眞黒まつくろ)” の例文
新字:真黒
キヤツとく、と五六しやく眞黒まつくろをどあがつて、障子しやうじ小間こまからドンとた、もつとうたくはへたまゝで、ののち二日ふつかばかりかげせぬ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大和やまとくにのある山寺やまでら賓頭廬樣びんずるさままへいてあるいしはち眞黒まつくろすゝけたのを、もったいらしくにしきふくろれてひめのもとにさししました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
かく此決心このけつしんさだまるや、かれさら五年ごねんあひだ眞黒まつくろになつてはたらきそして、つひに一の小學校せうがくかう創立さうりつして、これを大島仁藏おほしまじんざう一子いつし大島伸一おほしましんいちけん
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
六千四百とん巨船きよせんもすでになかばかたむき、二本にほん煙筒えんとうから眞黒まつくろ吐出はきだけぶりは、あたか斷末魔だんまつま苦悶くもんうつたへてるかのやうである。
それからまだその上に、それは/\いゝお髮なので——烏の濡羽ぬればといふやうな眞黒まつくろな色で、それがまた大變よくおうつりになるやうに揚げてゐらつしやいました。
昨夜ゆうべは空が眞黒まつくろであつたが、今朝六時半に起きた時も亦冬とは云ひながらあまり暗かつた。それでも日の出る頃には曇つた空が段々と明るくなる。そこへ遠くで汽笛がなる。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
小川をがはあぶらのやうな水面すゐめんおほきく波立なみだつて、眞黒まつくろ人影ひとかげこはれた蝙蝠傘かうもりがさのやうにうごいてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
俺が行つたら幸子は、眞黒まつくろな蚊帳のなかのきたないおかみさんの大きな蒲團のなかにころがつて、一生懸命泣いてゐるんだ。そしておかみさんはなにか仕事をしてゐるんだらう。
(旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
眞黒まつくろげたかほなかに、だけひからして、見違みちがへるやう蠻色ばんしよくびたかれは、比較的ひかくてきとほ座敷ざしき這入はいつたなりよこになつて、あにかへりをけてゐたが、宗助そうすけかほるやいな
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
盜人ぬすびとはら突退つきのけつゝ互に組付英々えい/\もみ合聲に驚き家内の者ども馳來はせきたぼうなはよとよばはり/\漸々やう/\高手たかて小手こていましめたり然ども面體は眞黒まつくろすみぬりたるゆゑ何者とも見分らず此さわぎを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
するとそのかへるさ、わたしみちいそいでをりますと、はなさきにおほきな眞黒まつくろやまのやうなものがふいと浮上うきあがりました。がくらくらツとしてからだれました。まつたく突然だしぬけ出來事できごとです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
底の土は眞黒まつくろゆえ
「はい、」とやなぎしたで、洗髮あらひがみのおしなは、手足てあし眞黒まつくろ配達夫はいたつふが、突當つきあたるやうにまへ踏留ふみとまつて棒立ぼうだちになつてわめいたのに、おどろいたかほをした。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その翌日よくじつから、わたくしあさ東雲しのゝめ薄暗うすくら時分じぶんから、ゆふべ星影ほしかげうみつるころまで、眞黒まつくろになつて自動鐵檻車じどうてつおりのくるま製造せいぞう從事じゆうじした。
眞黒まつくろつや洋犬かめが一ぴきあごけてねそべつて、みゝれたまゝまたをすらうごかさず、廣庭ひろには仲間なかまくははつてた。そして母屋おもや入口いりくち軒陰のきかげからつばめたりはひつたりしてる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
聞て扨々然樣さやうなるか如何さまかれ小鬢こびんに半分眞黒まつくろに入墨をしてありしがとん不屆ふとゞきなる奴先生が御出下されしゆゑ早速さつそくらちあきしなり彼奴先年の舊惡きうあくを云れてはたまらぬ故夕方までには屹度きつと離縁状を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
どやどやどや、がら/\と……大袈裟おほげさではない、廣小路ひろこうぢなんぞでは一時いつとき十四五臺じふしごだい取卷とりまいた。三橋みはし鴈鍋がんなべ達磨汁粉だるまじるこくさき眞黒まつくろあまる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
如何いかなるすきをや見出みいだしけん、彼方かなたむかつて韋駄天走ゐだてんばしり、獅子しゝ一群いちぐん眞黒まつくろになつてそのあと追掛おひかけた。
天地間てんちかん最早もはや小山某こやまなにがしといふかきの書生しよせいなくなる! とぼくおもつたときおもはずあしとゞめた。あたまうへ眞黒まつくろしげつたえだからみづがぼた/\ちる、墓穴はかあなのやうな溪底たにそこではみづげきしてながれるおとすごひゞく。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
天井てんじやうくづれて、そこ眞黒まつくろいたには、ちら/\とがからんで、ぱち/\とすゝく、ほのほめる、と一目ひとめた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したとほりがかりに、かげしてもひかりらさず、えだおにのやうなうでばした、眞黒まつくろこずゑあふいだ。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「でも、なんだかくらなかで、ひら/\眞黒まつくろなのにまじつて、だか、むらさきだか、んでさうで、面白おもしろいもの、」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眞黒まつくろだつてやぶれてたつて、煤拂すゝはらひ大掃除おほさうぢにはかまふものか、これもみぐるしからぬもの、塵塚ちりづかちりである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あらず、あをしろ東雲しのゝめいろくれなゐえて、眞黒まつくろつばさたゝかふ、とりのとさかにたのであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
