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木隠
陣をくずした
小姓組の者をいつのまにかとびこえたのであろう、
木隠は
白球を手に、
菊池半助は
紅球を手にして、
最初の
位置に立っている。
遙に
木隠の音のみ聞えし流の
水上は浅く
露れて、
驚破や、ここに
空山の
雷白光を放ちて
頽れ落ちたるかと
凄じかり。
黄金丸が
睨め
付し、
眼の光に恐れけん、その矢も
得放たで、
慌しく枝に走り昇り、
梢伝ひに
木隠れて、忽ち姿は見えずなりぬ。
その
円い帽子の影は
頓て
木隠れて見えなくなつたが、ミハイロは
背後で手を組むで、まだ立つてゐる。何処へ
行処もない。