もち)” の例文
土地とちにて、いなだは生魚なまうをにあらず、ぶりひらきたるものなり。夏中なつぢういゝ下物さかなぼん贈答ぞうたふもちふること東京とうきやうけるお歳暮せいぼさけごとし。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いまでは、いいくすりがたくさんにありますけれど、まだ世間せけんひらけなかった、むかしは、家伝薬かでんぐすりなどをもちいて病気びょうきをなおしたものであります。
おばあさんと黒ねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかるに今日こんにちぱんにこの轉倒てんたふ逆列ぎやくれつもちゐてあやしまぬのは、畢竟ひつきやう歐米文明おうべいぶんめい渡來とらいさい何事なにごと歐米おうべい風習ふうしう模倣もほうすることを理想りさうとした時代じだい
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
(五二)くわんなればすなは名譽めいよひとちようし、きふなればすなは介冑かいちうもちふ。いまやしなところもちふるところあらず、もちふるところやしなところあらずと。
左吉松ほどのしたゝかな惡黨が、確かな相棒を一人持つて居るなら、何を苦しんで露見のおそれのあるやうな馬鹿な奇計をもちひるでせう。
九、 大地震だいぢしん場合ばあひには水道すいどう斷水だんすいするものと覺悟かくごし、機敏きびん貯水ちよすい用意よういをなすこと。またみづもちひざる消防法しようぼうほうをも應用おうようすべきこと。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
此冬このふゆになつて、ひるのうち炬燵こたつこしらえたのは、其日そのひはじめてゞあつた。よるうからもちひてゐたが、何時いつも六でふだけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
行火あんかかはりにまでももちひられるようになり、今日こんにちでは人間にんげん生活上せいかつじよう電氣でんき寸時すんじくことの出來できない必要ひつようなものとなりました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
へい……御存ごぞんじさまでございます、これは貴方あなた遠州所持ゑんしうしよぢでございまして、其後そののちたいしたえら宗匠そうしやうさんがもちひたといふしなでございます。主
また石器時代せつきじだいといひましても、當時とうじ人間にんげんもちひてゐたものは、石器せつきばかりではなく、材料ざいりようをもつてつくつたものもないではありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
たとへば、吝嗇者りんしょくもののやうにたからおびたゞしうってをっても、たゞしうもちふることをらぬ、姿すがたをも、こひをも、分別ふんべつをも、其身そのみ盛飾かざりとなるやうには。
おのれをつるには、そのうたがいを処するなかれ。その疑いを処すればすなわちしゃもちうるのこころざし多くず。人にほどこすにはそのほうむるなかれ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
第三 さけちや菓子かしるゐ食時しよくじせつ少々せう/\もちゐて飮食いんしよく消化せうくわたすくるはがいなしといへども、その時限じげんほか退屈たいくつときもちゆとうがいあること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
シベリヤ東北の住民ぢうみん、アメリカ極北の住民及びグリーンランドのエスキモは眼の部分ぶぶんに細き横線を截り透かしたる眼蔓樣のものをもちゐる事有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
浮世の風をみ込ませようとする時に、最も陥り易い短所であるが、しかし之も見様に由れば、技術の洗煉されないせいで、もちように由っては
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
そればかりでも身躰からだ疲勞ひらうはなはだしからうとおもはれるので種々いろ/\異見いけんふが、うもやまひせゐであらうか兎角とかくれのこともちひぬにこまりはてる
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
第七十六条 法律規則命令又ハ何等なんらノ名称ヲもちヰタルニかかわラスノ憲法ニ矛盾むじゅんセサル現行ノ法令ハすべ遵由じゅんゆうノ効力ヲゆう
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
クリスマスの裝飾さうしよくもちゐた寄生木やどりぎおほきなくすだまのやうなえだが、ランプのひかり枝葉えだはかげせて天井てんじやうつるされてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
縮にもちふるは、奥刕あうしう会津あひづ出羽最上ではもがみさんを用ふ。白縮はもつはら会津を用ふ。なかんづく影紵かげそといふもの極品ごくひん也、また米沢の撰紵えりそしようするも上品也。
先づ饅頭笠にて汚水をいだし、さら新鮮しんせんなる温泉をたたゆ、温たかき為め冷水を調合てうごうするに又かさもちゆ、笠為にいたむものおほし、抑此日や探検たんけんの初日にして
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
おび一重ひとへひだり腰骨こしぼねところでだらりとむすんであつた。兩方りやうはうはしあかきれふちをとつてある。あら棒縞ぼうじま染拔そめぬきでそれはうまかざりの鉢卷はちまきもちひる布片きれであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
次のちひさき光のなかには、己がふみをアウグスティーンのもちゐにそなへしかの信仰の保護者ほゝゑむ 一一八—一二〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
わたしせま知識ちしき範圍はんいでは、戯曲ぎきよく球突たまつきたまひゞきなどをもちゐたのはひとりチエエホフあるのみのやうである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そして、私はそれを到る所でもちいました。口実を設けて、友人の家へ泊り込み、主人公の居間へこの装置を施して、激情的な光景を隙見したこともあります。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
けれども先生せんせい其家そのいへかこ幾畝いくせかの空地くうちみづからたがやして菜園さいゑんとし種々しゆ/″\野菜やさいゑてます。また五六羽ごろつぱにはとりふて、一もちゆるだけのたまごつてます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ほがら/\といふと、夜明よあけのそらのあかるさをしめ言葉ことばです。それを、つきつてゐるそら形容けいようもちひたので、いかにもひるのようなあかるいてんかんじられます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
