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惱
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なや
ふりがな文庫
“
惱
(
なや
)” の例文
新字:
悩
御米
(
およね
)
はさも
心地好
(
こゝちよ
)
ささうに
眠
(
ねむ
)
つてゐた。つい
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
迄
(
まで
)
は、
自分
(
じぶん
)
の
方
(
はう
)
が
好
(
よ
)
く
寐
(
ね
)
られて、
御米
(
およね
)
は
幾晩
(
いくばん
)
も
睡眠
(
すゐみん
)
の
不足
(
ふそく
)
に
惱
(
なや
)
まされたのであつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
されど我今喜びて自らわが命運の
原因
(
もと
)
を
赦
(
ゆる
)
し、心せこれに
惱
(
なや
)
まさじ、こは恐らくは世俗の人にさとりがたしと見ゆるならむ 三四—三六
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
彼
(
かれ
)
は
夜
(
よる
)
になつても
燈
(
あかり
)
をも
點
(
つ
)
けず、
夜
(
よも
)
すがら
眠
(
ねむ
)
らず、
今
(
いま
)
にも
自分
(
じぶん
)
が
捕縛
(
ほばく
)
され、
獄
(
ごく
)
に
繋
(
つな
)
がれはせぬかと
唯
(
たゞ
)
其計
(
そればか
)
りを
思
(
おも
)
ひ
惱
(
なや
)
んでゐるのであつた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
あの
時
(
とき
)
は
愚老
(
ぐらう
)
も
不審
(
ふしん
)
に
思
(
おも
)
ひました。
岸和田藩
(
きしわだはん
)
のお
武士
(
さむらひ
)
が
夜分
(
やぶん
)
内々
(
ない/\
)
で
見
(
み
)
えまして、
主人
(
しゆじん
)
美濃守
(
みののかみ
)
急病
(
きふびやう
)
で
惱
(
なや
)
んでゐるによつて
診
(
み
)
てくれとのお
話
(
はなし
)
。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ハテ、
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふ
女
(
をんな
)
だと
私
(
わたくし
)
は
眉
(
まゆ
)
を
顰
(
ひそ
)
めたが、よく
見
(
み
)
ると、
老女
(
らうぢよ
)
は、
何事
(
なにごと
)
にか
痛
(
いた
)
く
心
(
こゝろ
)
を
惱
(
なや
)
まして
居
(
を
)
る
樣子
(
やうす
)
なので、
私
(
わたくし
)
は
逆
(
さか
)
らはない
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
外國人
(
がいこくじん
)
は
命懸
(
いのちが
)
けでないと
旅行
(
りよこう
)
の
出來
(
でき
)
ない
國
(
くに
)
である。
國民
(
こくみん
)
はあゝ
度々
(
たび/\
)
地震
(
ぢしん
)
火災
(
かさい
)
に
惱
(
なや
)
まされても
少
(
すこ
)
しも
懲
(
こ
)
りないものゝようである。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
私は私で
相變
(
あひかは
)
らず
貧乏世帶
(
びんばふじよたい
)
の
切
(
き
)
り
盛
(
も
)
りに
惱
(
なや
)
まされてゐます。けれど私達は
決
(
け
)
してそれを
悔
(
く
)
いることはなかつたと思ひます。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
おつぎは
八釜敷
(
やかましく
