なや)” の例文
新字:
御米およねはさも心地好こゝちよささうにねむつてゐた。ついこのあひだまでは、自分じぶんはうられて、御米およね幾晩いくばん睡眠すゐみん不足ふそくなやまされたのであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
されど我今喜びて自らわが命運の原因もとゆるし、心せこれになやまさじ、こは恐らくは世俗の人にさとりがたしと見ゆるならむ 三四—三六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かれよるになつてもあかりをもけず、よもすがらねむらず、いまにも自分じぶん捕縛ほばくされ、ごくつながれはせぬかとたゞ其計そればかりをおもなやんでゐるのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あのとき愚老ぐらう不審ふしんおもひました。岸和田藩きしわだはんのお武士さむらひ夜分やぶん内々ない/\えまして、主人しゆじん美濃守みののかみ急病きふびやうなやんでゐるによつててくれとのおはなし
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ハテ、めうことをんなだとわたくしまゆひそめたが、よくると、老女らうぢよは、何事なにごとにかいたこゝろなやまして樣子やうすなので、わたくしさからはない
外國人がいこくじん命懸いのちがけでないと旅行りよこう出來できないくにである。國民こくみんはあゝ度々たび/\地震ぢしん火災かさいなやまされてもすこしもりないものゝようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
私は私で相變あひかはらず貧乏世帶びんばふじよたいりになやまされてゐます。けれど私達はしてそれをいることはなかつたと思ひます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
おつぎは八釜敷やかましく勘次かんじ使つかはれてひるあひだ寸暇すんかもなかつた。がひつそりとするころはおつぎは卯平うへい小屋こやなやんでこしんでやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わづらるやどうぢやとあるに重助御意ぎよいの通り今以て眼病にてなやみ居りますと申せば大岡殿其藤助が家内かないの樣子はどうぢや兩親はあるか又渡世は何を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おもはずなやつてあふげば、虚空こくうくものかゝれるばかり、參差しんしたる々々/\かぜさへわたまつこずゑに、組連くみつらねたるおしろかべこけいし一個々々ひとつ/\
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
現時げんじひとよりうらやまるゝほど健康けんかうたもれども、壯年さうねんころまでは體質たいしついたつてよわく、頭痛づつうなやまされ、み、しば/\風邪ふうじやをかされ、えずやまひためくるしめり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
感興もなき裸像にはなやまされて居る者でありますが、此機會に一通り裸體の辯を致して置きたいと思ひます。
裸体美に就て (旧字旧仮名) / 小倉右一郎(著)
だいなやますやまひまぼろしでございます。たゞ清淨しやうじやうみづこの受糧器じゆりやうきに一ぱいあればよろしい。まじなひなほしてしんぜます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
それは毎年夏の末から秋へかけて私を子供時分から苦しみなやませてゐた持病喘息ぜんそく發作ほつさであつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
なんぞやあともかたもこひいそあはびの只一人ひとりものおもふとは、こゝろはんもうらはづかし、人知ひとしらぬこゝろなやみに、昨日きのふ一昨日をとゝひ雪三せつざう訪問おとづれさへ嫌忌うるさくて、ことばおほくもはさゞりしを
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
顧みれば瀧口、性質こゝろにもあらで形容邊幅けいようへんぷくに心をなやめたりしも戀の爲なりき。仁王にわうともくまんず六尺の丈夫ますらをからだのみか心さへ衰へて、めゝしき哀れに弓矢の恥を忘れしも戀の爲なりき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
たいこそはむべきかな、なやみてこれを養ふ。
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
こよひあつるる病臥いたつきなやみのもなか
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
うみほうからけば行きなやむ。
あふれ動く感銘かんめいなやましい
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
煩悶わづらひかべなやめど
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
眼をなや山雀やまがら
秋の日 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
かれなやまされた僂麻質斯レウマチス病氣びやうき性質せいしつとしてかれ頑丈ぐわんぢやう身體からだから生命せいめいうばるまでにちからたくましくすることはなく
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれめにかげはるれば、人間にんげんかたちせ、めらるればおとろへ、蹂躙ふみにじらるればなやみ、吹消ふきけさるゝといのちせる。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
このをんなにはうま故郷こきやうみづが、しやうはないのだらうと、うたぐればうたぐられるくらゐ御米およね一時いちじなやんだこともあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
實際じつさいこのごろのように地震ぢしん火災かさい噴火ふんかなどになやまされつゞきでは、かへつてはづかしいかんじもおこるのである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ねむらないで南京蟲なんきんむしたゝかつてゐるものらう、あるひつよ繃帶はうたいめられてなやんでうなつてゐるものらう、また患者等くわんじやら看護婦かんごふ相手あいて骨牌遊かるたあそびてゐるものらう
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
嗚呼あゝ大事切迫だいじせつぱく/\と、わたくし武村兵曹たけむらへいそうかほ見合みあはしたるまゝ身體しんたい置塲おきばらぬほどこゝろなやましてる、ときしもたちまる、はるか/\の水平線上すいへいせんじやう薄雲うすぐもごとけむりあらはれ
