かへ)” の例文
屋根に葺いてある瓦には長い、かへつた耳が出てゐる。家に使つてある材木は皆暗い色をしてゐて、それに一様な彫刻がしてある。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
市街まち中程なかほどおほきな市場いちばがある、兒童こども其處そこへ出かけて、山のやうに貨物くわもつつんであるなかにふんぞりかへつて人々ひと/″\立騒たちさわぐのをて居る。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
天晴あつぱ一芸いちげいのあるかひに、わざもつつまあがなへ! 魔神まじんなぐさたのしますものゝ、美女びじよへてしかるべきなら立処たちどころかへさする。——
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところがすこつたとき、嘉十かじふはさつきのやすんだところに、手拭てぬぐひわすれてたのにがつきましたので、いそいでまたかへしました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
苦情くじようみましたので、まやかしものといふことがわかつて、これもたちまかへされ、皇子みこ大恥おほはぢをかいてきさがりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
さだめてあの張作霖ちやうさくりんがそんなふう相好さうかうくづしてのけぞりかへつただらうとおもふと、そのむかし馬賊ばぞく荒武者あらむしやだつたといふひとのよさも想像さうざうされて
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
其時平岡は座敷の真中まんなか引繰ひつくかへつててゐた。昨夕ゆふべどこかのくわいて、飲みごした結果けつくわだと云つて、赤いをしきりにこすつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
受たる十三兩三分は勘辨かんべんするによりのこりの金を只今かへされよと云ふに文右衞門扨々聞譯きゝわけのなき男かな然れば是非ぜひに及ばず是を見てうたがひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
天女てんによ御空みそらふがごと美音びおんは、こゝろなき壇上だんじやうはなさへさへゆるぐばかりで、滿塲まんじやうはあつとつたまゝみづつたやうしづまりかへつた。
みんながもどすだらうとおもつて、あいちやんがあとかへつてると、おとろくまいことか、みんなで急須きふすなか福鼠ふくねずみまうとしてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
はなし容子ようすではそれほどでもないのかとおもつてもたが、それでも勘次かんじくちくにもつばのどからぐつとかへしてるやうで落付おちつかれなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
誠にしづまりかへつて兵士へいしばかりでは無い馬までもしづかにしなければいかないとまうところが、馬は畜生ちくしやうの事で誠に心ない物でございますから、じれつたがり
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ほのほまなこ忿怨神いかりのかみよ、案内者あんないじゃとなってくれい!……(チッバルトに對ひ)やい、チッバルト、先刻せんこく足下おぬしおれにくれた「惡漢あくたう」のいまかへす、受取うけとれ。
らへて郡長ぐんちやうせがれづらが些少いさゝかおんはなにかけての無理難題むりなんだいやりかへしてりたけれど女子をなご左樣さうもならずやなぎにうけるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かういつたところで、あぢはひは、あなたがたがめい/\に、幾度いくどもくりかへんでなければおこつてないとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
夫人はかへがへす再会を約して手を握られた。自分達三人は馬車の上でどんなに今日けふ幸福さひはひを祝ひ合つたか知れない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
やうやなほしてやつたれいが、たつた五りやうであつたのには、一すんりやう規定きていにして、あまりに輕少けいせうだと、流石さすが淡白たんぱく玄竹げんちくすこおこつて、の五りやうかへした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
道子みちこ小岩こいは色町いろまち身売みうりをしたとき年季ねんきと、電話でんわ周旋屋しうせんやと一しよくらした月日つきひとをむねうちかぞかへしながら
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
英吉利イギリスの貴族は、恋で平民の娘と一緒になつたり、金で亜米利加アメリカ辺のはねかへりと結婚したりするので、それによつて血統の廃頽を救つてゐると言はれてゐるが
これが毎年まいねんくりかへされると、その一年いちねんごとに生長せいちようした部分ぶぶんだけが、まるになつて區分くわけがつくのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
とつてかへしてたすさうとするうち主要動しゆようどうのために家屋かおく崩壞ほうかいはじめたので、東湖とうこ突差とつさ母堂ぼどう屋外おくがいはうした瞬間しゆんかん家屋かおくまつた先生せんせい壓伏あつぷくしてしまつたが
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
かへしラランのんだが、その返事へんじがないばかりか、つめたいきりのながれがあたりいちめん渦巻うづまいてゐるらしく、そのために自分じぶんのからだはひどくあふられはじめた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
外套ぐわいたう日蔭町物ひかげちやうもの茶羅紗ちやらしやかへしたやうな、おもいボテ/\したのを着て、現金げんきんでなくちやかんよとなどゝ絶叫ぜつけうするさまは、得易えやすからざる奇観きくわんであつたらうとおもはれる
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
小娘こむすめ何時いつかもうわたくしまへせきかへつて、不相變あひかはらずひびだらけのほほ萌黄色もえぎいろ毛絲けいと襟卷えりまきうづめながら、おおきな風呂敷包ふろしきづつみをかかへたに、しつかりと三とう切符ぎつぷにぎつてゐる。……
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ち兼ねたよ。見事にかへうちさ、武家は苦手だ。町方の岡つ引なんか手を出すものぢやねえ」
