)” の例文
徳川家康の南洋政策は、豊臣秀吉の強硬な、むしろ恫喝的、侵略的のれとは事変り、きわめて穏健で、親和的で、実利的であった。
れかとつてるほどのおひと無愛想ぶあいさうもなりがたく、可愛かわいいの、いとしいの、見初みそめましたのと出鱈目でたらめのお世辭せぢをもはねばならず
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「英雄、医卜いぼくニ隠ルまことニ故有リ矣。医卜いぼくトハ素封無キ者ノ素封也。王侯ニ任ゼズ、自如トシテ以テ意ヲ行フベシ……エヘン——」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
仕つる所存なりと申立ければ大岡殿は其方若年ゆゑに心得違こゝろえちがひなり然ど其人殺は外にあると申たるは福井町にて何と申者なるぞ名前を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
れから自分で本当に読む気になって、田舎の塾へ行始ゆきはじめました。どうも十四、五になって始めて学ぶのだから甚だきまりが悪い。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかし卑怯至極な奴だ、何でもれは知ってる奴に遺恨を受けたものだね、併しお前は幼年の折におっかさまがおかくれに成ってしまい
若しれ歌の上ならば、正岡子規の「歌人に与ふる書」や斎藤茂吉氏の「童馬漫語」や島木赤彦氏の「歌道小見」を御覧なさい。
文芸鑑賞講座 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と堀尾君は鄭重にお辞儀をしたが、諸君は一斉に頷いたばかりで歯牙しがにかけない。直ぐもとの姿勢に戻って、れ/\仕事や雑談を続けた。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もしれ高橋氏にして、多少でも書道に造詣があり、書を審美的に鑑賞し得る具眼の士であるならば、こんな失態はなかったはずであろう。
高橋箒庵氏の書道観 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
れ固有と云ひ、折衷と云ひ、人間と云ふ、その義は皆ハルトマンが審美學の中に存ぜり。今多くその文を引かむもやうなし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
二月二十日の総選挙は、れ自身に於ては未だ吾々を満足せしめるに足りないが、日本の黎明れいめいの総選挙より来るであろう。
二・二六事件に就て (新字新仮名) / 河合栄治郎(著)
飜って思うに斉泰黄子澄の輩の、必ず諸王を削奪せんとするも、また理に於て欠け、情に於て薄し。れ諸王を重封せるは、太祖の意に出づ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
元日を御目出おめでたいものとめたのは、一体何処どこの誰か知らないが、世間がれに雷同らいどうしているうちは新聞社が困るだけである。
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
愛冠には我小屋のみにて、れより斗満迄十二里間は更に人家無く、………其困難たるや言語筆紙の及ぶべからざるなり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
れ見と信と行とは、吾人の宗教生活に於ける三大要義也。三者は相済あひな相資あひたすけて、其の価値に軒輊けんちすべき所あるを見ず。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
しかし其後では必ず嫉妬心と憎悪とがいて来る。れが他人の夫人であるからだ。彼は平常いつもの通り勝手な想像を胸に描いて此心持を消そうとした。
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
れを無理につかまへて、ねだつては話してもらひましたが、うるさかつたらうと思つて、今考へると気の毒です。
いろ扱ひ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
若しれ天高く澄みて秋晴しうせい拭ふが如き日であつたならば余が鬱屈も大にくつろぎを得たらうけれど、雲は益々低く垂れ林は霧に包まれ何処どこを見ても
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
もしれ後者——無政府主義の地理的分布の一事に至つては、此際特に多少の興味を惹起すべき問題でなければならぬ。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
これは近時きんじ建築けんちくたいする世人せじん態度たいどきはめて眞面目まじめになり、徹底的てつていてき建築けんちく根本義こんぽんぎ解決かいけつし、れから出發しゆつぱつして建築けんちくおこさうとかんがへからたことで
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
れでも戦場ヶ原より高きこと三米で、沼は中禅寺湖より三百九十四米、湯ノ湖に較べてさえ百八十七米も高い。
尾瀬雑談 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
専念もっぱらアタリそのものをよく品騰ひんとうし、価値づけて、体力から、量と質から、自分の中の夢想や好みの感応を抜きさしして、れに当り応じ赴くやうになる。
魚美人 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
一たん其処まで決心が来ると、今まで自分の考へを邪魔してゐた、いろ/\なものゝ姿がれ/″\に、その理由と共にはつきりと会得されるのであつた。
惑ひ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
千里の天眼鏡をかけて人生を観測すること既に久し、而して哲学を以て、科学を以て、詩人の霊眼を以て、つひに説明し尽すべからざるものはれ人生なるかな。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
れでは充分に探検したものとわれない、彼女はこの場合にも父君との約束を胸に浮べ、妖怪ようかいであれ幽霊であれ、是非その正体を見届けねばならぬと決心し
黄金の腕環:流星奇談 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
