ばん)” の例文
誠に有難ありがたい事で、わたくしもホツといきいて、それから二の一ばん汽車きしや京都きやうと御随行ごずゐかうをいたして木屋町きやちやう吉富楼よしとみろうといふうちまゐりました
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ばんごと喧嘩けんくわをしてめてやるのだが隨分ずゐぶんおもしろいよとはなしながら、鐵網かなあみうへもちをのせて、おゝ熱々あつ/\指先ゆびさきいてかゝりぬ。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れがしきりに交代かうたいされるので、卯平うへいは一しか郷里きやうりつちまなくても種々しゆ/″\變化へんくわみゝにした。かれは一ばんおつぎのことが念頭ねんとううかぶ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
日本にほんのむかしの武士ぶしで一ばんつよかったのは源氏げんじ武士ぶしでございます。その源氏げんじ先祖せんぞで、一ばんえらい大将たいしょうといえば八幡太郎はちまんたろうでございます。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おじさんのたこ、一ばんだこになれる?」と、北風きたかぜかれながら、あくまであおれわたったそら見上みあげて、賢二けんじがいいました。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
じつは、あの犬どもは魔法まほうをかけられておりまして、あのとうのなかにあるたくさんのたからもののばんをしていなければならないのです。
景色けしきだ、とこれから、前記ぜんき奥入瀬おいらせ奇勝きしようくこと一ばんして、くちあさぼらけ、みぎはまつはほんのりと、しまみどりに、なみあをい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ガチョウばんのニールスが勇敢ゆうかんにも、赤んぼうをおかあさんのところへつれていってやったと、ウソたちは、口々に歌っているのでした。
帽子屋ばうしやッた一人ひとり場所ばしよへたために一ばんいことをしました、あいちやんは以前まへよりもぽどわりわるくなりました、だつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
カピ妻 さいの、其時分そのじぶんにはきつ鼠捕ねずみとりであったさうな。したが、わたしが不寢ねずばんをするゆゑ、いま其樣そのやうねずみをばらすことぢゃない。
そこはわづかふたつかみつつしか部屋へやがなく、ほんとうにちひさいもので、ぢいさんがたゞ一人ひとり、つくねんとしてばんをしてゐました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ほかのこととはわけちがい、あたしゃかずあるおきゃくのうちでも、いの一ばんきらいなおひと、たとえうそでも冗談じょうだんでも、まないことはいやでござんす
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まつうめせいくらべるとたけせいはずっとやせぎすで、なにやらすこ貧相ひんそうらしくえましたが、しかし性質せいしつはこれが一ばん穏和おとなしいようでございました。
遠駆とおがけの一ばん試合じあいで、勝敗しょうはいめることは当方とうほうで、のぞむところ、たしかに承知しょうちした。さらば、すぐそちらでもおしたくを」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あにさんは龍馬とは親子程年が違つて居ました。一ばんうへが兄さん(権平)で次がお乙女さん其次が高松太郎のママ、其次が又女で龍馬は末子です。
千里駒後日譚 (新字旧仮名) / 川田瑞穂楢崎竜川田雪山(著)
彼の母が人形を差し出すと幸子は祖母の顔と人形とをしばらかわばんこに眺めていてから、そろそろと人形の方へ手を出した。
御身 (新字新仮名) / 横光利一(著)
このとき諭吉ゆきちは、しろ門番もんばんをするつとめがありました。三日みっかに一どは、そのばんがまわってきます。そのだけは、ひるはうつすことができません。
これが、いのきちがおぼえている、だいばんめのおどろきであった。つづいて、日本海にほんかいの石におどろいたのがだいばんめ—。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
しかしわたし決定的けつていてきでなかつた。くなら一やつたほうがいゝとわたしひそかにおもつてゐた。Iばんしてついてくやうなことはわたしには出来できなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
十二ばん岩間寺いはまでらす巡礼の者であらう、ねむいやうな御咏歌ごえいかふし山越やまごしに響いて、それもついきこえなくなつて了つた。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
宗助そうすけおほきな姿見すがたみうつ白壁しらかべいろなゝめにて、ばんるのをつてゐたが、あまり退屈たいくつになつたので、洋卓テーブルうへかさねてあつた雜誌ざつしけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『ひどいうじだなア。』と、一ばんちかつた某家ぼうけ武士ぶしそばからでも、死體したいまではまだ一間半けんはんばかりの距離きよりがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その目的もくてきおよそ三つにわかつことが出來できる。一はうらみはうずるためで一ばんこわい。二は恩愛おんあいためむしろいぢらしい。三は述懷的じゆつくわいてきである。一のれいかぞふるにいとまがない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
私達の握りこぶし二つがけ位の穴を地べたで見つけて、一ばんしたへは枯草だの草の穗だけで圓い穴形あながたをこしらへ、上へは馬の毛をたくさんれて柔かい床を拵へる。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
りよその視線しせん辿たどつて、入口いりくちから一ばんとほかまどまへると、そこに二人ふたりそううづくまつてあたつてゐるのがえた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
いまこの岩窟がんくつ説明せつめいするに、もつとかいやすからしめるには、諸君しよくん腦裡のうりに、洋式ようしき犬小屋いぬごやゑがいてもらふのが一ばんだ。
此打切は川口を一ばんとして水上みなかみへ十五番まであり。こゝはいづくのもちとて川にその境目さかひめありてはなはだ厳重げんぢゆう也。
