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横町
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よこちやう
ふりがな文庫
“
横町
(
よこちやう
)” の例文
やがて、
合方
(
あひかた
)
もなしに、
此
(
こ
)
の
落人
(
おちうど
)
は、すぐ
横町
(
よこちやう
)
の
有島家
(
ありしまけ
)
へ
入
(
はひ
)
つた。たゞで
通
(
とほ
)
す
關所
(
せきしよ
)
ではないけれど、
下六同町内
(
しもろくどうちやうない
)
だから
大目
(
おほめ
)
に
見
(
み
)
て
置
(
お
)
く。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
零時半の開門の時間まで
横町
(
よこちやう
)
の角の
店前
(
テラス
)
で
午飯
(
ひるはん
)
を取つて待つて居ると、見物人が自動車や馬車で次第に
髑髏洞
(
カタコンブ
)
の門前に
集
(
あつま
)
つて来た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
そこ
此処
(
こゝ
)
に二三
軒
(
けん
)
今戸焼
(
いまどやき
)
を売る店にわづかな特徴を見るばかり、
何処
(
いづこ
)
の
場末
(
ばすゑ
)
にもよくあるやうな低い
人家
(
じんか
)
つゞきの
横町
(
よこちやう
)
である。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
勢
(
いきほひ
)
の
自然
(
しぜん
)
と言つては
堅過
(
かたす
)
ぎるが、
成程
(
なるほど
)
江戸時代
(
えどじだい
)
から
考
(
かんが
)
へて見ても、
湯屋
(
ゆや
)
と
与太郎
(
よたらう
)
とは
横町
(
よこちやう
)
の
方
(
ほう
)
が
語呂
(
ごろ
)
がいゝ。(十八日)
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
なアに
誰
(
だれ
)
があんな所へ
行
(
ゆ
)
くもんか、まア
君
(
きみ
)
一緒
(
いつしよ
)
に
行
(
ゆ
)
き
給
(
たま
)
へ、
何処
(
どこ
)
ぞで
昼飯
(
ひるめし
)
を
附合給
(
つきあひたま
)
へ。乙「そんなら
此所
(
こゝ
)
から遠くもないから
御成道
(
おなりみち
)
の
黒焼屋
(
くろやきや
)
の
横町
(
よこちやう
)
さ。 ...
七福神詣
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
しかし僕の思ひ出したのは
必
(
かならず
)
しも彼のことばかりではない。彼の住んでゐた家のあたり、——瓦屋根の
間
(
あひだ
)
に
樹木
(
じゆもく
)
の見える
横町
(
よこちやう
)
のことも思ひ出したのである。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夫婦
(
ふうふ
)
の
話
(
はなし
)
はそれから、
坂井
(
さかゐ
)
の
生活
(
せいくわつ
)
に
餘裕
(
よゆう
)
のある
事
(
こと
)
と、
其
(
その
)
餘裕
(
よゆう
)
のために、
横町
(
よこちやう
)
の
道具屋
(
だうぐや
)
などに
意外
(
いぐわい
)
な
儲
(
まう
)
け
方
(
かた
)
をされる
代
(
かは
)
りに、
時
(
とき
)
とすると
斯
(
か
)
う
云
(
い
)
ふ
織屋
(
おりや
)
などから
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ある
秋
(
あき
)
の
朝
(
あさ
)
のこと、イワン、デミトリチは
外套
(
ぐわいたう
)
の
襟
(
えり
)
を
立
(
た
)
てゝ
泥濘
(
ぬか
)
つてゐる
路
(
みち
)
を、
横町
(
よこちやう
)
、
路次
(
ろじ
)
と
經
(
へ
)
て、
或
(
あ
)
る
町人
(
ちやうにん
)
の
家
(
いへ
)
に
書付
(
かきつけ
)
を
持
(
も
)
つて
金
(
かね
)
を
取
(
と
)
りに
行
(
い
)
つたのであるが
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
南明館
(
なんめいくわん
)
あたりの
暗
(
くら
)
い
横町
(
よこちやう
)
で
初
(
はじ
)
めて
口
(
くち
)
を
利合
(
きゝあ
)
ひ、
其
(
それ
)
からちよく/\
男
(
をとこ
)
の
下宿
(
げしゆく
)
へも
出入
