる。
椒江
(
せうこう
)
の
支流
(
しりう
)
で、
始豐溪
(
しほうけい
)
と
云
(
い
)
ふ
川
(
かは
)
の
左岸
(
さがん
)
を
迂囘
(
うくわい
)
しつつ
北
(
きた
)
へ
進
(
すゝ
)
んで
行
(
ゆ
)
く。
初
(
はじ
)
め
陰
(
くも
)
つてゐた
空
(
そら
)
がやうやう
晴
(
は
)
れて、
蒼白
(
あをじろ
)
い
日
(
ひ
)
が
岸
(
きし
)
の
紅葉
(
もみぢ
)
を
照
(
てら
)
してゐる。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
それから続いて「
冬
(
ふゆ
)
の
夜
(
よ
)
」「
源兵衛
(
げんべえ
)
」なぞの、今度は氏一人で作った俳体詩が出来た。
漱石氏と私
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
今
(
いま
)
は、
冬
(
ふゆ
)
か
春
(
はる
)
か
心
(
こゝろ
)
の
上
(
うへ
)
で
迷
(
まよ
)
はずにゐられない
時分
(
じぶん
)
である。
心
(
こゝろ
)
ではいつとも
時候
(
じこう
)
の
區別
(
くべつ
)
がつかないのに、
目
(
め
)
に
見
(
み
)
るものは、すでに
尠
(
すくな
)
くとも、
一
(
ひと
)
つだけは
春
(
はる
)
らしいしるしを
示
(
しめ
)
してゐる。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
或
(
ある
)
曇
(
くも
)
つた
冬
(
ふゆ
)
の
日暮
(
ひぐれ
)
である。
私
(
わたくし
)
は
横須賀發
(
よこすかはつ
)
上
(
のぼ
)
り二
等
(
とう
)
客車
(
きやくしや
)
の
隅
(
すみ
)
に
腰
(
こし
)
を
下
(
おろ
)
して、ぼんやり
發車
(
はつしや
)
の
笛
(
ふえ
)
を
待
(
ま
)
つてゐた。とうに
電燈
(
でんとう
)
のついた
客車
(
きやくしや
)
の
中
(
なか
)
には、
珍
(
めづ
)
らしく
私
(
わたくし
)
の
外
(
ほか
)
に
一人
(
ひとり
)
も
乘客
(
じようきやく
)
はゐなかつた。
蜜柑
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
だが日本海と格別ちがつたこの
冬
(
ふゆ
)
眞中
(
まなか
)
にさへ暖かく明るい大洋も、あのわたしが三十何年まへ山裾の城下
市
(
まち
)
から、十何里はなれた港へゆく途中、うまれて初めて見た
耀
(
かがや
)
かしいばかり綺麗な
地方主義篇:(散文詩)
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
羽二重
(
はぶたへ
)
の
小袖羽織
(
こそでばおり
)
に
茶宇
(
ちやう
)
の
袴
(
はかま
)
、それはまだ
驚
(
おどろ
)
くに
足
(
た
)
りないとして、
細身
(
ほそみ
)
の
大小
(
だいせう
)
は、
拵
(
こしら
)
へだけに四
百兩
(
ひやくりやう
)
からもかけたのを
帶
(
さ
)
してゐた。
鐺
(
こじり
)
に
嵌
(
は
)
めた
分
(
ぶ
)
の
厚
(
あつ
)
い
黄金
(
きん
)
が
燦然
(
さんぜん
)
として、
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
に
輝
(
かゞや
)
いた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
また
暖房
(
だんぼう
)
のあるために
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
も
館内
(
かんない
)
は
春
(
はる
)
のように
暖
(
あたゝか
)
く
過
(
すご
)
すことが
出來
(
でき
)
ます。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
「その
冬
(
ふゆ
)
の
來
(
こ
)
ないうちに
蟻
(
あり
)
どののお
世話
(
せわ
)
にならなきやなりますまい」
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
冬
(
ふゆ
)
だ、
冬
(
ふゆ
)
だ。
葡萄祭
(
ぶだうまつり
)
も、さらば、さらば……
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
流
(
なが
)
れぬ。やがて
冬
(
ふゆ
)
は
來
(
き
)
ぬ、
熟睡
(
うまゐ
)
ぞせまし。
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
冬
(
ふゆ
)
の
夜
(
よ
)
の、
夢
(
ゆめ
)
一
(
ひと
)
つはかくなりき。
桜さく島:春のかはたれ
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
冬
(
ふゆ
)
は
折
(
を
)
れ
伏
(
ふ
)
す
蘆毛
(
あしげ
)
積
(
つも
)
る
雪毛
(
ゆきげ
)
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
冬
(
ふゆ
)
の
風
(
かぜ
)
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
花
(
はな
)
といいましても、
私
(
わたし
)
は、
冬
(
ふゆ
)
にかけて
咲
(
さ
)
く
花
(
はな
)
なんですよ。あなたのお
友
(
とも
)
だちで、
私
(
