)” の例文
あおい、うつくしいそらしたに、くろけむりがる、煙突えんとつ幾本いくほんった工場こうじょうがありました。その工場こうじょうなかでは、あめチョコを製造せいぞうしていました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんどは京都きょうと羅生門らしょうもん毎晩まいばんおにが出るといううわさがちました。なんでもとおりかかるものをつかまえてはべるという評判ひょうばんでした。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたし其時分そのじぶんなんにもらないでたけれども、母様おつかさん二人ふたりぐらしは、この橋銭はしせんつてつたので、一人前ひとりまへ幾于宛いくらかづゝつてわたしました。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
野に生まれて、野にって、そして野に食物をあさる群れの必ず定まって得る運命——その悲しいつらい運命にお作も邂逅でくわした。
ネギ一束 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
もなく、おんなのマリちゃんが、いまちょうど、台所だいどころで、まえって、沸立にえたったなべをかきまわしているおかあさんのそばへました。
みながそれをると、子安貝こやすがひではなくてつばめ古糞ふるくそでありました。中納言ちゆうなごんはそれきりこしたず、氣病きやみもくははつてんでしまひました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
庵主あんじゅさんは、よそゆきの茶色ちゃいろのけさをて、かねのまえにつと、にもっているちいさいかねをちーんとたたいて、おきょうみはじめた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「いいね。普通ふつう野菜物やさいもの無論むろんとして、ほかにトウモロコシだのトマトウだの、トマトウのとりてつて、ほんとにおいしいからな。」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
一、 最初さいしよ一瞬間いつしゆんかんおい非常ひじよう地震ぢしんなるかいなかを判斷はんだんし、機宜きゞてきする目論見もくろみてること、たゞしこれには多少たしよう地震知識ぢしんちしきようす。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
うつくしいてて、たまのやうなこいしをおもしに、けものかはしろさらされたのがひたしてある山川やまがは沿うてくと、やまおくにまたやまがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
正面より見ればまれての馬の子ほどに見ゆ。うしろから見れば存外ぞんがい小さしといえり。御犬のうなる声ほど物凄ものすごく恐ろしきものはなし。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
雜木林ざふきばやしあひだにはまたすゝき硬直かうちよくそらさうとしてつ。そのむぎすゝきしたきよもとめる雲雀ひばり時々とき/″\そらめてはるけたとびかける。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、寧子ねねを想うそばから、その寧子ねねの恋を、自分へ譲って、国外へ退いた純情一徹な友の身の上をも、彼はしきりと案じていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう加減かげんあるいてつて、たにがお仕舞しまひになつたかとおも時分じぶんには、またむかふのはう谷間たにま板屋根いたやねからけむりのぼるのがえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あいちやんはふたゝ福鼠ふくねずみはらたせまいと、きはめてつゝましやかに、『わたしにはわかりませんわ。何所どこからみん糖蜜たうみつんでたのでせう?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
私の眼は彼の室の中を一目ひとめ見るやいなや、あたかも硝子ガラスで作った義眼のように、動く能力を失いました。私は棒立ぼうだちにすくみました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしことへば御自分ごじぶんものにして言葉ことばてさせてくださる御思召おぼしめし有難ありがたうれしいおそろしい、あまりの勿躰もつたいなさになみだがこぼれる
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此返事このへんじいて、むつとはらつた。頭巾づきんした剥出むきだして、血色けつしよく頸元えりもとかゝるとむかう後退あとすざりもしない。またいてた。
(七九)閭巷りよかうひとおこなひてんとほつするものは、(八〇)青雲せいうんくにあらずんば、いづくんぞく(名ヲ)後世こうせいかん
大久保おほくぼ出発しゆつぱつしてからもなく、彼女かのぢよがまたやつてた。そのかほつてあかるくなつてゐた。はなしまへよりははき/\してゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
家人かじんのようすにいくばくか不快ふかいいだいた使いの人らも、お政の苦衷くちゅうには同情どうじょうしたものか、こころよく飲食いんしょくして早そうにった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
まごまごしている雇婆をてて、ひやのままの酒を、ぐっと一息にあおると、歌麿の巨体は海鼠なまこのように夜具の中に縮まってしまった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
窃盜せつたう姦淫かんいん詐欺さぎうへてられてゐるのだ。であるから、病院びやうゐん依然いぜんとして、まち住民ぢゆうみん健康けんかうには有害いうがいで、不徳義ふとくぎなものである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
れ」がして足がガクつき、どうしても機械についていられない。それを後から靴でられながら働いていることを話した。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