(
しゆつにふ
)
した
事情
(
じゞやう
)
が
大体
(
だいたい
)
判
(
わか
)
る。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
己
(
お
)
れが
映
(
うつ
)
し
人
(
て
)
で
横町
(
よこちやう
)
の三五
郎
(
ろう
)
に
口上
(
こうじよう
)
を
言
(
い
)
はせよう、
美登利
(
みどり
)
さん
夫
(
そ
)
れにしないかと
言
(
い
)
へば、あゝ
夫
(
そ
)
れは
面白
(
おもしろ
)
からう、三ちやんの
口上
(
こうじよう
)
ならば
誰
(
だ
)
れも
笑
(
わら
)
はずには
居
(
ゐ
)
られまい
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
海辺の方ではもう
地車
(
だんじり
)
の太鼓が鳴つて居る。
横町
(
よこちやう
)
を通る人の足音が常の十倍程もする。子供の声、
甲高
(
かんだか
)
な女の声などがそれに交つて、朝湯に
入
(
はひ
)
つて居る私を早く早くと
急
(
せ
)
き立てるやうに
聞
(
きこ
)
えた。
住吉祭
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
一町
(
いつちやう
)
ばかり、
麹町
(
かうぢまち
)
の
電車通
(
でんしやどほ
)
りの
方
(
はう
)
へ
寄
(
よ
)
つた
立派
(
りつぱ
)
な
角邸
(
かどやしき
)
を
横町
(
よこちやう
)
へ
曲
(
まが
)
ると、
其處
(
そこ
)
の
大溝
(
おほどぶ
)
では、くわツ、くわツ、ころ/\ころ/\と
唄
(
うた
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
いつも両側の
汚
(
よご
)
れた
瓦屋根
(
かはらやね
)
に
四方
(
あたり
)
の
眺望
(
てうばう
)
を
遮
(
さへぎ
)
られた地面の低い
場末
(
ばすゑ
)
の
横町
(
よこちやう
)
から、
今
(
いま
)
突然
(
とつぜん
)
、橋の上に出て見た四月の
隅田川
(
すみだがは
)
は
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
又
(
また
)
どう
云
(
い
)
ふ
筋
(
すぢ
)
を
通
(
とほ
)
れば、
馬鹿
(
ばか
)
な
目
(
め
)
に
逢
(
あ
)
はないで
濟
(
す
)
むといふ
手續
(
てつゞき
)
を
教
(
をし
)
へて
呉
(
く
)
れるものもなかつた。
宗助
(
そうすけ
)
は
矢張
(
やつぱり
)
横町
(
よこちやう
)
の
道具屋
(
だうぐや
)
に
屏風
(
びやうぶ
)
を
賣
(
う
)
るより
外
(
ほか
)
に
仕方
(
しかた
)
がなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
巴里
(
パリイ
)
の街は
大通
(
おほどほり
)
でも
横町
(
よこちやう
)
でも
亦
(
また
)
どんな辺鄙な
処
(
ところ
)
でも一
町
(
ちやう
)
の片側だけにも三軒四軒の女の
髪結所
(
かみゆひどころ
)
がある。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
猶且
(
やはり
)
毎朝
(
まいあさ
)
のやうに
此
(
こ
)
の
朝
(
あさ
)
も
氣
(
き
)
が
引立
(
ひきた
)
たず、
沈
(
しづ
)
んだ
調子
(
てうし
)
で
或
(
あ
)
る
横町
(
よこちやう
)
に
差掛
(
さしかゝ
)
ると、
折
(
をり
)
から
向
(
むかふ
)
より
二人
(
ふたり
)
の
囚人
(
しうじん
)
と四
人
(
にん
)
の
銃
(
じゆう
)
を
負
(
お
)
ふて
附添
(
つきそ
)
ふて
來
(
く
)
る
兵卒
(
へいそつ
)
とに、ぱつたりと
出會
(
でつくわ
)
す。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
恐
(
おそ
)
ろしい
智惠者
(
ちゑしや
)
だと
賞
(
ほ
)
めるに、
何
(
なん
)
だ
此樣
(
こん
)
な
事
(
こと
)
が
智惠者
(
ちゑしや
)
な
物
(
もの
)
か、
今
(
いま
)
横町
(
よこちやう
)
の
潮吹
(
しほふ
)
きの
處
(
とこ
)
で
饀
(
あん
)
が
足
(
た
)
りないッて
此樣
(
こう
)
やつたを
見
(
み
)
て
來
(
き
)
たので
己
(
お
)
れの
發明
(
はつめい
)
では
無
(
な
)
い、と
言
