“櫻(さくら)” の例文
新字:桜
上杉(うへすぎ)の隣家(となり)は何宗(なにしう)かの御梵刹(おんてら)さまにて寺内(じない)廣々(ひろ/\)と桃(もゝ)櫻(さくら)いろ/\植(うゑ)わたしたれば、此方(こなた)の二階(かい)より見(み)おろすに雲(くも)は棚曳(たなび)く天上界(てんじやうかい)に似(に)て
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まむかうの黒(くろ)べいも櫻(さくら)がかぶさつて眞白(まつしろ)だ。さつと風(かぜ)で消(け)したけれども、しめた後(あと)は又(また)こもつて咽(む)せつぽい。濱野(はまの)さんも咳(せき)して居(ゐ)た。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
『私(わたし)は是非(ぜひ)怠惰屋(なまけや)になるのだ、是非(ぜひ)なるのだ』と言張(いひは)つて聽(き)かない。櫻(さくら)の皮(かは)を剥(む)くどころか、家(いへ)の隅(すみ)の方(はう)へすつこんで了(しま)つて茫然(ぼんやり)して居る。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「そんな事があつたかも知れません。現に私のやつた寶搜しは、飛鳥山と向島の二度だけで、今晩の櫻(さくら)の馬場は、全く私の知らないことで」
さう鋭(するど)くもなく敢へて奇(き)手妙策(めうさく)も弄(ろう)せず靜(しづ)かに穩(おだや)かにもみ合つてゐる光景(けい)たるやたしかに「櫻(さくら)かざして」の感(かん)なくもない。
廻(まは)り夫より所々を見物(けんぶつ)しける内一疋(ぴき)の鹿(しか)を追駈(おつかけ)しが鹿の迯(にぐ)るに寶澤は何地迄(いづくまで)もと思あとを慕(したひ)しも終(つひ)に鹿は見失ひ四方(あたり)を見廻(みめぐ)らせば遠近(をちこち)の山の櫻(さくら)今を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
即(すなは)ち「墨染櫻(すみぞめのさくら)」の櫻(さくら)「三十三間堂(げんだう)」の柳(やなぎ)、など其(その)例(れい)で、此等(これら)は少(すこ)しも怖(こわ)くなく、極(きは)めて優美(いうび)なものである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
事(こと)は冬(ふゆ)の下(した)から春(はる)が頭(あたま)を擡(もた)げる時分(じぶん)に始(はじ)まつて、散(ち)り盡(つく)した櫻(さくら)の花(はな)が若葉(わかば)に色(いろ)を易(か)へる頃(ころ)に終(をは)つた。凡(すべ)てが生死(しやうし)の戰(たゝかひ)であつた。青竹(あをだけ)を炙(あぶ)つて油(あぶら)を絞(しぼ)る程(ほど)の苦(くる)しみであつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから木(き)の葉(は)は松(まつ)の葉(は)のように一年中(いちねんじゆう)かはらず青々(あを/\)と茂(しげ)つてゐるのがあるかと思(おも)ふと、櫻(さくら)のように春(はる)から夏(なつ)にかけては青(あを)く茂(しげ)つてゐるが、秋(あき)の涼(すゞ)しい風(かぜ)が吹(ふ)きはじめると
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
その鳥(とり)の聲(こゑ)のするあたりから、だん/\夜(よ)が明(あ)けかけて、あちらに一(ひと)かたまり、こちらに一(ひと)かたまりといふふうに、山(やま)の櫻(さくら)の花(はな)も色(いろ)が現(あらは)れて、だん/\明(あき)らかになつて行(ゆ)く。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
二月(ぐわつ)初午(はつうま)の日(ひ)には、お家(うち)の爺(ぢい)やが大(おほ)きな太鼓(たいこ)を持出(もちだ)して、その社(やしろ)の側(わき)の櫻(さくら)の枝(えだ)の木(き)に掛(か)けますと、そこへ近所(きんじよ)の子供(こども)が集(あつ)まりました。父(とう)さんもその太鼓(たいこ)を叩(たゝ)くのを樂(たのし)みにしたものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今(いま)から丁度(ちやうど)四年(ねん)前(まへ)、季節(せつ)は櫻(さくら)散(ち)る五月(ごぐわつ)中旬(なかば)の或(ある)晴朗(うらゝか)な日(ひ)の正午(せうご)時分(じぶん)であつた。
梅(うめ)と櫻(さくら)の螺鈿(かながひ)は
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
櫻(さくら)のつぼみが
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