)
勘次
(
かんじ
)
に
使
(
つか
)
はれて
晝
(
ひる
)
の
間
(
あひだ
)
は
寸暇
(
すんか
)
もなかつた。
夜
(
よ
)
がひつそりとする
頃
(
ころ
)
はおつぎは
能
(
よ
)
く
卯平
(
うへい
)
の
小屋
(
こや
)
へ
來
(
き
)
て
惱
(
なや
)
んで
居
(
ゐ
)
る
腰
(
こし
)
を
揉
(
も
)
んでやつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
煩
(
わづら
)
ひ
居
(
を
)
るやどうぢやとあるに重助
御意
(
ぎよい
)
の通り今以て眼病にて
惱
(
なや
)
み居りますと申せば大岡殿其藤助が
家内
(
かない
)
の樣子は
何
(
どう
)
ぢや兩親はあるか又渡世は何を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
思
(
おも
)
はず
行
(
ゆ
)
き
惱
(
なや
)
み
立
(
た
)
つて
仰
(
あふ
)
げば、
虚空
(
こくう
)
に
雲
(
くも
)
のかゝれるばかり、
參差
(
しんし
)
たる
樹
(
こ
)
の
間
(
ま
)
々々
(
/\
)
、
風
(
かぜ
)
さへ
渡
(
わた
)
る
松
(
まつ
)
の
梢
(
こずゑ
)
に、
組連
(
くみつら
)
ねたるお
城
(
しろ
)
の
壁
(
かべ
)
の
苔
(
こけ
)
蒸
(
む
)
す
石
(
いし
)
の
一個々々
(
ひとつ/\
)
。
城の石垣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
余
(
よ
)
は
現時
(
げんじ
)
人
(
ひと
)
より
羨
(
うらや
)
まるゝ
程
(
ほど
)
の
健康
(
けんかう
)
を
保
(
たも
)
ち
居
(
を
)
れども、
壯年
(
さうねん
)
の
頃
(
ころ
)
までは
體質
(
たいしつ
)
至
(
いた
)
つて
弱
(
よわ
)
く、
頭痛
(
づつう
)
に
惱
(
なや
)
まされ、
胃
(
ゐ
)
を
病
(
や
)
み、
屡
(
しば/\
)
風邪
(
ふうじや
)
に
犯
(
をか
)
され、
絶
(
た
)
えず
病
(
やまひ
)
の
爲
(
ため
)
に
苦
(
くるし
)
めり。
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
感興もなき裸像には
惱
(
なや
)
まされて居る者でありますが、此機會に一通り裸體の辯を致して置きたいと思ひます。
裸体美に就て
(旧字旧仮名)
/
小倉右一郎
(著)
四
大
(
だい
)
の
身
(
み
)
を
惱
(
なや
)
ます
病
(
やまひ
)
は
幻
(
まぼろし
)
でございます。
只
(
たゞ
)
清淨
(
しやうじやう
)
な
水
(
みづ
)
が
此
(
この
)
受糧器
(
じゆりやうき
)
に一ぱいあれば
宜
(
よろ
)
しい。
呪
(
まじなひ
)
で
直
(
なほ
)
して
進
(
しん
)
ぜます。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
それは毎年夏の末から秋へかけて私を子供時分から苦しみ
惱
(
なや
)
ませてゐた持病
喘息
(
ぜんそく
)
の
發作
(
ほつさ
)
であつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
何
(
なん
)
ぞや
跡
(
あと
)
もかたも
無
(
な
)
き
戀
(
こひ
)
に
磯
(
いそ
)
の
鮑
(
あはび
)
の只
一人
(
ひとり
)
もの
思
(
おも
)
ふとは、
心
(
こゝろ
)
の
問
(
と
)
はんもうら
恥
(
はづ
)
かし、
人知
(
ひとし
)
らぬ
心
(
こゝろ
)
の
惱
(
なや
)
みに、
昨日
(
きのふ
)
一昨日
(
をとゝひ
)
は
雪三
(
せつざう
)
が
訪問
(
おとづれ
)
さへ
嫌忌
(
うるさ
)
くて、
詞
(
ことば
)
多
(
おほ
)