ロミオ あれは自分じぶん饒舌しゃべるのをくことのきなをとこ一月ひとつきかゝってもやりれぬやうなことを、一分間ぶんかん饒舌しゃべてようといふをとこぢゃ。
吾等われら喫驚びつくりして其方そなた振向ふりむくと、此時このとき吾等われらてるところより、大約およそ二百ヤードばかりはなれたもりなかから、突然とつぜんあらはれて二個ふたりひとがある。
「ぼくたちは雌牛めうしを買ったあかしをてればいいのだ。ユッセルの獣医じゅういの所へ使いをやればいい……あの人が証人しょうにんになってくれる」
槍ヶ岳対穂高岳は、常陸山ひたちやま対梅ヶ谷というも、あながち無理はなかろう、前者の傲然てる、後者の裕容迫らざるところ、よく似ている。
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
末男すゑを子供こどもきながら、まちと一しよ銀座ぎんざあかるい飾窓かざりまどまへつて、ほしえる蒼空あをそらに、すきとほるやうにえるやなぎつめた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
火事かじときには防火樹ぼうかじゆとして非常ひじようやくいへかずにみ、ときにはひといのちすらすくはれることがあることもわすれてはなりません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
すぐに庫裏くり玄関先げんくわんさきあゆると、をりよく住職ぢゆうしよくらしい年配ねんぱいばうさんがいまがた配達はいたつされたらしい郵便物いうびんぶつながらつてゐたので
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
しばらまつててゐるうちに、いしかべ沿うてつくけてあるつくゑうへ大勢おほぜいそうめしさいしる鍋釜なべかまからうつしてゐるのがえてた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
なかにはえだこしかけて、うえから水草みずくさのぞくのもありました。猟銃りょうじゅうからあおけむりは、くらいうえくもようちのぼりました。
そのときだれしのあしに、おれのそばたものがある。おれはそちらをようとした。が、おれのまはりには、何時いつ薄闇うすやみちこめてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いははなをば、まはつてくごとに、そこにひとつづゝひらけてる、近江あふみ湖水こすいのうちのたくさんの川口かはぐち。そこにつるおほてゝゐる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
鹿しかはおどろいて一度いちど竿さをのやうにちあがり、それからはやてにかれたのやうに、からだをなゝめにしてしました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしは、つんつるてんの短い上着を着たまま、じっとそこにって、死刑しけいを言いわたされた囚人しゅうじんよろしくのていでゆかを見つめていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ただが無いまでこうじきって、御余裕のある御挨拶を得たさの余りに申しました。今一応あらためて真実心を以て御願い致しまする。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
余程教育ある婦人でも後家ごけて通すというような美しい意気をもって世を過すという婦女子はチベットにはほとんどないです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
かれ熱心ねつしんいてくさうへこしからうへて、そのてたひざ畫板ぐわばん寄掛よりかけてある、そして川柳かはやぎかげうしろからかれ全身ぜんしんおほ
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わたし先頃さきごろフランスの西海岸にしかいがんにあるカルナックといふところおほきいいしつたのでありますが、いまみつつにをれて地上ちじようたふれてゐます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
もうして、このはなしはぶいてしまえばわたくし幽界生活ゆうかいせいかつ記録きろくおおきなあなくことになって筋道すじみちたなくなるおそれがございます。
こういいながら、なみうちぎわにって、とおい、はい色の空をゆびさしておられた先生のすがただけを、はっきりおぼえている。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
自己じこ現在げんざいつて經濟界けいざいかいつと變化へんくわしてるにかゝはらずれにたいして充分じうぶん理解りかいのないのがむしろより重大ぢうだいなる原因げんいんである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
其故それゆゑわたくしじゆくではこの規則きそく精神せいしん規則きそく根本こんぽんかへつて、各個人かくこじん都合つがふといふところを十ぶん了解れうかいせしむるといふ方針はうしんとつるのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
ママははらったらしい目つきでシューラをにらんだ。そして、いまいましそうに顔を赤くして、ぶつぶつ小言こごとをいい出した。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
その翌日あくるひ、こんなうはさがぱつとちました。昨日きのふ乞食こじきのやうなあのぼうさんは、あれはいま生佛いきぼとけといはれてゐるお上人樣しやうにんさまだと。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ならてる内にアノ山口巴から來る若旦那かへと小夜衣は空然うつかり長庵の口にのせられさればなりその三河町の若旦那はとんいたちみち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
畢竟ひつきやうにんいろで、けつして一りつにはかぬものでしよく本義ほんぎとか理想りそうとかをいてところ實際問題じつさいもんだいとしてはあまやくたぬ。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
老人はしきりとなだめていたが、由爺はたけてて誰の言うことも聞かない。あとの方の馭者も、雪の中だから次の宿まで行けと言ったけれど
遠野へ (新字新仮名) / 水野葉舟(著)