わる)” の例文
新字:
すると其時そのとき夕刊ゆふかん紙面しめんちてゐた外光ぐわいくわうが、突然とつぜん電燈でんとうひかりかはつて、すりわる何欄なにらんかの活字くわつじ意外いぐわいくらゐあざやかわたくしまへうかんでた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かんがへてりやあ生身なまみをぐつ/\煮着につけたのだ、尾頭をかしらのあるものの死骸しがいだとおもふと、氣味きみわるくツてべられねえツて、左樣さういふんだ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「さうだ、まつたすね。わるくすると、明日あしたあめだぜ‥‥」と、わたしざまこたへた。河野かうのねむさうなやみなかにチラリとひかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
あるところにくせ のわる夫婦ふうふがありました。それでもどもがないので、一鸚鵡あふむどものやうに可愛かあいがつてをりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
それにほかのおうちかきへはのぼらうとおもつてものぼれませんでしたが、自分じぶんのおうちかきばかりはわるかほもせずにのぼらせてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「まあ其麽そんなことゆはねえで折角せつかくのことに、勘次かんじさんもわる料簡れうけんでしたんでもなかんべえから」となだめても到頭たうとう卯平うへいかなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『あゝ、みなわたくしわるいのだ、わたくし失策しくじつたばかりに、一同みんな此樣こん憂目うきめせることか。』とふか嘆息たんそくしたが、たちまこゝろ取直とりなほした樣子やうす
またかや此頃このごろをりふしのお宿とまり、水曜會すゐようくわいのお人達ひとたちや、倶樂部ぐらぶのお仲間なかまにいたづらな御方おかたおほければれにかれておのづと身持みもちわるたま
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ヂュリ ほんにどくぢゃ、氣分きぶんわるうてはなァ。したが、乳母うば乳母うばや、乳母うばいなう、何卒どうぞうてたも、戀人こひゞとなん被言おッしゃった?
帽子屋ばうしやッた一人ひとり場所ばしよへたために一ばんいことをしました、あいちやんは以前まへよりもぽどわりわるくなりました、だつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
御米およねはかう宗助そうすけからいたはられたときなんだか自分じぶん身體からだわることうつたへるにしのびない心持こゝろもちがした。實際じつさいまた夫程それほどくるしくもなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
せよと言ひながら腰の一刀引拔ひきぬきつゝ身構みがまへなせばわるものどもは打笑ひ何の小癪こしやくあをさい息杖いきづゑとりのべ打てかゝるを此方はさわがず切拂ひ又打込を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つまみして障子せうじめた、殘暑ざんしよといふものはわるあつい、空氣くうきかよはないかららである、くもつてゐるから頭痛づつうがする、たまらぬ。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
その次にえらくなるのは君だとみんなが云つているから、しつかりべん強したまへ、と言つた言葉を憶ひ出し、わるい氣持はしなかつたのである。
坂道 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
通常つうじやう人間にんげんは、ことも、わることみな身外しんぐわいからもとめます。すなは馬車ばしやだとか、書齋しよさいだとかと、しか思想家しさうか自身じしんもとめるのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
戲談じようだんつてはこまります。だから新聞記者しんぶんきしやひとわるい。ひと眞面目まじめくのに。』と高商紳士かうしやうしんしみじかくなつたシガーをストーブにんだ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「今朝、若松屋の裏の路地で、御朱印ごしゆいんの傅次郎といふ札つきのわるが、土手つ腹をゑぐられて死んでゐるぢやありませんか」
「なあに、いくらわるだと云つたつて、たかが島民の子供ぢやないですか。問題ぢやない」と警官がむきになつて答へた。
そして依然いぜんとして『御返事ごへんじつてります』とある。をとこ少々せう/\氣味きみわるくなつた。とう/\また葉書はがきが十二まいたまつた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
斯樣かやうすればわるい、何故なにゆゑわるいかといふてん自分じぶんこゝろはせてて、自分じぶん其理由そのりいう發明はつめいし、成程なるほどこれはい、わるいといふところ自分じぶん合點がつてんせしむる。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
しかしあしわるいまちは、すぐにつかれるので、やがてしづかなカフエーかレストランドにはひらなければならなかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
こんなすぐれたうたが、しかも非常ひじようたふと方々かた/″\のおさくてゐるにかゝはらず、世間せけん流行りゆうこうは、爲方しかたのないもので、だん/\、わるほうへ/\とかたむきました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
其後そのあと自轉車隊じてんしやたいて、居合ゐあはせた農夫のうふに、二人連ふたりづれの、人相にんさうわる男子をとこが、此邊このへんをうろ/\してなかつたかとうてると、農夫のうふすこぶふるつたこたへをした。
たゞこの博物館はくぶつかんむかしものをそのまゝ使つかつてゐるので、光線こうせん工合ぐあひすこしくわるいのが缺點けつてんともいへるでせう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「ようわかりました。あんたの氣性を知らん事も無いのに、あてがわるおました。かんにんしておくんなはれ。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
しかしそれをこばんでこたへずにしまふのは、ほとんどそれはうそだとふとおなじやうになる。近頃ちかごろ協會けふくわいなどでは、それを子供こどものためにわるいとつて氣遣きづかつてゐる。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ところこまつたことにア身躰からだわるく、肺病はいびようてゐるからぼくほとんど當惑とうわくするぼくだつて心配しんぱいでならんからその心配しんぱいわすれやうとおもつて、ついむ、めばむほど心配しんぱいする。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
