うつく)” の例文
あおい、うつくしいそらしたに、くろけむりがる、煙突えんとつ幾本いくほんった工場こうじょうがありました。その工場こうじょうなかでは、あめチョコを製造せいぞうしていました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうつくしいそらうばはれてゐたを、ふと一ぽん小松こまつうへすと、わたし不思議ふしぎなものでも見付みつけたやうに、しばらくそれにらした。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
はたして島本しまもとは、とくに注意ちゅういはしなかつたけれど、金魚きんぎょたつていいました。そして、ひらひらしていてうつくしかつた、といつたんです
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
うつくしいてて、たまのやうなこいしをおもしに、けものかはしろさらされたのがひたしてある山川やまがは沿うてくと、やまおくにまたやまがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
紅葉もみぢうつくしさは、植物しよくぶつそのものゝ種類しゆるいと、その發生はつせい状態じようたいとでそれ/″\ちがひますが、一面いちめんには附近ふきん景色けしきにも左右さゆうされるものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
これうつくしかあないわ、こんなきたない花ってないわ! あたし着物を着るとすぐに、薔薇を摘もうと思ってお庭へ駆けて行ったのよ。
くもならば、くもに、うつくしくもすごくもさびしうも彩色さいしきされていてある…取合とりあふてむつふて、ものつて、二人ふたりられるではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これをんだ泉の水にたとえた人がいますが、実際じっさいフランス語でこれを読むと、もう百倍もうつくしい文章だということがわかります。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
雖然けれども顏の寄麗きれいなのと、體格の完全くわんぜんしてゐるのと、おつとりした姿と、うつくしいはだとに心をチヤームせられて、賤しいといふ考をわすれて了ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
あれこそはひとりこの御夫婦ごふうふだいかざる、もっとうつくしい事蹟じせきであるばかりでなく、また日本にほん歴史れきしなかでのりの美談びだんぞんじます。
君、今ここにわが前にます。われは、カルメルざんに孤雲を望む牧人の心となりて、君が御爲おんためにやをらうつくしき一條いちでうの歌を捧げむ
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
金時計きんどけいだの金鎖きんぐさりいくつもならべてあるが、これもたゞうつくしいいろ恰好かつかうとして、かれひとみうつだけで、ひたい了簡れうけん誘致いうちするにはいたらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とうさんは榎木えのきばかりでなく、橿鳥かしどりうつくしいはねひろひ、おまけにそのおほきな榎木えのきしたで、『丁度好ちやうどいとき。』までおぼえてかへつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ラ・ベル——うつくし姫とよばれていたのが、大きくなるにしたがい、美人ということばは、このむすめひとりのためにあるようになりました。
ほしなほり、ほしひめつむり宿やどったら、なんとあらう! ひめほゝうつくしさにはほし羞耻はにかまうぞ、日光にっくわうまへランプのやうに。
そしてその活人形いきにんぎょうおどりを見ようとおもって、町の人はもとより、近在きんざいの人まで、うつくしくかざって、町のにぎやかな広場に集ってきました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
だれの善ですか。」諒安はも一度いちどそのうつくしい黄金の高原とけわしい山谷のきざみの中のマグノリアとを見ながらたずねました。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
土器どきはやはり日本につぽん彌生式やよひしきちか種類しゆるいのものが普通ふつうでありまして、ときにはめづらしく、だんだら模樣もよう彩色さいしきしたうつくしいものがることもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
橋本のいさちゃんが、浜田のばあさんに連れられ、高島田たかしまだ紋付もんつき、真白にって、婚礼こんれい挨拶あいさつに来たそうだ。うつくしゅうござんした、とおんなが云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
その子はずんずん大きくなって、かがやくほどうつくしくなって、それはねずみのおくにでだれ一人ひとりくらべるもののない日本一にほんいちのいいむすめになりました。
ねずみの嫁入り (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
獰惡だうあく野良猫のらねこ、おとなりのとり全滅ぜんめつさせたわるいヤツ、うちたひをさらつた盜癖とうへきのある畜生ちくせう、それがんだは、このやさしいうつくしいニヤンこうである。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
先刻さつきうつくしいひとわきせきつたが、言葉ことばつうじないことがわかつたところで、いま日本語にほんごのよくはなせるお転婆てんばさんらしいおんな入替いれかわつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
まちつかれた身體からだをそつと椅子いすにもたれて、しづかなしたみちをのぞこふとまどをのぞくと、窓際まどぎは川柳かはやなぎ青白あをしろほそよるまどうつくしくのびてた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
「ねえ! とてもうつくしいとりだよ。そしてこんな奇麗きれいな、黄金きんくさりを、わたしにくれたよ。どうだい、立派りっぱじゃないか。」
きたまくらに、しずかにじている菊之丞きくのじょうの、おんなにもみまほしいまでにうつくしくんだかおは、磁器じきはだのようにつめたかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まへさんはさかんところて、元氣げんきよくはたらいたのはよろしい、これからは、其美そのうつくしいところて、うつくしいはたらきをもるがからう。うつくしいことを。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そして、私はいきなりうつくしい夢から呼びまされたやうに、現實的げんじつてきなその世界の中に卷き込まれねばならなかつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わたしかんがえますところではあれもちますにつれて、うつくしくなりたぶんからだもちいさくなることでございましょう。
