前後ぜんご)” の例文
ひるすこしまえにはもう二人ふたりにいさんが前後ぜんごして威勢いせいよくかえってた。一人ひとりにいさんのほう袖子そでこているのをるとだまっていなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
数年来鬱積うっせき沈滞せる者頃日けいじつようやく出口を得たる事とて、前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ、われながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
二人ふたりは、はゝ父母ふぼで、同家ひとついへ二階住居にかいずまひで、むつまじくくらしたが、民也たみやのものごころおぼえてのちはゝさきだつて、前後ぜんごしてくなられた……
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其頃そのころ東京とうきやういへたゝむとき、ふところにしてかねは、ほとんど使つかたしてゐた。かれ福岡ふくをか生活せいくわつ前後ぜんごねんつうじて、中々なか/\苦鬪くとうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
人知らぬ思ひに心をやぶりて、あはれ一山風ひとやまかぜに跡もなき東岱とうたい前後ぜんごの烟と立ち昇るうらわか眉目好みめよ處女子むすめは、年毎としごとに幾何ありとするや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
いままで勇敢ゆうかんたたかっていた戦友せんゆうが、ばたり、ばたりと前後ぜんごにたおれていきました。それにつらかったのは、たまのつきかかったことでした。
しらかばの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
寤寐ごびにもはなれず起居ききよにもわすれぬ後來のち/\半身はんしん二世にせつま新田につたむすめのおたかなり、芳之助よしのすけはそれとるより何思なにおもひけん前後ぜんご無差別むしやべつ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
じつ前後ぜんご形勢けいせいと、かの七せきふね有樣ありさまとでると、いま海蛇丸かいだまるあきらか何事なにごとをかわが軍艦ぐんかんむかつて信號しんがうこゝろみるつもりだらう。けれどわたくしいぶかつた。
ると、水辺すいえんの、とある巨大おおきいわうえには六十前後ぜんごゆる、一人ひとり老人ろうじんが、たたずんで私達わたくしたちるのをってりました。
いふに幸八は委細ゐさい承知しようちなしシテ又親方何處迄どこまで御出ときくに藤八はさればサ先はしかと知れぬが大概おほかた箱根前後ぜんごぐらゐと思へばよしと云を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
越後の地勢は、西北は大海にたいして陽気也。東南は高山かうざんつらなりて陰気也。ゆゑに西北の郡村ぐんそんは雪あさく、東南の諸邑しよいふは雪ふかし。是阴阳いんやう前後ぜんごしたるにたり。
この分では今に酔払って前後ぜんごがわからなくなるのであろう。私は今のうちに、先刻せんこくの話を聞いて置こうと考えた。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
秋「なに有難く心得て、言う事が前後ぜんごになるというのは可笑おかしい一体何ういう訳で手前は当家のばゞあ斑猫はんみょうってくれろと頼んだか、それを云えというんだ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こうわれたので、王子おうじあまりのかなしさに、逆上とりのぼせて、前後ぜんごかんがえもなく、とううえからびました。
貝塚發掘かひづかはつくつために、種々しゆ/″\遭難そうなんかさねるけれど、此時このときごと惡難あくなんおそらく前後ぜんごからうである。
するといっぽうの急坂きゅうはんからも、血路けつろをひらいた卜斎ぼくさいが、血刀ちがたなを引っさげてこの磯へ目ざしてきたので、ふたりは前後ぜんごになって磯の岩石がんせきから岩石を飛びつたい、やがて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兩者りようしやともに震原しんげんから同時どうじ出發しゆつぱつし、おなみちとほつてるのであるけれども、初期微動しよきびどう速度そくどだいに、主要動しゆようどうはそれがしようなるために前後ぜんご到着とうちやくすることになるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