わたし
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
ないものがたくさんあると
思
(
おも
)
います。」
寒い日のこと
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
其年
(
そのとし
)
の
京都
(
きやうと
)
の
冬
(
ふゆ
)
は、
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
てずに
肌
(
はだ
)
を
透
(
とほ
)
す
陰忍
(
いんにん
)
な
質
(
たち
)
のものであつた。
安井
(
やすゐ
)
は
此
(
この
)
惡性
(
あくしやう
)
の
寒氣
(
かんき
)
に
中
(
あ
)
てられて、
苛
(
ひど
)
いインフルエンザに
罹
(
かゝ
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
短
(
みじか
)
い
冬
(
ふゆ
)
の
日
(
ひ
)
はもう
落
(
お
)
ちかけて
黄色
(
きいろ
)
な
光
(
ひかり
)
を
放射
(
はうしや
)
しつゝ
目叩
(
またゝ
)
いた。さうして
西風
(
にしかぜ
)
はどうかするとぱつたり
止
(
や
)
んで
終
(
しま
)
つたかと
思
(
おも
)
ふ
程
(
ほど
)
靜
(
しづ
)
かになつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「もうぢきに
冬
(
ふゆ
)
が來るぞ、ぐづ/\してはゐられやしない。」とでもいつてるやうに思へて、なんとなくものわびしい
氣持
(
きもち
)
がするのでした。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
けれども、
冬
(
ふゆ
)
の
鳥打帽
(
とりうちばう
)
を
被
(
かむ
)
つた
久留米絣
(
くるめがすり
)
の
小僧
(
こぞう
)
の、
四顧
(
しこ
)
人影
(
ひとかげ
)
なき
日盛
(
ひざか
)
りを、
一人
(
ひとり
)
雲
(
くも
)
の
峰
(
みね
)
に
抗
(
かう
)
して
行
(
ゆ
)
く
其
(
そ
)
の
勇氣
(
ゆうき
)
は、
今
(
いま
)
も
愛
(
あい
)
する。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
日本
(
につぽん
)
の
山
(
やま
)
のうさぎには
二通
(
ふたとほ
)
りあつて、その
一
(
ひと
)
つは
平常
(
へいじよう
)
褐色
(
かつしよく
)
をしてゐますが、
冬
(
ふゆ
)
になると
眞白
(
まつしろ
)
に
變
(
かは
)
るもの、も
一
(
ひと
)
つは
一年中
(
いちねんじゆう
)
通
(
とほ
)
して
褐色
(
かつしよく
)
のものです。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
と
馬
(
うま
)
が
言
(
い
)
ひましたが、
雪
(
ゆき
)
が
降
(
ふ
)
れば
馬
(
うま
)
でも
嬉
(
うれ
)
しいかと
父
(
とう
)
さんは
思
(
おも
)
ひました。
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
へ
來
(
く
)
る
冬
(
ふゆ
)
やお
正月
(
しやうぐわつ
)
には、お
前達
(
まへたち
)
の
知
(
し
)
らないやうな
樂
(
たのし
)
さもありますね。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
が、その
冬
(
ふゆ
)
が
過
(
す
)
ぎ
去
(
さ
)
ってしまったとき、ある
朝
(
あさ
)
、
子家鴨
(
こあひる
)
は
自分
(
じぶん
)
が
沢地
(
たくち
)
の
蒲
(
がま
)
の
中
(
なか
)
に
倒
(
たお
)
れているのに
気
(
き
)
がついたのでした。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
冬
(
ふゆ
)
の
寒
(
さむ
)
い日でした。
馬子
(
まご
)
の
馬吉
(
うまきち
)
が、
町
(
まち
)
から
大根
(
だいこん
)
をたくさん
馬
(
うま
)
につけて、三
里
(
り
)
先
(
さき
)
の
自分
(
じぶん
)
の
村
(
むら
)
まで
帰
(
かえ
)
って行きました。
山姥の話
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
詩経
(
しきやう
)
には
男子
(
だんし
)
の
祥
(
しやう
)
とし、或は
六雄将軍
(
りくゆうしやうぐん
)
の名を
得
(
え
)
たるも
義獣
(
ぎじう
)
なればなるべし。
夏
(
なつ
)
は
食
(
しよく
)
をもとむるの
外
(
ほか
)
山蟻
(
やまあり
)
を
掌中
(
てのひら
)
に
擦着
(
すりつけ
)
、
冬
(
ふゆ
)
の
蔵蟄
(
あなごもり
)
にはこれを
䑜
(
なめ
)
て
飢
(
うゑ
)
を
凌
(
しの
)
ぐ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
“冬”の意味
《名詞》
季節(四季)の一つ。秋の次、春の前。
(出典:Wiktionary)
“冬”の解説
冬(ふゆ)は、四季の一つであり、一年の中で最も寒い期間・季節を指す。
(出典:Wikipedia)
冬
常用漢字
小2
部首:⼎
5画
“冬”を含む語句
忍冬
款冬
初冬
冬枯
冬青
春夏秋冬
麦門冬
冬日
冬木
厳冬
旧冬
欵冬
去冬
冬籠
冬瓜
冬菜
冬季
杪冬
冬構
冬逍遙
...