二人のおどろき、よろこび、その後の物語、昔の作者なら、ここんところは、読む者よろしく推量あるべし……とやるところだが僕も一つ、この手をもちいよう。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
本殿はみだりに平常ふだんもちいないが、数寄屋は吉保の安息所として、夜はともり、昼もよくここにくつろぐ。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
回目くわいめには矢張やはり其人數そのにんずで、此方こちらシヨブルや、くわつてたが、如何どううまかぬものだから、三回目くわいめには汐干しほひときもちゐた熊手くまで小萬鍬せうまんくわ)が四五ほんつたのを持出もちだしたところ
「おそれながら陛下へいか、すべて書物しょもつにかいてありますことを、そのままおもちいになってはなりません。あれはこしらえごとでございます。いわば、妖術ようじゅつ魔法まほうのるいでございます。」
折角単純な公私両もちいの服装を考え出したところで、はき物・被り物を自然の変化に放任しておいたら、頭はほこりを怖れ足は泥を怖れて、働こうという男女の職業は茶屋か店屋みせや
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すなは現今げんこんおいもつと精巧せいこうなる潜水器せんすいきでも、海底かいてい五十米突メートル以下いかしづんではみづ壓力あつりよくめと空氣喞筒くうきポンプ不完全ふくわんぜんなるために、到底たうていそのようさぬのであるから、潜水器せんすいきもちゆる海賊船かいぞくせん
あかすに打聞息子むすこうでこまねいて默然たりしが漸々やう/\にして首をあげ世に有難き御慈愛いつくしみを傳承りて勸たる和郎が言葉をもちひずして博識はくしきぶりたる我答へ今更いまさら思へば面目めんぼくなし花はともあれ父母のこゝろ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかしてみづかべんじてはるゝは、作者さくしや趣意しゆいは、殺人犯さつじんはんおかしたる人物じんぶつは、その犯後はんごいかなる思想しそういだくやらんとこゝろもちひて推測おしはか精微せいびじよううつして己が才力を著はさんとするのみと。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
老人ろうじん毒殺どくさつもちいられた青酸加里せいさんかりが、うちの工場こうじょうにもあるつてことを、わたしくちからわせようとしているんでしよう。ハッハッハ、たしかにあります。しよつちゆう使つかつていますよ。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
親方があまりはげしくおこらないとき、または他人をすこし愚弄ぐろう(ばかにする)しかけるときするくせで、まったくかれはそのイタリア風の慇懃いんぎん(ばかていねい)を極端きょくたんもちいていた。
そこで、金港堂きんこうどうはじめ年少詩人ねんせうしじん俊才しゆんさいつて、おももちゐやうとこゝろざしおこしたものと考へられる、この金港堂きんこうどう編輯へんしうには中根淑氏なかねしゆくしたので、すなはこの人が山田やまだ詞才しさいつたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其時そのときあつまツてツた、一どうものよろこびはくらいりましたか、商家抔せうかなどではおうおわし取扱とりあつかつてるから、醫者いしやぶもはぬとようときは、實驗上じつけんぜう隨分ずいぶんもちひて宜敷よろしほうようぞんじます。
下町したまちは知らず、われわれの住む山の手では、商家でも店でこそランプをもちいたれ、奥の住居すまいではたいてい行燈あんどうをとぼしていた。家によっては、店先にも旧式のカンテラを用いていたのもある。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
但馬守たじまのかみ流石さすがに、そんな些事さじたいして、一々死刑しけいもちゐることは出來できなかつたが、掏摸すりなぞは從來じうらい犯以上ぱんいじやうでなければ死刑しけいにしなかつたのを、れは二はんあるひことによると初犯しよはんからてて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
今度こんどは一生懸命しやうけんめいにインキをもちゐてふたゝはじめました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
毎食後まいしよくご三十ぷん白湯さゆにてもちゆかね。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
李克りこくいはく、『たんにしていろこのむ。しかれどもへいもちふるは、司馬穰苴しばじやうしよぐるあたはざるなり』と。ここおい文矦ぶんこうもつしやうす。
わがくにける三階建さんがいだて勿論もちろん二階建にかいだて大抵たいてい各階かくかいはしらとこ部分ぶぶんおいがれてある。すなはとほはしらもちひないで大神樂造だいかぐらづくりにしてある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
これをいて二十つた、にしてとをつたとをとこだて澤山たくさんなり。次手ついでに、目刺めざしなし。大小だいせういづれもくしもちゐず、したるは干鰯ひいわしといふ。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ゆゑにそのしかばねをいるゝところ棺槨くわんくわくには恒久的材料こうきうてきざいれうなる石材せきざいもちひた。もつとも棺槨くわんくわく最初さいしよ木材もくざいつくつたが、發達はつたつして石材せきざいとなつたのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
まづ石器せつきおなじような刃物はものるいをやはりほねつのつくるのでありますが、もっともこれをつくるには石器せつきもちひたのでありませう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
其時そのとき宗助そうすけこれはならんとおもつた。けれどもはたして刄物はものもちひて、かたにくいていものやら、わるいものやら、けつしかねた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それは、春徳寺でもちひられた毒藥は、池の端の丸屋で盜まれたものに相違なく、その邊一帶は、錢形平次の繩張り内と言つてもよかつたのです。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
もちひて浮々うき/\とせし樣子やうすさてまこと悔悟くわいごして其心そのこゝろにもなりぬるかと落附おちつくは運平うんぺいのみならず内外うちとのものもおなじことすこまくら
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)