“そ”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:
語句割合
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11.9%
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(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
与次郎の説によると、あの女はの気味だから、ああしじゅう歯が出るんだそうだが、三四郎にはけっしてそうは思えない。……
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これを鼬ごっこの疲労くたびれ儲けと解して、岐道わきみちれた人は退屈と不安があるばかりで、生涯、人生の味は解し得られないのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
片手を岸なる松柳にかけたるもの、足を団石だんせきの上に進め、猿臂えんぴを伸ばせる者、蹲踞そんきょして煙草を吹く者、全く釣堀の光景のまゝなり。
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
茶店の女主人と見えるのは年頃卅ばかりで勿論まゆっておるがしんから色の白い女であった。この店の前に馬が一匹つないであった。
くだもの (新字新仮名) / 正岡子規(著)
なかいたやうな……藤紫ふじむらさきに、浅黄あさぎ群青ぐんじやうで、小菊こぎく撫子なでしこやさしくめた友染いうぜんふくろいて、ぎんなべを、そのはきら/\とつてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして天児屋根命あめのこやねのみこと太玉命ふとだまのみこと天宇受女命あめのうずめのみこと石許理度売命いしこりどめのみこと玉祖命たまのおやのみことの五人を、お孫さまのみことのお供のかしらとしておつけえになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
れかとつてるほどのおひと無愛想ぶあいさうもなりがたく、可愛かわいいの、いとしいの、見初みそめましたのと出鱈目でたらめのお世辭せぢをもはねばならず
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
低い人家の軒にはもう灯がつきめて、曇つたまゝに暮れて行く冬の空は、西のはづればかりが黒い瓦屋根の上に色もなく光つて居る。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
「ええうよ、詳しくね。……でもよく助けて上げたわね。……妾、お君ちゃんと親友なのよ。……お礼心よ、泊っていらっしゃい」
人を呪わば (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし作者わたしはしばらくの間物語の筋を横へらせ、青木原あおきがはらで陶器師と別れた高坂甚太郎の身の上について少しく説明しようと思う。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
この思いもならぬ逆手には、流石の明智も、張りつめていた気勢を、ヒョイとがれた形で、ほんの僅かであったが、出足がおくれた。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それで、僕は尚繰拡げて、興をがれるまではながめて居た。表紙に芒と骸骨とが描いてある。中を見ると圏点沢山の文章がある。
明治詩壇の回顧 (新字旧仮名) / 三木露風(著)
先陣宗茂の部将小野和泉は、我に一将をえて前軍と為せ、敵の斥候隊を打破ろう。斥候が逃げれば後続の大軍動揺するであろう。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
してその時私は考へた、都会は美くしいが実に怖ろしい処だ、彼処あすこには黄金、酒、毒薬、芸術、女、すべてが爛壊らんえに瀕してゐる。
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
川上の方を見ると、すすきのいっぱいにはえているがけの下に、白いいわが、まるで運動場うんどうじょうのようにたいらに川に沿って出ているのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その内に思案して、あかして相談をして可いと思ったら、って見さっせえ、この皺面しわづらあ突出して成ることならッ首は要らねえよ。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黙って背後うしろから、とそのうなじにはめてやると、つとは揺れつつ、旧の通りにかかったが、娘は身動きもしなかった。四辺あたりにはたれも居ない。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はじめの内は、よく実家さとからお金を取つたりして、つと青木さんの手前をつくろつてゐられたやうな事もあつたらしい。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
干将莫邪かんしょうばくやは楚王の命をうけて剣を作ったが、三年かかってようやく出来たので、王はその遅延を怒って彼を殺そうとした。
一人が塔の方を見た時、こはも何事ぞ! 高塔の上からバークレーの町々に、オークランドの家々に静かに流れ渡るその歌は。
バークレーより (新字新仮名) / 沖野岩三郎(著)
春星しゆんせいかげよりもかすかに空をつゞる。微茫月色びばうげつしよく、花にえいじて、みつなる枝は月をとざしてほのくらく、なる一枝いつしは月にさし出でゝほの白く、風情ふぜい言ひつくがたし。
花月の夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
