一番いちばん)” の例文
たちまち、うしほ泡立あわだち、なみ逆卷さかまいて、其邊そのへん海嘯つなみせたやう光景くわうけいわたくし一生懸命いつせうけんめい鐵鎖てつさにぎめて、此處こゝ千番せんばん一番いちばんんだ。
その二尺にしやくほどした勾配こうばい一番いちばんきふところえてゐる枯草かれくさが、めうけて、赤土あかつちはだ生々なま/\しく露出ろしゆつした樣子やうすに、宗助そうすけ一寸ちよつとおどろかされた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
丁度ちやうど、おとなりで美濃みのくにはうから木曽路きそぢはひらうとする旅人たびびとのためには、一番いちばん最初さいしよ入口いりぐちのステエシヨンにあたつてたのが馬籠驛まごめえきです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「わたくしは一番いちばん半兵衛はんべえ後家ごけ、しのと申すものでございます。実はわたくしのせがれ新之丞しんのじょうと申すものが大病なのでございますが……」
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それゆゑいままでのところでは、日本につぽん一番いちばんふるいのは、新石器時代しんせつきじだいのものでありまして、それから金屬器きんぞくき時代じだいにつゞいてゐるのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
船頭せんどうさん、渡場わたしば一番いちばん川幅かははゞひろいのは何處どこだい。此處こゝだね。何町位なんちやうぐらゐあるねといふ。つばかわきてはず、煙管きせるしたがふるへる。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おぢさん「は〻あ、可憐かあいいものだなあ。動物園どうぶつゑんなかでもよるなんかくま一番いちばんよくねむるつてね、嚊声いびきごゑ不忍池しのばずのいけまできこへるつてさ」
第一だいいちに、青々あを/\した、といふものは、植物しよくぶつにとつては一番いちばん大切たいせつで、ちょうどわれ/\の心臟しんぞうちようのような、生活上せいかつじよう必要ひつよう器官きかんです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
みかどは、てん一番いちばんちかやま駿河するがくににあるときこして、使つかひの役人やくにんをそのやまのぼらせて、不死ふしくすりかしめられました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
「おや! 一番いちばんおおきいのがまだれないでるよ。まあ一体いったいいつまでたせるんだろうねえ、きしちまった。」
けれども大昔おほむかしには、うたとづくべきものがおほかつたので、そのうち、一番いちばんあと出來できて、一番いちばん完全かんぜんになつたものが、うたといふもつぱらにしたのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
このいなかの旅館りょかんは、いつもひっそりとしずかで、一番いちばんきゃくのたてこむ夏の間でさえ、たいしてわったことがあるわけでなく、おだやかな毎日がくりかえされていた。
てるかな。持てる。けれども一番いちばん波の強いところだ。おそらく少し小さいぞ。小さい。波が昆布こんぶだ、して行く。もう一つ持って来よう。こいつはこけでぬるぬるしている。これで二つだ。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
會毎くわいごと三人さんにん相談さうだんしてかならつき一度いちど贈品ぞうひん大島小學校おほしませうがくかうおくる、それがかならずしも立派りつぱものばかりではない、筆墨ひつぼくるゐ書籍しよせき圖畫づぐわるゐなどで、オルガン一臺いちだい寄送きそうしたのが一番いちばん金目かねめものであつた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何故なぜでもしない、れが無理むりやりにつて引上ひきあげてもれは此處こゝうしてるのがいゝのだ、傘屋かさや油引あぶらひきが一番いちばんいのだ、うで盲目縞めくらじま筒袖つゝそで三尺さんじやく脊負しよつてたのだらうから
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
人はいま一番いちばん高き木のうへに鴉鳴く見て橋わたりたり
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
城乗しろの一番いちばん
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
坂井さかゐさんやうに、御金おかねがあつてあそんでゐるのが一番いちばんいわね」とつた御米およね言葉ことばいて、小六ころくまた自分じぶん部屋へやかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたくしの夫、一番いちばん半兵衛はんべえ佐佐木家ささきけ浪人ろうにんでございます。しかしまだ一度も敵の前にうしろを見せたことはございません。
おしの (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さて、南朝鮮みなみちようせんには、あちらこちらに多數たすう古墳こふんがありますが、なかでも一番いちばんたくさんのこつてゐるのは、もと新羅しらぎみやこ慶州けいしゆうです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
東京驛とうきやうえき一番いちばんてば、無理むりにも右樣みぎやう計略けいりやくおこなはれないこともなささうだが、籠城ろうじやう難儀なんぎおよんだところで、夜討ようち眞似まねても、あさがけの出來できない愚將ぐしやうである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たがひ身體しんたい丈夫じようぶでなければ何事なにごと出來できませんから、あたらしい空氣くうき呼吸こきゆうと、十分じゆうぶん日光浴につこうよくと、運動うんどうとによつて食物しよくもつをうまくべることが一番いちばん大切たいせつです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
『ど、ど、如何どうしたんだらう、こ、この武村たけむらをおかしなすつたな、『どれもう一番いちばん——。』とたゝかつたが、またまけた。
五人ごにんのうちであまりものいりもしなかつたかはりに、智慧ちえのないざまをして、一番いちばんむごたのがこのひとです。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
そのなかでも、とうさんにれられて震災前しんさいまえ丸善まるぜんったときってもらって人形にんぎょうは、一番いちばんながくあった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それは実際じっさいずいぶんたけたかくて、その一番いちばんたかいのなどは、した子供こどもがそっくりかくれること出来できるくらいでした。人気ひとけがまるでくて、まったふかはやしなかみたいです。
一番いちばんはじめのうたは、むしろいて、そこにすわりこんで、ぢっとしてゐるこゝろくつろぎをよろこんでゐるのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
