はやし)” の例文
すみなれたはやしや、やまや、かわや、野原のはら見捨みすて、らぬ他国たこくることは、これらの小鳥ことりにとっても、冒険ぼうけんにちがいなかったからです。
ふるさと (新字新仮名) / 小川未明(著)
はやし図書頭ずしょのかみをはじめとして諸儒者列席の前に一人ずつ呼び出され、一間半もある大きい唐机からづくえの前に坐って素読の試験を受けるのである。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
檜木ひのきさはら明檜あすひまき𣜌ねず——それを木曾きそはうでは五木ごぼくといひまして、さういふえたもりはやしがあのふか谷間たにあひしげつてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かうしてはやしなか空氣くうきは、つねはやしそとくらべて、晝間ちゆうかんすゞしく、夜間やかんあたゝかで、したがつてひるよるとで氣温きおんきゆうかはることをやはらげます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
あらをはつたとき枯葉かれはおほいやうなのはみなかまでゝうしろはやしならみきなはわたして干菜ほしなけた。自分等じぶんら晝餐ひるさいにも一釜ひとかまでた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一四あしがちる難波なにはて、一五須磨明石の浦ふく風を身に一六しめつも、行々一七讃岐さぬき真尾坂みをざかはやしといふにしばらく一八つゑとどむ。
少年せうねんゆびさかたながめると如何いかにも大變たいへん! 先刻せんこく吾等われら通※つうくわして黄乳樹わうにうじゆはやしあひだより、一頭いつとう猛獸まうじういきほいするどあらはれてたのである。
だんだんふかはいって行って、まっくらなはやしの中の、いわばかりのでこぼこしたみちをよじて行きますと、やがて大きな岩室いわむろまえに出ました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はやし林学士を統領とうりょうとして、属員ぞくいん人夫にんぷアイヌ約二十人、此春以来此処ここ本陣ほんじんとして、北見界きたみざかいかけ官有針葉樹林しんようじゅりんの調査をやって居るのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
(それでははやしへでも、うら田畝たんぼへでもつてておいで。何故なぜツて天上てんじようあそんでるんだからかごなかないのかもれないよ)
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はやしのおやじ……? ウン。あの若い朝鮮人……りん親父おやじだよ。まだ話さなかったっけな……アハハハ。少々酔ったと見えて話が先走ったわい。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
老中若年寄りを初めとしはやし大学頭だいがくのかみなど列座の上、下見の相談の催おされたのは年も押し詰まった師走しわすのことであったが
北斎と幽霊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おれだつて、れにもはふとはおもはない、たゞあの石狩原野いしかりげんやだの、高原たかはら落日おちひ白樺しろかばはやしなにをかんがへてもいゝなあ——それに五ぐわつころになるとあの白樺しろかば
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
もりはやしのあるところならよいが、つかれてもはねをやすめることもできず、おなかいてもなに一つべるものもない、ひろいひろい、それはおほきな、毎日まいにち毎晩まいばん
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
やみにもよろこびあり、ひかりにもかなしみあり麥藁帽むぎわらばうひさしかたむけて、彼方かなたをか此方こなたはやしのぞめば、まじ/\とかゞやいてまばゆきばかりの景色けしき自分じぶんおもはずいた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それは実際じっさいずいぶんたけたかくて、その一番いちばんたかいのなどは、した子供こどもがそっくりかくれること出来できるくらいでした。人気ひとけがまるでくて、まったふかはやしなかみたいです。
そこらがまだまるつきり、たけたかくさくろはやしのままだつたとき、嘉十かじふはおぢいさんたちと北上川きたかみがはひがしからうつつてきて、ちいさなはたけひらいて、あはひえをつくつてゐました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
その様子を、次の間から新しく傭い入れられた助手のはやしという青年が、心配そうに窺っていた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
雨戸あまどをさすもなく、いままでとほくのはやしなかきこえてゐたかぜおとは、巨人きよじんの一あふりのやうにわれにもないはやさでかけて、そのいきほひのなかやまゆきを一んでしまつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
わたくし時折ときをり種々いろ/\こと妄想まうざうしますが、往々わう/\幻想まぼろしるのです、或人あるひとたり、またひとこゑいたり、音樂おんがくきこえたり、またはやしや、海岸かいがん散歩さんぽしてゐるやうにおもはれるときります。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はなししてところへ、突然とつぜんはやしなかから、半外套はんぐわいとうた、草鞋わらじ脚半きやはんの、へんやつた。
所はしば烏森からすもりで俗に「はやしの屋敷」と呼ばれていた屋敷長屋のはずれのうちだったが、家内うち間取まどりといい、庭のおもむきといい、一寸ちょっと気取った家で、すべ上方かみがた風な少し陰気ではあったが中々なかなかった建方たてかたである
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
このみ寺は山ゆゑよるのしづかなるはやしなかに鷺啼きにけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
たけはやし
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
あるのこと、むすめは、やまはやしなかへいつものごとくはいってゆきました。すると一のかわいらしい小鳥ことりが、いいこえいていました。
ふるさとの林の歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さうしたあかいろどられたあきやまはやしも、ふゆると、すっかりがおちつくして、まるでばかりのようなさびしい姿すがたになり