アツシリヤでも早くから犬を珍重して今の「マスチツフ」だの「グレイハウンド」だのといふ奴がたさうだが、んな事はておき
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
主の彼は可笑しさをこらえ、素知らぬふりして、宮前のお広さん処へは、其処の墓地にうて、ずッとって、と馬鹿叮嚀ばかていねいに教えてやった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
急度きつと相違のない樣に直に調達致して來ようとつかと戸外おもてへ出たるは其日も已に暮合くれあひすぎなりも此家には妻子もなく一個住ひとりずみにて玄關番げんくわんばん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
説き伏せ、を捨て、良を選び、必ず将来、あなたの楯となるような精兵三千をあつめて帰ります。——そしてあなたに忠誠を誓わせてご覧にいれますが
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平岡は三千代の云つた通りには中々なか/\帰らなかつた。何時いつでも斯んなにおそいのかと尋ねたら、笑ひながら、まあんな所でせうと答へた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
邱処機が元の太祖に奏したに竜児の年三月日奏すとあり、元の時泰山に立てた碑に泰定鼠児の年、また至正猴児の年とあり
「しかし事務なんかで頭を使うくらいなら、一のことつぶしにしてしまう方が宜かったんです」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
五十兩九郎兵衞里兩人の養育料やういくれうとしてつかはし候儀に御座候其後九助同村の周藏喜平次木兵衞等が取持とりもちにて私しめひ節儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
オホホ、そういうわけで豆腐屋を呼びくなってその晩は里芋の堅いのをお吸物の実に入れて大層良人やどに笑われましたがそれから毎日一生懸命に副食物拵えの稽古です。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
して後、諸兄これを遠ざけ外遊せしめたが、ガウルにおもむき回教徒の兵を仮り来て兵を起し、諸兄を殺し(一二七九年頃)、マンクの尊号を得、世襲子孫に伝えたと。
これは「天の壁立つ極み、国の退き立つ限り」とか「青雲のたなびく極み、白雲の向伏す限り」とか、「船艫ふなのへの至り留る極み、馬の爪の至り留る限り」
お登和嬢は大原のナイフを持ちて骨付の肉をがんとするを見「大原さんその肉はおはしでおちぎりなすっても取れますよ」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
あわあわしいら雲がら一面に棚引たなびくかと思うと、フトまたあちこちまたたく間雲切れがして
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
万年草まんねんそう 御廟のほとりに生ずこけたぐひにして根蔓をなし長く地上にく処々に茎立て高さ一寸ばかり細葉多くむらがりしょうず採り来り貯へおき年を経といへども一度水に浸せばたちまち蒼然そうぜんとしてす此草漢名を
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ふるさとのお話につけ、木曾きそという地名の意味をここに書きつけましょう。とは麻のことです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「おやすみだ。」と、例の淋しさうな聲で小さくさう言ひつゝ、つと出て行つた。早く下へ行つて診察室に歸らなければ、看護婦は一人しかゐないのにと冷吉は思つた。
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
泉原はそう思って、我ながらうして女のあとを追ってきた愚かしさをはがゆく思った。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
女衒は上框あがりかまちに腰を下して片足を膝に組みながら、鋭く凡太に一瞥を呉れたが、すぐに目をらしてそ知らぬ顔をつくり、二階へ上つた女中に向いて「もう上つてもよいのか」と
黒谷村 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
いろいろめんどうなしょう事件じけんになって、船のにもつは、そっくりとり上げられ、商人は、出かけたときよりも、もっとびんぼうになって、またとぼとぼ
「われらの任は、今や重い。窮するの極み、必ず、呂布はここを通るであろう。ここは淮南への正路、一だに洩らしてはならん。王法ニシンナシ——怠る者は、軍法に照らし必ず断罪に処すぞ」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たゞ願はくはアムフィオネをたすけてテーべを閉せる淑女等わが詩をたすけ、ことばの事とはざるなきをえしめんことを 一〇—一二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
毅堂はこの年某月背部に悪性の腫物を発して病褥びょうじょくに就いたので黒田家の扶持を辞した。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いかに思ひめけることにか、世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと思ひつつ、徒然なるひるま、よひゐなどに、姉継母などやうの人々の、その物語、かの物語
大刀取りは左の手で右衛門の身を上へ持ち上げるようにして右足をいだ。太刀が余って左足へ半分斬り込んだ。
三浦右衛門の最後 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
