亭主ていしゆ)” の例文
みなみ亭主ていしゆは一たん橋渡はしわたしをすればあとふたゝびどうならうともそれはまたときだといふこゝろから其處そこ加減かげんつくろうてにげるやうにかへつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此女このをんなくにかられてたのではない、江戸えどつたをんなか知れない、それは判然はつきりわからないが、なにしろ薄情はくじやうをんなだから亭主ていしゆおもてき出す。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
人間界にんげんかいではないものを……と、たついま亭主ていしゆなれたやうなこゑをして、やさしい女房にようばうなみだぐむ。おもひがけない、可懷なつかしさにむねせまつたらう。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よくも女の手一ツにて斯樣かやうに御育養そだて有れしぞしかし其後は御亭主ていしゆも定めてお出來なされたであらうに今日はいづれへかお出かけにやと言へばお光はかたち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
亭主ていしゆは五十恰好がつかういろくろほゝこけをとこで、鼈甲べつかふふちつた馬鹿ばかおほきな眼鏡めがねけて、新聞しんぶんみながら、いぼだらけの唐金からかね火鉢ひばちかざしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宿屋の亭主ていしゆたちは裏手の小さな建物に寝てゐました。イワンはその亭主をおこしてお金をはらつて立ちました。
ざんげ (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
鉄道工廠こうしようの住宅地域! 二階建ての長屋の窓から、工夫こうふのおかみさんが怒鳴つてゐる。亭主ていしゆは駅の構内で働らいてゐて、真黒の石炭がらを積みあげてゐる。
田舎の時計他十二篇 (新字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
つまたる不貞腐ふてくされをいふてむとおもふか、土方どかたをせうがくるまかうが亭主ていしゆ亭主ていしゆけんがある、らぬやつうちにはかぬ、何處どこへなりともてゆけ、てゆけ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
で、風流三昧ふうりうざんまい蘿月らげつむを得ず俳諧はいかいで世を渡るやうになり、おとよ亭主ていしゆ死別しにわかれた不幸つゞきにむかしを取つた遊芸いうげいを幸ひ常磐津ときはづ師匠ししやう生計くらしを立てるやうになつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おもちや屋の亭主ていしゆがした通りを真似まねて、ひいて見ても縮めて見ても、どうひねくりまはしても「てふちよ、てふちよ」のふしはいでず、よつてこの時始めて悟りました、此風琴も琴、三味線同様
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
神使のざうりとりさきにはせきたりて跋扈ふみはだかり、大こゑにて正一位三社宮さんじやのみや使者ししや大呼よばゝる。神使を見て亭主ていしゆ地上に平伏し、神使を引てかの正殿に座さしむ、行列ぎやうれつは家の左右にありてたいをなす。
さては此女房の美しいに思ひつきて、我より二つ四つも年のいたをもたれしか、ただし入りむこか、(中略)と亭主ていしゆふところにはいればそのままたましひ入れ替り、(中略)さあ夢さましてもてなしやと云へば
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
イワーノウナはなんだかうれしくてたまらなくなつたとえて一週間前いつしうかんぜん大喧嘩おほげんくわしたことわすれちまつてア………フ………をんで咖啡こうひいなんぞを馳走ちそうしながらしきりにいろんな餘計よけいけちやア亭主ていしゆ自慢じまんをする
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
蒲團ふとんてらばつてはうがえゝな」みなみ亭主ていしゆこゑ段々だん/\大粒おほつぶつてんでゆきみだれのなか勘次かんじあとからけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
乞としばしえんもとやすらひぬ餠屋もちやの店には亭主ていしゆと思しき男の居たりしかば寶澤其男にむかひ申けるは私しは腹痛ふくつう致し甚だ難澁なんじふ致せばくすり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
で、はて亭主ていしゆが、のみけるためののみつて、棕櫚しゆろ全身ぜんしんまとつて、素裸すつぱだかで、寢室しんしつえんしたもぐもぐり、一夏ひとなつのうちに狂死くるひじにをした。——
