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番目ばんめには露國文豪ろこくぶんがうトルストイはく傑作けつさく千古せんこゆき」とふのと、バンカラ喜劇きげき小辰こたつ大一座おほいちざふのが、赤地あかぢしろいてあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なかいたやうな……藤紫ふじむらさきに、浅黄あさぎ群青ぐんじやうで、小菊こぎく撫子なでしこやさしくめた友染いうぜんふくろいて、ぎんなべを、そのはきら/\とつてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
人々のすがたはみな、紅葉もみじびたように、点々の血汐ちしおめていた。勇壮といわんか凄美せいびといわんか、あらわすべきことばもない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうちずんずんそらあかるくなってきて、ひがしそら薄赤うすあかまってくると、どこかのむらにわとりてるこえがいさましくこえました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
祖母の手助けをするくらいの年齢になると、朝から晩まで、薄暗い店で働かせられた。彼女は周囲を支配してるいろんな習慣にんだ。
「おばあさん、これはなんというものですか。」と、あやはほおをめながら、みせこしをかけていたおばあさんにききました。
海ほおずき (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あたし、どんなに苦しんだかしれないの。お気にまないでしょうけど、柚子、怖がらずに死ねるようにしていただきたいわ」
春雪 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
着たるやうなる子供の面影、腰より下は血にみて、九十五、六程も立ならび、声のあやぎれもなくおはりよ/\と泣きぬ、云々
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
騎兵は将軍を見送ると、血にんだとうひっさげたまま、もう一人の支那人のうしろに立った。その態度は将軍以上に、殺戮さつりくを喜ぶ気色けしきがあった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
惡業わるさまらぬ女子おなごがあらば、繁昌はんじようどころかひともあるまじ、貴君あなた別物べつものわたしところひととても大底たいていはそれとおぼしめせ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
書院前しょいんまえ野梅やばいに三輪の花を見つけた。年内に梅花を見るはめずらしい。しもに葉をむらさきめなされた黄寒菊きかんぎくと共に、折って小さな銅瓶どうへいす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
肩先にあてていた真赤な血のんだ手が徐々に下に滑り落ちてゆくと、傷口がぱくりと開いて、花が咲いたように鮮血がぱっとふきだした。
不思議なる空間断層 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この二つの歌を見れば、カキツバタの花のしるで布をめたことがくわかる。(こういう場合の「よく」を「良く」と書いてはいけない。)
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
へやの中央に、秋の七草をめ出した友禅ゆうぜんちりめんの夜のものが、こんもりと高く敷いてあるが、萩乃は床へはいってはいない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
多分昨夜ゆうべのままらしく、血潮にんだあわせのまま、床の上に横たえた死骸は、亭主の辰五郎と同年輩の三十前後、でしょうか。
しかも玉次郎をなぐった玉造もかつて師匠金四のために十郎兵衛の人形をもって頭を叩き割られ人形が血で真赤まっかまった。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「いよいよだめだね」と柳はいった、平素温和なかれに似ずこの日はさっと顔をめて一抹いちまつ悲憤の気が顔にあふれていた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
罪あっても罪にむ顔でない、汚れても汚れはせぬ、之に悪人悪女の様に思うては罰が当るとは、殆ど空おそろしい程に思い
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
その旗にはそれぞれ「東洋一とうよういち大曲馬団だいきょくばだん」「東洋一とうよういち移動大動物園いどうだいどうぶつえん」「世界的大魔術せかいてきだいまじゅつ」「世界的猛獣使せかいてきもうじゅうつかい」などという字が白く、めぬかれてあります。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
脣からは、血にんだ歯が、がくがくふるえて現れていた。ぼろぼろに切られた袴の中で、脚が、少しずつ、動いて、少しずつ近づいて来ていた。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
※等あねらひどかんべらは」とかれはおつたのめつゝあつたかみが、まじつた白髮しらがをほんのりとせるまでにくすりめてきたなくなつつたのをつゝいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
すみべにながしてめた色紙いろがみ、またはあかあを色紙いろがみ短册たんざくかたちつて、あのあをたけあひだつたのは、子供心こどもごゝろにもやさしくおもはれるものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と云って、見ると、持ってる一刀が真赤に鮮血のりみて居るので、ハッとお驚きになるとえいが少しめまして
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
北野きたのはづれると、麥畑むぎばたけあをなかに、はな黄色きいろいのと、蓮華草れんげさうはなあかいのとが、野面のづら三色みいろけにしてうつくしさははれなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
おゝこの集団しふだん姿すがたあらはすところ、中国ちうごく日本にほん圧制者あつせいしゃにぎり、犠牲ぎせいの××(1)は二十二しやうつちめた
道は色せかけた黄昏たそがれを貫いていた。吉良兵曹長が先に立った。崖の上に、落日にめられた桜島岳があった。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