が、そのうちにもうとてもたまらなくなって来た。彼はッと姪の黄色な枕の下へ手を入れて彼女の頭を浮き上らせると、姪はぴたりと泣きやんだ。彼は姪を抱き上げてやる気はなかった。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
食楽は、精進しょうじん料理がお好き。まず録糸まめそうめんにてつくる魚翅ふかのひれ湯葉ゆばでつくれる火腿ハム、たまに彼女はかつて母とともに杭州コウシュウ西湖サイこにある功徳林食処へ精進料理を味わいに行った。
新種族ノラ (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
後人母猴もこうなまりまたいよいよ訛って獼猴みこうとす。猴の形、胡人こひとに似たる故胡孫こそんという。『荘子』にという。
中国でこうというも且は男相の象字といえば(『和漢三才図会』十二)、やはりかかる本義と見ゆ。
神さまがもし私に、神のわせ給う女を送り給うならば、私は恋をしてはならないと思い決めまいと考え出しました。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
神様は私を独身ではたらかす気かもしれないし、ほかの女を私にわすみ心かも知れません。二人はいっさいの誓約はせずに神前に恥じぬ交際を続けて行きましょう。そしてみ旨なら結婚しましょう。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
美和子も、さすがに、姉の厳しい様子に、ちょっと目をらすようにして、真面目な表情をしたが、すぐに不貞腐ふてくされて、白々しく
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あわてて眼をらせながら、自分でもいい加減な返事の出来ない気持になりながら、その場合無難な返事として
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
車はせ、景は移り、境は転じ、客は改まれど、貫一はかはらざる悒鬱ゆううついだきて、る方無き五時間のひとりつかれつつ、始て西那須野にしなすのの駅に下車せり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
つまり命矢というのを弓にえて持ち、馬を駈りながら見やると、狼は結び矢来の中央に四足を張って立ったまま動かない、しかし何十回となく猟師に追われ
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
貫一はそのなかばを尽して、いこへり。林檎をきゐるお静は、手早く二片ふたひらばかりぎて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
直ぐに飛込んでたぶさってと云う訳にもいきません、坊主ですから鉄鍋の様に両方の耳でも把るか、鼻でもごうかと既に飛込みに掛りましたが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
つづいて、「く忠に克く孝に、億兆心を一にして、世々、の美をせるは」
よね おまいがそぎやん云ふなら、そツでかこてしとこう。こんかげにや果物くだもんと菓子ばちつとばつかり入れといたばい。そるから、もう忘れもんななかろね。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ばん年中ねんぢう臟腑ざうふ砂拂すなはらひだといふ冬至とうじ蒟蒻こんにやくみんなべた。おしな明日あすからでもきられるやうにおもつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
此意味に於て、我國彫家連は幸福であらふと思ふ者であります。只返すがへすも腰の幅の狹き事は、裸體美の上から見て痛恨事である。
裸体美に就て (旧字旧仮名) / 小倉右一郎(著)
「この娘を首尾好く、その男にわすことが出来たとしても、それで幸福であるといえるだろうか。」
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
しな照る 片岡山かたをかやまに いひて こやせる 旅人たびとあはれ 親無おやなしに なれりけめや 剌竹さすたけの きみはやき いひて こやせる 旅人たびとあはれ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
貧にやつれ疲れ、とげとげとぎたった血の気のない頬にともしい笑いをうかべながら、じろりと閣室を見あげて行く。
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
引力にしても力にしても、相離れた所から作用を及ぼすように見えても、実際は中間に在る媒介物の内に起る作用の結果が、この形で現われるものだという風に考えた。
のネエ、ときやがった
うたがひはかる柳闇花明りうあんくわめいさとゆふべ、うかるヽきのりやとれど品行方正ひんかうはうせい受合人うけあいてをうければことはいよいよ闇黒くらやみになりぬ、さりながらあやしきは退院たいヽんがけに何時いつ立寄たちよれのいゑ
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
雛の微笑ほほえみさえ、蒼穹あおぞらに、目にうかんだ。金剛神の大草鞋は、宙を踏んで、渠を坂道へり落した。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くせ、もし/\、とつた、……こゑくと、一番いちばんあとの按摩あんま呼留よびとめたことが、うしてかぐにれた……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「我はうるはしき友なれ二七こそ弔ひ來つらくのみ。何ぞは吾を、穢きしに人にふる」といひて、御佩みはかしの十つかの劒を拔きて、その喪屋もやを切り伏せ、足もちてゑ離ち遣りき。
