あま)” の例文
新字:
浴室よくしつまどからもこれえて、うつすりと湯氣ゆげすかすと、ほかの土地とちにはあまりあるまい、海市かいしたいする、山谷さんこく蜃氣樓しんきろうつた風情ふぜいがある。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかこれきたはなしとか、交際かうさいとかとふものとはまたべつで、あま適切てきせつれいではりませんが、たとへば書物しよもつはノタで、談話だんわ唱歌しやうかでせう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたしことへば御自分ごじぶんものにして言葉ことばてさせてくださる御思召おぼしめし有難ありがたうれしいおそろしい、あまりの勿躰もつたいなさになみだがこぼれる
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
天涯てんがい渺茫べうぼうたる絶海ぜつかい魚族ぎよぞくは、漁夫ぎよふかげなどはこともないから、れるとかれぬとかの心配しんぱいらぬ、けれどあまりに巨大きよだいなるは
宗助そうすけこの可憐かれん自白じはくなぐさめていか分別ふんべつあまつて當惑たうわくしてゐたうちにも、御米およねたいしてはなはどくだといふおもひ非常ひじやうたかまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうして結局けつきよく節約額せつやくがくが一おく二千五百萬圓まんゑんあまりであつて特別會計とくべつくわいけいの一おく三千四百萬圓まんゑん節約額せつやくがく合算がつさんすると二おく六千萬圓まんゑんとなる。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
しかそのもつとおそれをいだくべき金錢きんせん問題もんだいそのこゝろ抑制よくせいするには勘次かんじあまりにあわてゝかつおどろいてた。醫者いしや鬼怒川きぬがはえてひがしる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大地震後だいぢしんご餘震よしんあまりに恐怖きようふするため、安全あんぜん家屋かおく見捨みすてゝ、幾日いくにちも/\野宿のじゆくすることは、震災地しんさいちける一般いつぱん状態じようたいである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
能々よく/\見るに岡山におはせし時數年我が家に使ひたる若黨の忠八にて有ければあまりの事に言葉も出ず女の細き心にてかゝいやし姿すがたに成しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかしその電燈でんとうひかりらされた夕刊ゆふかん紙面しめん見渡みわたしても、やはりわたくし憂鬱いううつなぐさむべく世間せけんあまりに平凡へいぼん出來事できごとばかりでつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
下界げかいものとしてはあま靈妙いみじい! あゝ、あのひめ女共をんなども立交たちまじらうてゐるのは、ゆきはづかしい白鳩しらはとからすむれりたやう。
沈痛ちんつう悲慘ひさん幽悽ゆうせいなる心理的小説しんりてきせうせつつみばつ」は奇怪きくわいなる一大巨人いちだいきよじん露西亞ロシア)の暗黒あんこくなる社界しやくわい側面そくめん暴露ばくろしてあますところなしとふべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
畢竟ひつきやうにんいろで、けつして一りつにはかぬものでしよく本義ほんぎとか理想りそうとかをいてところ實際問題じつさいもんだいとしてはあまやくたぬ。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
たゞういふはなしときは、あま遺物ゐぶつないときで、土器どきかほでも貝層かひさうからやうものなら、呼吸こきうをするのさへわすれるくらゐ
あまかはるのでなになんだかわけわからなくなつてしまつたわ!一分間ぷんかんおなじでないのですもの!けど、いまもとおほきさよ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
アメリカなどからるようなかたち非常ひじようことなるものや大型おほがたのものは日本につぽんではあま發見はつけんされませんが、たいてい一寸前後いつすんぜんごおほきさのものが普通ふつうであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それに君如何どうだ、細君は殆んど僕等の喰ひあましの胡蘿蔔にんじん牛蒡ごぼうにもありつかずに平素しよつちう漬物ばかりをかぢつてる、一片ひときれだつて亭主の分前わけまへに預つたことはないよ。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
そのうちにも、病人びやうにん容態ようたいは、刻々こく/\險惡けんあくになつてゆくので、たうとう、そこからあまとほくない、府下ふか××むらのH病院びやうゐん入院にふゐんさせるより仕方しかたがなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
あまりのおどろきに御亭主ごていしゆは、自分じぶん酒慾しゆよくなにもすつかり、どこへかわすれました。そして眞面目まじめはたらきだしました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
やうやなほしてやつたれいが、たつた五りやうであつたのには、一すんりやう規定きていにして、あまりに輕少けいせうだと、流石さすが淡白たんぱく玄竹げんちくすこおこつて、の五りやうかへした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
其處そこ學校がくかうたて決心けつしんかれこゝろわいたのです、諸君しよくんかれ決心けつしんあま露骨むきだしで、單純たんじゆんなことをわらはれるかもれませんが、しかし元來ぐわんらい教育けういくのない一個いつこ百姓ひやくしやうです
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『あゝあまりに哀れなる物語に、法體ほつたいにも恥ぢず、思はず落涙に及びたり。主婦あるじことばに從ひ、愚僧は之れより其の戀塚とやらに立寄りて、暫し𢌞向ゑかうの杖をとどめん』
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
一番には、上﨟じやうらふの御方一の台の局、前の大納言殿御娘、御年は三十路みそぢあまり給へども、御かたちすぐれ優にやさしくおはしければ、未だ二十ばかりにぞ見え給ふ。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さう言ふくせに、こぼれる愛嬌を持てあまして、頬をつねつたり、額を叩いたりするお粂です。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
かうつづけて、高岡軍曹たかをかぐんそうはやがてことば途切とぎつたが、それでもまだりなかつたのか、モシヤモシヤの髭面ひげづらをいきませて、かんあまつたやうに中根なかね等卒とうそつかほ見詰みつめた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
