)” の例文
これ鳥を籠中に封ずるのみならず、またその羽翼うよくぐものなり。沿海一万五千三百里、今は空しく超うべからざるの天険てんけんとなりぬ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それで、僕は尚繰拡げて、興をがれるまではながめて居た。表紙に芒と骸骨とが描いてある。中を見ると圏点沢山の文章がある。
明治詩壇の回顧 (新字旧仮名) / 三木露風(著)
片ッ端から腐肉をいで骨とし、それを水五升に酒一合ほど入れたもので洗うのであるが、それは全く地獄の活図を見るようであつた。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
蜻蛉とんぼでも来て留まれば、城の逆茂木さかもぎの威厳をいで、抜いて取ってもつべきが、寂寞じゃくまくとして、三本竹、風も無ければ動きもせず。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
神尾主膳の面は、左右の眉の間から額の生際はえぎわへかけて、牡丹餅大ぼたもちだいの肉をぎ取られ、そこから、ベットリと血が流れているのです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし、そういう都市の水は、自分の知っている限りでたいていはそこに架けられた橋梁きょうりょうによって少からず、その美しさをがれていた。
松江印象記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたくしは唯霞亭が酒をたしんだことを知つてゐる。酒を嗜むものは病に抗する力をがれてゐるものである。急病に於て殊にさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
少年は無念の歯がみをしつゝ断念して脇差を引き抜いたが、その途端にどう云うつもりだったのか、さっと屍骸の鼻をいだ。
おびえてるひとりの婆さんは、窓の前の物干し棒にふとんをかけて、銃弾の勢いをごうとしていた。ただ居酒屋ばかりが戸を開いていた。
ころすといふ字を辞書で見ると、「死なせる 命を断つ 圧しつけて小さくする ぐ 減らす 抑へつけ十分に活動させない 質物を流す」
豚肉 桃 りんご (新字旧仮名) / 片山広子(著)
生活に對する今日こんにちまでの經驗が何事によらずすぐと物の眞底を見透みすかして興味をいでしまふし、其れと同時に、路傍に聞く新しい流行唄はやりうたなども
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
それは、二人ともひどく似たぎ耳であって、その耳の形が明らかに彼らの身の薄命を予言しているかのごとく思われていた。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
そうしてそのなつかしい日本民族の勢力をぐべき事業のために、残忍非道なる無頼漢のめいを奉じて出て来た今度の旅行が、如何に屈辱的な
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
作物は何れもひどく威勢をがれた。殊にも夥しいのは桑の葉の被害だった。毎朝、くすんだ水の上を、蚕がぎくぎくうごめきながら流れて行った。
黒い地帯 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
たとへば見も知らぬゆひなづけの夫に幼少の時死に別れたればとて、それが為に鼻をぎ耳を切りて弐心ふたごころなきを示せしとか。
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
山は水にげ落ち、水はその根に噛み付いて、真に険絶を極め、その高い断崖の中腹を横過する困難と危険は、到底本谷などの比ではなかった。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
思えば思うほど考えは遠くへ走って、それでなくてもなかなか強い想像力がひとしお跋扈ばっこを極めて判断力をもいた。
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
目に見えて女の権能のがれている家と、主人の立場などから何でもかでも、女房に仕事を任せている家とができる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
刃物きれものも悪かったか横にいだぐれえだから心配しんぺえはねえ、浅傷あさでだったは勿怪もっけ僥倖さいわいなんにしても此処に居ちゃアいけねえから、早く船へお乗んなせえ。
鼻と唇とをがれた松永は、それから後どうなったか、気のついたときには、例の天井の穴からは見えなくなった。
俘囚 (新字新仮名) / 海野十三(著)
悠然とストーブの側に胡踞あぐらかき、関翁が婆ァ婆ァと呼ぶほおげたきかぬ気らしい細君は、モンペはかまをはいて甲斐〻〻しく流しもとに立働いて居ると
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この「闘牛場へいそぐ人の河」なる古儀に幾分気分をぐものがあるとは言え、それでもまだ、この日、支那青チャイナ・ブルウの空に火のかたまりの太陽が燃える限り
ほとんどどの夜会にもくり返されるその儀式は、二人の子供にとっては、晩餐ばんさんの喜びをいでしまうものだった。
「さよう。かくして帰路の途中、せいぜい数をぐのじゃな。まず、ひとつ二つと機会あるごとにしとめて——」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
最初の気込みをすッかりがれて、金吾が顔色なく立ちすくんでしまった時、日本左衛門は彼にかまわず、向うの岸を、上流かみへ向って歩きだしています。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地蔵眉毛じぞうまゆげが以前より目立ってほおげたけれど、涼しい目や髪には、お婆さんらしいところは少しもなかった。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
