)” の例文
旧字:
二人はっと藁苞わらづとの中から脇差を出して腰に差し、ふるえる足元を踏〆ふみしめて此のの表に立ちましたのは、丁度日の暮掛りまする時。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
はじめの内は、よく実家さとからお金を取つたりして、つと青木さんの手前をつくろつてゐられたやうな事もあつたらしい。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
余は廊下ろうかづたいに書院に往って、障子の外にたたずんだ。蓄音器が歌うのではない。田圃向たんぼむこうのお琴婆さんが歌うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼は奇麗きれいに光る禿顱とくろを燈下に垂れて、ツル/\とで上げ撫で下ろせり、花吉は絹巾ハンケチ失笑をかしさを包みて、と篠田を見つ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その時、外人はメスを取り、丁度心臓と思われる辺へ、鋭い刃先をっと置いた。捨松は俄に恐ろしくなり両方の眼を固く閉じて、心の中で呟いた。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
故郷の家から圭一郎に送つて寄越す千登世には決して見せてはならない音信を彼女には内密につと圭一郎に手渡す役目を内儀さんは引き受けてくれる等、萬事萬端
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
欠伸あくびを封じた上に瞬きをしないで拝聴しろと仰有るのだから助からない。松本君がんな顔をしているかと思って、っと横目を使ったら、先方むこうも私の顔を見ていた。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それがしらは執事殿のやかたからまいった者。夜中の推参、憚りありとは存ずれど、何を申すも火急の用事じゃ。奥方にとお逢い申したい。これにあるは殿の御息女じゃ。」
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
真裸まはだかこころよさ、人目に触れぬ嬉しさにとほゝゑむ。
彼は襦袢じゆばんそではしまぶたりて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
障子の建合たてあわせを音もせずにっと簪揷をさしてねじると、障子が細く明きましたから、お蘭が内を差覗くと驚きました。
おくみは坊ちやんが、そちこちお歩きになつたりするのにも気を使つて、つとこちらへ伴れて来るやうにしてゐた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
離座敷の方へ小走って行き、雨戸をっと開け、座敷へ這入った。総司は、やや健康を恢復かいふくし、つやも出た美貌を行燈に照らし、子供のように無邪気に眠っていた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奥の座敷で日課を書いて居ると、縁にうずくまって居た猫のトラがひらりと地に飛び下りた。またひらり縁に飛び上ったのを見ると、蜥蜴とかげくわえて居る。と下ろした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
二三本の卒塔婆そとばが亂暴に突きさゝれた形ばかりの土饅頭にさぞ雜草が生ひ茂つてゐるだらうことを氣にして、つと墓守に若干のお鳥目てうもくを送つてお墓の掃除を頼んだりした。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
っとつねったものがありましたから、僕、姉さんだと思って、ウンと抓り返してやったんです。『痛い! 君だったのかい? おや/\』って、兄さん、変な顔をしていましたよ
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
老女は袖口にまぶたぬぐひつ「何ネ、——又た貴嬢あなた亡母おつかさんのこと思ひ出したのですよ、——斯様こんな立派な貴嬢の御容子ごようすを一目亡奥様せんのおくさんにお見せ申したい様な気がしましてネ、——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
飛行機は坊ちやんが御覧になるとお欲しがりになるからと、つと手鞄の中へしまつてお置きになる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
彼方此方あちこち抜足ぬきあしをして様子を見ると、人も居らん様子で、是から上って畳二畳を明けて根太板ねだいたを払って、っと抜足をして蓋を取って内を覗くと、穴の下は薄暗く
っと応接間を抜け出して、密告者の手紙を手頼たよりにして、こっそり二階へ行って見ました。
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし乗ってからっと取ろうとすると、何とまあ、お呪禁まじない種玉子たねたまごだというんです
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
二時間の後、用達ようたしに上高井戸に出かけた。八幡はちまんの阪で、誰やら脹脛ふくらはぎを後からと押す者がある。ふっと見ると、烏山からすやま天狗犬てんぐいぬが、前足をげて彼のはぎを窃とでて彼の注意をいたのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大和はと立ちてしつを出でぬ、不安の胸にうでこまねきつゝ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
其処そこらで聞くと此家こゝだと云うから、済まぬようだがっと這入って、裏へ廻って様子を聞いて居りますと、人違いだ/\と云う声がするから、はてと思って聞いて居りましたが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
つと來てゐる、愕き易い小鳥かなぞを、いつまでもさうしてゐさせようとする時のやうに、こつそりと再び目を閉ぢて——閉ぢてゐると見えるやうに小さくして——寢てゐる風に裝ひながら
女の子 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
と僕も確める必要を認めるほど好奇心を起してっと門まで行って来た。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お力はっと首を振ってみせ、すぐに窓を閉め、元の座へ帰って来た。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と云いながらっと文治郎の手を下へ置いて立上り、外をのぞいて見てぴったりいり□□□□□□□、□□□□□□□□、□□□□□□て、薄暗くなった時、文治の側へぴったり坐って
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お父さんはまだ寝ている。他の連中は別の座敷に休んだと見えて誰もいない。僕はっと起きて戸の隙間から明るい外を覗いた。すぐ鼻の先が海だ。ポッ/\/\というのは漁船の石油発動機だった。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そうして雨戸をっと開けた。それから障子を窃っと開けた。
善悪両面鼠小僧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其の頃のことだから小舟で見舞に堀切の別荘へ来ましたが、幇間たいこもちなぞというと、ごく堅気のうちでは嫌う者ゆえ、正孝は来は来たが、あがっていか悪いか知れませんから、っとのぞいて見ると
「千円以上のものだね」自分はっと囁いた。
広東葱 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
安子さんはっと腕時計を見た。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と文治郎涙を浮べ茶椀蒸のふたを取って恐る/\母の前へっと差出しました。
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「それじゃっと行っておいで
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
忠蔵はっと囁いた。
赤格子九郎右衛門の娘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
音のしないようにっと忍んで二階を下りてまいると、寝ずばんの藤助が居眠りをして居りましたから、これ幸いと瀧の戸が音羽の手を曳いて、跣足はだしで土間へ下りにかゝるとき藤助が目を覚まし
文治はッとこれを抜取りまして
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)