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手廣
聲きくよすがも
有らざりければ、
別亭に
澁茶すゝりながら
夫となき
物語、この
四隣はいづれも
閑靜にて、
手廣き
園生浦山しきものなり、
此隣りは
誰樣の
御別莊ぞ
柳屋は
土地で
老鋪だけれども、
手廣く
商をするのではなく、八九十
軒もあらう百
軒足らずの
此の
部落だけを
花主にして、
今代は
喜藏といふ
若い
亭主が、
自分で
賣りに
𢌞るばかりであるから
下り
豫て約束なれば深川の下屋敷へ
到着致しけるに小野田は三年以前に先妻は
相果子供もなく住居も
下邸の事なれば
手廣き暮しに付母娘共大きに
安堵して幸之進を