(
い
)
ひ
捨
(
す
)
てゝ
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
余
(
あま
)
り
烈
(
はげ
)
しい
往来中
(
わうらいなか
)
ではいかず、と
云
(
い
)
つて
衆人
(
ひと
)
の
目
(
め
)
に立たぬければ
不可
(
いかぬ
)
から、
入口
(
はいりぐち
)
を
横町
(
よこちやう
)
へ
附
(
つ
)
け、
表
(
おもて
)
の
方
(
はう
)
は三四
間
(
けん
)
の所を
細
(
こま
)
かい
格子作
(
かうしづくり
)
に
拵
(
こしら
)
へ、
往来
(
おもて
)
の
方
(
はう
)
へ
看板
(
かんばん
)
を
懸
(
か
)
けました。
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
萩寺
(
はぎでら
)
の先にある電柱(?)は「
亀井戸
(
かめゐど
)
天神
(
てんじん
)
近道」といふペンキ塗りの
道標
(
だうへう
)
を示してゐた。僕等はその
横町
(
よこちやう
)
を
曲
(
まが
)
り、
待合
(
まちあひ
)
やカフエの軒を並べた、狭苦しい
往来
(
わうらい
)
を歩いて行つた。
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
跫音
(
あしおと
)
も
聞
(
きこ
)
えぬばかり——
四谷
(
よツや
)
の
通
(
とほ
)
りから
穴
(
あな
)
の
横町
(
よこちやう
)
へ
續
(
つゞ
)
く、
坂
(
さか
)
の
上
(
うへ
)
から、しよな/\
下
(
お
)
りて
來
(
き
)
て、
擦違
(
すれちが
)
つたと
思
(
おも
)
ふ、と
其
(
そ
)
の
聲
(
こゑ
)
。
三人の盲の話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
長吉
(
ちやうきち
)
は
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
思案
(
しあん
)
をしなほすつもりで、
折
(
をり
)
から近所の子供を得意にする
粟餅屋
(
あはもちや
)
の
爺
(
ぢゝ
)
がカラカラカラと
杵
(
きね
)
をならして来る
向
(
むか
)
うの
横町
(
よこちやう
)
の方へと
遠
(
とほざ
)
かつた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
序
(
ついで
)
にあの
顏
(
かほ
)
がうつると
猶
(
なほ
)
おもしろいと
相談
(
さうだん
)
はとゝのひて、
不足
(
ふそく
)
の
品
(
しな
)
を
正太
(
しようた
)
が
買物役
(
かいものやく
)
、
汗
(
あせ
)
に
成
(
な
)
りて
飛
(
と
)
び
廻
(
まわ
)
るもをかしく、いよ/\
明日
(
あす
)
と
成
(
な
)
りては
横町
(
よこちやう
)
までも
其沙汰
(
そのさた
)
聞
(
きこ
)
えぬ。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
その
外
(
ほか
)
に
鮨屋
(
すしや
)
の
与平
(
よへい
)
、
鰻屋
(
うなぎや
)
の
須崎屋
(
すさきや
)
、牛肉の
外
(
ほか
)
にも冬になると
猪
(
しし
)
や猿を食はせる
豊田屋
(
とよだや
)
、それから
回向院
(
ゑかうゐん
)
の表門に近い
横町
(
よこちやう
)
にあつた「
坊主
(
ぼうず
)
軍鶏
(
しやも
)
」——かう一々数へ立てて見ると
本所両国
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
同時
(
どうじ
)
に、さう
云
(
い
)
ふ
譯
(
わけ
)
なら、
自分
(
じぶん
)
が
直
(
ぢか
)
に
宗助
(
そうすけ
)
から
相當
(
さうたう
)
の
値
(
ね
)
で
讓
(
ゆづ
)
つて
貰
(
もら
)
へば
可
(
よ
)
かつたに、
惜
(
を
)
しい
事
(
こと
)
をしたと
云
(
い
)
つた。
最後
(
さいご
)
に
横町
(
よこちやう
)
の
道具屋
(
だうぐや
)
をひどく
罵
(
のゝ
)
しつて、
怪
(
け
)
しからん
奴
(
やつ
)
だと
云
(
い
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
間口の狭い雑貨店がごたごたと並んで人通りの多い様子が大阪の
御霊
(
ごりやう
)
神社の境内へ
入
(
はひ
)
る
横町
(
よこちやう
)
の感じと似て居るのに興を覚え
乍
(
