“出(だ)” の例文
町(まち)の中(なか)で、かごからひばりを出(だ)して、みんなに見(み)せながら、あめを売(う)る男(おとこ)がありました。その男(おとこ)を見(み)ると、あそんでいる子供(こども)たちは
ひばりのおじさん (新字新仮名) / 小川未明(著)
と言(い)いながら、まさかりをほうり出(だ)して、いきなり熊(くま)に組(く)みつきました。そして足(あし)がらをかけて、どしんと地(じ)びたに投(な)げつけました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
處(ところ)で——番町(ばんちやう)も下六(しもろく)の此邊(このへん)だからと云(い)つて、石(いし)の海月(くらげ)が踊(をど)り出(だ)したやうな、石燈籠(いしどうろう)の化(ば)けたやうな小旦那(こだんな)たちが皆無(かいむ)だと思(おも)はれない。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
といふのが、幻花子(げんくわし)が、小魔石斧(せうませきふ)や、完全(くわんぜん)に近(ちか)い土器(どき)などを掘(ほ)り出(だ)したので、余等(よら)の發掘熱(はつくつねつ)がそろ/\高度(かうど)に達(たつ)しかけたからである。
だから稱(とな)へ言(ごと)のうちにも、神(かみ)のお言葉(ことば)があり、ものがたりのうちにも、神(かみ)のお言葉(ことば)が挿(はさ)まれてゐるもの、と考(かんが)へ出(だ)したのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「どれ」いや応なく取って見ると、桐油紙(とうゆ)ぐるみ、上に唐草銀五郎様、出(だ)し人(て)の名は裏に小さく「行き交(か)いの女より」としてあった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空(そら)を焦(こが)す狼火(のろし)……そして最後(さいご)に武運(ぶうん)いよいよ尽(つ)きてのあの落城(らくじょう)……四百年後(ねんご)の今日(こんにち)思(おも)い出(だ)してみる丈(だけ)でも気(き)が滅入(めい)るように感(かん)じます。
老人(としより)に子供(こども)だから馬鹿(ばか)にして思(おも)ふやうには動(うご)いて呉(く)れぬと祖母(おばあ)さんが言(い)つて居(ゐ)たつけ、己(お)れが最(も)う少(すこ)し大人(おとな)に成(な)ると質屋(しちや)を出(だ)さして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『えゝ只今(たゞいま)、足下(そくか)に御關係(ごくわんけい)の有(あ)る事柄(ことがら)で、申上(まをしあ)げたいと思(おも)ふのですが。』と、市役所員(しやくしよゐん)は居並(ゐなら)ぶ人々(ひと/″\)の挨拶(あいさつ)が濟(す)むと恁(か)う切(き)り出(だ)した。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
シューラはおいおい泣(な)いた。あたりのものがばら色(いろ)の靄(もや)に包(つつ)まれて、ふわふわ動(うご)き出(だ)した。もの狂(くる)おしい屈辱感(くつじょくかん)に気が遠(とお)くなったのだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
懐中(ふところ)から塵紙(ちりがみ)を出(だ)して四つに折(を)つて揚子箸(やうじばし)で手探(てさぐ)りで、漸(や)うく餅(もち)を挟(はさ)んで塵紙(ちりがみ)の上(うへ)へ載(の)せて忰(せがれ)幸之助(かうのすけ)へ渡して自分も一つ取つて、乞
さう云(い)ふ時(とき)には彼(かれ)は急(きふ)に思(おも)ひ出(だ)した樣(やう)に町(まち)へ出(で)る。其上(そのうへ)懷(ふところ)に多少(たせう)餘裕(よゆう)でもあると、是(これ)で一(ひと)つ豪遊(がういう)でもして見樣(みやう)かと考(かんが)へる事(こと)もある。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
然(しか)し今更(いまさら)、何(なん)とか斯(か)とか長文句(ながもんく)の手紙(てがみ)も書(か)けないものだから、『承諾(しようだく)、直(す)ぐ來(こ)い』と書(か)いた電報(でんぱう)の樣(やう)な葉書(はがき)を出(だ)したんだ、さうだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
玄竹(げんちく)は當(あ)てこすりのやうなことを言(い)つて、更(さ)らに劇(はげ)しく死體(したい)を動(うご)かした。三人(にん)の武士(ぶし)は、『ひやア。』と叫(さけ)んで、また逃(に)げ出(だ)した。——
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
姫は夜の闇にもほのかに映る俤(おもかげ)をたどって、疼(うず)くような体をひたむきに抛(な)げ出(だ)す。行手(ゆくて)に認められるのは光明であり、理想である。
それ故(ゆゑ)に二階(にかい)或(あるひ)は三階(さんがい)に居合(ゐあは)せた人(ひと)が、階下(かいか)を通(とほ)ることの危險(きけん)を侵(おか)してまで屋外(おくがい)に逃(に)げ出(だ)さうとする不見識(ふけんしき)な行動(こうどう)は排斥(はいせき)すべきである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
