沿)” の例文
うつくしいてて、たまのやうなこいしをおもしに、けものかはしろさらされたのがひたしてある山川やまがは沿うてくと、やまおくにまたやまがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
川上の方を見ると、すすきのいっぱいにはえているがけの下に、白いいわが、まるで運動場うんどうじょうのようにたいらに川に沿って出ているのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
電信柱でんしんばしら往来おうらい沿って、あちらまでとおくつづいていました。そして、そのさきは、あおい、あおい、そらしたえなくなっていました。
長ぐつの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しばらまつててゐるうちに、いしかべ沿うてつくけてあるつくゑうへ大勢おほぜいそうめしさいしる鍋釜なべかまからうつしてゐるのがえてた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ようやく小さな流れに出た。流れに沿うて、腰硝子の障子など立てた瀟洒しょうしゃとした草葺くさぶきの小家がある。ドウダンが美しく紅葉して居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そして西国街道に沿う民家には火が放たれ、いちめんな薄煙のため、直義の軍も、菊水の旗のありかも全く見とどけにくい。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海岸かいがん沿ふてこと七八ちやう岩層がんそう小高こだかをかがある、そのをかゆると、今迄いまゝでえたうみ景色けしきまつたえずなつて、なみおと次第しだい/\にとうく/\。
それ以来いらい二人ふたり夕方ゆうがた、しばしば一しょに散歩さんぽかけた。だまって歩いて、河に沿っていったり、野を横切よこぎったりした。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
往来おうらい沿って前へ前へと進みながら、ときどきもうつまずいてたおれそうになるほどいたい足の先を、見つめ見つめしてゆかなければならなかった。
「機首を左へ曲げ、隅田川すみだがわ沿って、本所ほんじょ浅草あさくさの上空へやれ。高度は、もっと下げられぬか」そう云ったのは、警備司令部付の、塩原参謀しおばらさんぼうだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、變化へんくわのない街道かいだう相變あいかはらず小川をがは沿うて、たひら田畑たはたあひだをまつぐにはしつてゐた。きりほとんあがつて、そらには星影ほしかげがキラキラとした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
さうして地震ぢしんおほきければおほきいほど地震波ぢくんぱおほきいので、これが地球ちきゆう表面ひようめん沿うて四方八方しほうはつぽうひろがり、あるひ地球ちきゆう一廻ひとまはりも二廻ふたまはりもすることもあるが
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
盗人ぬすびとたちは、きたからかわ沿ってやってました。はなのきむらぐちのあたりは、すかんぽやうまごやしのえたみどり野原のはらで、子供こどもうしあそんでおりました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
巌はこう思いながら父と二十歩ばかりの間隔を取ってさとられぬように軒下のきした沿うていった。父はそれとも知らずにまっすぐに本通りへ出て左へ曲がった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
すると軌道レール沿ふて三にん田舍者ゐなかもの小田原をだはら城下じやうかるといふ旅裝いでたちあかえるのはむすめの、しろえるのは老母らうぼの、からげたこし頑丈ぐわんぢやうらしいのは老父おやぢさんで
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
我は目をかの生くる光に馳せつゝ、諸〻のきだ沿ひ、或ひは上或ひは下或ひは周圍まはりにこれを移し 四六—四八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
木苺きいちごの熟す時分になると、七歳ぐらゐになる私を連れて、山の谿流に沿うて上下し、木苺をかごに丹念に採つて、それを私にも食べさせてくれたのをおぼえて居る。
(新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
名もなつかしき梅津うめづの里を過ぎ、大堰川おほゐがはほとり沿ひ行けば、河風かはかぜさむく身にみて、月影さへもわびしげなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
勘次かんじしもしろ自分じぶんには往來わうらいると無器用ぶきようくぬぎはやしかれくべきかたしたがつてみち沿うてつらなつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
国道こくどうは日にらされて、きいろい綺麗きれいなリボンのように牧場まきばはたけ沿って先へとび、町や村を通りぬけ、人の話では、ふねの見える海までつづいているということです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
横筋にすると、なるほど縞馬のやうで見た目は綺麗だが、どうももちがわるい。凹んだ線に沿つて割目ができるんだ。そんな素人しろうと意見は、いちいち取上げる必要はない。
医術の進歩 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
わかりやすくへば、地球上ちきゆうじよう部分ぶぶん部分ぶぶんが、赤道せきどう沿うておびのように細長ほそながくわかれてをり、そのひとつ/\に、それ/″\ちがつた植物しよくぶつがそだつてゐることをいふのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
道子みちこ廊下らうか突当つきあたりにふすまのあけたまゝになつたおくへ、きやくともはいると、まくらふたならべた夜具やぐいてあつて、まど沿壁際かべぎは小形こがた化粧鏡けしやうかゞみとランプがたのスタンドや灰皿はひざら
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
馬を泥中に救う その翌日川に沿うて上りました。浅き砂底の川をむこうに渡らんとて乗馬のまま川に入りますと、馬は二足三足進んで深き泥の中に腹を着くまでおちいりました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いよ/\利根の水源すゐげん沿ふてさかのぼる、かへりみれば両岸は懸崖絶壁けんがいぜつぺき、加ふるに樹木じゆもく鬱蒼うつさうたり、たとひからふじて之をぐるを得るもみだりに時日をついやすのおそれあり、故にたとひ寒冷かんれいあしこふらすとも
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