十人行けば十人の中で何処の誰れやら分らぬ様にして居れと常に私に言ひ聞かせ、人に軽蔑せられると云へば、れが面白いじや無いかと云つて居りました。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
あゝ思慮しりよ知識ちしき解悟かいご哲學者てつがくしや自若じゝやくいづくにかると、かれ只管ひたすらおもふて、ぢて、みづか赤面せきめんする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
れ——達人たつじんは——」声はいさゝかふるえて響きはじめた。余は瞑目めいもくして耳をすます。「大隅山おおすみやまかりくらにィ——真如しんにょつきの——」弾手は蕭々しょうしょうと歌いすゝむ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
危岸、険崖なくんば可なり、柔櫓じうろ声中、夢を載せて、淀川を下る旅客を学ぶも差支なしといへども、若れ我文明の中にやまひを存し、光れる中に腐敗を蔵するを見ば
斯う云うむずヶしい事件を引受けねば昇等しょうとうは出来ないぜ(大鞆)りゃわかッて居る盤根錯節ばんこんさくせつきらんければ以て利器を知る無しだからむずかしいはちっともいとヤせんサ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
これくに厚利こうりもつてせば、すなはひそか其言そのげんもちひてあらは其身そのみてん。これらざるからざるなり。ことみつもつり、るるをもつやぶる。
蒲生君平高山彦九郎のはいをして皇室の衰頽を歎ぜしめ勤王の大義を天下に唱えしむるにおいて最も力ありしものは嗚呼ああれ忠臣楠氏なんしの事跡にあらずして何ぞや
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
総論のところで述べておいたごとく、「少年小説」は、大人おとな物の分類の一切を包含しているのであって、れに英雄と、空想と、驚異との織込まれたものである。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「ま、喰はんでも可いから……加之それに立停ツて何か購ふといふのが、の鳥渡面倒なものだからね。」
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
文学者ぶんがくしやもくして預言者よげんしやなりといふは野暮やぼ一点張いつてんばり釈義しやくぎにして到底たうていはなし出来できるやつにあらず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
れ、すべての魂は我に属す、父の魂も子の魂も我に属するなり、罪を犯せる魂は死ぬべし。」
れがめに大邊たいへん危險きけんるとのことですが、わたくし田舍いなかりまする時分じぶんこれれについ實見じつけんしたことりますから、れをばまうようぞんじます、れは二さいばかりの子供こども
れ此「ユングフロイリヒカイト」は人間界の清潔、温和、美妙を支配する唯一の重宝ぢゆうはうなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
れ象山先生は、天下の士なり、まさに天下の用を為すべし。今にして用いずんば、天下それこれを何とやわん」といい、以て彼が蟄居ちっきょを解放せんとの斡旋あっせんを促したりき。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
国銅を尽して象をとかし、大山を削りて以て堂を構へ、広く法界ほつかいに及ぼして朕が智識ちしきとなす、つひに同じく利益りやくかうむりて共に菩提ぼだいを致さしめん、れ天下の富をつ者は朕なり
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
れは留蔵とめぞうならんといえば、先生、それそれその森田もりた留蔵……それよりだん、新旧の事に及ぶうち、予今朝こんちょうの時事新報にいでたる瘠我慢やせがまんせつに対する評論ひょうろんについてと題する一篇に
いやいやれは嘘ぢやらうわ。わしが今日見た地獄の機関からくりより、もつと面白いものはから天竺にも決しておぢやらぬわ。……何、秋でも冬でも牡丹の花が咲いておぢやるてや。え。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
わしは初め或魔術的な幻惑の犠牲になつたのだと思つたが、間も無くれでも真実な適確な事実とする事の出来る他の事情を思出したので、此考を許す事も出来なくなつて来た。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
戦慄すべき、犯罪の天才、私は嫉妬に狂った、而かも肺結核という——れは寧ろ患者の頭脳を病的にまで明晰めいせきにするかたむきのある所の——不治のやまいかかった、一人の暗い女を想像した。
一枚の切符 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「坊や、もう段々お昼になつて来るから、寝んねするんだよ。昨晩ゆふべく遊んだネ。たぬきを脅かしてやつたツて、りやア偉かつたネ、坊やは小さくても猪だから、狸位何でも無いネ。」
熊と猪 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
れでもどうやら物足らない様に思つたが、ふと病中にきいたことを思出した。帝劇で遇つたときお糸さんが羽田に居ると云つて居つたと、内の者が帰つてから話をしたその事である。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
れ謹み敬いて申し奉る、上は梵天帝釈ぼんてんたいしゃく四大天王、下は閻魔法王五道冥官どうみょうがん、天の神地の神、家の内にはいどかみかまどの神、伊勢の国には天照皇大神宮、外宮げぐうには四十末社、内宮には八十末社
「建国二千六百年のわが帝国の存亡そんぼうの一戦に懸る。各兵員れ奮闘せよ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
次の槌を振り上げるころにようやく槌音が聞こえる。それで、槌の運動と音とが交錯して目と耳へ来るのである。目に来るものも、耳に来るものも微に徹して明瞭である。単にればかりではない。
諏訪湖畔冬の生活 (新字旧仮名) / 島木赤彦(著)
彼は方園スクエアを過ぎて、心もち弓なりになったクロムウェル街を、俯向きながら歩いていると、すぐ五六間先の敷石の上に倒れている女の姿を見付けた。れは丁度コックス家の前あたりであった。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)