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麋鹿
一
山の
豺狼麋鹿畏れ従はぬものとてなかりしかば、虎はますます猛威を
逞うして、自ら
金眸大王と名乗り、
数多の
獣類を眼下に
見下して、一山
万獣の君とはなりけり。
二五近衛院に
禅りましても、
二六藐姑射の
山の
瓊の
林に
禁めさせ給ふを、思ひきや、
二七麋鹿のかよふ跡のみ見えて、
詣でつかふる人もなき
深山の
二八荊の下に神がくれ給はんとは。
況ンヤ吾ト
子ト
江渚ノホトリニ
漁樵シ、
魚鰕ヲ
侶トシ、
麋鹿ヲ友トシ、一葉ノ
扁舟ニ駕シ、
匏樽ヲ挙ゲテ以テ
相属ス、
蜉蝣ヲ天地ニ寄ス、
眇タル
滄海ノ
一粟、吾ガ生ノ
須臾ナルヲ
哀ミ