しやう)” の例文
わしはその前刻さつきからなんとなくこの婦人をんな畏敬ゐけいねんしやうじてぜんあくか、みち命令めいれいされるやうに心得こゝろえたから、いはるゝままに草履ざうり穿いた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(雷と夕立はをんさいのからくり也)雲は地中ちちゆう温気をんきよりしやうずる物ゆゑに其おこかたち湯気ゆげのごとし、水をわかし湯気ゆげたつと同じ事也。
其所そこで、その岩窟がんくつなるものが、そもそんであるかを調しらべる必用ひつようしやうじ、坪井理學博士つぼゐりがくはかせだい一の探檢調査たんけんてうさとなつた。それは九ぐわつ十二にちであつた。
だが謂はゞ——平野の里に感じた喜びは、過去しやうに対するものであり、今此山を臨み見ての驚きは未来を思ふ心躍りであつたと謂へよう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
さうおもへば益〻ます/\居堪ゐたまらず、つてすみからすみへとあるいてる。『さうしてから奈何どうする、あゝ到底たうてい居堪ゐたゝまらぬ、這麼風こんなふうで一しやう!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一四しやうを殺しあざらけくら凡俗ぼんぞくの人に、法師の養ふ魚一五必ずしも与へずとなん。其の絵と一六俳諧わざごととともに天下あめがしたに聞えけり。
與吉よきち横頬よこほゝ皮膚ひふわづか水疱すゐはうしやうじてふくれてた。かれ機嫌きげんわるかつた。みなみ女房にようばう水疱すゐはう頭髮あたまへつける胡麻ごまあぶらつてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこに盲目まうもく尊敬そんけいしやうずる。盲目まうもく尊敬そんけいでは、たま/\それをさしける對象たいしやう正鵠せいこくてゐても、なんにもならぬのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
たとひわたし明日あしたぬとしても!一しやうをかけて目指めざしてわたし仕事しごとすこしもまだがつけられなかつたとて、たとひ手紙てがみきかけてあつたとて
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
やまかへると、親兄弟おやきやうだい勿論もちろんともだちもおどろいてしまひました。そしてかわいさうにうさぎは一しやうわらはれものとなりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
爾來じらい日本建築にほんけんちく漸次ぜんじ進歩しんぽして堅牢けんらう精巧せいかうなものをしやうずるにいたつたが、これは高級建築かうきふけんちく必然的條件ひつぜんてきでうけんとしてあらはれたので、地震ぢしん考慮かうりよしたためではない。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
折角せつかく樂しい昨日きのふは夢、せつない今日けふうつつかと、つい煩惱ぼんなうしやうじるが、世の戀人の身の上をなんで雲めが思ふであらう。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かうしたおもひを取集めて考へることは、一しやうちう幾度いくどもないやうにさへ思はれた。人間はたゞ※忙そうばううちに過ぎてく……あぢはつてる余裕すらないと又繰返した。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
これは、ひと讀書どくしようへばかりではない。んでも、自己じここしゑてかゝらなければ、をとこでもをんなでも、一しやう精神上せいしんじやう奴隷どれいとなつてんでほかいのだ。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼等かれらはこのつぎなにをするだらう!しやうがあるものなら屋根やね取除とりのけるやうな莫迦ばかはしないだらう』ほど彼等かれらふたゝうごしました、あいちやんはうさぎ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ぐわつ以來いらい外國貿易ぐわいこくぼうえき状勢じやうせい金解禁きんかいきんたいする諸般しよはん準備じゆんび程度ていどよりて、かくごと事態じたい發生はつせい財界ざいかい急激きふげき波動はどうしやうずることなきことをしんずるものである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
うけたまはり候へば此廓このさとの火宅を今日しも御放おはなれ候てすゞしき方へ御根引おねびきはな珍敷めづらしき新枕にひまくら御羨敷おうらやましきは物かはことに殿にはそもじ樣はつち陰陽いんやうを起しやうやうにして一しやうやしなふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たいこの規則きそくでさせること規則きそく其物そのものそんしてゐるあひだすなは規則きそくにはまつてあひだはよろしいが、他日たじつ境遇きやうぐうはると、一方ひとかたならぬ差支さしつかへしやうずることがありませう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
家をつくり、塔を組む、番匠なんどとは事變りて、これはしやうなき粗木あらきを削り、男、女、天人、夜叉、羅刹らせつ、ありとあらゆる善惡邪正ぜんなくじやしやうのたましひを打ち込む面作師。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
をんなと、ばくちと、阿片あへんと、支那人しなじんの一しやうはその三つの享樂きやうらく達成たつせいさゝげられる——などとふと、近頃ちかごろわかあたらしい中華民國ちうくわみんこく人達ひとたちからしかられるかもれないが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
鹿猪等の骨を見るに筋肉きんにく固着こちやくし居りし局部にはするどき刄物にてきづを付けしあと有り。此は石にてつくれる刄物はものを用ゐて肉を切りはなしたる爲にしやうぜしものたる事疑ふ可からず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
その亞米利加人あめりかじん母親はゝおやからはれた言葉ことばいて、あれが自分じぶんの『良心りやうしんざめ』だ、自分じぶんが一しやううちのどんな出來事できごとでもあんなにふか長續ながつゞきのしてのこつたものはない
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
この四五ぐわつふものは、わたしつてはたゞゆめのやうで、たのしいとへばたのしいが、さりとて、わたし想像さうざうしてゐたほどまたひとふほど、これわたしの一しやうもつと幸福かうふく時期じきだともおもはぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