燕王、徳州の城の、修築すでまったく、防備も亦厳にして破り難く、滄州の城のついくずるゝこと久しくして破りやすきを思い、これを下して庸の勢をがんと欲す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
幕と幕とが切実な、新鮮な実感でつながれていなかったことが、ひどく俳優と、あるべき脚本の味をいだ。
支谷と支谷との間は此処ここでは必ずしもいだような山の痩尾根ではない、好い山ひらがある。中には荒廃した畑の跡かと想われる平もあった、小屋ノ平という。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その点から言ってもこれが大きな地震であると、かえって夏野の大きなゆったりした感じをぐのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ろくに読めもしない横文字を辿って、大分興味をがれながら、尚おかつ外国の探偵小説をあさっていたのも、実は日本にこれという探偵小説がなかったからである。
「二銭銅貨」を読む (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
と、その時は、こんなことで来客たちのせっかくの興をいではならぬと、そのことのみで胸が一杯であった。別段夫の来るのを、待っていたというわけではない。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
相手が実の妹であると知って、刑事も探偵的興味をがれたらしく、丁寧に挨拶して別れて行った。
深見夫人の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かくの如き次第であるから政党内閣制が責任内閣の主義を貫くために極めて適当なりと定まっても、小党分立ではその実際の効績は半ばがれると見なければならぬ。
こんな海嘯つなみなどは、到底とうてい人間にんげんちからふせめることは出來できませんが、しかし、もし海岸かいがんうておびのように森林しんりんがあれば、非常ひじよう速力そくりよくでおしせてくる潮水しほみづいきほひ
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
人類文化は生存競争や自然淘汰の勢をいだし、また現にそれをゼロに近づけようとしている。そこで弱者の急激な増加となり、彼らが強者を圧倒することにもなるんだ。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しかしこうした事件や風説は、哀れな信心気ちがいに対する町の人たち一般の同情をがなかったばかりか、人々はますます彼女を大事にかけて保護するようになった。
シューベルトの素直なメロディの美しさは、スレザークの技巧のために幾分がれているが、その代り抒情詩を朗読するような、精緻な気分の表現は比類もなく美しい。
しかし、頭の鉢が低く斜めにげ、さらに眉のある上眼窩弓じょうがんかきゅうがたかい。鼻は扁平で鼻孔は大、それに下顎骨かがっこつが異常な発達をしている。仔細しさいに見るまでもなく男性なのである。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「ともかくも役儀を持ったその方達じゃ。片腕ずついでおくのも却って面白かろうぞ。ほら、今度はそッちの獅子鼻じゃ。——すういと痛くないように斬ってつかわすぞ」
「オイお前、肝腎のとこで糸絶らしたら仕様ないやないかド阿呆」続いて口ぎたなく怒鳴っている声がこんな風に客席の方にまで聞こえてきた。いよいよ私は感興をがれた。
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「この男幾らか常識が乏しいと見えるな。」と山岡氏は相手に対する興味を半分かたいだらしく、獣のやうな顔をそろ/\掌面てのひらから持ち上げて、ぐたりと椅子のもたれに寄せかけた。
えうするに勤勉きんべん彼等かれら成熟せいじゆく以前いぜんおいすで青々せい/\たる作物さくもつ活力くわつりよくいでつてるのである。收穫しうくわく季節きせつまつたをはりをげると彼等かれら草木さうもく凋落てうらくとも萎靡ゐびしてしまはねばならぬ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つとに測る能わざるに至り、大に楽みをがれし心地せしが、今また暖炉のかたわらに、置ける電池凝結ぎょうけつして破壊し、ために発電するによしなく、また風雨計の要部をおおう所の硝子板がらすいた紛砕して
さて雄雌の鳴き声が風にれて卵に達すれば孵るのだ、『類函』四三八に、竜をえがく者のかたへ夫婦の者来り、竜画をた後、竜の雌雄さま同じからず、雄はたてがみ尖りうろこ密にかみふとしも
肉はがれ骨は削られる。もうこれからどうして好いかわからない。破滅が目の前に見える。そこまで遂に押詰められたと観念していた矢先きに、たまたま一つの事件が起って来た。
両側がいだように薄く、そこから谷へずり下りて、基脚へ行くほど、太くひろがって、裾を引いているが、その中腹、殊に下宮川谷に臨んだ方は、万年雪が漆喰しっくいのように灰白になって
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
とかく機械が美をそこなうのは、自然の力をぐからである。あの複雑な機械も、手工に比べてはいかばかり簡単であろう。そうしてあの単純な手技は、機械に比ぶれば、いかばかり複雑であろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
肩がげているので、なんだか窮屈きゅうくつだ。銃身がうまくのっかっていない。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
寺わきを雨間せはしみ刈る麦は根にげりひとにぎりづつ
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)