)” の例文
○寺島の渡は寺島村なる平作河岸へいさくがしより橋場の方へ渡る渡なり。平作河岸とは大川より左に入りてただちに堤下に至る小渠にへる地をいふ。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
主の彼は可笑しさをこらえ、素知らぬふりして、宮前のお広さん処へは、其処の墓地にうて、ずッとって、と馬鹿叮嚀ばかていねいに教えてやった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
基督キリスト其の他の先覚の人格を信じ、若しくは彼等が偉大なる意識を証権として、其れに依りうておぼろげに形づくりたる者、その多きに居りし也。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
如何いかにせんと此時また忽然と鶴的鞍にひて歩みきたる見れば馬のくつを十足ほどの竹杖にくゝし付けて肩にしたり我馬士わがまご問ふて曰く鶴さん大層くつ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
文化の初め頃、山麓某村の農民二人、川芎せんきゅうといふ薬草を採りに、此山西北の谿たにに入って還ることなり難く、ながれうた大木の虚洞うつろに夜を過すとて
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
舟若し高く岩頭に吹き上げられずば、必ず岩根にひて千尋ちひろの底にし沈めらるべし。われは翁と共にを握りつ。ジエンナロも亦少年をたすけて働けり。
四里間に家無きも、山間或は原野にして、シオポロ川の源に出で、川畔にうてくだる。終日暴雨なり。三時愛冠に着す。全身は肌迄湿うるおうたり。夜中やちゅう熟眠す。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
海にひたる坂をめぐりくだるとき、已夕陽紅を遠波にしきたり。やち川を渡り十九町福川駅。米屋七五郎の家に宿す。此駅より海面に島々見ゆる中に、せん島黒髪山島尤大なり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
例の物見高き町中なりければ、このせはしきはをも忘れて、寄来よりく人数にんずありの甘きを探りたるやうに、一面には遭難者の土につくばへる周辺めぐりを擁し、一面には婦人の左右にひて、目に物見んと揉立もみたてたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
一は人家の檜林にうて北に折れ、林にそい、桑畑くわばたけにそい、二丁ばかり往って、雑木山のはしからまた東に折れ、北に折れて、六七丁往って終に甲州街道に出る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
口際に引きひたる壯丁わかものはやうやくにして馬のはやるを制したり。號砲は再び鳴りぬ。こはらちにしたる索を落す合圖なり。馬は旋風つむじかぜの如くはしりて、我前を過ぎぬ。
すべて峡つづきゆえに高くして南の方は柳瀬やなせ川のへりにいたれば低しとある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
甲奴かふど屋兵右衛門の家に休す。時正に午後陰雲起て雷雨灑来そゝぎきたり数日にして乾渇をいやすがごとし。未後にいたりてる。江原をすぐ。此地広遠にして見るところの山はなはだ不高。長堤数里砂川にふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
山雲 水月 閑吟にふ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一は上祖師ヶ谷で青山あおやま街道かいどうに近く、一は品川へ行く灌漑かんがい用水の流れにうて居た。此等これらは彼がふところよりもちと反別が広過ぎた。最後に見たのが粕谷の地所じしょで、一反五畝余。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いざ我が濟勝さいしようの具の渠に劣らぬを證せんとて、我傍に引きうて走り出しぬ。