横町よこちやう)” の例文
やがて、合方あひかたもなしに、落人おちうどは、すぐ横町よこちやう有島家ありしまけはひつた。たゞでとほ關所せきしよではないけれど、下六同町内しもろくどうちやうないだから大目おほめく。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
零時半の開門の時間まで横町よこちやうの角の店前テラス午飯ひるはんを取つて待つて居ると、見物人が自動車や馬車で次第に髑髏洞カタコンブの門前にあつまつて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そこ此処こゝに二三けん今戸焼いまどやきを売る店にわづかな特徴を見るばかり、何処いづこ場末ばすゑにもよくあるやうな低い人家じんかつゞきの横町よこちやうである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
いきほひ自然しぜんと言つては堅過かたすぎるが、成程なるほど江戸時代えどじだいからかんがへて見ても、湯屋ゆや与太郎よたらうとは横町よこちやうほう語呂ごろがいゝ。(十八日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
なアにだれがあんな所へくもんか、まアきみ一緒いつしよたまへ、何処どこぞで昼飯ひるめし附合給つきあひたまへ。乙「そんなら此所こゝから遠くもないから御成道おなりみち黒焼屋くろやきや横町よこちやうさ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし僕の思ひ出したのはかならずしも彼のことばかりではない。彼の住んでゐた家のあたり、——瓦屋根のあひだ樹木じゆもくの見える横町よこちやうのことも思ひ出したのである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
夫婦ふうふはなしはそれから、坂井さかゐ生活せいくわつ餘裕よゆうのあることと、その餘裕よゆうのために、横町よこちやう道具屋だうぐやなどに意外いぐわいまうかたをされるかはりに、ときとすると織屋おりやなどから
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あるあきあさのこと、イワン、デミトリチは外套ぐわいたうえりてゝ泥濘ぬかつてゐるみちを、横町よこちやう路次ろじて、町人ちやうにんいへ書付かきつけつてかねりにつたのであるが
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
南明館なんめいくわんあたりのくら横町よこちやうはじめてくち利合きゝあひ、それからちよく/\をとこ下宿げしゆくへも出入しゆつにふした事情じゞやう大体だいたいわかる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
れがうつ横町よこちやうの三五ろう口上こうじようはせよう、美登利みどりさんれにしないかとへば、あゝれは面白おもしろからう、三ちやんの口上こうじようならばれもわらはずにはられまい
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
海辺の方ではもう地車だんじりの太鼓が鳴つて居る。横町よこちやうを通る人の足音が常の十倍程もする。子供の声、甲高かんだかな女の声などがそれに交つて、朝湯にはひつて居る私を早く早くとき立てるやうにきこえた。
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
一町いつちやうばかり、麹町かうぢまち電車通でんしやどほりのはうつた立派りつぱ角邸かどやしき横町よこちやうまがると、其處そこ大溝おほどぶでは、くわツ、くわツ、ころ/\ころ/\とうたつてる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いつも両側のよごれた瓦屋根かはらやね四方あたり眺望てうばうさへぎられた地面の低い場末ばすゑ横町よこちやうから、いま突然とつぜん、橋の上に出て見た四月の隅田川すみだがは
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
またどうすぢとほれば、馬鹿ばかはないでむといふ手續てつゞきをしへてれるものもなかつた。宗助そうすけ矢張やつぱり横町よこちやう道具屋だうぐや屏風びやうぶるよりほか仕方しかたがなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
巴里パリイの街は大通おほどほりでも横町よこちやうでもまたどんな辺鄙なところでも一ちやうの片側だけにも三軒四軒の女の髪結所かみゆひどころがある。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