納経なふきやうの御望み叶はせられざりしより、竹の梢に中つてるゝ金弾の如くに御志あらぬ方へと走り玉ひ、鳴門の潮の逆風さかかぜに怒つて天にはびこるやう凄じき御祈願立てさせ玉ひしと仄に伝へ承はり侍りしが
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
こんな海嘯つなみなどは、到底とうてい人間にんげんちからふせめることは出來できませんが、しかし、もし海岸かいがんうておびのように森林しんりんがあれば、非常ひじよう速力そくりよくでおしせてくる潮水しほみづいきほひ
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
今の娘たちから見ると、まゆを落とし歯をめた昔の女の顔は化け物のように見えるかもしれない。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
世間でもかんづいて居るから新吉は憎まれ者で、たれも付合う人がない。横曾根あたりの者は新吉に逢っても挨拶もせぬようになりました。新吉はどん/\降る中をっと忍んでお賤のとこへ来ました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その国の徳衰えたくきて、内憂外患こも/″\せまり、滅亡になりなんとする世には、崩じておくられざるみかどのおわすためしもあれど、明のの後なお二百五十年も続きて、この時太祖の盛徳偉業、炎々えんえんの威を揚げ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
才物だ。なかなかの才物だとしきりにやし、あの高ぶらぬところがどうもえらい。談話はなしの面白さ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
こおろぎの細々ほそぼそれて、かぜみだれる芒叢すすきむらに、三つ四つ五つ、子雀こすずめうさまも、いとどあわれのあきながら、ここ谷中やなか草道くさみちばかりは、枯野かれの落葉おちばかげさえなく、四季しきわかたずうた
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
梅天の一に「山妻欲助梅菹味、手摘紫蘇歩小園」の句があり、断梅の一に「也有閑中公事急、擬除軒下曝家書」の句がある。説文せつもんに「酢菜也」とある。梅菹ばいそ梅※ばいせいも梅漬である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかして彼の平易なる独逸語を以て著述せしその註解書を読まん、「今よりのちたれも我をわずらわすなかれ、はわれ身にイエスの印記しるしびたればなり」(六章十七節)、ああ何たる快ぞ
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
しかしいみじくも万葉の歌がそれが染め料になるべき事実を明かにおしえ証拠立てて居る事は全くの歌の貴い所であるというべきダ。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
寸分すんぶん異ならぬ同一事実のものでも、ようによりてはめることもできれば、しることもできる。賞することもばっすることもでき、殺すこともかすこともできる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「江戸の名人じゃ、と云う程に、何ぞ珍らしい芸でもするのかと思っていたに、都の藤十郎には及び付かぬ腕じゃ」とののしった。七三郎をしる者は、ただ素人しろうとの見物だけではなかった。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
おもふに生や師恩に私淑し、負ふところのものはなはだ多し。しかるに軽挙暴動、みだりに薫陶の深きにむく。その罪実に軽しとせず。
誰が罪 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
一人、二人ずつ彼等はときどき応接室へ何かの用事で出入する。それを京子はちらちら視て、如何にもうんざりしたように加奈子の肩へ首を載せ、眼をらしてしまった。
春:――二つの連作―― (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
玄宗皇帝が楊貴妃浴を出て鏡に対し一乳を露わすを捫弄もんろうして軟温新剥鶏頭肉というと、傍に安禄山あんろくざんが潤滑なお塞上ののごとしと答えた。
山頬やまぎわの細道を、直様すぐさまに通るに、年の程十七八ばかりなる女房にょうぼうの、赤き袴に、柳裏やなぎうら五衣いつつぎぬ着て、びんふかぎたるが、南無妙。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
〔譯〕胸次きようじ清快せいくわいなれば、則ち人事百かんせず。
青きもの摘む子らならしざる寄せて石炭殻は指に掻き
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みかどがまだ尊治親王たかはるしんのうとよばるる御身分にすぎなかった幼少から、わが家にておだて申しあげて来たいわゆる乳父めのとの彼であった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
末なる煙草盆の、しかも丈夫に、火入れは小さき茶釜形なるをひかへて、主人庄太郎外見ばかりはゆつたりと坐りたれど、心に少しの油断もなきは、そこらジロジロ見廻す眼の色にも知られぬ。
心の鬼 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
夕陰ゆふべくもる。とめ女召連、天明味野出立。上之茶屋かみのちやや迄同人駕行かごにてゆく。当所迄信慶(中略)送来。夫より人車三乗、用が瀬より駕一挺、知津に而午支度。夫より歩行。野原駅松見屋某へ著。はなはだ
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)