駕籠かごはいま、秋元但馬守あきもとたじまのかみ練塀ねりべい沿って、はすはなけんきそった不忍池畔しのばずちはんへと差掛さしかかっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
けれども座敷ざしきがつて、おなところすわらせられて、垣根かきね沿ふたちひさなうめると、此前このまへときことあきらかにおもされた。其日そのひ座敷ざしきほかは、しんとしてしづかであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
眺望ちょうぼうのこれと指して云うべきも無けれど、かの市より此地まであるいは海浜かいひん沿いあるいは田圃たんぼを過ぐるみちの興も無きにはあらず、空気ことに良好なる心地して自然と愉快ゆかいを感ず。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すなはやま背面はいめんには、きし沿ふ三すみさんの小船こぶねがある。たゞそのひとたよりであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うさね』とつてグリフォンは、『最初さいしよ海岸かいがん沿うて一れつをつくる——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
みち三浦みうら東海岸ひがしかいがん沿った街道かいどうで、たしか武山たけやまとかもうす、可成かなたかひとつのやますそをめぐってくのですが、そのおりよくそらあがっていましたので、馬上ばじょうからながむるうみやまとの景色けしき
曰く、暮春ぼしゅん春服既に成り、冠者かんじゃ五、六人、童子どうじ六、七人を得て、(水の上)に沿(浴)い舞雩ぶう(の下)にいたり詠じて帰らん。夫子喟然きぜんとして嘆じて曰く、吾は点にくみせん。三子者出でて曾皙そうせきおくる。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
なるほど、なにごとにしても、理をきわめんとすれば心理学の原理に入らざるを得ないから、容易よういならざる専門的研究となるが、吾人ごじんの平常むべき道はやぶの中にあるでなし、絶壁ぜっぺき断巌だんがん沿うでもない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だいじゃう ヹローナ。カピューレットてい庭園ていゑん石垣いしがき沿へる小逕こみち
役場はその街道に沿った一かたまりの人家のうちにはなかった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
なぎさに沿って、二人はだいぶ歩いた。いつか夜の海だった。この日頃こびりついていた焦土の屍臭ししゅうも、やっと心から洗われたここちがする。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沿海線えんかいせん沿うて、レールがはしっていました。小高こだかおかうえに、停車場ていしゃじょうがあって、待合室まちあいしつかぜきさらしになっています。
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すもものかきねのはずれから一人の洋傘ようがさ直しが荷物にもつをしょって、この月光をちりばめたみどり障壁しょうへき沿ってやって来ます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さてわたしたちは日の出ごろ宿やどをたって、別荘べっそうのへいに沿って、そのブアシー・セン・レージェの村を通りぬけて、とある坂の上にさしかかった。
元來がんらい地震ぢしん地層ちそうやぶすなは斷層線だんそうせん沿うておこるものが多數たすうであり、さうして地下ちか岩漿がんしようみぎ沿うて進出しんしゆつすることは、もつともありべきことであるから
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ぼく溪流けいりう沿ふてこのさびしい往來わうらいあてもなくるいた。ながれくだつてくも二三ちやうのぼれば一ちやう其中そのなかにペンキで塗つたはしがある、其間そのあひだを、如何どん心地こゝちぼくはぶらついたらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
関翁が声をかける。路作りかた/″\㓐別りくんべつまで買物に行くと云う。三年前入込んだ炭焼すみやきをする人そうな。やがて小さな流れに沿熊笹葺くまざさぶきの家に来た。炭焼君の家である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と、左手ひだりてはう人家じんか燈灯ともしびがぼんやりひかつてゐた——Fまちかな‥‥とおもひながらやみなか見透みすかすと、街道かいだう沿うてながれてゐるせま小川をがは水面みづもがいぶしぎんのやうにひかつてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
水流をわたるのまされるに如かず、され共渉水亦困難こんなんにして水中石礫せきれき累々るゐ/\之をめば滑落せざることほとんどまれなり、衆皆石間せきかんあしき入れてあゆむ、河は山角を沿ふてはなはだしく蜿蜒えん/\屈曲くつきよく
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
勘次かんじういふくぬぎゑてはやしつくるべき土地とち開墾かいこんをするためにもう幾年いくねんといふあひだやとはれてちからつくした。かれやうや林相りんさうかたちづくつて櫟林くぬぎばやし沿うて田圃たんぼえてはしつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
谷中やなかから上野うえのける、寛永寺かんえいじ土塀どべい沿った一筋道すじみち光琳こうりんのようなさくら若葉わかばが、みちかれたまんなかたたずんだ、若旦那わかだんな徳太郎とくたろうとおせんのあにの千きちとは、おりからの夕陽ゆうひびて
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
講釋師かうしやくしふ、やりのつかひてにのろはれたやうだがと、ふとると、赤煉蛇やまかゞしであらう、たそがれに薄赤うすあかい、およ一間いつけん六尺ろくしやくあま長蟲ながむしが、がけ沿つた納屋なやをかくして、鎌首かまくびとりせま
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけいしうへしばつて扇骨木かなめ奇麗きれい植付うゑつけたかき沿ふて門内もんないはひつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから東北ひがしきたへと走っている嶺を伝わって下って行けば、ついには一つのながれに会う、その流に沿うて行けば大滝村おおたきむら、それまでは六里余り無人の地だが、それからは盲目めくらでも行かれる楽な道だそうだ
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
馬關海峽ばくわんかいけうき、瀬戸内海せとないかいり、それより紀伊海峽きいかいけうでゝ潮崎うしほざきめぐり、遠江灘とほとほみなだ駿河灣するがわん相模灘さがみなだ沿岸えんがん沿ふて、およ波濤はたうつところ、およ船舶せんぱくよこたはるところ海岸かいがんちかいへいうせらるゝ諸君しよくん