猶且やはり毎朝まいあさのやうにあさ引立ひきたたず、しづんだ調子てうし横町よこちやう差掛さしかゝると、をりからむかふより二人ふたり囚人しうじんと四にんじゆうふて附添つきそふて兵卒へいそつとに、ぱつたりと出會でつくわす。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おそろしい智惠者ちゑしやだとめるに、なん此樣こんこと智惠者ちゑしやものか、いま横町よこちやう潮吹しほふきのとこあんりないッて此樣こうやつたをたのでれの發明はつめいではい、とてゝ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あまはげしい往来中わうらいなかではいかず、とつて衆人ひとに立たぬければ不可いかぬから、入口はいりぐち横町よこちやうけ、おもてはうは三四けんの所をこまかい格子作かうしづくりこしらへ、往来おもてはう看板かんばんけました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
萩寺はぎでらの先にある電柱(?)は「亀井戸かめゐど天神てんじん近道」といふペンキ塗りの道標だうへうを示してゐた。僕等はその横町よこちやうまがり、待合まちあひやカフエの軒を並べた、狭苦しい往来わうらいを歩いて行つた。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
跫音あしおときこえぬばかり——四谷よツやとほりからあな横町よこちやうつゞく、さかうへから、しよな/\りてて、擦違すれちがつたとおもふ、とこゑ
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
長吉ちやうきちかく思案しあんをしなほすつもりで、をりから近所の子供を得意にする粟餅屋あはもちやぢゝがカラカラカラときねをならして来るむかうの横町よこちやうの方へととほざかつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ついでにあのかほがうつるとなほおもしろいと相談さうだんはとゝのひて、不足ふそくしな正太しようた買物役かいものやくあせりてまわるもをかしく、いよ/\明日あすりては横町よこちやうまでも其沙汰そのさたきこえぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのほか鮨屋すしや与平よへい鰻屋うなぎや須崎屋すさきや、牛肉のほかにも冬になるとししや猿を食はせる豊田屋とよだや、それから回向院ゑかうゐんの表門に近い横町よこちやうにあつた「坊主ぼうず軍鶏しやも」——かう一々数へ立てて見ると
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
同時どうじに、さうわけなら、自分じぶんぢか宗助そうすけから相當さうたうゆづつてもらへばかつたに、しいことをしたとつた。最後さいご横町よこちやう道具屋だうぐやをひどくのゝしつて、しからんやつだとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
間口の狭い雑貨店がごたごたと並んで人通りの多い様子が大阪の御霊ごりやう神社の境内へはひ横町よこちやうの感じと似て居るのに興を覚えながら電車の通らない右の方のみちを廻つてヹルトの広場に出た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
もちおもりのする番傘ばんがさに、片手腕かたてうでまくりがしたいほど、のほてりに夜風よかぜつめたこゝろよさは、横町よこちやう錢湯せんたうから我家わがやかへおもむきがある。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
既にを消し、戸をとざしたる商店の物陰に人佇立たゝずめば、よし盗人ぬすびとの疑ひは起さずとも、何者の何事をなせるやとて窺ひ知らんとし、横町よこちやうの曲り角に制服いかめしき巡査の立つを見れば
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ほんにこれはちがひたりもうひとあと横町よこちやうがそれなりしかもれずと曖昧あいまいこたかた
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
自分は大へんな所へ来たと思つたから、こんな田舎ゐなかぢやないよ、横町よこちやうを二つばかり曲ると、四条しでう大橋おほはしへ出る所なんだと説明した。すると車夫があきれた顔をして、ここも四条の近所どすがなと云つた。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
閑話休題それはとにかく母子ふたり其處等そこらあるくと、いまつた、のお帳場ちやうばが、はしむかうの横町よこちやう一個ひとつあつた。無論むろん古道具屋ふるだうぐやなんです。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かへりはれいまどたゝいてと目算もくさんながら横町よこちやうまがれば、いきなりあとよりひすがるひとの、兩手りやうてかくしてしのわらひするに、れだれだとゆびでゝ、なんだおきやうさんか、小指こゆびのまむしがもの