自分(じぶん)の蒲團(ふとん)の側(そば)まで射(さ)し込(こ)む日(ひ)に誘(さそ)ひ出(だ)されたやうに、雨戸(あまど)の閾際(しきゐぎは)まで出(で)て與吉(よきち)を抱(だ)いては倒(たふ)して見(み)たり、擽(くすぐ)つて見(み)たりして騷(さわ)がした。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何故(なぜ)そう急(きふ)に飛(と)び出(だ)したかとの君(きみ)の質問(しつもん)は御尤(ごもつとも)である。僕(ぼく)は不幸(ふかう)にして之(これ)を君(きみ)に白状(はくじやう)してしまはなければならぬことに立到(たちいた)つた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
カントの超絶(てうぜつ)哲学(てつがく)や余姚(よよう)の良知説(りやうちせつ)や大(だい)は即(すなは)ち大(だい)なりと雖(いへ)ども臍栗(へそくり)銭(ぜに)を牽摺(ひきず)り出(だ)すの術(じゆつ)は遥(はる)かに生臭(なまぐさ)坊主(ばうず)が南無(なむ)阿弥陀仏(あみだぶつ)に及(およ)ばず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
そこで、急ぎの客は、賃銀を倍(ばい)出(だ)して、二人の人力曳にひいてもらうのであった。巳之助に先綱曳を頼んだのも、急ぎの避暑客であった。
おじいさんのランプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
大和(やまと)の國(くに)のある山寺(やまでら)の賓頭廬樣(びんずるさま)の前(まへ)に置(お)いてある石(いし)の鉢(はち)の眞黒(まつくろ)に煤(すゝ)けたのを、もったいらしく錦(にしき)の袋(ふくろ)に入(い)れて姫(ひめ)のもとにさし出(だ)しました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
そこから着目(ちゃくもく)してある程度(ていど)の内偵(ないてい)を進(すす)めて、その容疑者(ようぎしゃ)を、べつべつに任意出頭(にんいしゅっとう)の形(かたち)で警察(けいさつ)へ呼(よ)び出(だ)し、井口警部(いぐちけいぶ)が直接(ちょくせつ)に訊問(じんもん)してみた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
彼は余程忍び込みには経験があるらしく、庭園に面した廊下の端の掃(は)き出(だ)しの戸を簡単にこじあけ、仲間をさし招いてはいった。
父(とう)さんの田舍(ゐなか)では、夕方(ゆふがた)になると夜鷹(よたか)といふ鳥(とり)が空(そら)を飛(と)びました。その夜鷹(よたか)の出(で)る時分(じぶん)には、蝙蝠(かうもり)までが一緒(しよ)に舞(ま)ひ出(だ)しました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
奈美子(なみこ)は白(しろ)い布(きれ)で頭(あたま)をくる/\捲(ま)いて、寂(さび)しい彼(かれ)の送別(そうべつ)の席(せき)につれ出(だ)されて、別室(べつしつ)に待(ま)たされてゐたことなぞも、仲間(なかま)の話柄(わへい)に残(のこ)された。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「まあ、お母さん、どうしたんです? こんな所まで這(は)い出(だ)して来て。お母さんったら。——甲野さん、ちょっと来て下さい。」
玄鶴山房 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かく緑色(みどりいろ)は植物(しよくぶつ)の、特(とく)に葉(は)に固有(こゆう)な色(いろ)で、われ/\は木(き)といへば、すぐに緑(みどり)の色(いろ)を思(おも)ひ出(だ)さずにゐられないくらゐ親(した)しい色(いろ)です。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
鹿(しか)はおどろいて一度(いちど)に竿(さを)のやうに立(た)ちあがり、それからはやてに吹(ふ)かれた木(き)の葉(は)のやうに、からだを斜(なゝ)めにして逃(に)げ出(だ)しました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かれその父大山津見の神に乞ひに遣はしし時に、いたく歡喜(よろこ)びて、その姉石長(いはなが)比賣を副へて、百取(ももとり)の机代(つくゑしろ)の物二を持たしめて奉り出(だ)しき。
それが年月(としつき)を經(へ)るに從(したが)つて石(いし)が崩(くづ)れたり、その中(なか)に木(き)の種(たね)が落(お)ちて芽(め)を出(だ)したりして、塚(つか)の上(うへ)に樹木(じゆもく)が茂(しげ)つて來(き)たのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
此時(このとき)不意(ふゐ)に、車外(しやぐわい)の猛獸(まうじう)の群(むれ)は何者(なにもの)にか愕(おどろ)いた樣子(やうす)で、一時(いちじ)に空(そら)に向(むか)つて唸(うな)り出(だ)した。途端(とたん)、何處(いづく)ともなく、微(かす)かに一發(いつぱつ)の銃聲(じうせい)!