前年ぜんねんの八ぐわつ英堂和尚えいだうをしやう南都なんと西大寺せいだいじから多田院ただのゐんへのかへりがけに、疝氣せんきなやんで、玄竹げんちく診察しんさつけたことがあるので、一きりではあるが、玄竹げんちく英堂和尚えいだうをしやう相識さうしきなかであつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あなたは台州たいしうへおいでなさることにおなりなすつたさうでございますね。それに頭痛づつうなやんでおいでなさるとまをすことでございます。わたくしはそれをなほしてしんぜようとおもつてまゐりました。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
なやましげにて子猫こねこのヂヤレるはもやらでにはながめて茫然ばうぜんたりじやうさま今日けふもお不快こゝろわるう御坐ございますか左樣さうけれどうも此處こゝがとしてするむねうちにはなにがありやおもおもひをられじとかことば
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
小篠こざさが原を行きなや
勸めて看病かんびやう暫時しばし油斷ゆだん有ね共如何成事にや友次郎が腫物しゆもつは元の如くにて一かうくちあかいたみは少づつゆるむ樣なれども兎角に氣分きぶんよろしからずなやみ居けるぞいたましや友次郎も最早日付にしても江戸へつかるゝ處迄て居ながらなさけなき此病氣びやうきと心のみはやれども其甲斐かひなく妻のお花も夫の心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかいづれも發汗はつかんともなうてかつしたくちさわやかな蔬菜そさいあぢほつしないものはない。貧苦ひんくなやんでさうして蔬菜そさい缺乏けつばふかんじてるものは勘次かんじのみではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いまとほつてた。あの土間どまところこしけてな、草鞋わらぢ一飯したくをしたものよ。爐端ろばた挨拶あいさつをした、面長おもながばあさんをたか。……時分じぶんは、島田髷しまだまげなやませたぜ。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『もう何事なにごとさりますな。わたくしも、日出雄ひでをも、此儘このまゝうみ藻屑もくづえても、けつして未練みれんたすからうとはおもひませぬ。』と白※薇はくさうびのたとへばあめなやめるがごとく、しみ/″\と愛兒あいじかほながめつゝ
野中のなかさん提唱ていしやうです」とさそつてれると、宗助そうすけこゝろからうれしいがした。かれ禿頭はげあたまつらまへるやうどころのない難題なんだいなやまされて、ながらじつ煩悶はんもんするのを、如何いかにもせつなくおもつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もし此心得このこゝろえ體得たいとくせられたならば、個人こじんとしては震災しんさいからしようずる危難きなんまぬかれ、社會上しやかいじよう一人ひとりとしては地震後ぢしんご火災かさい未然みぜん防止ぼうしし、從來じゆうらいわれ/\がなやんだ震災しんさい大部分だいぶぶんけられることゝおもふ。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
まへさまお一人ひとりのおわづらひはお兩人ふたりのおなやみと婢女共をんなどもわらはれてうれしときしが今更いまさらおもへばことさらにはせしかれたものならず此頃このごろしは錦野にしきの玄關げんくわんさきうつくしくよそほふたくらべてれよりことばけられねど無言むごん行過ゆきすぎるとは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まつたく、おたがひが、所帶しよたいつて、女中ぢよちうこれにはなやまされた、用心ようじんわるいから、それだけはよしなよ。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したへ、したへ、けむりして、押分おしわけて、まつこずゑにかゝるとすると、たちままたけむりが、そらへ、そらへとのぼる。斜面しやめん玉女ぎよくぢよむせぶやうで、なやましく、いきぐるしさうであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
折要歩せつえうほは、そつ拔足ぬきあしするがごとく、歩行あゆむわざなやむをふ、ざつ癪持しやくもち姿すがたなり。齲齒笑うしせうおもはせぶりにて、微笑ほゝゑときつね齲齒むしばいたみに弱々よわ/\打顰うちひそいろまじへたるをふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
目鼻めはな手足てあしのやうなもののえるのが、おびたゞしくて、したゝかあだをなし、引着ひきついてなやませる。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……なさけなさに歩行あるなやみますと、時々とき/″\背後うしろからあかざつゑで、こしくのでございますもの。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なやましさを、がけたきのやうな紫陽花あぢさゐあをくさむらなかむでひやしつゝ、つものくるはしく大輪おほりんあゐいだいて、あたかわれ離脱りだつせむとするたましひ引緊ひきしむるおもひをした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すで寛保年中くわんぽねんちう一時いちじきうすくはむため、老職らうしよくはい才覺さいかくにて、徳川氏とくがはしより金子きんす一萬兩いちまんりやう借用しやくようありしほどなれば、幼君えうくん御心おんこゝろなやませたまひ、なんとか家政かせい改革かいかくしてくにはしら建直たてなほさむ
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
にやくねれる、こひにやなやめる、避暑ひしよころよりしていまみやこかへらざる、あこがれのひとみをなぶりて、かぜ音信おとづるともあらず、はら/\と、はじかき銀杏いてふつゝゆびしなへるは
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あめにはなやみ、かぜにはいたみ、月影つきかげには微笑ほゝゑんで、淨濯明粧じやうたくめいしやう面影おもかげにほはせた。……
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三百にんばかり、山手やまてから黒煙くろけぶりげて、羽蟻はありのやうに渦卷うづまいてた、黒人くろんぼやり石突いしづきで、はまたふれて、呻吟うめなや一人々々ひとり/\が、どうはらこし、コツ/\とつゝかれて、生死いきしにためされながら
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いま、くるま日盛ひざかりを乘出のりだすまで、ほとんくちにしたものはない。直射ちよくしやするひかりに、くるまさかなやんでほろけぬ。洋傘かうもりたない。たてふゆ鳥打帽とりうちばうばかりである。わたしかた呼吸いきあへいだ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)