路地の入口の肴屋さかなやはもう表の戸を閉めているので、ちょっと前後ぜんごを見廻し、暗い路地へ進入すすみいろうとすると、その途端にばったり行き会ったのは間貸しの家の老婆である。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ふところねむつた與吉よきちさわがすまいとしてはあししびれるので幾度いくど身體からだをもぢ/\うごかした。やうや風呂ふろいたときはおしな待遠まちどほであつたので前後ぜんごかんがへもなくいそいで衣物きものをとつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
石をり截るには木の小枝抔せうしなどを採り、其の一端へかたすなを付けて之を握り墨をる時の如くに手を前後ぜんごうごかし、一面より摩り初めて凹みのふかさ石の厚さのなかばに達したるころ
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
不良ふりやう少女せうぢよ沒落ぼつらく」といふ標題みだしもとに、私達わたしたち前後ぜんごしての結婚けつこんを×あたりに落書らくがきされてから、みなもうまるねんすごしました。Kさんがまづ母となり、あなたも間もなく母となりました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
前年ぜんねんすゑわたしたづねて来たのが、神田かんだ南乗物町みなみのりものちやう吉岡書籍店よしをかしよじやくてん主人しゆじん理学士りがくし吉岡哲太郎よしをかてつたらうくんです、わたし文壇ぶんだんに立つにいては、前後ぜんご三人さんにん紹介者せうかいしやわづらはしたので、の第一が吉岡君よしをかくん
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
発見者はっけんしゃは、老人ろうじんうちのすぐとなりにんでいて、去年きょねんあたり開業かいぎょうした島本守しまもとまもるという医学士いがくしだつたが、島本医師しまもといしは、警察けいさつ事件じけん通報つうほうすると同時どうじに、大要たいようつぎのごとく、その前後ぜんご事情じじょうべた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
腹立はらだたしかほをしたものや、ベソをいたものや、こはさうにおど/\したものなぞが、前後ぜんごしてぞろ/\とふねからをかあがつた。はゝかれた嬰兒あかごこゑは、ことあはれなひゞき川風かはかぜつたへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
余は「罪と罰」第一くわん通讀つうどくすること前後ぜんごくわいせしが、その通讀つうどくさいきはめて面白おもしろしとおもひたるは、殺人罪さつじんざい原因げんいんのいかにも綿密めんみつ精微せいび畫出くわくしゆつせられたることなり、もしある兇漢けふかんありてある貞婦ていふころ
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
此時このとき堂上だうじやうそう一齊いつせい合掌がつしやうして、夢窓國師むさうこくし遺誡ゐかいじゆはじめた。おもひ/\にせきつた宗助そうすけ前後ぜんごにゐる居士こじみな同音どうおん調子てうしあはせた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御輿みこしとお前後ぜんごに、いろいろなかざものとおりました。そのうちに、この土地とちわか芸妓連げいぎれんかれて、山車だしとおりました。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
一日いちにちすみやかに日本につぽんかへりたいのは山々やま/\だが、前後ぜんご事情じじやうさつすると、いま此人このひとむかつて、其樣そん我儘わがまゝはれぬのである。
云るゝや只今たゞいまいとまつかはしたりと申せしくちの下より人代ひとかはりなき中はいださずとは前後ぜんごそろはぬ申でう殊更ことさら夫の難儀なんぎある人代ひとかはりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女房にようばうは、幾度いくど戸口とぐちつた。路地ろぢを、行願寺ぎやうぐわんじもんそとまでもて、とほり前後ぜんごみまはした。人通ひとどほりも、もうなくなる。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此年このとし三のとりまでりてなかにちはつぶれしかど前後ぜんご上天氣じやうてんき大鳥神社おほとりじんじやにぎわひすさまじく、此處こゝかこつけに檢査塲けんさばもんよりみだ若人達わかうどたちいきほひとては
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これを見これをきゝて、雪のとほからざるをしる。年の寒暖かんだんにつれて時日じじつはさだかならねど、たけまはり・どうなりは秋の彼岸ひがん前後ぜんごにあり、毎年まいねんかくのごとし。
え、まだわたくし臨終りんじゅう前後ぜんご事情じじょうがはっきりしていないとっしゃるか……そういえばホンにそうでございます。