なが
)
ら電車の通らない右の方の
路
(
みち
)
を廻つてヹルトの広場に出た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
持
(
もち
)
おもりのする
番傘
(
ばんがさ
)
に、
片手腕
(
かたてうで
)
まくりがしたいほど、
身
(
み
)
のほてりに
夜風
(
よかぜ
)
の
冷
(
つめた
)
い
快
(
こゝろよ
)
さは、
横町
(
よこちやう
)
の
錢湯
(
せんたう
)
から
我家
(
わがや
)
へ
歸
(
かへ
)
る
趣
(
おもむき
)
がある。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
既に
灯
(
ひ
)
を消し、戸を
閉
(
とざ
)
したる商店の物陰に人
佇立
(
たゝず
)
めば、よし
盗人
(
ぬすびと
)
の疑ひは起さずとも、何者の何事をなせるやとて窺ひ知らんとし、
横町
(
よこちやう
)
の曲り角に制服いかめしき巡査の立つを見れば
夜あるき
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
ほんにこれは
違
(
ちが
)
ひたりもう
一
(
ひと
)
つ
跡
(
あと
)
の
横町
(
よこちやう
)
がそれなりしかも
知
(
し
)
れずと
曖昧
(
あいまい
)
の
答
(
こた
)
へ
方
(
かた
)
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
自分は大へんな所へ来たと思つたから、こんな
田舎
(
ゐなか
)
ぢやないよ、
横町
(
よこちやう
)
を二つばかり曲ると、
四条
(
しでう
)
の
大橋
(
おほはし
)
へ出る所なんだと説明した。すると車夫が
呆
(
あき
)
れた顔をして、ここも四条の近所どすがなと云つた。
京都日記
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
閑話休題
(
それはとにかく
)
、
母子
(
ふたり
)
は
其處等
(
そこら
)
を
見
(
み
)
て
歩
(
ある
)
くと、
今
(
いま
)
言
(
い
)
つた、
其
(
そ
)
のお
帳場
(
ちやうば
)
が、
橋
(
はし
)
向
(
むか
)
うの
横町
(
よこちやう
)
に
一個
(
ひとつ
)
あつた。
無論
(
むろん
)
古道具屋
(
ふるだうぐや
)
なんです。
廓そだち
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
歸
(
かへ
)
りは
例
(
れい
)
の
窓
(
まど
)
を
敲
(
たゝ
)
いてと
目算
(
もくさん
)
ながら
横町
(
よこちやう
)
を
曲
(
まが
)
れば、いきなり
後
(
あと
)
より
追
(
お
)
ひすがる
人
(
ひと
)
の、
兩手
(
りやうて
)
に
目
(
め
)
を
隱
(
かく
)
して
忍
(
しの
)
び
笑
(
わら
)
ひするに、
誰
(
だ
)
れだ
誰
(
だ
)
れだと
指
(
ゆび
)
を
撫
(
な
)
でゝ、
何
(
なん
)
だお
京
(
きやう
)
さんか、
小指
(
こゆび
)
のまむしが
物
(
もの
)
を
言
(
い
)
ふ
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
今
(
いま
)
は、
容子
(
ようす
)
だけでも
疑
(
うたが
)
ふ
處
(
ところ
)
はない……
去年
(
きよねん
)
春
(
はる
)
の
半
(
なか
)
ば
頃
(
ごろ
)
から、
横町
(
よこちやう
)
が
門口
(
かどぐち
)
の、
其
(
そ
)
の
數寄
(
すき
)
づくりの
裏家
(
うらや
)
に
住
(
す
)
んだ
美人
(
びじん
)
である。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
思
(
おも
)
へば
私
(
わたし
)
は
惡黨
(
あくたう
)
人
(
ひと
)
でなし、いたづら
者
(
もの
)
の
不義者
(
ふぎもの
)
の、まあ
何
(
なん
)
といふ
心得違
(
こゝろえちが
)
ひ、と
辻
(
つじ
)
に
立
(
た
)
つて
歩
(
あゆ
)
みも
得
(
え
)
やらず、
横町
(
よこちやう
)
の
角
(
かど
)
二
(
ふた
)
つ
曲
(
まが
)
りて
今
(
いま
)
は
我家
(
わがや
)
の
軒
(
のき
)
は
見
(
み
)
えぬを、
振
(
ふり
)
かへりては
熱
(
あつ
)
き
涙
(
なみだ
)
のはら/\とこぼれぬ。
うらむらさき
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
