はじ)” の例文
はて、なんだ、とおもひながら、こゑけようとして、ひとしはぶきをすると、これはじめて心着こゝろづいたらしく、あらをんなかほげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もうしまして、わたくしいまいきなりんでからの物語ものがたりはじめたのでは、なにやらあまり唐突とうとつ……現世このよ来世あのよとの連絡つながりすこしもわからないので
おくさんのこゑにはもうなんとなくりがなかつた。そして、そのままひざに視線しせんおとすと、おもひ出したやうにまたはりうごかしはじめた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「カラやカフスと同じ事さ。汚れたのを用いるくらいなら、一層いっそはじめから色の着いたものを使うがい。白ければ純白でなくっちゃ」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
本艦ほんかん一令いちれいした推進螺旋スクルーなみつて進航しんかうはじめた。規律きりつたゞしき軍艦ぐんかん甲板かんぱん、かゝる活劇さわぎあひだでもけつしてその態度たいどみだやうことはない。
わたくしはこのときはじめて、ひやうのない疲勞ひらう倦怠けんたいとを、さうしてまた不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつ人生じんせいわづかわすれること出來できたのである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自分じぶん同年齡おないどし自分じぶんつてる子供こどものこらずかたぱしからかんがはじめました、しも自分じぶん其中そのかなだれかとへられたのではないかとおもつて。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あれよ/\とみてゐると水煙みづけむりきゆうおとろくちぢて噴出ふんしゆつ一時いちじまつてしまつたが、わづか五六秒位ごろくびようくらゐ經過けいかしたのちふたゝはじめた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なにもかもそこからはじまります。御先祖ごせんぞさまがさうおもつてこんなやまなかむらひらきはじめたといふことには、おほきなちからがありますね。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おつぎは浴衣ゆかたをとつて襦袢じゆばんひとつにつて、ざるみづつていた糯米もちごめかまどはじめた。勘次かんじはだかうすきねあらうて檐端のきばゑた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
第二 毎日まいにち食餌しよくじ三度さんどかぎり、分量ぶんりやうさだし。夜中やちゆう飮食いんしよくせざるをもつともよしとす。たゞし食後しよくご少時間しばらく休息きうそく運動うんどうはじむべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
韓王かんわうはじもちひず、きふなるにおよんですなはりてしん使つかはす。秦王しんわうこれよろこび、いま信用しんようせず。李斯りし姚賈えうかこれこれそしつていは
どう大動搖だいどうえうはじめた。はやなかたいからである。けれどもなが密閉みつぺいせられてある岩窟がんくつ内部ないぶには、惡瓦斯あくぐわす發生はつせいしてるに相違さうゐない。
死後しご幾年いくねんかをへて、それがはじめて舊石器時代きゆうせつきじだいであることにきまり、今更いまさらサウツオラの手柄てがら人々ひと/″\みとめるようになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
季節きせつはずれに、こんなにいろいろなさかながとれたのも、みんなふえのおかげだ。」といって、人々ひとびとは、はまかえってからさかもりをはじめました。
青い玉と銀色のふえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
一行はじめて団結だんけつ猛然もうぜん奮進にけつす又足を水中にとうずれば水勢ます/\きうとなり、両岸の岩壁いよ/\けんとなり、之に従つて河幅はすこぶちぢま
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
A どうも永々なが/\御馳走樣ごちそうさま葉書はがきはじまつた御縁ごえんだから毎日まいにちまいづつの往復わうふくぐらゐあたまへだね。しかなにしろ葉書はがきといふやつ面白おもしろいものだね。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
平吉はじめ五兵衞其外とも一同下られけり是より伊奈殿には手代てだい杉山すぎやま五郎兵衞馬場ばば三右衞門の兩人に幸手宿さつてじゆくの杉戸屋富右衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
父親てゝおや先刻さきほどよりうでぐみしてぢてありけるが、あゝ御袋おふくろ無茶むちやことふてはならぬ、しさへはじめていてうしたものかと思案しあんにくれる
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
真理しんりは我と我の家族かぞくより大なり、この決心けつしん実行じつこうあらん教会けうくわいたゞち復興ふくこうはじむべし、れなからん乎、復興はおはりまでつもきたらざるべし。
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
さいさい自分じぶん研究けんきうして熟考じゆくかうしてうへ愈々いよ/\わからねば其時そのときはじめて理由りいう説明せつめいしてかすくらゐにしてくのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
綺麗きれいつくつてからかへると、つま不図ふと茶道具ちやだうぐともなかとをわたしそばはこんで、れいしとやかに、落着おちついたふうで、ちやなどれて、四方八方よもやまはなしはじめる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
いまぐにもける器用きよううでかえって邪間じゃまになって、着物きものなんぞおんないても、はじまらないとのこころからであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ただ一ごん申しますることは、どうぞよくよくお目止められ、お耳止められ、お手拍子てびょうしごかっさいのご用意をねがっておくことだけでございます。はじまり