奇觀きくわん妙觀めうくわんいつつべし。で、激流げきりう打込うちこんだ眞黒まつくろくひを、したから突支棒つツかひぼうにした高樓たかどのなぞは、股引もゝひきさかさまに、輕業かるわざ大屋臺おほやたいを、チヨンとかしらせたやうで面白おもしろい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二階にかい階子壇はしごだん一番いつちうへ一壇目いちだんめ……とおもところへ、欄間らんまはしら眞黒まつくろに、くツきりとそらにして、そで欄干摺てすりずれに……ときは、いお納戸なんどと、うすちやと、左右さいう兩方りやうはう
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
影法師かげぼふしが、鐵燈籠かなどうろうかすかあかりで、別嬪べつぴんさんの、しどけない姿すがたうへへ、眞黒まつくろつて、おしかぶさつてえました。そんなところだれ他人たにんせるものでございます。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あきれたやうにおほきなくちけると、まんじ頬張ほゝばつたらしい、上顎うはあご一杯いつぱい眞黒まつくろえたさうです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
氷川神社ひかはじんじや石段いしだんしたにてをがみ、此宮このみや植物園しよくぶつゑん竹藪たけやぶとのあひださかのぼりて原町はらまちかゝれり。みち彼方あなた名代なだい護謨ごむ製造所せいざうしよのあるあり。職人しよくにん眞黒まつくろになつてはたらく。護謨ごむにほひおもてつ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
すでに、大地震おほぢしん當夜たうやから、野宿のじゆくゆめのまださめぬ、四日よつか早朝さうてう眞黒まつくろかほをして見舞みまひた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時々とき/″\うでのやうな眞黒まつくろけむりが、おほいなるこぶしをかためて、ちひしぐごとくむく/\つ。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あさ一番いちばんなんぞは、汽船きせん屋根やねまで、眞黒まつくろひとまつて、川筋かはすぢ次第しだいくだると、した大富橋おほとみばし新高橋しんたかばしには、欄干外らんかんそとから、あしちうに、みづうへへぶらさがつてつてゐて、それ
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むかしは加州山中かしうさんちう温泉宿をんせんやどに、住居すまひ大圍爐裡おほゐろりに、はひなかから、かさのかこみ一尺いつしやくばかりの眞黒まつくろきのこ三本さんぼんづゝ、つゞけて五日いつかえた、とふのが、手近てぢか三州奇談さんしうきだんる。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おもひもかけず、屋根やねはしられるやうなしろかぜるやうにきつけますと、ひかかゞや蒼空あをぞらに、眞黒まつくろくも一掴ひとつかみわしおとしますやうな、峰一杯みねいつぱいつばさひらいて、やまつゝんで
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あまつさ辿たどむか大良だいらたけ峰裏みねうらは——此方こちらひとりむしほどのくもなきにかゝはらず、巨濤おほなみごとくもみね眞黒まつくろつて、怨靈をんりやう鍬形くはがた差覗さしのぞいてはえるやうな電光いなびかりやまくうつた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くもつたそらほしもなし、眞黒まつくろ二階にかいうら欞子窓れんじまどで、——こゝにいまるやうに——唯吉たゞきちが、ぐつたりして溜息ためいきいて、大川おほかはみづさへぎる……うごかない裏家うらや背戸せどの、一本柳ひともとやなぎ
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ときたびに、色彩いろきざんでわすれないのは、武庫川むこがはぎた生瀬なませ停車場ていしやぢやうちかく、むかあがりのこみちに、じり/\としんにほひてて咲揃さきそろつた眞晝まひる芍藥しやくやくと、横雲よこぐも眞黒まつくろに、みねさつくらかつた
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ときれたやうな眞黒まつくろ暗夜やみよだつたから、まつもすら/\と透通すきとほるやうにあをえたが、いまは、あたかくもつた一面いちめん銀泥ぎんでいゑがいた墨繪すみゑのやうだと、ぢつながら、敷石しきいしんだが
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
はぜ見着みつけたが、はうとおもふと、いつもは小清潔こぎれいみせなんだのに、硝子蓋がらすぶたなかは、とるとギヨツとした。眞黒まつくろられたはぜの、けてあたまぶやうな、一杯いつぱい跳上はねあが飛𢌞とびまははへであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其處そこらのごみ眞黒まつくろに、とつぷりとれると、先刻さつき少女こをんなが、ねずみのやうに、またて、「そつと/\、」と、なんにもはさずそでくので、蒋生しやうせいあしかず、土間どま大竈おほへツつひまへとほつて
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
して、提灯ちやうちんあぎとに、すさまじいかげうごめくのは、やら、なにやら、べた/\とあかあをつたなかに、眞黒まつくろにのたくらしたのはおほきな蜈蚣むかでで、これは、みやのおつかはしめだとふのをかねいた。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
民也たみや眞黒まつくろ天井てんじやうを。……
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)