)” の例文
「仙人になる術を知っているのは、おれの女房にょうぼうの方だから、女房に教えて貰うがい。」と、なく横を向いてしまいました。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その内に思案して、あかして相談をして可いと思ったら、って見さっせえ、この皺面しわづらあ突出して成ることならッ首は要らねえよ。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
川長のお米にそれほど思われているとは、夢にも知らなければ、またぶりにも気づかない弦之丞は、心もち天蓋てんがいを下げて慇懃いんぎん
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「よッ、先程の釣り侍じゃな? 七十三万石の太守にむかって、もぐり大名とは何ごとじゃッ、何事じゃッ、雑言申ぞうごんもうさるるとくびが飛び申すぞッ」
「けっして余人には、もらさぬな?……一言でももらしたが最後、貴様のっ首を、そのままにはしておかぬぞ!」
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
女はない調子で低くかう云ふと、蒼褪あをざめた顔に、かすかな小皺をたゞよはせて冷やかに笑つた。そして「まあ御馳走の遅いこと。どうしたんだらう。」
その顔には、例のない愛想のいい表情がうかんだ。——「乗りたけりゃ、一人でお行き。そして、わたしは行かないからって、別当べっとうにそう言っとくれ」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
思うに恒産なくして恒心を失わず、貧賤にしては貧賤に処し、患難に素しては患難に処し、いっさいの境に入るとして自得せざるなきは君子のことである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
その調子があんまりないので、千種は、脇の下にぢゆつと汗をかいた。しかし、気を取り直して
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
本筋の芸はただ几帳面な味ももないパサパサのものでいいのだと思い込んでしまっていた。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「ほか場所ならばともかくも、渡し場近所で何事かあったのを知らん顔をしていては、後日に何かの迷惑にならねえとも限らねえ。念のために届けて置くがよかろう。」
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
〔評〕維新のげふは三藩の兵力に由ると雖、抑之を養ふにあり、曰く名義めいぎなり、曰く名分めいぶんなり。或は云ふ、維新のこう大日本史だいにつぽんし及び外史にもとづくと、亦しとせざるなり。
けれども夫婦となった以上は、お前、いくら旦那だんななくしていたって、こっちは女だもの。なおの方から少しは機嫌きげんの直るように仕向けてくれなくっちゃ困るじゃないか。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
富岡はつけなく云つた。娘は寝たまゝ暫く黙つてゐたが、むつくり起きあがると、黙つて、枕もとに散らかしたスカートをはき、小さい風呂敷包みを持つて廊下へ出て行つた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
しかしその頃とはちがっていた。金銀財宝珍器異類、おびただしかったそれらのものが、今は一つも見られない。ガランとした灰色のだだっぴろい部屋が、味ももなく広がっていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私が殆んど紙挾かみはさみの紐を結ばないうちに、彼は自分の時計を見るとなく云つた——
思い切ってない夫婦で、ときどき、夜半よなかごろになって、すさまじい団六の怒号がきこえてくるようなこともあったが、青木の前では、互いに猫撫で声でものを言い合っていた。
昆虫図 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
弥八 (得物を投じ、長脇差へ手をかける)抵抗てむかいすると、くびを、叩き落すぞ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
見給え、この闖入者ちんにゅうしゃは薄と厚とを知らない、醤と油とをわきまえない、清と濃との分も、くんとの別も頓着しない——およそ口腹を満たし得るものは、皆ひっかき廻して口に送る。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
濠をめぐり、目まぐるしくも變化なく、なく、單調に、單色に
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
仙「何うせッ首の飛ぶ身体じゃアねえか、云わねえとたゝッ殺すぞ」
「だから見たも同じだといっておるじゃないか。ただし、柳生家においても、何もそう訪ねてくる者を、なく追い返すというわけではない」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう好いから、あちらへ行つてくれ」と、今度は如何にもなく、云ひつけるのでございます。
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
女はない調子で低くこういうと、あおざめた顔に、かすかな小じわをよせて冷ややかに笑った。
「よし、これからもう一度引っ返して行って、あいつのっ首を叩き落してやろう」
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それでゐて、誰かゞ問を出すか、返答をしなくちやならないやうなことを云ふと、ない返辭ぢやないが、少くとも、思ひ切つた返答をづけ/\云つてしまふ。それはどんな意味です。
健三はない挨拶あいさつをしたなり、その人の顔をじっと見守った。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「うーム。ようもじゃま立てをいたしたな! いたりといえども穴山梅雪あなやまばいせつ、そのッ首をはねとばしてくれよう」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう好いから、あちらへ行つてくれ」と、今度は如何にもなく、云ひつけるのでございます。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さつきから物蔭でそつと立聞きをして居りましたら、お菊どのが大切のお皿を割つたとやら、砕いたとやら、そりやもうお菊殿の落度は重々、そのかぼそいくびをころりと打落されても
番町皿屋敷 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
それは近頃、茶々のぶりからも読むことができる。しかし茶々は、秀吉によくついてはいたが、その点だけは
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女は彼の帰つたのち、肩のりのなほつたやうに感じた。が、翌日になつて見ると、親子の情などと云ふことを考へ、何か彼になかつたのをすまないやうにも感じ出した。
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『家名に代えても、数右衛門のくび申し受ける。云い条あらば、これへ出て、武士らしゅう云ってみよ』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俊助はとうとうを折って、渋々その切符を受取りながら、ない声で礼を云った。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
とにかく、怪しい奴と睨みましたので、ツカツカと側へ寄って、じッと挙動きょどうをみつめておりますと、格別、あわてて逃げるぶりもなく、そのまま山を下りて行く様子。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう云うっ気ないY中尉に不思議にも親しみを感じながら。………
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さるを、かつて菊王に托してやった自分の遺書同様な書状にも、以後なんの返しもないし、また船木頼春が訪ねて行っても、それにも、ない門前払いをくわせたという。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は感動をおおうように、妙にのない声を出した。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
だが、——いまは、どこまでめくらていをみせて蛾次郎がじろうにゆだんをさせ、そのくびをひンねじってやろうと、心のおくにためきって、かれの悪口雑言あっこうぞうごんを、いうがままにこらえている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それは、どういうわけだ。いい加減なことをぬかしたら、くびをひき抜くぞよ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奸賊かんぞく和田呂宋兵衛わだるそんべえ伊那丸方いなまるがたにさる者ありと知られたる木隠こがくれッ首もらった」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、この納所は、武蔵を追っ払おうとするのが肚か、いよいよにべもない。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そやつの挨拶とは、何かいいがかりをつけて酒代さかてをねだるつもりであろう。押しの太い尺八乞食め、見せしめにくびをぶち落してくれるから召し連れて来い」ひどくかんにさわったらしく
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いくら酒の上にいたせ、よいほどに引っ込まぬと、くびね落すぞ」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こりゃ平次、いつもの仕事場とはちがうぞ、ゆるし難い狼藉ろうぜき、きょうこそ、そのっ首を打ち落してやるから立てっ」えりがみを引摺ひきずると、平次郎はもう痩せ犬のように身を縮めているだけだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わからないの? ……この間からの私のぶりでも」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といわぬばかりな顔つきを、なく振り向けた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)