たゞにはかずねづみれにもみゝそばだてつ疑心ぎしん暗鬼あんきしやうずるおく其人そのひと現在げんざいすを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これを器械的觀測きかいてきかんそく結果けつか比較ひかくすると一割以上いちわりいじよう誤差ごさしやうじたれいきはめてすくない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
水道税すゐだうぜいこと一寸ちよつとあはせる必要ひつえうしやうじたので、宗助そうすけかへみち坂井さかゐつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
アダムの二本棒にほんぼう意地いぢきたなさのつまぐひさへずば開闢かいびやく以来いらい五千ねん今日こんにちまで人間にんげん楽園パラダイス居候ゐさふらふをしてゐられべきにとンだとばちりはたらいてふといふ面倒めんだうしやうじ〻はさて迷惑めいわく千万せんばんの事ならずや。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
知れたことぢや、しやうがあるものには、銘々の心がある! (空を仰ぐ)しきりに鳴き渡るなう。「朧夜に影こそ見えね鳴く雁の……」無風流の俺には、下の句がつゞかぬ。うむ、もう寢よう。
袈裟の良人 (旧字旧仮名) / 菊池寛(著)
そして、それがなんとなくかれたいしてどくな、彼女かれの一しやうつうじてすまないことのやうに、おもはれるのであつた。まちは、もはや不自由ふじいうあしわるい、自分じぶん肉體からだについてはあきらめてゐる。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
その上しやうあるものは神の思召次第で、いつ死ぬるかも知れない。鱷だつてどうかしてはじけまいものでもない。中に這入つてゐるイワン君だつて病気になる事もあらう。死なないにも限らない。
いよ/\探險たんけんとは决心けつしんしたものゝ、じつうす氣味惡きみわることで、一體いつたい物音ものおとぬしわからず、またみちにはどんな災難さいなんしやうずるかもわからぬので、わたくし萬一まんいち塲合ばあひおもんぱかつて、れい端艇たんていをば波打際なみうちぎわにシカと繋止つなぎと
日を継ぎてわれのやまひをおもへれば浜のまさごもしやうなからめや
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
来年以後は変動へんどうしやうずるであらうとおもはれるのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
月の色半死はんししやうなやむごとただかき曇る。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しやうろうびやうは順当な流転だ
南洋館 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
あゝ、わが出しやうの記憶甦へる。
無題 (新字旧仮名) / 富永太郎(著)
塵はにはかにしやうを得て
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
艸木のまろきをうしなはざるも気中にしやうずるゆゑ也。雲冷際れいさいにいたりて雨とならんとする時、天寒てんかん甚しき時はあめこほりつぶとなりてくだる。
かくも、山頂さんてう凸起とつきする地點ちてん調査てうさこゝろみ、はたして古墳こふんであるかいなかをたしかめる必用ひつようしやうじたので、地主側ぢぬしがは請願せいぐわんもあり
けづとき釣合つりあひひとつで、みづれたときかたちがふでねえかの、たてまればしやうがある、よこれば、んだりよ。……むづことではねえだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
前生にありしときおのれをよくをさめ、慈悲の心もはらに、他人ことひとにもなさけふかくまじはりし人の、その善報によりて、今此のしやうに富貴の家にうまれきたり
あめかためてある百姓ひやくしやうにはつちにも蔊菜いぬがしら石龍芮たがらし黄色きいろ小粒こつぶはなたせて、やのむねにさへながみじかくさしやうぜしめる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのおと寂寞せきばくやぶつてざわ/\とると、りよかみけられるやうにかんじて、全身ぜんしんはだあはしやうじた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
奧田が組下くみした山田やまだ軍平ぐんぺいと云者喜八がかたちを見てあやし曲者くせものまてと聲を掛ながら既にとらへんと喜八の袖をおさへしにぞ喜八は一しやう懸命けんめいと彼の出刄庖丁にて軍平が捕へたる片袖かたそで
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
矢車草やぐるまさう思草おもひぐさ白粉花おしろいばなしやうまことの美人よりもおまへのはうがわたしはすきだ。ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
もしまた醫學いがく目的もくてきくすりもつて、苦痛くつううすらげるものとすなれば、自然しぜんこゝに一つの疑問ぎもんしやうじてる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
とりわけてこれとふ……何處どこもみんなおんなじですがね。……だが、あのほしくにへあそびにつて、よひのうつくしい明星樣めうじやうさまにもてなされたのだけは、おらが一しやうだい光榮くわうえい
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
いはんやまたいへつぶすほどの大震たいしんは、一しやうに一あるかなしである。太古たいこたみなん地震ぢしんおそれることがあらう。またなんいへ耐震的たいしんてきにするなどといふかんがへがこりやう。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
それが汽車きしやとほるのをあふながら、一せいげるがはやいか、いたいけなのどたからせて、なんとも意味いみわからない喊聲かんせいを一しやう懸命けんめいほとばしらせた。するとその瞬間しゆんかんである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それとも此様こんなのが実際じつさい幸福かうふくなので、わたしかんがへてゐたことが、ぶんぎたのかもれぬ。が、これで一しやうつゞけばまづ無事ぶじだ。あつくもなくつめたくもなし、此処こゝらが所謂いはゆる平温へいおんなのであらう。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)