くも
交
(
か
)
はさゞりしを
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
顧みれば瀧口、
性質
(
こゝろ
)
にもあらで
形容邊幅
(
けいようへんぷく
)
に心を
惱
(
なや
)
めたりしも戀の爲なりき。
仁王
(
にわう
)
とも
組
(
くま
)
んず六尺の
丈夫
(
ますらを
)
、
體
(
からだ
)
のみか心さへ衰へて、めゝしき哀れに弓矢の恥を忘れしも戀の爲なりき。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
胎
(
たい
)
こそは
讚
(
ほ
)
むべきかな、
惱
(
なや
)
みてこれを養ふ。
母
(旧字旧仮名)
/
アダ・ネグリ
(著)
こよひ
熱
(
あつ
)
るる
病臥
(
いたつき
)
の
惱
(
なや
)
みのもなか
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
海
(
うみ
)
の
方
(
ほう
)
から
行
(
ゆ
)
けば行き
惱
(
なや
)
む。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
溢
(
あふ
)
れ動く
感銘
(
かんめい
)
の
惱
(
なや
)
ましい
太陽の子
(旧字旧仮名)
/
福士幸次郎
(著)
煩悶
(
わづらひ
)
の
壁
(
かべ
)
に
惱
(
なや
)
めど
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
眼を
惱
(
なや
)
む
山雀
(
やまがら
)
の
秋の日
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
彼
(
かれ
)
が
惱
(
なや
)
まされた
僂麻質斯
(
レウマチス
)
は
病氣
(
びやうき
)
の
性質
(
せいしつ
)
として
彼
(
かれ
)
の
頑丈
(
ぐわんぢやう
)
な
身體
(
からだ
)
から
其
(
そ
)
の
生命
(
せいめい
)
を
奪
(
うば
)
ひ
去
(
さ
)
るまでに
力
(
ちから
)
を
逞
(
たくま
)
しくすることはなく
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
彼
(
かれ
)
めに
影
(
かげ
)
を
吸
(
す
)
はるれば、
人間
(
にんげん
)
は
形
(
かたち
)
痩
(
や
)
せ、
嘗
(
な
)
めらるれば
氣
(
き
)
衰
(
おとろ
)
へ、
蹂躙
(
ふみにじ
)
らるれば
身
(
み
)
を
惱
(
なや
)
み、
吹消
(
ふきけ
)
さるゝと
命
(
いのち
)
が
失
(
う
)
せる。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
この
女
(
をんな
)
には
生
(
うま
)
れ
故郷
(
こきやう
)
の
水
(
みづ
)
が、
性
(
しやう
)
に
合
(
あ
)
はないのだらうと、
疑
(
うた
)
ぐれば
疑
(
うた
)
ぐられる
位
(
くらゐ
)
、
御米
(
およね
)
は
一時
(
いちじ
)
惱
(
なや
)
んだ
事
(
こと
)
もあつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
實際
(
じつさい
)
この
頃
(
ごろ
)
のように
地震
(
ぢしん
)
、
火災
(
かさい
)
、
噴火
(
ふんか
)
などに
惱
(
なや
)
まされつゞきでは、
却
(
かへ
)
つて
恥
(
はづ
)
かしい
感
(
かん
)
じも
起
(
おこ
)
るのである。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
未
(
ま
)
だ
眠
(
ねむ
)
らないで
南京蟲
(
なんきんむし
)
と
戰
(
たゝか
)
つてゐる
者
(
もの
)
も
有
(
あ
)
らう、
或
(
あるひ
)
は
強
(
つよ
)
く
繃帶
(