二十けんにもあま巨大きよだい建物たてものは、るから毒々どく/\しい栗色くりいろのペンキでられ、まどは岩たたみ鐵格子てつがうしそれでもまぬとえて、内側うちがはにはほそい、これ鐵製てつせいあみ張詰はりつめてある。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あまされ者だと言つて人に笑はれたものであるが、此頃では此村でも十五六の嫁といふものは滅多になく、大抵は十八十九、隣家の松太郎の姉などは二十一になつて未だ何處にも縁づかずにゐる。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あまりの風車かざぐるまのごとくに
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あまこひしさ、あひたさに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
颶風はやてぎる警告けいこくのために、一人いちにんけまはつた警官けいくわんも、外套ぐわいたうなしにほねまでぐしよれにとほつて——夜警やけい小屋こやで、あまりのこと
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
苦笑くせうしたので、櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさをはじめ、一座いちざ面々めん/\あまりの可笑をかしさに、一時いちじにドツと笑崩わらひくづるゝあひだに、武村兵曹たけむらへいそう平氣へいきかほわたくしむか
見性けんしやうしたに、うれしさのあまり、うらやまあがつて、草木さうもく國土こくど悉皆しつかい成佛じやうぶつおほきなこゑしてさけんだ。さうしてつひあたまつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
勿論もちろんあま正直しやうぢきにはつとめなかつたが、年金ねんきんなどふものは、縱令たとひ正直しやうぢきらうが、からうが、すべつとめたものけべきでる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかしそれは怎的どうでもいゝといふなぐりではなくて、すべてがおしなたいして命令めいれいをするには勘次かんじこゝろあまはばかつてたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
モン長 なう、なさけなや、我君わがきみ! 我子わがこ追放つゐはう歎悲なげきあまりにおとろへて、つま昨夜やぜん相果あひはてました。なほ此上このうへにも老人らうじんをさいなむは如何いかなる不幸ふかうぢゃ。
願ひし處却て右樣の御疑ひを蒙ることあまり殘念なりと云はせもはてず大岡殿大音だいおんに默止れ平左衞門汝未だも奸智かんちべんを以て公儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おもふに男心をとこごゝろたのみがたさよ周旋とりもちするとしてこととゝのふはうれしけれど優子いうこどのゝこゝろえたり三らうよろこびしとつたたまへとはあまりといへどむかしを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『さァ、わたしにはそれをおまへにやつてせられない』と海龜うみがめつて、『からだあま岩疊がんじようだから。それでグリフォンもけつしてそれをならひませんでした』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
以上いじやうあまりに正直しやうぢきぎた白状はくじやうかもれぬ。けれども、正直しやうぢきぎた自白じはくうちには、多少たせう諷刺ふうしこもつてるつもりだ。
日本につぽんける大地震だいぢしん統計とうけいによれば、あまおほきくない町村ちようそんおいて、潰家かいか十一軒毎じゆういつけんごと一名いちめい死者ししやしようずる割合わりあひである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
しからば北歐羅巴きたようろつぱ方面はうめんはどうかと見遣みやるに、この方面はうめんついてはわたしあまおほらぬが、えうするに幼稚えうちきはまるものであつて、規模きぼきはめてちいさいやうである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
新石器時代しんせつきじだいになると氣候きこうその世界せかい状態じようたい今日こんにちあまかはつたところなく、たゞ海岸線かいがんせんいまよりも陸地りくちんでゐたといふくらゐにぎないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
いやしくも敵の総大将の胴にまっているものである点、斯くの如く優美で、繊細で、気品に充ちている点などは、年齢が多少けていると云う短所を補ってあまりがある。
我國わがくに國債こくさい状態じやうたいると、今日こんにちすでに五十九億圓おくゑんたつして從來じうらい大勢たいせいもつはかれば年々ねん/\巨額きよがく國債こくさいえるのであつて百億圓おくゑんたつするもあまとほからざることである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
うまかほはすところで、無論むろん少年せうねんにはあま畫題ぐわだいであるのを、自分じぶんこのきよよつ是非ぜひ志村しむら打勝うちかたうといふ意氣込いきごみだから一生懸命しやうけんめい學校がくかうからたくかへると一しつこもつて
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「そんな事なら驚きやしませんがね、上總屋の裏の長屋に住んで居る、本郷中のあまされ者で、半三といふ安やくざが、三組町のやぶの中で、背後うしろから刺されて死んで居ますぜ」
言ひ換へれば、氏はあまうますぎて、人間の本當の心理しんりの境を越えて飛躍ひやくしすぎるのでせう。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
平生へいぜい學海居士ガクカイコジ儒家じゆからしき文氣ぶんき馬琴バキンけたる健筆けんひつ欽羨きんせんするものなるが、つみばつたいする居士コジ評文ひようぶんあまりに居士コジ代表だいひようすることおほきにはいさゝ當惑とうわくするところなきあたはざりし。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
行手ゆくてには、こんもりとした森が見えて、銀杏いてふらしい大樹が一際ひときはすぐれて高かつた。赤くつた鳥居とりゐも見えてゐた。二人はそれを目當てに歩いた。お光は十けんあまりもおくれて、沈み勝にしてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
婦人ふじん驚駭きやうがいけださつするにあまりある。たくへだてて差向さしむかひにでもことか、椅子いすならべて、かたはせてるのであるから、股栗不能聲こりつしてこゑするあたはず
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)