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あとにをんな亭主ていしゆかへつてたならばませようと思つて買つて置いた酒をお客にましてしまつたのですから、買つて置かうと糸立いとだていて手拭てぬぐひかむ
くびからした眞白まつしろぬのつゝまれて、自分じぶんてゐる着物きものいろしままつたえなかつた。其時そのときかれまた床屋とこや亭主ていしゆつてゐる小鳥ことりかごが、かゞみおくうつつてゐることいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
算盤そろばん乃公おれの頭をなぐつた親爺おやぢにしろ、泣いて意見をした白鼠しろねずみの番頭にしろ、暖簾のれんを分けてもらつたおとよ亭主ていしゆにしろ、さうふ人達はおこつたり笑つたり泣いたり喜んだりして
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
飯田町いひだまちのおなみことつてかとひかけるに、おふくは百ねんまへからとはぬばかりにして、れを御存ごぞんじのいは此處こゝ奧樣おくさまお一かたらぬは亭主ていしゆ反對あべこだね、まだわたしこといが
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしむねけるほど亭主ていしゆ言葉ことばさはつた。死骸しがいつてる、とつたやうな、やつ言種いひぐさなんとももつ可忌いまはしい。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
衣物きものれたやうだな、ぬがせたらよかつぺ、それにひどよごれつちやつたな」亭主ていしゆはいつてまくつた蒲團ふとんあてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
調とゝのへ度存候是は我母わがはゝの若き時に差たる品なりとて頼ければ亭主は氣の毒に思ながら出入の小間物屋與兵衞こまものやよへゑ云者いふものへ彼二品を見せ亭主ていしゆ保證人うけにんになりて是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
へえー芝居しばゐにありさうですな、河竹かはたけしん七さんでも書きさうな狂言きやうげんだ、亀裂ひゞあかぎれかくさうめに亭主ていしゆくま膏薬売かうやくうり、イヤもう何処どこかたにお目にかゝるか知れません。
門口かどぐちやなぎのある新しい二階からは三味線しやみせんきこえて、水に添ふ低い小家こいへ格子戸外かうしどそとには裸体はだか亭主ていしゆすゞみに出はじめた。長吉ちやうきちはもう来る時分じぶんであらうと思つて一心いつしんに橋むかうをながめた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おもつて亭主ていしゆくちこと出來できた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まだ可笑をかしいことがある、ずツとあとで……番町ばんちやうくと、かへりがけに、錢湯せんたう亭主ていしゆが「先生々々せんせい/\ちやうひるごろだからほか一人ひとりなかつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どうも有難ありがたぞんじます……左様さやうなら御遠慮ごゑんりよなしに頂戴ちやうだいいたしますと、亭主ていしゆ河合金兵衛かはひきんべゑちやつてるあひだに、小丼こどんぶりまへ引寄ひきよせて乞食こじきながらも、以前いぜんは名のある神谷幸右衛門かみやかうゑもん
をんなこゝろがあつてもなくても、わたし亭主ていしゆ一人ひとりである。そのでんぶ、焼海苔やきのりなどとなふるものをしたゝかれたおほバスケツトがあるゆゑんである。また不断ふだんちがふ。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
んだ玉子酒たまござけをしてひやがつて、亭主ていしゆ山越やまごえをして方々はう/″\あきなひをしてゐるに、かゝアは玉子酒たまござけをしてくらやアがる、まだあまつてゐるがんでやれ、オイだれだおくまか、どこへつたんだ。
亭主ていしゆこたへて、如何いかにも、へんうはさするには、はるあけぼののやうに、蒼々あを/\かすんだ、なめらかな盤石ばんじやくで、藤色ふぢいろがゝつたむらさきすぢが、寸分すんぶんたがはず、双六すごろくつてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
梅廼屋うめのやは五代目だいめ塩原多助しほばらたすけ女房にようばうで、それが亭主ていしゆなくなつてから
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
嬰兒あかんぼ亭主ていしゆもごみ/\と露出むきだし一間ひとままくらならべて、晨起あさおき爺樣ぢいさま一人ひとりで、かましたたきつけてところで。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
或旅宿あるやど亭主ていしゆふさんで、主
(和)茗荷 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