けれども校長かうちやうかれたいする樣子やうす郡長樣ぐんちやうさんたいするほど丁寧ていねいなことなので、すで浮世うきよ虚榮心きよえいしんこゝろ幾分いくぶんめられてぼくにはまつたあやしくうつつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
めにも鼻の表現に暗い影響を及ぼすような、暗い心理的経過を持ってはなりませぬ。これは誰にでもわかり切った問題で、又それだけの事であります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それほど気にんで片時も思い忘れることの出来ない女を、一年も二年もじっとこらえて見ないでいて、金だけは苦しい思いをしてきちんきちんと送ってやり
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
老人はまゆせてしばらく群青ぐんじょういろにまった夕ぞらを見た。それからじつに不思議ふしぎ表情ひょうじょうをしてわらった。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自転車は久子としたしかった自転車屋の娘の手づるで、五か月月賦げっぷで手にいれたのだ。着物がないので、母親のセルの着物を黒くめ、へたでもじぶんでった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ああいう悪風にみ、ああいう楽しみもして、ああいう耽溺のにおいも嗅いで見たいような気がした。
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
君まで明智式の論理にんで、油断をしてしまっては、却って危険だからだ。あの男はその気遣いの為に、わざと君を除外して、僕に丈け報告してくれた訳なんだよ。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おまへの緑の髮の毛の波は、貝のが斧のときしらせると、眞紅しんくまる。すぎしかたを憶ひだして。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
どの運河カナルの水も鏡のやうに明るくてゐどのやうに深く、その上に黄いろくんだ並木や、淡紅うすあかく塗つた家の壁や、いろいろにいろどつた荷船にぶねやが静かに映つて居るのを見ると
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
へどもてどもてき強者さるものふたゝする七隻しちせき堅艦けんかん怒濤どたう逆卷さかまき、かぜれて、血汐ちしほみたる海賊かいぞく旗風はたかぜいよ/\するどく、たけく、このたゝかひ何時いつしともおぼえざりしとき
伊豆や相模さがみの歓楽郷兼保養地に遊ぶほどの余裕のある身分ではないから、房総ぼうそう海岸を最初はえらんだが、海岸はどうも騒雑そうざつの気味があるので晩成先生の心にまなかった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そのとき黒装束くろせうぞく覆面ふくめんした怪物くわいぶつが澤村路之助丈えとめぬいたまくうらからあらはれいでヽあか毛布けつとをたれて、姫君ひめぎみ死骸しがいをば金泥きんでいふすまのうらへといていつてしまつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
また、「いき」は色気のうちに色盲しきもうの灰色を蔵している。色にみつつ色になずまないのが「いき」である。「いき」は色っぽい肯定のうちに黒ずんだ否定をかくしている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
丘の斜面にあけまり、虚空を掴んでたおれてい、頬冠りをしたもう一人の男が、一軒の農家を背景に持った、疎林の中へ駈け込む姿が、陽の中に黒い点のように見えた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
マルソオの頬は朱色にまる。が、彼は怒らずに、ほとんど哀願せんばかりの眼つきでこたえる——
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
何事なにごとぢゃこの血汐ちしほは、これ、この廟舍たまや入口いりくちいしめたこの血汐ちしほは? ぬしもないこのつるぎは? 此樣このやう平和へいわ場所ばしょまぶれにしててゝあるは、こりゃなんとしたことであらう?
以上四人の浅ましさ屍体のほかに、あけみたる重太郎もまた倒れていたのは意外であった。そのかたわらには、彼の運命を象徴するような紅い椿の花が、地に落ちて砕けていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この句を評して「一桶の」といふのは実際桶に入れて藍をてたといふのでなくて染物を洗ふため水のんでゐる工合を云々うんぬんといふてある。しかし余の趣向はさうでない。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
てらゆきて見るに口中をゑぐられあけみて居りしかば是は大變々々といふこゑに親父の五兵衞も駈付かけつけて五郎藏が殺されたりとは夫れは如何いかゞせし事ぞと死骸を見てヤヽ是はと尻餠しりもち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
と見るもなく初秋しよしう黄昏たそがれは幕のおりるやうに早く夜にかはつた。流れる水がいやにまぶしくきら/\光り出して、渡船わたしぶねに乗つてる人の形をくつきりと墨絵すみゑのやうに黒くめ出した。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
和尚はすこし首をかがめて夫人の唇を己のほおに受けようとした。と、李張の手にした矢が飛んでその前額ぜんがくから後脳こうのうにかけてつらぬいた。夫人の倒れた上に血にんだ和尚おしょうの体が重なった。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
世は穢れ、人は穢れたれども、我は常に我恩人のひとけがれみざるを信じて疑はざりき。過ぐれば夢より淡き小恩をも忘れずして、貧き孤子みなしごを養へる志は、これを証してあまりあるを。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わたくしまりがわるくて仕方しかたがなく、おぼえずかお真紅まっかめて、一たんはおことわりしました。
みのるの用箪笥の小抽斗こひきだしには油にんだ緋絞りのてがらの切れが幾つも溜つてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)