それから貝塚かひづかぎには、貝殼かひがら見當みあたらぬけれどもやはり人間にんげん住居じゆうきよしたあとえて石器せつきやその遺物いぶつ土中どちゆうはさまつてゐるところがありまするし、またそれをその百姓ひやくしようかへ
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
と思はず知らず叫んで、びツくりしたといふよりは、あきかへツて見てゐると無量幾千萬の螢が、まりのやうにかたまツて飛違ツてゐる。それに此處ここの螢は普通の螢の二倍の大きさがある。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
上句あげくには、いつだまれとか、ふな、とかと眞赤まつかになつてさわぎかへす。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ジロリと此方こなたの頭の先から足の先まで見下みおろしましたこのやうな問答もんだう行水ゆくみづの流れえずむかしから此河岸このかしかへされるのですがたゞ其時そのときわたくしの面白いと思ひましたのは、見下みおろした人も見下みおろされた人も
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
してや瀧口殿は何思ひ立ちてや、世を捨て給ひしと專ら評判高きをば、御身は未だ聞き給はずや。世捨人よすてびとに情も義理もらばこそ、花ももある重景殿に只〻一言の色善いろよかへごとをし給へや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
わたし日本にほん今日こんにち經濟界けいざいかい金解禁きんかいきん出來できたからとつて、たなごゝろかへごと景氣けいきやうとはかんがへぬ。しかしながらいませつわたしこゝ説明せつめいして半面はんめん事實じじつかたるものとからうとおもふのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
『え、幸福かうふく?』夫人ふじん微笑びせうかへした。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
そうかへつた。「なに御用ごようで。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
たまをも遠くかへしつゝ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
友達はそれをしちに入れて一時をしのいだ。都合がついて、質を受出うけだしてかへしにた時は、肝心の短銃ピストルの主はもう死ぬ気がなくなつて居た。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なぎさつきに、うつくしきかひいて、あの、すら/\とほそけむりの、あたかかもめしろかげみさきくがごとおもはれたのは、記憶きおくかへつたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふ寶澤こたへて我は徳川無名丸むめいまると申す者なり繼母けいぼ讒言ざんげんにより斯は獨旅ひとりたびを致す者なり又其もとは何人にやとたづかへせば彼者かのもの芝原しばはらへ手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして、ちよつといきれたやうな樣子やうすをすると、今度こんどはまたあたま前脚まへあしさかんうごかしながらかへしたつちあなした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それは空虚からになつためしつぎをかへときなかれてやるためであつた。めしつぎには大抵たいてい菱餅ひしもち小豆飯あづきめしとがれられてあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
めればふりきるそでたもとまづいましばしとびつうらみつりつく手先てさきうるさしと立蹴たちげにはたと蹴倒けたふされわつとこゑれとわがみゝりてかへるは何處いづこ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんはふべき言葉ことばもなく、いくらかのおちや麺麭パン牛酪バターとをして、福鼠ふくねずみはう振向ふりむき、『何故なぜみん井戸ゐどそこんでゐたの?』とかへしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
すみ黒々くろ/″\かれた『多田院御用ただのゐんごよう』の木札きふだててられると、船頭せんどうはまたふねかへさないわけにかなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
巡査じゆんさいつぷく點火つけてマツチを義母おつかさんかへすと義母おつかさん生眞面目きまじめかほをして、それをうけ取つて自身じしん煙草たばこいはじめた。べつ海洋かいやう絶景ぜつけいながめやうともせられない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かういつても、あなたがたかんがへててくれなければわからないことだが、幾度いくどもくりかへしてもらひたくおもひます。意味いみからいへば、かはおとがよいといふだけのことです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
むかしひと地震ぢしんかへし、あるひもどしをおそれたものである。此言葉このことば俗語ぞくごであるため誤解ごかい惹起ひきおこし、いまひとはこれを餘震よしんめてゐるが、それはまつたあやまりである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
パレスのはう借金しやくきんかへしてしまふし、御礼奉公おれいぼうこうもちやんと半年はんとしゐてやつたんだから、かアさんがきてればうちかへつて堅気かたぎくらすんだけれど、わたし、あんたもつてるとほ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
しんじません、しんぜられません。』と船長せんちやういま取上とりあげた葉卷シユーガー腹立はらたたし卓上たくじやうかへして
わたしはをとこたふれると同時どうじに、まつたかたなげたなり、をんなほうかへりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
チッバルトは其儘そのまゝたん逃去にげさりましたが、やがてまたってかへすを、いま復讐ふくしうねん滿ちたるロミオがるよりも、電光でんくわうごとってかゝり、引分ひきわけまするひまさへもござらぬうちに
「番頭さんは離屋へ行つて居て、急に惡くなりましたが、私が物音を聽いて駈け付けた時は、まだ息があつて、主人の時と同じやうに——七千兩、七千兩——とかへして居りました」