その仕方しかたもいろいろかされたが、ぼく如何いかにも支那人式しなじんしきだなと一ばん感心かんしんし、おそるべしとおもつたのは
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
つれてきたときより三ばいも大きくなり、夜はよく家のばんをし、昼間ひるまは林太郎のいうことをよく聞いて、いっしょにふざけながら遊んでもおしっこをもらしたり
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
またある若者わかものてどうふう生活せいかつをしたらいいかと相談そうだんけられる、と、他人たにんはまず一ばんかんがえるところであろうが、貴方あなたにはそのこたえはもうちゃんと出来できている。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
伴うて間毎々々まごと/\にはり向の物置部屋へ案内したり爰には數十人の與力よりき同心どうしんばんをなし言語同斷の無禮を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とうさんの田舍ゐなか信濃しなの山國やまぐにからたひら野原のはらおほ美濃みのはうおりたうげの一ばんうへのところにあつたのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかし一ばんに氣にツたのは、まゆと眼で、眉はたゝ温順すなほにのんびりしてゐるといふだけのことであツたが
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
踏切ふみきりのちかくには、いづれもすぼらしい藁屋根わらやね瓦屋根かはらやねがごみごみと狹苦せまくるしくてこんで、踏切ふみきばんるのであらう、ただりうのうすしろはたものうげに暮色ぼしよくゆすつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さはれ木枯吹きすさむ夜半よわさいわいおおき友の多くを思ひては、またもこの里のさすがにさびしきかな、ままよ万事かからんのみ、奮励ふんれいばんび出でんかの思ひなきにあらねど
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
下女はとんだことをしたとやんでいた。花前が食事しょくじ水車的すいしゃてきでいつもおなじような順序じゅんじょをとる。自分のときめた飯椀めしわん汁椀しるわんとは、かならずばんごと自分で洗って飯をべる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
コレハ/\よく作られたと賞揚しやうやうばん、そのあと新詩しんし一律いちりつまたおくられては、ふたゝび胸に山をきづく、こゝはおほきかんがへもの、まのあたさゝげずに遠く紙上しじやう吹聴ふいちやうせば、先生ひげにぎりながら
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ふざけないで歩くこと、けっして傍道わきみちをしないこと、馬や車をよけること、五人のうちで一ばん小さいエチエンヌのそばを決してはなれないこと、そういうお約束やくそくをしてたのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
あの一ばんおしまいにからからた、そしてぶきりょうな顔付かおつきの子家鴨こあひるは、ほか家鴨あひるやら、そのそこにわれている鳥達とりたちみんなからまで、みつかれたり、きのめされたり
すると一ばん最後さいごにペンペといふなにらないわかからすてきて『そいつはおもしろいな、ヱヴェレストのてつぺんまでは大飛行だいひかうだ。ぼく大賛成だいさんせいだ。ラランよ。ぼくでも大丈夫だいじやうぶか。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
まさかこんな林には気もかずに通りぎるだろうと思っていたら二人の役人がどこかでばんをして見ていたのです。万一殺されないにしてももうしばられると私どもは覚悟かくごしました。
二人の役人 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ところで一ばんさきに、結核けつかく療養所れうやうじよ交渉かうせふしてたが、寄留屆きりうとゞけがしてないので駄目だめだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
「わたしは隨分ずいぶん澤山たくさんんだが、一ばんしまいに三人の貴い御子みこを得た」と仰せられて、くびに掛けておいでになつた玉のをゆらゆらとゆらがして天照あまてらす大神にお授けになつて
かくしづんでときには、にぎはしき光景くわうけいにてもながめなば、幾分いくぶんこゝろなぐさむるよすがともならんとかんがへたので、わたくし兩人ふたり引連ひきつれて、此時このときばんにぎはしくえた船首せんしゆかたうつした。
此地こゝには妓楼ぎろうがありますでな、とりの無いのもなものぢやといふ事でと、神酒みきばんするらしきがなにゆゑかあまたゝび顔撫かほなでながら、今日限こんにちかぎ此祠このほこらりましたぢや。これも六七年前。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
また今を去ること三十余年、かたばんとて非役ひやく徒士かちに城門の番を命じたることあり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
『さうです。實際じつさいうちいまばん繁盛はんじやうするでしよう。』と關羽くわんう鈴木巡査すゞきじゆんさこたへた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
去年きよねん夏頃なつごろから稼場かせぎば姿すがたはじめ、川風かはかぜあきはやぎ、手袋てぶくろした手先てさきこゞえるやうなふゆになつても毎夜まいよやすまずにるので、いまでは女供をんなどもなかでも一ばん古顔ふるがほになつてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
このほかいへつかはれてゐるもの大勢おほぜいぐすねいてつてゐます。いへうちをんなどもがばんをし、おばあさんは、ひめかゝへて土藏どぞうなかにはひり、おきな土藏どぞうめて戸口とぐちひかへてゐます。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
ふのは、おぢさんにまへ約束やくそくをきつとまもらすためには、きみたちはこのほんをよくんで、そしてそのうちの一ばんきなうたとか、きらひなうたとか、このうたはこんなとき使つかつたらどうだつたとか
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)