以上いじやう概括がいくわつしてその特質とくしつげると、神佛しんぶつたうといもの、幽靈ゆうれいすごいもの、化物ばけもの可笑おかしなもの、精靈せいれうむしうつくしいもの、怪動物くわいどうぶつ面白おもしろいものとる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
怜悧れいり快活くわいくわつな、おほきいつてゐたうつくしい彼女かのぢよいま一人ひとりをんなとして力限ちからかぎたゝかつた。そしてつひやすらかにねむつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
不思議ふしぎおもつて近寄ちかよつて、そっとつてると、そのつたつゝなかたか三寸さんずんばかりのうつくしいをんながゐました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
あいちやんはけて、それが鼠穴ねずみあなぐらゐちひさなみちつうじてることをり、ひざをついてまへたことのあるうつくしい花園はなぞのを、そのみちについてのぞみました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「まあなんにも出來できないの。ほんとにあんたはうぐひすのやうなこゑもないし、孔雀くじやくのやうなうつくしいはねももたないんだね」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
今度はイザナギのみことがまず「ほんとうにうつくしいお孃さんですね」とおつしやつて、後にイザナミの命が「ほんとうにりつぱな青年ですね」と仰せられました。
ひさしぶりでかしらはうつくしいこころになりました。これはちょうど、あかまみれのきたな着物きものを、きゅうににきせかえられたように、奇妙きみょうなぐあいでありました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
子供は舌の働きが自由でないから、とかく言いにくい音を言いやすい音にかえたがる。「うつくしい」を「うつくちい」、「お父様とうさま」を「おとうちゃま」などと云う。
特殊部落の言語 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
盜人ぬすびとにかうはれると、つまはうつとりとかほもたげた。おれはまだあのときほどうつくしいつまことがない。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これが永福門院えいふくもんいんのおうたです。御覽ごらんのとほり、ものいろあひ、あはせが、非常ひじよううつくしくつくられてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
おなをんな取卷とりまかれてゐても、三上みかみは(説明中止せつめいちうし)——時雨しぐれさんは、社會的しやくわいてきに、文學的ぶんがくてきに、とにかく最早もはや、三四人よにん女文子をんなぶんし送出おくりだしてゐる、この賢明けんめいにしてうつくしいひと
東京市の河流は其の江湾なる品川しながは入海いりうみと共に、さしてうつくしくもなく大きくもなく又さほどに繁華でもなく、誠に何方どつちつかずの極めてつまらない景色をなすに過ぎない。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「おれのつのはなんてうつくしいんだらう。だが、このあしほそいことはどうだろう、もすこしふとかつたらなア」と独語ひとりごといつた。そこへ猟人かりうどた。おどろいて鹿しかげだした。
らないよ。」とクリストフはかなしい声でいった。「ただうつくしいきょくを作りたかったんだよ。」
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
〔ヱヴェレストはおもつたよりとほいな〕と独言ひとりごとしながら四辺あたり見廻みまはすと、うすひかりうつくしくあやしくみなぎつて、夕暮ゆふぐれちかくなつたのだらう。下界したても、くもきりでまるでうみのやうだ。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
室内しつない一部分には土間どま有りて此所ここは火をき、水瓶みづがめを置く爲に用ゐられたるならん。土器どき石器せききの中には小さき物あり、うつくしき物あり。是等これらとこの上に直にかれたりとは考ふる能はず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
いやだよ、大概たいがいこゑでも知れさうなもんだアね、小春こはるだよ。梅「え……小春姐こはるねえさんで、成程なるほど……うつくしいもんですなア。小春「いやだよ、大概たいがいにおし。梅「へゝゝおはつにおかゝりました。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さうして其考そのかんがへはたゞ瞬間しゆんかんにしてえた。昨日きのふんだ書中しよちゆううつくしい鹿しかむれが、自分じぶんそばとほつてつたやうにかれにはえた。此度こんど農婦ひやくしやうをんな書留かきとめ郵便いうびんつて、れを自分じぶん突出つきだした。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
このみて相應に打けるゆゑ折々をり/\は重四郎をの相手となせしを以て重四郎は猶も繁々しげ/\出入なし居しが偶然ふと娘お浪の容貌みめかたちうつくしきを見初みそめしより戀慕れんぼじやう止難やみがたく獨りむねこがせしがいつそ我が思ひのたけ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けがれのない少年しょうねんたましいをほめたたえ、これをけが大人おとな生活せいかつみにくさ、いやしさをにくのろうソログーブの気持きもちは、レース細工ざいくのようにこまやかな、うつくしい文章ぶんしょうで、こころにくいまでにうつされている。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
此處こゝさへはなれてつたならばんなうつくしくところられるかと、ういふこと是非ぜひともかんがへます、で御座ございますから、わたし矢張やつぱりそのとほりのゆめにうかれて、此樣こん不運ふうんをはるべきが天縁てんえんでは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひゆのやうに紫ばんだ薔薇ばらの花、賢明はフロンド黨の姫君の如く、優雅いうがはプレシウズれんの女王ともいひつべきひゆのやうに紫ばんだ薔薇ばらの花、うつくしい歌を好む姫君、姫が寢室ねべやとばりの上に、即興そくきよう戀歌こひか
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)