はうたい
)
を
締
(
し
)
められて
惱
(
なや
)
んで
呻
(
うな
)
つてゐる
者
(
もの
)
も
有
(
あ
)
らう、
又
(
また
)
或
(
あ
)
る
患者等
(
くわんじやら
)
は
看護婦
(
かんごふ
)
を
相手
(
あいて
)
に
骨牌遊
(
かるたあそび
)
を
爲
(
し
)
てゐる
者
(
もの
)
も
有
(
あ
)
らう
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
嗚呼
(
あゝ
)
、
大事切迫
(
だいじせつぱく
)
/\と、
私
(
わたくし
)
は
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
と
顏
(
かほ
)
を
見合
(
みあ
)
はしたる
儘
(
まゝ
)
、
身體
(
しんたい
)
の
置塲
(
おきば
)
も
知
(
し
)
らぬ
程
(
ほど
)
心
(
こゝろ
)
を
惱
(
なや
)
まして
居
(
を
)
る、
時
(
とき
)
しも
忽
(
たちま
)
ち
見
(
み
)
る、
遙
(
はる
)
か/\の
水平線上
(
すいへいせんじやう
)
に
薄雲
(
うすぐも
)
の
如
(
ごと
)
き
煙
(
けむり
)
先
(
ま
)
づ
現
(
あら
)
はれ
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
其
(
そ
)
の
前年
(
ぜんねん
)
の八
月
(
ぐわつ
)
、
英堂和尚
(
えいだうをしやう
)
が
南都
(
なんと
)
西大寺
(
せいだいじ
)
から
多田院
(
ただのゐん
)
への
歸
(
かへ
)
りがけに、
疝氣
(
せんき
)
に
惱
(
なや
)
んで、
玄竹
(
げんちく
)
の
診察
(
しんさつ
)
を
受
(
う
)
けたことがあるので、一
度
(
ど
)
きりではあるが、
玄竹
(
げんちく
)
は
英堂和尚
(
えいだうをしやう
)
と
相識
(
さうしき
)
の
仲
(
なか
)
であつた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
あなたは
台州
(
たいしう
)
へお
出
(
いで
)
なさることにおなりなすつたさうでございますね。それに
頭痛
(
づつう
)
に
惱
(
なや
)
んでお
出
(
いで
)
なさると
申
(
まを
)
すことでございます。わたくしはそれを
直
(
なほ
)
して
進
(
しん
)
ぜようと
思
(
おも
)
つて
參
(
まゐ
)
りました。
寒山拾得
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
と
惱
(
なや
)
ましげにて
子猫
(
こねこ
)
のヂヤレるは
見
(
み
)
もやらで
庭
(
には
)
を
眺
(
なが
)
めて
茫然
(
ばうぜん
)
たり
孃
(
じやう
)
さま
今日
(
けふ
)
もお
不快
(
こゝろわるう
)
御坐
(
ござ
)
いますか
否
(
い
)
や
左樣
(
さう
)
も
無
(
な
)
けれど
何
(
ど
)
うも
此處
(
こゝ
)
がと
押
(
お
)
して
見
(
み
)
する
胸
(
むね
)
の
中
(
うち
)
には
何
(
なに
)
がありや
思
(
おも
)
ふ
思
(
おも
)
ひを
知
(
し
)
られじとか
詞
(
ことば
)
を
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
小篠
(
こざさ
)
が原を行き
惱
(
なや
)
む
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
勸めて
看病
(
かんびやう
)
に
暫時
(
しばし
)
も
油斷
(
ゆだん
)
有ね共如何成事にや友次郎が
腫物
(
しゆもつ
)
は元の如くにて一
向
(
かう
)
口
(
くち
)
も
明
(
あか
)
ず
痛
(
いた
)
みは少づつ
緩
(
ゆる
)
む樣なれども兎角に
氣分
(
きぶん
)
宜
(
よろ
)
