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小麥
其の
時畑には
刷毛の
先でかすつた
樣に
麥や
小麥で
仄に
青味を
保つて
居る。それから
冬は
又百姓をして
寂しい
外から
專ら
内に
力を
致させる。
横に
轉がした
臼を
前に
据ゑて
小麥を
攫んでは
穗先を
其の
臼の
腹に
叩きつけると
種がぼろ/\と
向へ
落ちる。
軟かな
風が
凉しく
吹いて
松の
花粉が
埃のやうに
濕つた
土を
掩うて、
小麥の
穗にもびつしりと
黴のやうな
花が
附いた。
百姓は
皆自分の
手足に
不足を
感ずる
程忙しくなる。