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いまは、容子ようすだけでもうたがところはない……去年きよねんはるなかごろから、横町よこちやう門口かどぐちの、數寄すきづくりの裏家うらやんだ美人びじんである。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おもへばわたし惡黨あくたうひとでなし、いたづらもの不義者ふぎものの、まあなんといふ心得違こゝろえちがひ、とつじつてあゆみもやらず、横町よこちやうかどふたまがりていま我家わがやのきえぬを、ふりかへりてはあつなみだのはら/\とこぼれぬ。
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とほければ木犀もくせいかをりたか横町よこちやうなり。これより白山はくさんうらでて、天外君てんぐわいくん竹垣たけがきまへいたるまでは我々われ/\これ間道かんだうとなへて、よるいぬゆる難處なんしよなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それもあるならひなりしてやかはりたるゆきすみおろかなことくもつちほど懸隔けんかくのおびたゞしさ如何いか有爲轉變うゐてんぺんとはいへれほどの相違さうゐれがなんとしてのつくべきこゝろおに見知みししの人目ひとめいとはしくわざ横町よこちやうみち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
青磁せいじ赤江あかえ錦手にしきで皿小鉢さらこばちかど瀬戸せとものがきらりとする。横町よこちやうにはなゝめ突出とつしゆつして、芝居しばゐか、なんぞ、興行こうぎやうものの淺葱あさぎのぼりかさなつて、ひら/\とあふつてた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
最早もうそれはいひツこなしとゝめるもふも一筋道すぢみち横町よこちやうかた植木うゑきおほしこちへとまねけばはしりよるぬり下駄げたおとカラコロリことひく盲女ごぜいま朝顔あさがほつゆのひぬまのあはれ/\あは水飴みづあめめしませとゆるくあまくいふとなりにあつやきしほせんべいかたきを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にはたゞかき一重ひとへ二階にかい屋根續やねつゞきとつてもい、差配さはいひと差配さはいながら、前通まへどほりと横町よこちやうで、引越蕎麥ひつこしそばのおつきあひなかにははひつてらぬから、うち樣子やうす一寸ちよつとわからぬ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
近所きんじよいぬとほくからげさうな、が、掻垂眉かいだれまゆのちよんぼりと、出張でばつたひたひにぶらさがつた愛嬌造あいけうづくり、とると、なき一葉いちえふがたけくらべのなかの、横町よこちやう三五郎さんごらうる。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのとき横町よこちやうたて見通みとほしの眞空まぞらさら黒煙こくえん舞起まひおこつて、北東ほくとう一天いつてん一寸いつすんあまさず眞暗まつくらかはると、たちまち、どゞどゞどゞどゞどゞとふ、陰々いん/\たるりつびたおもすご
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
横町よこちやうみち兩側りやうがはは、ひとと、兩側りやうがは二列ふたならびひとのたゝずまひである。わたしたちより、もつとちかいのがさきんじて町内ちやうない避難ひなんしたので、……みな茫然ばうぜんとしてる。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
道理だうりで、そこらの地内ちない横町よこちやうはひつても、つきとほしのかうがいで、つまつて、羽子はねいてるのが、こゑけはしなかつた。割前勘定わりまへかんぢやうすなは蕎麥屋そばやだ。とつても、まつうちだ。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一度いちど蕉園せうゑんさんがんでた、おまじなひ横町よこちやうはひらうとする、ちひさな道具屋だうぐやみせに、火鉢ひばち塗箱ぬりばこ茶碗ちやわん花活はないけぼん鬱金うこんきれうへふる茶碗ちやわんはしらにふツさりとしろ拂子ほつすなどのかゝつたなか
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けると、くれなゐほしながるゝやうに、町々まち/\行燈あんどんつじ萬燈まんどう横町よこちやう提灯ちやうちんが、ひとえ、ふたえ、次第しだいくらくるまゝに、やゝちかまちとほつじに、ちかきはひくく、とほきはたかく、もりあればもりわた
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ぢき、横町よこちやうの……なんの、車夫わかいしゆに——」
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
横町よこちやうの……」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)