しからず
惱
(
なや
)
み居けるぞ
傷
(
いたま
)
しや友次郎も最早日付にしても江戸へ
着
(
つか
)
るゝ處迄
來
(
き
)
て居ながら
情
(
なさけ
)
なき此
病氣
(
びやうき
)
と心のみ
速
(
はや
)
れども其
甲斐
(
かひ
)
なく妻のお花も夫の心を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
然
(
しか
)
し
孰
(
いづ
)
れも
發汗
(
はつかん
)
に
伴
(
ともな
)
うて
渇
(
かつ
)
した
口
(
くち
)
に
爽
(
さわや
)
かな
蔬菜
(
そさい
)
の
味
(
あぢ
)
を
欲
(
ほつ
)
しないものはない。
貧苦
(
ひんく
)
に
惱
(
なや
)
んでさうして
其
(
そ
)
の
蔬菜
(
そさい
)
の
缺乏
(
けつばふ
)
を
感
(
かん
)
じて
居
(
ゐ
)
るものは
勘次
(
かんじ
)
のみではない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
いま
通
(
とほ
)
つて
來
(
き
)
た。あの
土間
(
どま
)
の
處
(
ところ
)
に
腰
(
こし
)
を
掛
(
か
)
けてな、
草鞋
(
わらぢ
)
で
一飯
(
したく
)
をしたものよ。
爐端
(
ろばた
)
で
挨拶
(
あいさつ
)
をした、
面長
(
おもなが
)
な
媼
(
ばあ
)
さんを
見
(
み
)
たか。……
其
(
そ
)
の
時分
(
じぶん
)
は、
島田髷
(
しまだまげ
)
で
惱
(
なや
)
ませたぜ。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
『もう
何事
(
なにごと
)
も
爲
(
な
)
さりますな。
妾
(
わたくし
)
も、
日出雄
(
ひでを
)
も、
此儘
(
このまゝ
)
海
(
うみ
)
の
藻屑
(
もくづ
)
と
消
(
き
)
えても、
决
(
けつ
)
して
未練
(
みれん
)
に
助
(
たす
)
からうとは
思
(
おも
)
ひませぬ。』と
白※薇
(
はくさうび
)
のたとへば
雨
(
あめ
)
に
惱
(
なや
)
めるが
如
(
ごと
)
く、しみ/″\と
愛兒
(
あいじ
)
の
顏
(
かほ
)
を
眺
(
なが
)
めつゝ
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「
野中
(
のなか
)
さん
提唱
(
ていしやう
)
です」と
誘
(
さそ
)
つて
呉
(
く
)
れると、
宗助
(
そうすけ
)
は
心
(
こゝろ
)
から
嬉
(
うれ
)
しい
氣
(
き
)
がした。
彼
(
かれ
)
は
禿頭
(
はげあたま
)
を
捕
(
つら
)
まへる
樣
(
やう
)
な
手
(
て
)
の
着
(
つ
)
け
所
(
どころ
)
のない
難題
(
なんだい
)
に
惱
(
なや
)
まされて、
坐
(
ゐ
)
ながら
凝
(
じつ
)
と
煩悶
(
はんもん
)
するのを、
如何
(
いか
)
にも
切
(
せつ
)
なく
思
(
おも
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
もし
此心得
(
このこゝろえ
)
を
體得
(
たいとく
)
せられたならば、
個人
(
こじん
)
としては
震災
(
しんさい
)
から
生
(
しよう
)
ずる
危難
(
きなん
)
を
免
(
まぬか
)
れ、
社會上
(
しやかいじよう
)
の
一人
(
ひとり
)
としては
地震後
(
ぢしんご
)
の
火災
(
かさい
)
を
未然
(
みぜん
)
に
防止
(
ぼうし
)
し、
從來
(
じゆうらい
)
われ/\が
惱
(
なや
)
んだ
震災
(
しんさい
)
の
大部分
(
だいぶぶん
)
が
避
(
さ
)
けられることゝ
思
(
おも
)
ふ。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
お
前
(
まへ
)
さまお
一人