柳田やなぎださんは、旅籠はたごのあんまに、加賀かが金澤かなざはでは天狗てんぐはなしくし、奧州あうしう飯野川いひのがはまちんだのは、せずして、同氏どうし研究けんきうさるゝ、おかみん、いたこの亭主ていしゆであつた。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
りてて、ちやんとまをさぬかい、なんぢや、不作法ぶさはふな。』と亭主ていしゆ炉端ろばたから上睨うはにらみをる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よい/\の、いぬの、ばゞの、金時計きんどけいの、淺葱あさぎふんどしの、其上そのうへに、子抱こかゝへ亭主ていしゆには、こりや何時いつまでもせられたら、くらまうもれぬぞと、あたふた百花園ひやくくわゑんげてる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と、芥川あくたがはさんがえいじて以来いらい、——東京府とうきやうふこゝろある女連をんなれんは、東北とうほく旅行りよかうする亭主ていしゆためおかゝのでんぶと、焼海苔やきのりと、梅干うめぼしと、氷砂糖こほりざたう調とゝのへることを、陰膳かげぜんとゝもにわすれないことつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それいたちみちときしてすゝめばわざはひあり、やまくしちたるときこれけざればそこなふ。兩頭りやうとうへびたるものはし、みち小兒こどもいた亭主ていしゆれば、ことぶきながからずとしてあるなり
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
柳屋やなぎや土地とち老鋪しにせだけれども、手廣てびろあきなひをするのではなく、八九十けんもあらう百けんらずの部落ぶらくだけを花主とくいにして、今代こんだい喜藏きざうといふわか亭主ていしゆが、自分じぶんりに𢌞まはるばかりであるから
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
亭主ていしゆ法然天窓はふねんあたま木綿もめん筒袖つゝそでなか両手りやうてさきすくまして、火鉢ひばちまへでもさぬ、ぬうとした親仁おやぢ女房にようばうはう愛嬌あいけうのある、一寸ちよいと世辞せじばあさん、くだん人参にんじん干瓢かんぺうはなし旅僧たびそう打出うちだすと
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
亭主ていしゆきはめて慇懃いんぎんに「えゝ(おかゆ)とはきますでせうか。」「あゝ、れはね、かうかうやつて、眞中まんなかこめくんです。よわしと間違まちがつては不可いけないのです。」なんと、先生せんせい得意とくいおもふべし。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一夜いちやめづらしく、よひうちから亭主ていしゆると、小屋こやすみくらがりに、あやしきこゑ
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
相州さうしう小田原をだはらまち電車鐵道でんしやてつだう待合まちあひの、茶店ちやみせ亭主ていしゆことばれば、土地とち鹽辛しほから蒲鉾かまぼこ外郎うゐらうおよ萬年町まんねんちやう竹屋たけやふぢ金格子きんがうし東海棲とうかいろう料理店れうりてん天利てんりしろ石垣いしがきおよ外廓そとぐるわ梅林ばいりんは、およ日本一につぽんいちなり
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をんな吃驚びつくり。——亭主ていしゆていふのではない。飛脚ひきやく丁隷ていれいである。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おゝ、つもつた、つもつた。」とつぶやいたのは、旅籠屋はたごや亭主ていしゆこゑである。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、ときおぼえがあるから、あたりをはらつて悠然いうぜんとしてをしへた。——いまはもうだいかはつた——亭主ていしゆ感心かんしんもしないかはりに、病身びやうしんらしい、おかゆべたさうなかほをしてた。女房にようばう評判ひやうばん別嬪べつぴんで。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふだん亭主ていしゆ彌次喜多やじきたあつかをんなに、學問がくもんのあるところせてやらう。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
留主るすにおらが亭主ていしゆぬすむぞよ。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
亭主ていしゆ月夜つきよにのそりとつて
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)