褐色とびいろ薔薇ばらの花、陰鬱いんうつ桃花心木たうくわしんぼくの色、褐色とびいろ薔薇ばらの花、免許の快樂、世智、用心、先見、おまへは、ひとのわるさうな眼つきをしてゐる、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
第三番だいさんばん阿倍あべ右大臣うだいじん財産家ざいさんかでしたから、あまりわるごすくはたくまず、ちょうど、そのとし日本につぽん唐船とうせんあつらへて火鼠ひねずみ皮衣かはごろもといふものつてるようにたのみました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
この目的もくてきのためには、賢實けんじつなる石造せきざうまたは甎造せんざう恒久的宮殿こうきうてききうでん造營ざうえいすること都合つがふわるいのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ひとつは二人とも躰にわるやまいツてゐるからでもあらうが、一つはまた面白おもしろくない家内かない事情じゞやう益々ます/\おもひ助長ぢよてうせしむるやうになツてゐるので、自然しぜん陰欝ゐんうつな、晴々はれ/″\しない
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
口惜くやしかつたら不足ふそくひたまへ。それともこの文章ぶんしやうぼく今夜こんやまくらもとへいてくから、これでわるかつたら、どういたがいいか、ひとつそれをぼくをしへてくれたまへ。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
ひる洞穴ほらあないはなどにひそんでゐますが、よるになるとして、おほきな目玉めだまをぎょろ/\させてねずみなどをさらつてあるき、薄氣味うすきみわるこゑで「ほう、ほう」と、きます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「ずツと前にてもろた醫者が、リョーマチやいうて、其の藥ばかり呉れてたんがわるおましたんや。子宮だしたんやもんなア、此處の院長さんがやはつて、餘ツぽどわるなつたるいうて、喫驚びつくりしてゐやはつた。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
さきわるし、につくきやつ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其處そこで、でこぼこと足場あしばわるい、蒼苔あをごけ夜露よつゆでつる/\とすべる、きし石壇いしだんんでりて、かさいで、きしくさへ、荷物にもつうへ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いろ/\な可愛かあいらしい蝶々てふ/\澤山たくさんあるなかで、あのおほきなくろ蝶々てふ/\ばかりは氣味きみわるいものです。あれは毛蟲けむし蝶々てふ/\だとひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
べしは重々ぢゆう/\此方こなたわるけれど母上はゝうへとらへてなにいひつたかおみゝれまいとおもへばこそ樣々さま/″\苦勞くらうもするなれさらでもの御病氣ごびやうきにいとゞおもさを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
りにつてやつちるなんてよつぽどうんわるいや‥‥」と、一人ひとりはまたそれが自分じぶんでなかつたこと祝福しゆくふくするやうにつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「さういつちやおまへあねのことわるくばかりいふやうだが、しうと鬼怒川きぬがはちてんだなんて大騷おほさわぎしたことがつたつけねえ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
掛ずわるゆめだと斷念あきらめて御辛抱しんばうを成されなば大旦那にも安心あんしん致され家督かとくを御ゆずり有れんと思ひめぐらすことも有ば何は扨置さておき御家督を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其時そのとき宗助そうすけこれはならんとおもつた。けれどもはたして刄物はものもちひて、かたにくいていものやら、わるいものやら、けつしかねた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
獰惡だうあく野良猫のらねこ、おとなりのとり全滅ぜんめつさせたわるいヤツ、うちたひをさらつた盜癖とうへきのある畜生ちくせう、それがんだは、このやさしいうつくしいニヤンこうである。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
あれこそは此世このよ名譽めいよといふ名譽めいよが、った一人ほとり王樣わうさまとなって、すわ帝座ていざぢゃ。おゝ、なんといふ獸物けだものぢゃわしは、かりにもかたわるういふとは!
しもなんぢがそれに署名しよめいしなかつたとすれば』とつて王樣わうさまは、『尚々なほ/\わるい、なんぢ惡戯いたづら相違さうゐない、さもなければ正直しようぢき署名しよめいしてくべきはづだ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
この温泉をんせんはたして物質的ぶつしつてきぼく健康けんかう效能かうのうがあるかいか、そんなことわからないがなにしろ温泉をんせんわるくない。すくなくとも此處こゝの、此家このや温泉をんせんわるくない。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かく氣味きみわることだとおもつてうちに、あやしふねはだん/\と速力そくりよくして、わが弦月丸げんげつまる左方さはうかすめるやうに※去すぎさとき
いや、非文明的ひぶんめいてきな、奈何云どういふものかまちところものは、みなるのもむねわるいやうな人間計にんげんばかり、不幸ふかうまちです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
南瓜かぼちや甜瓜まくはうりと、おなじはたけにそだちました。種子たねかれるのも一しよでした。それでゐてたいへんなかわるかつたのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
それは油氣あぶらけのないかみをひつつめの銀杏返いてふがへしにつて、よこなでのあとのあるひびだらけの兩頬りやうほほ氣持きもちわるほどあか火照ほてらせた、如何いかにも田舍者ゐなかものらしいむすめだつた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)