四月(つき)すると、木々(きぎ)の梢(こずえ)が青葉(あおば)に包(つつ)まれ、枝(えだ)と枝(えだ)が重(かさ)なり合(あ)って、小鳥(ことり)は森(もり)に谺(こだま)を起(お)こして、木(き)の上(うえ)の花(はな)を散(ち)らすくらいに、歌(うた)い出(だ)しました。
つまみ出(だ)して障子(せうじ)を締(し)めた、殘暑(ざんしよ)といふものは惡(わ)る惡(わる)う暑(あつ)い、空氣(くうき)が通(かよ)はないから尚(な)ほ更(さ)らである、曇(くも)つてゐるから頭痛(づつう)がする、たまらぬ。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
と鳴(な)きながら、雛鳥(ひな)が匐(は)い出(だ)してきました。それはばかに大(おお)きくて、ぶきりょうでした。母鳥(ははどり)はじっとその子(こ)を見(み)つめていましたが、突然(とつぜん)
夕闇(ゆうやみ)の中に泉邸の空やすぐ近くの焔があざやかに浮出て来ると、砂原では木片を燃やして夕餉(ゆうげ)の焚(た)き出(だ)しをするものもあった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
すると、涙が溢(あふ)れ出(だ)した。彼は泣きながら冷たい花を次から次へと虫のように嗅ぎ廻った。彼は嗅ぎながら激しい祈りを花の中でし始めた。
花園の思想 (新字新仮名) / 横光利一(著)
船に乗組(のりくん)で居る人は皆若い人で、もう是(こ)れが日本の訣別(おわかれ)であるから浦賀に上陸して酒を飲もうではないかと云(いい)出(だ)した者がある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
御持參有しに間違(まちがひ)も有まじと思ひ右品引換(ひきかへ)に金子御渡し申したりと櫛(くし)を取(と)り出(だ)して見せければ傳吉は再び仰天(ぎやうてん)なしたりしが心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すると翌日(よくじつ)歸(かへ)つて來(き)て大層(たいそう)謝罪(しやざい)をされるから何故(なにゆゑ)返事(へんじ)をしなかつたと尋(たづ)ねると返事(へんじ)は端書(はがき)で出(だ)して置(お)きましたといふのです。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
そして、ちよつと息(いき)を入(い)れたやうな樣子(やうす)をすると、今度(こんど)はまた頭(あたま)と前脚(まへあし)を盛(さかん)に動(うご)かしながら掘(ほ)り返(かへ)した土(つち)で穴(あな)を埋(う)め出(だ)した。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ふらふら歩いていた松木は、疲れた老馬が鞭(むち)のために、最後の力を搾るように、また、銃を引きずって、向うへ馳(は)せ出(だ)した。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
『一、二、三、進(すゝ)め』の號令(がうれい)もなく、各自(てんで)に皆(みな)勝手(かつて)に走(はし)り出(だ)して勝手(かつて)に止(と)まりましたから、容易(ようい)に競爭(きやうさう)の終(をは)りを知(し)ることが出來(でき)ませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「入(い)らつしやいまし。」と若(わか)い女中(ぢよちゆう)が上(あが)り口(ぐち)の板(いた)の間(ま)に膝(ひざ)をつき、出(だ)してあるスリツパを揃(そろ)へ、「どうぞ、お二階(かい)へ。突当(つきあた)りが明(あ)いてゐます。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風、永井壮吉(著)
漸(ようや)く眼(め)に慣(な)れて来(き)たのであろう。行燈(あんどん)の輪(わ)が次第(しだい)に色(いろ)を濃(こ)くするにつれて、狭(せま)いあたりの有様(ありさま)は、おのずから松(まつ)五郎(ろう)の前(まえ)にはっきり浮(う)き出(だ)した。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ヂュリ 乳母(うば)を出(だ)してやった時(とき)、時計(とけい)は九(こゝの)つを打(う)ってゐた。半時間(はんじかん)で歸(かへ)るといふ約束(やくそく)。若(も)しや逢(あ)へなんだかも知(し)れぬ。いや/\、さうでは無(な)い。
やゝ色づいた樺(かば)、楢、イタヤ、などの梢(こずえ)から尖(とが)った頭の赭(あか)い駒が岳が時々顔を出(だ)す。寂(さび)しい景色である。北海道の気が総身(そうみ)にしみて感ぜられる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
ある日、彼は祖父(そふ)の家(いえ)で、そりくりかえって腹(はら)をつき出(だ)し、踵(かかと)で調子(ちょうし)をとりながら、部屋(へや)の中をぐるぐるまわっていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
月に十円ずつ出しとくれやす人はなかなかあらへんのやけど、放とくわけにも行かん故、間が悪いけど、川窪はんに出(だ)いてもろうと思うとるんえ。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
先(ま)づばけものとはどういふものであるかといふに、元來(ぐわんらい)宗教的信念(しうけうてきしんねん)又(また)は迷信(めいしん)から作(つく)り出(だ)されたものであつて、理想的(りさうてき)又(また)は空想的(くうさうてき)に或(あ)る形象(けいしやう)を假想(かさう)し
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
そこで、わたしの好(す)きな子供(こども)たちよ。おぢさんはみんなとお約束(やくそく)しよう。この次(つぎ)に出(だ)すおぢさんの本(ほん)は、きつといい本(ほん)で、もつと安(やす)くすること、を。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)