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
しなはやしいくつもぎて自分じぶんむらいそいだが、つかれもしたけれどものういやうな心持こゝろもちがして幾度いくたび路傍みちばたおろしてはやすみつゝたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
胡桃くるみ澤胡桃さはくるみなどゝいふは、山毛欅ぶななぞとおなじやうに、ふかはやしなかにはえないで、村里むらさとつたはうえてです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
すもゝにはから背戸せどつゞいて、ちひさなはやしといつていゝくらゐ。あの、そこあまみをびた、美人びじんしろはだのやうな花盛はなざかりをわすれない。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大佐たいさいへは、海面かいめんより數百尺すひやくしやくたか斷崖だんがいうへたてられ、まへはてしなき印度洋インドやうめんし、うしろ美麗びれいなる椰子やしはやしおほはれてる。
して、山の中をあてもなくうろうろあるいていますと、どこかとおくのはやしの中から、子供こどもうたこえがしました。
鬼六 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
國府津こふづりたとき日光につくわう雲間くもまれて、新緑しんりよくやまも、も、はやしも、さむるばかりかゞやいてた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いよいよこれから吾輩が、はやし親仁おやじを使って爆弾漁業退治に取りかかる一幕だ。サア返杯……。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
わたくし時折ときおり種々いろいろなことを妄想もうぞうしますが、往々おうおう幻想まぼろしるのです、或人あるひとたり、またひとこえいたり、音楽おんがくきこえたり、またはやしや、海岸かいがん散歩さんぽしているようにおもわれるときもあります。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二五近衛院このゑのゐんゆづりましても、二六藐姑射はこややまたまはやしめさせ給ふを、思ひきや、二七麋鹿びろくのかよふ跡のみ見えて、まうでつかふる人もなき深山みやま二八おどろの下に神がくれ給はんとは。
このふしぎないえのふしぎな人は、はやしさんという、四十ぐらいのおじさんでした。
ふしぎな人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その四かく彼女かれいてる硝子窓がらすまどからは、黄色きいろ落葉松からまつはやしや、紫色むらさきいろ藻岩山さうがんざんえて、いつもまちこしをおろしてなみだぐむときは、黄昏たそがれ夕日ゆふひのおちるとき硝子窓がらすまどあかくそまつてゐた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
緑葉りよくえふはやしでめぐらしてる、其中そのなか畑地はたちほかには人一個ひとひとりえぬ。
かれは、懐中かいちゅうから、スケッチちょうして、前方ぜんぽう黄色きいろくなった田圃たんぼや、灰色はいいろにかすんだはやし景色けしきなどを写生しゃせいしにかかったのであります。
丘の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
今日こんにち、ひのき、すぎなどはやしをこのたいなかるのは、ひとうつゑたもので、もと/\ひのき、すぎなど温帶林おんたいりん生育せいいくしてゐたものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
なんといふふかやまたにとうさんのさきにありましたらう。とうさんは木曽川きそがはえる谷間たにあひについて、はやしなかあるいてくやうなものでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かれはやし持主もちぬしうてつたのである。それでもあまりにひとくち八釜敷やかましいので主人しゆじんたゞ幾分いくぶんでも將來しやうらいいましめをしようとおもつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すでくらんでたふれさうになると、わざわひ此辺このへん絶頂ぜつちやうであつたとえて、隧道トンネルけたやうにはるかに一りんのかすれたつきおがんだのはひるはやし出口でくちなので。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
柳川君やながはくんわたくしすぐ黄乳樹わうにうじゆはやしへんで、はからずも君等きみら急難きふなんをおたすもうしたときから、左樣さうおもつてつたのです。
みちはたゞやまばかり、さかあり、たにあり、溪流けいりうあり、ふちあり、たきあり、村落そんらくあり、兒童じどうあり、はやしあり、もりあり、寄宿舍きしゆくしやもん朝早あさはやくれうちくまでのあひだ自分じぶん此等これらかたちいろひかり
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
玄子げんしとははやしりて、えだきたり、それをはしらとして畑中はたなかて、日避ひよけ布片きれ天幕てんとごとり、まめくきたばにしてあるのをきたつて、き、其上そのうへ布呂敷ふろしきシオルなどいて
世界せかい植物しょくぶつあいするひとたちで、おそらく、わたしをっていないものはあるまいね。わたしは、みなみあたたかなしまはやしなかそだちました。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
画工ゑかきさんは立処たちどころにコバルトのいたし、博士はかせむらさきてふつて、小屋こやうらの間道かんだううらはやしはいつたので。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「これから、いろいろのとりが、うらはやしへくる。ゆきると、山鳥やまどりもうさぎもくる。そうしたら、ってやるぞ。」といわれました。
おかまの唄 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つひくだんかめりて、もこ/\と天上てんじやうす。令史れいしあへうごかず、のぼること漂々へう/\として愈々いよ/\たかく、やがて、高山かうざんいたゞきいつ蔚然うつぜんたるはやしあひだいたる。こゝに翠帳すゐちやうあり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)