櫻(さくら)の樹(き)の梢(うら)を、ぱつと照(て)らして、薄明(うすあか)るく掛(かゝ)るか、と思(おも)へば、颯(さつ)と墨(すみ)のやうに曇(くも)つて、月(つき)の面(おもて)を遮(さへぎ)るや否(いな)や、むら/\と亂(みだ)れて走(はし)る……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
櫻(さくら)の皮(かは)を剥(むか)されては大變(たいへん)と、兒童(こども)は早速(さつそく)親父(おやぢ)の言(い)ふ通(とほ)りになつて其(その)翌日(よくじつ)から平常(いつも)の如(ごと)く學校(がくかう)へ行(ゆ)く風(ふう)で家(うち)を出(で)た。けれども決(けつ)して學校(がくかう)には行(い)かない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
舞台(ぶたい)はいふまでもなく櫻(さくら)の園(その)の女主(しゆ)人ラアネフスカヤの邸宅(ていたく)の廣間(ひろま)で、時は春(はる)の夜(よ)、その地(ち)方の名家もやがて沒落(ぼつらく)といふ悲(かな)しい運命(うんめい)の前にあるのだが
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
池(いけ)に咲(さ)く菖蒲(あやめ)かきつばたの鏡(かゞみ)に映(うつ)る花(はな)二本(ふたもと)ゆかりの色(いろ)の薄(うす)むらさきか濃(こ)むらさきならぬ白元結(しろもとゆひ)きつて放(はな)せし文金(ぶんきん)の高髷(たかまげ)も好(この)みは同(おな)じ丈長(たけなが)の櫻(さくら)もやう淡泊(あつさり)として色(いろ)を
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
上り十間の白扇子(しらあふぎ)に麗(うら)らかなる春の日を翳(かざ)し片身替(かたみがは)りの夕時雨(ゆふしぐれ)に濡(ぬれ)にし昔の相傘(あひがさ)を思ひ出せし者も有るべし土手八町もうち越して五十間(けん)より大門口に來て見れば折しも仲(なか)の町の櫻(さくら)今(いま)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
吉野山(よしのやま)よ。その吉野山(よしのやま)の櫻(さくら)の木(き)の枝(えだ)に、見(み)てゐると、雪(ゆき)がちら/\降(ふ)りかゝつてゐて、これでは、花(はな)がいつ咲(さ)きさうにも思(おも)はれない。今年(ことし)は、花(はな)の咲(さ)くことの晩(おそ)くおもはれる年(とし)よ、といふのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
春(はる)は櫻(さくら)の賑(にぎは)ひよりかけて、なき玉菊(たまぎく)が燈籠(とうろう)の頃(ころ)、續(つゞ)いて、秋(あき)の新仁和賀(しんにはか)には、十分間(じつぷんかん)に車(くるま)の飛(と)ぶこと、此(こ)の通(とほ)りのみにて七十五輌(しちじふごりやう)。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
怠惰屋(なまけや)なぞになられて堪(たま)るものか、學校(がくかう)へ行(ゆ)くのが慊(いや)なら櫻(さくら)の木(き)の皮(かは)を剥(むか)すが可(よ)いか、サア如何(どう)だ此(この)大(おほ)たわけめ!
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
アントン・チエエホフの名戯曲(ぎきよく)「櫻(さくら)の園(その)」の第(だい)三幕(まく)目の舞台(ぶたい)の左奧(おく)手には球突塲(たまつきば)がある心になつてゐる。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
櫻(さくら)の花(はな)に梅(うめ)が香(か)とめて柳(やなぎ)の枝(えだ)にさく姿(すがた)と、聞(き)くばかりも床(ゆか)しきを心(こヽろ)にくき獨(ひと)りずみの噂(うはさ)、たつ名(な)みやび男(を)の心(こヽろ)を動(うご)かして、山(やま)の井(ゐ)のみづに浮岩(あくが)るヽ戀(こひ)もありけり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
吉野山(よしのやま)。櫻(さくら)の枝(えだ)に雪(ゆき)散(ち)りて、花(はな)おそげなる年(とし)にもあるかな
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
お神樂囃子(かぐらばやし)、踊屋臺(をどりやたい)、町々(まち/\)の山車(だし)の飾(かざり)、つくりもの、人形(にんぎやう)、いけ花(ばな)。造花(ざうくわ)は、櫻(さくら)、牡丹(ぼたん)、藤(ふぢ)、つゝじ。いけ花(ばな)は、あやめ、姫百合(ひめゆり)、青楓(あをかへで)。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
