)” の例文
また日本とも二千年来よほど関係のある土地であるにもかかわらず、人口はであって、すべて経済上の発達はよほど幼稚である。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
春星しゆんせいかげよりもかすかに空をつゞる。微茫月色びばうげつしよく、花にえいじて、みつなる枝は月をとざしてほのくらく、なる一枝いつしは月にさし出でゝほの白く、風情ふぜい言ひつくがたし。
花月の夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
〔評〕南洲を病む。英醫偉利斯いりす之をしんして、勞動らうどうすゝむ。南洲是より山野に游獵いうれふせり。人或は病なくして犬をき兎をひ、自ら南洲を學ぶと謂ふ、なり。
後世その人に代わりてえんをそそぐものもあり、あるいは碑を建て史を編み、もってその名をして不朽に伝えしむるものもありて、「天網恢々てんもうかいかいにして漏らさず」
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
それがどうだろう、天網恢々てんもうかいかいにして漏らさず、今度という今度は電車のなかの一件と、その晩の焼鳥一件と、一日にふたつも馬脚を現してしまったではないか。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「賊のかしら! つらを上げろ。……燈籠とうろう見物にまぎれていたら、誰にも分るまいと思っていたのだろうが、なんぞ知らん、天網恢々てんもうかいかいにしてらさずだ。恐れ入ったか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「天誅も骨が折れるな。これで天網恢々てんもうかいかいにしてらしちまったり、何かしちゃ、つまらないぜ」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
閉花羞月好手姿 巧計人をあざむいて人知らず 張婦李妻定所無し 西眠東食是れ生涯 秋霜粛殺す刀三尺 夜月凄涼たり笛一枝 天網と雖ども漏得難もれえかたし 閻王廟裡きんに就く時
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
斯く山深く人煙また極めてなるに係らず、わが生れた村の歴史は可なりに古いらしい。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
社の方でも山田やまだ平生へいぜい消息せうそくつまびらかにせんと具合ぐあひで、すき金港堂きんこうどうはかりごともちゐる所で、山田やまだまた硯友社けんいうしやであつたため金港堂きんこうどうへ心が動いたのです、当時たうじじつ憤慨ふんがいしたけれど
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
然し真近まぢかく進んで、書生の田崎が、例の漢語交りで、「坊ちゃん此の通りです。天網恢々てんもうかいかいにして漏らさず。」と差付ける狐を見ると、鳶口で打割られた頭蓋とうがいと、喰いしばった牙のあいだから
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
佳人かじんこころようやなり——これは八五郎が、お染さんに嫌われたというこころだ」
一同はいまさらながら、天網恢々てんもうかいかいにしてらさずという古言こげんを味わった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
骨肉の情いずれなるはなけれども、特に親子の情は格別である、余はこのたび生来未だかつて知らなかった沈痛な経験を得たのである。余はこの心より推して一々君の心を読むことが出来ると思う。
我が子の死 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
嗚呼ああ子にして父の葬に会するを得ず、父のなりとうと雖も、子よりして論ずれば、父の子を待つもまたにして薄きのうらみ無くんばあらざらんとす。詔或は時勢にあたらん、しかも実に人情に遠いかな。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
天網恢々てんもうかい/\にして洩らさず、其の内に再び召捕めしとられたら、いよ/\国中こくちゅうへ恥をさらさなければ成りますまい、只今お町殿へ明日あすのことを申上げ、お別れにたった一目お逢いなされてはと申入れましたが
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
辰爺さんの曰く、「悧巧なやつは皆東京へ出ちゃって、馬鹿ばかり田舎に残って居るでさァ」と。遮莫さもあれ農をオロカと云うは、天網てんもうい、月日をのろいと云い、大地を動かぬと謂う意味である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「佳人心漸くなり——これは八五郎が、お染さんに嫌はれたといふこゝろだ」