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こむぎ
「旦那んさ。みんなもう行って
畦へはいってるんだ。
小麦の草をとっているよ。」
余等が帝劇のハムレットに
喜憂を
注いで居る間に、
北多摩では地が真白になる程雹が降った。余が畑の
小麦も大分こぼれた。
隣字では、麦は
種がなくなり、
桑も
蔬菜も青い物
全滅の
惨状に
会うた。
其の
時畑には
刷毛の
先でかすつた
樣に
麥や
小麥で
仄に
青味を
保つて
居る。それから
冬は
又百姓をして
寂しい
外から
專ら
内に
力を
致させる。
横に
轉がした
臼を
前に
据ゑて
小麥を
攫んでは
穗先を
其の
臼の
腹に
叩きつけると
種がぼろ/\と
向へ
落ちる。
軟かな
風が
凉しく
吹いて
松の
花粉が
埃のやうに
濕つた
土を
掩うて、
小麥の
穗にもびつしりと
黴のやうな
花が
附いた。
百姓は
皆自分の
手足に
不足を
感ずる
程忙しくなる。
“こむぎ”の意味
《名詞》
こむぎ【小 麦】
イネ科コムギ属の植物。種としては特に Triticum aestivum を指す。その種子は挽いて小麦粉として用いられる。世界で最も生産量の多い穀物であり、トウモロコシ、米と並んで三大穀物に挙げられる。
(出典:Wiktionary)