通
(
とほ
)
り
拔
(
ぬ
)
ければ
木犀
(
もくせい
)
の
薫
(
かをり
)
高
(
たか
)
き
横町
(
よこちやう
)
なり。これより
白山
(
はくさん
)
の
裏
(
うら
)
に
出
(
い
)
でて、
天外君
(
てんぐわいくん
)
の
竹垣
(
たけがき
)
の
前
(
まへ
)
に
至
(
いた
)
るまでは
我々
(
われ/\
)
之
(
これ
)
を
間道
(
かんだう
)
と
稱
(
とな
)
へて、
夜
(
よる
)
は
犬
(
いぬ
)
の
吠
(
ほ
)
ゆる
難處
(
なんしよ
)
なり。
弥次行
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それもあるならひなり
況
(
ま
)
してや
替
(
かは
)
りたる
雪
(
ゆき
)
と
墨
(
すみ
)
おろかなこと
雲
(
くも
)
と
泥
(
つち
)
ほど
懸隔
(
けんかく
)
のおびたゞしさ
如何
(
いか
)
に
有爲轉變
(
うゐてんぺん
)
の
世
(
よ
)
とはいへ
是
(
こ
)
れほどの
相違
(
さうゐ
)
誰
(
た
)
れが
何
(
なん
)
として
氣
(
き
)
のつくべき
心
(
こゝろ
)
の
鬼
(
おに
)
に
見知
(
みし
)
り
越
(
ご
)
しの
人目
(
ひとめ
)
厭
(
いと
)
はしく
態
(
わざ
)
と
横町
(
よこちやう
)
に
道
(
みち
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
青磁
(
せいじ
)
、
赤江
(
あかえ
)
、
錦手
(
にしきで
)
の
皿小鉢
(
さらこばち
)
、
角
(
かど
)
の
瀬戸
(
せと
)
もの
屋
(
や
)
がきらりとする。
横町
(
よこちやう
)
には
斜
(
なゝめ
)
に
突出
(
とつしゆつ
)
して、
芝居
(
しばゐ
)
か、
何
(
なん
)
ぞ、
興行
(
こうぎやう
)
ものの
淺葱
(
あさぎ
)
の
幟
(
のぼり
)
が
重
(
かさ
)
なつて、ひら/\と
煽
(
あふ
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
最早
(
もう
)
それはいひツこなしとゝめるも
云
(
い
)
ふも一
ト
筋道
(
すぢみち
)
横町
(
よこちやう
)
の
方
(
かた
)
に
植木
(
うゑき
)
は
多
(
おほ
)
しこちへと
招
(
まね
)
けば
走
(
はし
)
りよるぬり
下駄
(
げた
)
の
音
(
おと
)
カラコロリ
琴
(
こと
)
ひく
盲女
(
ごぜ
)
は
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
の
朝顔
(
あさがほ
)
か
露
(
つゆ
)
のひぬまのあはれ/\
粟
(
あは
)
の
水飴
(
みづあめ
)
めしませとゆるく
甘
(
あま
)
くいふ
隣
(
となり
)
にあつ
焼
(
やき
)
の
塩
(
しほ
)
せんべいかたきを
闇桜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
庭
(
には
)
は
唯
(
たゞ
)
垣
(
かき
)
一重
(
ひとへ
)
、
二階
(
にかい
)
は
屋根續
(
やねつゞ
)
きと
云
(
い
)
つても
可
(
よ
)
い、
差配
(
さはい
)
も
一
(
ひと
)
つ
差配
(
さはい
)
ながら、
前通
(
まへどほ
)
りと
横町
(
よこちやう
)
で、
引越蕎麥
(
ひつこしそば
)
のおつき
合
(
あひ
)
の
中
(
なか
)
には
入
(
はひ
)
つて
居
(
を
)
らぬから、
内
(
うち
)
の
樣子
(
やうす
)
は
一寸
(
ちよつと
)
分
(
わか
)
らぬ。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
近所
(
きんじよ
)
の
犬
(
いぬ
)
は
遠
(
とほ
)
くから
遁
(
に
)
げさうな、が、
掻垂眉
(
かいだれまゆ
)
のちよんぼりと、
出張
(
でば
)
つた
額
(
ひたひ
)
にぶら
下
(
さが
)
つた
愛嬌造
(
あいけうづく
)
り、と
見
(
み
)
ると、なき
一葉
(
いちえふ
)
がたけくらべの
中
(
なか
)
の、
横町
(
よこちやう
)
の
三五郎
(
さんごらう
)
に
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
る。
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その
時
(
とき
)
、
横町
(
よこちやう
