麋鹿びろく)” の例文
さん豺狼さいろう麋鹿びろくおそれ従はぬものとてなかりしかば、虎はますます猛威をたくましうして、自ら金眸きんぼう大王と名乗り、数多あまた獣類けものを眼下に見下みくだして、一山万獣ばんじゅうの君とはなりけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
二五近衛院このゑのゐんゆづりましても、二六藐姑射はこややまたまはやしめさせ給ふを、思ひきや、二七麋鹿びろくのかよふ跡のみ見えて、まうでつかふる人もなき深山みやま二八おどろの下に神がくれ給はんとは。
いはンヤ吾トなんぢ江渚こうしよノホトリニ漁樵ぎよしようシ、魚鰕ぎよかつれトシ、麋鹿びろくヲ友トシ、一葉ノ扁舟へんしゆうニ駕シ、匏樽ほうそんヲ挙ゲテ以テ相属あひしよくス、蜉蝣ふゆうヲ天地ニ寄ス、びようタル滄海そうかい一粟いちぞく、吾ガ生ノ須臾しゆゆナルヲかなし
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私はそれを読みながら、舌に唾液を絡ませて、アルセニエフの口中に沁みわたる美味を想像していたのであるが、今回ははからずも老友のおかげで麋鹿びろくの焙熱にめぐり会ったわけである。
食指談 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
一坏いつぱいの土あさましく頑石叢棘ぐわんせきさうきよくもとに神隠れさせ玉ひて、飛鳥ひてうを遺し麋鹿びろくあとを印する他には誰一人問ひまゐらするものもなき、かゝる辺土の山間やまあひに物さびしく眠らせらるゝ御いたはしさ。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
吏人りじんは見ず中朝ちゆうてうの礼、麋鹿びろく 時々 県衙けんがに到る。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)