(
ひとり
)
のお
煩
(
わづら
)
ひはお
兩人
(
ふたり
)
のお
惱
(
なや
)
みと
婢女共
(
をんなども
)
に
笑
(
わら
)
はれて
嬉
(
うれ
)
しと
聞
(
き
)
きしが
今更
(
いまさら
)
おもへば
故
(
ことさ
)
らに
言
(
い
)
はせしか
知
(
し
)
れたものならず
此頃
(
このごろ
)
見
(
み
)
しは
錦野
(
にしきの
)
の
玄關
(
げんくわん
)
先
(
さき
)
うつくしく
粧
(
よそほ
)
ふた
身
(
み
)
に
比
(
くら
)
べて
見
(
み
)
て
我
(
わ
)
れより
詞
(
ことば
)
は
掛
(
か
)
けられねど
無言
(
むごん
)
に
行過
(
ゆきす
)
ぎるとは
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
まつたく、お
互
(
たがひ
)
が、
所帶
(
しよたい
)
を
持
(
も
)
つて、
女中
(
ぢよちう
)
の
此
(
これ
)
には
惱
(
なや
)
まされた、
火
(
ひ
)
の
用心
(
ようじん
)
が
惡
(
わる
)
いから、それだけはよしなよ。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
下
(
した
)
へ、
下
(
した
)
へ、
煙
(
けむり
)
を
押
(
お
)
して、
押分
(
おしわ
)
けて、
松
(
まつ
)
の
梢
(
こずゑ
)
にかゝるとすると、
忽
(
たちま
)
ち
又
(
また
)
煙
(
けむり
)
が、
空
(
そら
)
へ、
空
(
そら
)
へとのぼる。
斜面
(
しやめん
)
の
玉女
(
ぎよくぢよ
)
が
咽
(
むせ
)
ぶやうで、
惱
(
なや
)
ましく、
息
(
いき
)
ぐるしさうであつた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
折要歩
(
せつえうほ
)
は、
密
(
そつ
)
と
拔足
(
ぬきあし
)
するが
如
(
ごと
)
く、
歩行
(
あゆむ
)
に
故
(
わざ
)
と
惱
(
なや
)
むを
云
(
い
)
ふ、
雜
(
ざつ
)
と
癪持
(
しやくもち
)
の
姿
(
すがた
)
なり。
齲齒笑
(
うしせう
)
は
思
(
おも
)
はせぶりにて、
微笑
(
ほゝゑ
)
む
時
(
とき
)
毎
(
つね
)
に
齲齒
(
むしば
)
の
痛
(
いた
)
みに
弱々
(
よわ/\
)
と
打顰
(
うちひそ
)
む
色
(
いろ
)
を
交
(
まじ
)
へたるを
云
(
い
)
ふ。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
目鼻
(
めはな
)
手足
(
てあし
)
のやうなものの
見
(
み
)
えるのが、おびたゞしく
出
(
で
)
て、したゝか
仇
(
あだ
)
をなし、
引着
(
ひきつ
)
いて
惱
(
なや
)
ませる。
くさびら
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
……
情
(
なさけ
)
なさに
歩行
(
ある
)
き
惱
(
なや
)
みますと、
時々
(
とき/″\
)
、
背後
(
うしろ
)
から
藜
(
あかざ
)
の
杖
(
つゑ
)
で、
腰
(
こし
)
を
突
(
つ
)
くのでございますもの。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
そ
)
の
惱
(
なや
)
ましさを、
崖
(
がけ
)
の
瀧
(
たき
)
のやうな
紫陽花
(
あぢさゐ
)
の
青
(
あを
)
い
叢
(
くさむら
)
の
中
(
なか
)
に
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
むで
身
(
み
)
を
冷
(
ひや
)
しつゝ、
且
(
か
)
つもの
狂
(
くる
)
はしく
其
(
そ
)
の
大輪
(
おほりん
)
の
藍
(
あゐ
)
を
抱
(