春(はる)は櫻(さくら)の賑(にぎわ)ひよりかけて、なき玉菊(たまぎく)が燈籠(とうろう)の頃(ころ)、つゞいて秋(あき)の新仁和賀(しんにわが)には十分(ぷん)間(かん)に車(くるま)の飛(と)ぶ事(こと)此通(このとほ)りのみにて七十五輛(りよう)と數(かぞ)へしも、二の替(かわ)りさへいつしか過(す)ぎて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
歸營(きえい)してから三日目(かめ)の朝(あさ)だつた。中隊教練(ちうたいけうれん)が濟(す)んで一先(ひとま)づ解散(かいさん)すると、分隊長(ぶんたいちやう)の高岡軍曹(たかをかぐんそう)は我々(われわれ)を銃器庫裏(ぢうきこうら)の櫻(さくら)の樹蔭(こかげ)に連(つ)れて行(い)つて、「休(やす)めつ‥‥」と、命令(めいれい)した。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
掃除(さうぢ)の濟(す)んだ冷(ひや)りとした、東向(ひがしむき)の縁側(えんがは)へ出(で)ると、向(むか)う邸(やしき)の櫻(さくら)の葉(は)が玉(たま)を洗(あら)つたやうに見(み)えて、早(は)やほんのりと薄紅(うすべに)がさして居(ゐ)る。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
三月(つき)に一度(ど)、今(いま)の間(ま)に半年目(はんとしめ)、一年(ねん)目(め)、年始(ねんし)の状(ぜう)と暑中見舞(しよちうみまい)の突際(つきあい)になりて、文言(もんごん)うるさしとならば端書(はがき)にても事(こと)は足(た)るべし、あはれ可笑(をか)しと軒(のき)ばの櫻(さくら)くる年(とし)も笑(わら)ふて
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いつたい「櫻(さくら)の園(その)」には第(だい)一幕(まく)の汽(き)車の音(おと)、第(だい)二幕(まく)のギタアの音色、第(だい)四幕(まく)の終(をは)りの櫻(さくら)の木を切り倒(たふ)す斧(をの)の響(ひゞ)きなどと、塲面(ばめん)々々の感(かん)じと相(あひ)俟つて音響(おんけう)の効果(こうくわ)が實(じつ)に巧(たくみ)に用(もち)ゐられてゐるが
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
櫻(さくら)、山吹(やまぶき)、寺内(じない)の蓮(はちす)の華(はな)の頃(ころ)も知(し)らない。そこで蛙(かはづ)を聞(き)き、時鳥(ほとゝぎす)を待(ま)つ度胸(どきよう)もない。暗夜(やみよ)は可恐(おそろし)く、月夜(つきよ)は物(もの)すごい。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
思(おも)へば何(なん)ぞ櫻(さくら)の春(はる)しり顏(がほ)に今歳(ことし)も咲(さ)ける面(つら)にくさよ又(また)しても聞(き)く堀切(ほりき)りの菖蒲(しやうぶ)だより車(くるま)を
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
櫻(さくら)か、海棠(かいだう)かと思(おも)ふ、巨(おほき)なつゝじの、燃立(もえた)つやうなのを植(うゑ)て、十鉢(とはち)ばかりずらりと並(なら)べた——紅(べに)を流(なが)したやうなのは、水打(みづう)つた石疊(いしだたみ)に其(そ)の影(かげ)が映(うつ)つたのである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
當主(たうしゆ)は養子(やうし)にて此娘(これ)こそは家(いへ)につきての一粒(ひとつぶ)ものなれば父母(ちゝはゝ)が歎(なげ)きおもひやるべし、病(やま)ひにふしたるは櫻(さくら)さく春(はる)の頃(ころ)よりと聞(き)くに、それより晝夜(ちうや)瞼(まぶた)を合(あは)する間(ま)もなき心配(しんぱい)に疲(つか)れて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
文政十二年(ぶんせいじふにねん)三月二十一日(さんぐわつにじふいちにち)、早朝(さうてう)より、乾(いぬゐ)の風(かぜ)烈(はげ)しくて、盛(さかり)の櫻(さくら)を吹(ふ)き亂(みだ)し、花片(はなびら)とともに砂石(させき)を飛(と)ばした。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
お茶(ちや)の間(ま)を越(こ)して大奧(おほおく)にも高(たか)く、お約束(やくそく)の聟君(むこぎみ)洋行中(やうかうちう)にて、寐覺(ねざめ)を寫眞(しやしん)に物(もの)がたる總領(そうりやう)の令孃(ひめ)さへ、垣根(かきね)の櫻(さくら)折(を)れかし吾助(ごすけ)、いさヽかの用事(ようじ)にて大層(たいそう)らしく、御褒美(ごはうび)に賜(たま)はる菓子(くわし)の花紅葉(はなもみぢ)