あれ千番せんばん一番いちばん
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
すこ時間じかんおくれたので、寄席よせ一杯いつぱいであつた。二人ふたり坐蒲團ざぶとん餘地よちもない一番いちばんうしろはうに、立膝たてひざをするやうましてもらつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
また骨角器以外こつかくきいがい貝殼かひがらつくつた器物きぶつもないではありませんが、それはおも裝飾そうしよくもちひられたもので、なかでも一番いちばんおほいものはかひ腕輪うでわであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
何故なぜだつて、なんなの、此間このあひだねえ、先生せんせい修身しうしんのお談話はなしをしてね、ひとなんだから、なか一番いちばんえらいものだつて、さういつたの。母様おつかさんちがつてるわねえ。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とうさんはそこいらをさがまはりまして、についた水晶すゐしやうなかでも一番いちばんひかつたのを土産みやげつてかへりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この温帶林おんたいりんにはどんな樹木じゆもく生育せいいくしてゐるかといふと、一番いちばんいちじるしいのがぶなのです。本帶ほんたい一名いちめい椈帶ぶなたい』といふのもぶなが、その代表だいひよう樹種じゆしゆであるからです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
兵曹へいそう、どうぢや一番いちばん腕押うでおしは——。』とてつやううで突出つきだした。虎髯大尉こぜんたいゐ腕押うでおしたら有名いうめいなものである。けれど武村兵曹たけむらへいそうはちつともらない、自分じぶんだい力自慢ちからじまん
片歌かたうたは、三句さんくから出來できてゐて、一番いちばんめの五音ごおん二番にばんめの七音しちおん第三だいさんがまた七音しちおん、といふふうになつてゐるのが普通ふつうで、その音數おんすうには、多少たしよう變化へんかがあります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
と、一番いちばんちいさい突然とつぜん大声おおごえしました。そして
くせ、もし/\、とつた、……こゑくと、一番いちばんあとの按摩あんま呼留よびとめたことが、うしてかぐにれた……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
といふ伯父おぢさんのこゑきつけました。あのお前達まへたち伯父おぢさんが、とうさんには一番いちばん年長うへにいさんにあたひとです。とうさんは問屋とんやの三らうさんをかせたばつとして、にはたせられました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
もしまたふねあぶないとしんじたらば、らぬことでござるぞ。なんでもあやふやだと安心あんしんがならぬ、ひとたのむより神佛しんぶつしんずるより、自分じぶん信仰しんかうなさるが一番いちばんぢや。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まめもち草餅くさもち砂糖餅さたうもち昆布こんぶ切込きりこみたるなど色々いろ/\もちき、一番いちばんあとのうすをトンととき千貫せんぐわん萬貫まんぐわん萬々貫まん/\ぐわん、とどつ喝采はやして、かくいちさかゆるなりけり。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ですから、同列車どうれつしや乘客じようかくうちで、停車場ステエシヨンはなれましたのは、多分たぶんわたし一番いちばんあとだつたらうとおもひます。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まくらいたのは黄昏たそがれころこれ逢魔あふまとき雀色時すゞめいろどきなどといふ一日いちにちうち人間にんげん影法師かげぼふし一番いちばんぼんやりとするときで、五時ごじから六時ろくじあひだおこつたこと、わたしが十七のあきのはじめ。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
京師けいし張廣號ちやうくわうがうは、人參にんじん大問屋おほどんやで、きこえた老鋪しにせ銀座ぎんざ一番いちばん、とふづツしりしたものである。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あさ一番いちばんなんぞは、汽船きせん屋根やねまで、眞黒まつくろひとまつて、川筋かはすぢ次第しだいくだると、した大富橋おほとみばし新高橋しんたかばしには、欄干外らんかんそとから、あしちうに、みづうへへぶらさがつてつてゐて、それ
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「えゝ……まけてけ、一番いちばん。」と、さらからねぢるやうに引摘ひつつかんで、べつ燒團子やきだんご五串いつくしへた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたし薪雜棒まきざつぽうつてて、亞鉛トタン一番いちばんしのぎけづつてたゝかはうかな。」と喧嘩けんくわぎてのぼうちぎりで擬勢ぎせいしめすと、「まあ、かつたわね、ありがたい。」とうれしいより、ありがたいのが
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宴席えんせきどなりの空部屋あきべやころむと、ぐたりとたが、したゝか反吐へどをついて、お冷水ひや五杯ごはいんだとやらで、ウイーと受持うけもちの、一番いちばんさんへとこりにて、おや、旦那だんなつてころげてるね
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蒸暑むしあついのがつゞくと、蟋蟀こほろぎこゑ待遠まちどほい。……此邊このあたりでは、毎年まいねん春秋社しゆんじうしや眞向まむかうの石垣いしがき一番いちばんはやい。震災前しんさいぜんまでは、たいがい土用どよう三日みつか四日よつかめのよひからきはじめたのが、年々ねん/\、やゝおくれる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何事なにごとらず改革奉行かいかくぶぎやう命令めいれいそむさふらふまじく、いづれも杢殿もくどの手足てあしとなりて、相働あひはたらき、忠勤ちうきんはげ可申候まをすべくさふらふと、澁々しぶ/\血判けつぱんして差上さしあぐれば、御年役おんとしやく一應いちおう御覽ごらんうへ幸豐公ゆきとよぎみまゐらせたまへば、讀過どくくわ一番いちばん
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
女房かみさん料簡れうけんぢやあ、廓外そとて——それこそ新橋しんばしなぞは、近來きんらい吉原よしはらおの大勢おほぜいつてるから——彼處等あすこらつて待合まちあひでもすれば、一番いちばん間違まちがひいとおもつたのだが、此議これまたそのむすめ大反對だいはんたい
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)