いだ
)
いて、
恰
(
あたか
)
も
我
(
われ
)
を
離脱
(
りだつ
)
せむとする
魂
(
たましひ
)
を
引緊
(
ひきし
)
むる
思
(
おも
)
ひをした。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
既
(
すで
)
に
去
(
さ
)
る
寛保年中
(
くわんぽねんちう
)
、
一時
(
いちじ
)
の
窮
(
きう
)
を
救
(
すく
)
はむため、
老職
(
らうしよく
)
の
輩
(
はい
)
が
才覺
(
さいかく
)
にて、
徳川氏
(
とくがはし
)
より
金子
(
きんす
)
一萬兩
(
いちまんりやう
)
借用
(
しやくよう
)
ありしほどなれば、
幼君
(
えうくん
)
御心
(
おんこゝろ
)
を
惱
(
なや
)
ませ
給
(
たま
)
ひ、
何
(
なん
)
とか
家政
(
かせい
)
を
改革
(
かいかく
)
して
國
(
くに
)
の
柱
(
はしら
)
を
建直
(
たてなほ
)
さむ
十万石
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
世
(
よ
)
にやくねれる、
戀
(
こひ
)
にや
惱
(
なや
)
める、
避暑
(
ひしよ
)
の
頃
(
ころ
)
よりして
未
(
いま
)
だ
都
(
みやこ
)
に
歸
(
かへ
)
らざる、あこがれの
瞳
(
ひとみ
)
をなぶりて、
風
(
かぜ
)
の
音信
(
おとづ
)
るともあらず、はら/\と、
櫨
(
はじ
)
の
葉
(
は
)
、
柿
(
かき
)
の
葉
(
は
)
、
銀杏
(
いてふ
)
の
葉
(
は
)
、
見
(
み
)
つゝ
指
(
ゆび
)
の
撓
(
しな
)
へるは
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
雨
(
あめ
)
には
惱
(
なや
)
み、
風
(
かぜ
)
には
傷
(
いた
)
み、
月影
(
つきかげ
)
には
微笑
(
ほゝゑ
)
んで、
淨濯明粧
(
じやうたくめいしやう
)
の
面影
(
おもかげ
)
を
匂
(
にほ
)
はせた。……
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
三百
人
(
にん
)
ばかり、
山手
(
やまて
)
から
黒煙
(
くろけぶり
)
を
揚
(
あ
)
げて、
羽蟻
(
はあり
)
のやうに
渦卷
(
うづま
)
いて
來
(
き
)
た、
黒人
(
くろんぼ
)
の
槍
(
やり
)
の
石突
(
いしづき
)
で、
濱
(
はま
)
に
倒
(
たふ
)
れて、
呻吟
(
うめ
)
き
惱
(
なや
)
む
一人々々
(
ひとり/\
)
が、
胴
(
どう
)
、
腹
(
はら
)
、
腰
(
こし
)
、
背
(
せ
)
、コツ/\と
突
(
つゝ
)
かれて、
生死
(
いきしに
)
を
驗
(
ため
)
されながら
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
いま、
俥
(
くるま
)
で
日盛
(
ひざか
)
りを
乘出
(
のりだ
)
すまで、
殆
(
ほとん
)
ど
口
(
くち
)
にしたものはない。
直射
(
ちよくしや
)
する
日
(
ひ
)
の
光
(
ひか
)
りに、
俥
(
くるま
)
は
坂
(
さか
)
に
惱
(
なや
)
んで
幌
(
ほろ
)
を
掛
(
か
)
けぬ。
洋傘
(
かうもり
)
を
持
(
も
)
たない。
身
(
み
)
の
楯
(
たて
)
は
冬
(
ふゆ
)
の
鳥打帽
(
とりうちばう
)
ばかりである。
私
(
わたし
)
は
肩
(
かた
)
で
呼吸
(
いき
)
を
喘
(
あへ
)
いだ。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
惱
部首:⼼
12画
“惱”を含む語句
懊惱
苦惱
煩惱
惱亂
足惱
見惱
頭惱
多惱
責惱
行惱
苦惱主義
煩惱劫苦
煩悶懊惱
漕惱
曳惱
惱悶
御惱氣
子煩惱