子供達こどもたちの、わけてもつとむ成長せいちやう進歩しんぽは、彼女かのぢよ生活せいかつきた日誌につしであつた。さうしていまやその日誌につしは、あたらしいページをもつてはじまらうとしてゐるのである。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「そんな譯ぢやないよ、三輪の、口で言つても解らない事があつちや、人間一人の命にかゝはるから、旦那をはじめ皆んなの目で見て貰はうといふんだ」
ピータ はて、樂人がくじんさん、何故なぜうて、いま乃公おれこゝろなかでは「わしこゝろ悲哀かなしみに……」がはじまってゐる最中さいちゅうぢゃ。
一新いつしんはじめ、大久保公遷都せんとけんじて曰ふ、官軍已につと雖、東賊とうぞく猶未だほろびず、宜しく非常ひじやうだんを以て非常の事を行ふべしと。先見の明と謂ふ可し。
事もなげに此方に近より、男のすぐ前を通りて何方いずかたへか行き過ぎたり。この人はその折のおそろしさよりわずらはじめて、久しくみてありしが、近きころせたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
たとへてれば去年きよねんの一ぐわつはじめの爲替相場かはせさうばが四十六ドルであつてそれが六ぐわつ三十にちには四十三ドルの三にさがつてるから、わづか六箇月かげつあひだに四りん低落ていらくである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
だがほんとうのことをいえば、かれはもうずいぶん前から、らずらずに作曲さっきょくしていた。彼が作曲しはじめたのは、作曲していると自分じぶんで知るよりもまえのことだったのである。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
もし今日からあなたが決心してあなたの考へや行ひを正さうとおはじめになれば、二三年のうちに、あなたは新らしい汚れのない記憶をたくさんたくはへることがお出來になつて
いのりに行く時間じかんたのだ——これをしなくちゃ授業じゅぎょうはじめるわけにゆかないのだから。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
あらたしきとしはじめの初春はつはる今日けふゆきのいや吉事よごと 〔巻二十・四五一六〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ソコで日本政府も、はじめて真面目まじめの計画であったことを承知し、ソレではと盛り返した。
人格を認知せざる国民 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
はじめ何の爲に悶々するのか解らなかツたが、軈がて其のわけがハツキリ頭に映ツて來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
このひと明治めいじ以後いご新派しんぱ和歌わかといふものに、非常ひじよう影響えいきようあたへたひとですが、それまではあまりひとからさわがれなかつたのです。江戸えどすゑから明治めいじはじめにかけてきてゐたひとです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しかるに全校ぜんかう人氣にんき校長かうちやう教員けうゐんはじ何百なんびやく生徒せいと人氣にんきは、温順おとなしい志村しむらかたむいてる、志村しむらいろしろ柔和にうわな、をんなにしてたいやうな少年せうねん自分じぶん美少年びせうねんではあつたが、亂暴らんばう傲慢がうまん
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ムウンまたむかひか、どうも度々たび/″\招待状せうたいじやうをつけられて困るなア、先方むかう此頃このごろちやはじめたてえが、金持かねもちゆゑごく我儘わがまゝな茶で、種々いろ/\道具だうぐかざちらかしてるのを、みんなが胡麻ごまアするてえ事を聞いたが
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
……だがそのはじめて、彼女かのぢよ戀人こひびとはげしい熱情ねつじやうとうじたのだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
第六囘だいろくくわいいたりてはじめて、殺人さつじん大罪だいざいなるかいなかの疑問ぎもん飮食店いんしよくてん談柄だんぺいより引起ひきおこし、つい一刹那いつせつなうかいださしめて、この大學生だいがくせいなんあだもなき高利貸こうりかし虐殺ぎやくさつするにいたる。だいくわいその綿密めんみつなる記事きじなり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
『またはじめたな、玄竹げんちく洒落しやれふるいぞ。』と、但馬守たじまのかみ微笑ほゝゑんだ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
覆面ふくめんを着けたる形と見ゆる土偶五六個有り。覆面はみなかほ全部ぜんぶを覆ふ假面形のものにして、粗布そふを以てつくられたるが如し。製作の精なる方よりはじめて是等土偶の出所及び所在しよざい列記れつきすれば次の如し。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「心は理の魂なり。気は理の身なり。ないし、その天のいまだ興らざる先に、常世とこよの国あり。神はみな理の身なり。ゆえに欲なく、迷いなし。ゆえに寿の終わるときなく、はじめの天祖の身これなり、云云うんぬん
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
してはじめて靈夢れいむかうふり、その拂曉あかつき水際みぎはたち
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ほら いまおも白いことがはじまりますよ
羸驂始可跨 羸驂るいさんはじめてまたが
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かへろ音頭おんどはじめよか
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
したがつて其方そのはう談判だんぱんは、はじめからいまかつふでにしたことがなかつた。小六ころくからは時々とき/″\手紙てがみたが、きはめてみじかい形式的けいしきてきのものがおほかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『モ一度いちど合唱がつせうを!』とグリフォンがさけびました、海龜うみがめがそれを繰返くりかへさうとしたとき丁度ちやうど、『審問しんもんはじめ!』のさけごゑ遠方えんぱうきこえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)