その少女のはなしで、前後ぜんご事情じじょう、うらぎり者の毒水どくすい詭計きけい咲耶子さくやこのはたらいたことまたそのためにらわれとなったことなど、すべて明らかに知ることができた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとひ多少たしようつよ地震ぢしんおこすことがあつても、それは中流以下ちゆうりゆういかのものであつて、最大級さいだいきゆう程度ていどはるかにくだつたものである。まへ噴火ふんか前後ぜんご地盤ぢばん變動へんどう徐々じよ/\おこることをべた。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
成就せしめんとする大檀那おおだんなは天下一人もなく数年来鬱積うっせき沈滞せるもの頃日けいじつようやく出口を得たることとて前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ我ながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
徳利形とくりがたのは、水谷氏みづたにし同形どうけいを三望生ばうせい前後ぜんごしてる。それと同形式どうけいしきであるから、うたがことはないが、の二は、如何どうあやしい。土方どかた説明せつめい點頭てんとうられぬのであつた。
白晝ひる横頬よこほゝあつほどけたが周圍あたり依然やつぱりつめたかつた。ほりあさみづにはれもつめたげに凝然ぢつしづめたかへるだまつてかれた。とほ田圃たんぼかれ前後ぜんごたゞ一人ひとり行人かうじんであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此方こつちの人が向うへ……(前後ぜんご見返みかへり)え成程なるほど近江屋あふみやさん貴方あなたが向うに立つてゐますな、成程なるほどてゐますこと。近「てゐるはずよ、かゞみうつるんだから、並んで見えるだらう。梅「わたし何方どれで。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
昨夕ゆうべまでられないのが心配しんぱいになつたが、前後ぜんご不覺ふかくながところのあたりにると、はうなにかの異状いじやうではないかとかんがした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それを学者がくしゃがしらべて、およそ二万年まんねんまえ人間にんげんほねで、まだわかい二十さい前後ぜんごおんならしいが、たぶんなみにただよって、きし死体したいがついたものだろう。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女婢こしもとしりへつゞいて、こはいかに、掃帚はうきまたがり、ハツオウとつて前後ぜんごして冉々ぜん/\としてくものぼつて姿すがたかくす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひとはなしひと猶更なほさらなからんをなにつとか馬鹿ばからしさよと他目よそめにはゆるゐものからまだ立去たちさりもせず前後ぜんごくばるは人待ひとまこゝろえぬなるべし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そも/\越後国は北方の陰地いんちなれども一国いつこくの内陰陽いんやう前後ぜんごす。いかんとなれば天は西北にたらず、ゆゑに西北をいんとし、地は東南にたらず、ゆゑに東南をやうとす。
また道中どうちゅうどこへまいりましてもれい甲高かんだか霊鳥れいちよう鳴声なきごえ前後ぜんご左右さゆう樹間このまからあめるようにきこえました。
いま前後ぜんご事情じじやうよりかんがへ、またきみ人物じんぶつしんずるので、し、きみ確固くわくこたる約束やくそくがあるならば、今日こんにちおいて、この大秘密だいひみつを、きみ明言めいげんしてことの、むし得策とくさくなるをしんずるのです。
ば知らぬ者なりと申せしが其後に至り三次は知己ちかづきの趣きに申立る等前後ぜんご不都合ふつがふなり且此程より追々おひ/\取調とりしらべる通り八ヶ年以前に弟十兵衞をしばふだつじに於て殺害せつがいに及びめひの文を賣たる金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼等かれらあひだにはういふときに、さうしてふゆ本當ほんたうにまだ彼等かれらうへいてせないうちあひ前後ぜんごして何處どこ村落むらにも「まち」がるのである。れは村落毎むらごとてられてあるやしろまつりのことである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
五人の屈強くっきょうなるものが、その前後ぜんごにつきしたがっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで、おかあさんをなかにして、四にん子供こどもらが左右さゆう前後ぜんごに、になってやすみました。みんなは、いずれも、おかあさんのほうかおけてやすんだのです。
お母さまは太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)