)
を
縱
(
たて
)
に
見通
(
みとほ
)
しの
眞空
(
まぞら
)
へ
更
(
さら
)
に
黒煙
(
こくえん
)
が
舞起
(
まひおこ
)
つて、
北東
(
ほくとう
)
の
一天
(
いつてん
)
が
一寸
(
いつすん
)
を
餘
(
あま
)
さず
眞暗
(
まつくら
)
に
代
(
かは
)
ると、
忽
(
たちま
)
ち、どゞどゞどゞどゞどゞと
言
(
い
)
ふ、
陰々
(
いん/\
)
たる
律
(
りつ
)
を
帶
(
お
)
びた
重
(
おも
)
く
凄
(
すご
)
い
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
横町
(
よこちやう
)
の
道
(
みち
)
の
兩側
(
りやうがは
)
は、
荷
(
に
)
と
人
(
ひと
)
と、
兩側
(
りやうがは
)
二列
(
ふたならび
)
の
人
(
ひと
)
のたゝずまひである。
私
(
わたし
)
たちより、もつと
火
(
ひ
)
に
近
(
ちか
)
いのが
先
(
さき
)
んじて
此
(
こ
)
の
町内
(
ちやうない
)
へ
避難
(
ひなん
)
したので、……
皆
(
みな
)
茫然
(
ばうぜん
)
として
火
(
ひ
)
の
手
(
て
)
を
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
る。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
道理
(
だうり
)
で、そこらの
地内
(
ちない
)
や
横町
(
よこちやう
)
へ
入
(
はひ
)
つても、つきとほしの
笄
(
かうがい
)
で、
褄
(
つま
)
を
取
(
と
)
つて、
羽子
(
はね
)
を
突
(
つ
)
いて
居
(
ゐ
)
るのが、
聲
(
こゑ
)
も
掛
(
か
)
けはしなかつた。
割前勘定
(
わりまへかんぢやう
)
。
乃
(
すなは
)
ち
蕎麥屋
(
そばや
)
だ。と
言
(
い
)
つても、
松
(
まつ
)
の
内
(
うち
)
だ。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
一度
(
いちど
)
蕉園
(
せうゑん
)
さんが
住
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
た、おまじなひ
横町
(
よこちやう
)
へ
入
(
はひ
)
らうとする、
小
(
ちひ
)
さな
道具屋
(
だうぐや
)
の
店
(
みせ
)
に、
火鉢
(
ひばち
)
、
塗箱
(
ぬりばこ
)
、
茶碗
(
ちやわん
)
、
花活
(
はないけ
)
、
盆
(
ぼん
)
、
鬱金
(
うこん
)
の
切
(
きれ
)
の
上
(
うへ
)
に
古
(
ふる
)
い
茶碗
(
ちやわん
)
、
柱
(
はしら
)
にふツさりと
白
(
しろ
)
い
拂子
(
ほつす
)
などの
掛
(
かゝ
)
つた
中
(
なか
)
に
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夜
(
よ
)
が
更
(
ふ
)
けると、
紅
(
くれなゐ
)
の
星
(
ほし
)
の
流
(
なが
)
るゝやうに、
町々
(
まち/\
)
の
行燈
(
あんどん
)
、
辻
(
つじ
)
の
萬燈
(
まんどう
)
、
横町
(
よこちやう
)
の
提灯
(
ちやうちん
)
が、
一
(
ひと
)
つ
消
(
き
)
え、
二
(
ふた
)
つ
消
(
き
)
え、
次第
(
しだい
)
に
暗
(
くら
)
く
更
(
ふ
)
くるまゝに、やゝ
近
(
ちか
)
き
町
(
まち
)
、
遠
(
とほ
)
き
辻
(
つじ
)
に、
近
(
ちか
)
きは
低
(
ひく
)
く、
遠
(
とほ
)
きは
高
(
たか
)
く、
森
(
もり
)
あれば
森
(
もり
)
に
渡
(
わた
)
り
祭のこと
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「ぢき、
横町
(
よこちやう
)
の……
何
(
なん
)
の、
車夫
(
わかいしゆ
)
に——」
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
其
(
そ
)
の
横町
(
よこちやう
)
の……」
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“横町”の意味
《名詞》
表の通りから横に入った道やそれに沿った街。横丁。
(出典:Wiktionary)
横
常用漢字
小3
部首:⽊
15画
町
常用漢字
小1
部首:⽥
7画
“横町”で始まる語句
横町組
横町々々