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
櫻(さくら)のわくら葉(ば)のぱら/\と落(お)ちかゝるにさへ、婦(をんな)は聲(こゑ)を發(た)て、男(をとこ)はひやりと肝(きも)を冷(ひや)して居(ゐ)るのであつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
玉(たま)の姫樣(ひめさま)御出生(ごしつしやう)と聞(き)きも敢(あ)へず、散(ち)るや櫻(さくら)の我(わ)が名(な)空(むな)しく成(なり)ぬるを、何處(いづく)に知(し)りてか六三(ろくさ)天地(てんち)に哭(なげ)きて、姫(ひめ)が命(いのち)は我(わ)れ故(ゆゑ)と計(ばかり)、短(みじ)かき契(ちぎ)りに淺(あさ)ましき宿世(しゆくせ)を思(おも)へば、一人(ひとり)殘(のこ)りて我(わ)れ何(なん)とせん
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
女中(ぢよちう)が廊下(らうか)を、ばた/\と膳(ぜん)を運(はこ)んで來(き)た。有難(ありがた)い、一銚子(ひとてうし)。床(とこ)の櫻(さくら)もしつとりと盛(さかり)である。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
二人(ふたり)は櫻(さくら)が岡(をか)に昇(のぼ)りて今(いま)の櫻雲臺(をううんだい)が傍近(そばちか)く來(き)し時(とき)、向(むか)ふより五六輛(りよう)の車(くるま)かけ聲(こゑ)いさましくして來(く)るを、諸人(しよにん)立止(たちど)まりてあれ/\と言(い)ふ、見(み)れば何處(いづこ)の華族樣(くわぞくさま)なるべき、若(わか)き老(お)ひたる扱(こ)き交(ま)ぜに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
店借(たながり)の此(こ)の住居(すまひ)は、船越街道(ふなこしかいだう)より右(みぎ)にだら/\のぼりの處(ところ)にあれば、櫻(さくら)ヶ岡(をか)といふべくや。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
龍華寺(りうげじ)の信如(しんによ)、大黒屋(だいこくや)の美登利(みどり)、二人(ふたり)ながら學校(がくこう)は育英舍(いくえいしや)なり、去(さ)りし四月(ぐわつ)の末(すゑ)つかた、櫻(さくら)は散(ち)りて青葉(あをば)のかげに藤(ふぢ)の花見(はなみ)といふ頃(ころ)、春季(しゆんき)の大運動會(だいうんどうくわい)とて水(みづ)の谷(や)の原(はら)にせし事(こと)ありしが、つな引(ひき)
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
土手(どて)の霞(かすみ)暮(く)れんとして、櫻(さくら)あかるき三(み)めぐりあたり、新(あたら)しき五大力(ごだいりき)の舷(ふなばた)の高(たか)くすぐれたるに、衣紋(えもん)も帶(おび)も差向(さしむか)へる、二人(ふたり)の婦(をんな)ありけり、一人(ひとり)は高尚(かうしやう)に圓髷(まげ)ゆひ、一人(ひとり)は島田(しまだ)艷(つやゝか)也(なり)。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
實(じつ)は、炎(ほのほ)に飽(あ)いて、炎(ほのほ)に背(そむ)いて、此(こ)の火(ひ)たとひ家(いへ)を焚(や)くとも、せめて清(すゞ)しき月(つき)出(い)でよ、と祈(いの)れるかひに、天(てん)の水晶宮(すゐしやうぐう)の棟(むね)は櫻(さくら)の葉(は)の中(なか)に顯(あら)はれて、朱(しゆ)を塗(ぬ)つたやうな二階(にかい)の障子(しやうじ)が
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
櫻(さくら)の枝(えだ)にも、電線(でんせん)にも、一寸(ちよつと)留(と)まるのもなければ、横(よこ)にそれようとするのもない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
火(ひ)の雲(くも)をかくした櫻(さくら)の樹立(こだち)も、黒塀(くろべい)も暗(くら)く成(な)つた。舊暦(きうれき)七月(ぐわつ)二十一日(にち)ばかりの宵闇(よひやみ)に、覺束(おぼつか)ない提灯(ちやうちん)の灯(ひ)一(ひと)つ二(ふた)つ、婦(をんな)たちは落人(おちうど)が夜鷹蕎麥(よたかそば)の荷(に)に踞(かゞ)んだ形(かたち)で、溝端(どぶばた)で、のどに支(つか)へる茶漬(ちやづけ)を流(なが)した。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
櫻(さくら)の街樹(なみき)に搦(から)んだなり、暗夜(くらがり)の梢(こずゑ)に消(き)えた。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)