ちゝ)” の例文
烈々れつ/\える暖炉だんろのほてりで、あかかほの、小刀ナイフつたまゝ頤杖あごづゑをついて、仰向あふむいて、ひよいと此方こちらいたちゝかほ真蒼まつさをつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
又ある時は、自分のちゝから御談義を聞いてゐる最中に、何の気もなくちゝの顔を見たら、急に吹きしたくなつて弱りいた事がある。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
承りしにより父彦兵衞のほかに人殺有らばをしへてくれる樣にと涙を流して頼むにつき何故人もおそるゝ鈴ヶ森に夜中居たるやと尋ね候へばちゝほね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いや阿關おせきこうふとちゝ無慈悲むじひ汲取くみとつてれぬのとおもふからぬがけつして御前おまへかるではない、身分みぶん釣合つりあはねばおもこと自然しぜんちがふて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さのみひまをとるべき用にもあらざりければ、家内不審ふしんにおもひせがれ家僕かぼくをつれて其家にいたりちゝが事をたづねしに、こゝへはきたらずといふ。
けれどそちいやしくも魚族ぎよぞくわうの、ちゝをさつたらばそのあとぐべき尊嚴たうと身分みぶんじや。けつして輕々かろ/″\しいことをしてはならない。よいか
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ちゝなるものは蚊柱かばしらたつてるうまやそばでぶる/\とたてがみゆるがしながら、ぱさり/\としりあたりたゝいてうままぐさあたへてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『だつてあなたは、わたしがやつぱし、ちゝのいふ意味いみ幸福かうふく結婚けつこんもとめ、さうしてまた、それに滿足まんぞくしてきてられるをんなだとしかおもつてない……』
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
そのちゝと子の心と心とが歔欷きよきの中にぴつたり抱き合ふ瞬間しゆんかん作者さくしやの筆には、恐ろしい程眞實しんじつあい發露はつろするどゑがき出してゐるではありませんか。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かねうけたまはる、かれちゝなる濱島武文氏はまじまたけぶみしと、春枝夫人はるえふじんとのこゝろざしかはつて、不肖ふせうながら日出雄少年ひでをせうねん教育きよういくにんをば、これからこの櫻木重雄さくらぎしげを引受ひきうけませう。』
しかるに醫學博士いがくはかせにして、外科げくわ專門家せんもんかなるかれちゝは、斷乎だんことしてかれ志望しばうこばみ、かれにして司祭しさいとなつたあかつきは、とはみとめぬとまで云張いひはつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぼくの十二のときです。ぼく父母ふぼしたがつてしばら他國たこくましたが、ちゝくわんするとともに、故郷くにかへりまして、ぼく大島小學校おほしませうがくかうといふにはひりました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
千駄木せんだぎおくわたしいへから番町ばんちやうまでゞは、可也かなりとほいのであるが、てからもう彼此かれこれ時間じかんつから、今頃いまごろちゝはゝとにみぎひだりから笑顔ゑがほせられて
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
もつとも、わたしちゝはじちひさな士族しぞくとして、家屋かをくと、宅地たくちと、周圍しうゐすこしのやまと、金祿公債證書きんろくこうさいしようしよなんゑんかを所有しよいうしてゐたが、わたし家督かとく相續さうぞくしたころには
モン長 おゝ、おのれ不所存者ふしょぞんものめが! ちゝ押退おしのけてさきはかはひらうとは、なんといふ作法知さはふしらずぢゃ、おのれ
あに一人ひとりあつたが戦地せんちおくられるともなく病気びやうきたふれ、ちゝ空襲くうしふとき焼死せうしして一全滅ぜんめつした始末しまつに、道子みちこ松戸まつど田舎ゐなか農業のうげふをしてゐる母親はゝおや実家じつかはゝともにつれられてつたが
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
ちひさなときからちゝともをして、諸國しよこくあるいて攝津せつつくにときに、酒飮さけのみの父親ちゝおやは、つきとらへるのだといつて、うたともだちなどがめるのもきかずに、いけなかへをどりんでにました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
あいするおまへちゝ、おまへはゝ、おまへつま、おまへ、そしておほくのおまへ兄妹きやうだいたちが、土地とちはれ職場しょくばこばまれ、えにやつれ、しばり、こぶしにぎって、とほきたそらげるにくしみの
ところで周三が家庭に於ける立場である。自體じたい彼は子爵ししやく勝見家かつみけに生まれたのでは無い。成程ちゝ子爵ししやくは、彼のちちには違ないが、はは夫人ふじんは違ツたなかだ。彼は父子爵のめかけの]はらに出來た子で、所謂庶子しよしである。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
こゝろより兄弟きやうだいゆるさずはてんちゝまた汝等なんぢらにこのごとくしたまふべし。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
海恋ししほの遠鳴りかぞへては少女となりしちゝはゝの家
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
ちゝぎみはしはぶき二つ
おもひで (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ちゝしづみぬちゝのみの
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
きじきじちゝこひ
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ちゝあにの如きは、此自己にのみ幸福なる偶然を、人為的に且政略的に、暖室むろを造つて、こしらげたんだらうと代助は鑑定してゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちゝゆめだ、とつてわらつた、……祖母そぼもともにきてで、火鉢ひばちうへには、ふたゝかんばしいかをり滿つる、餅網もちあみがかゝつたのである。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しん不亂ふらんいのりしに今日ははや源内の罪きはまり御仕置と聞し故娘の豐は其日ちゝの引れゆきし御仕置場へ行て見るに終にあだつゆ消果きえはてしゆゑ泣々なく/\も其所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
行先ゆくさき何處いづこちゝなみだは一さわぎにゆめとやならん、つまじきは放蕩息子のらむすこつまじきは放蕩のら仕立したつ繼母まゝはゝぞかし。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
が、アンドレイ、エヒミチはちゝことばではあるが、自分じぶん是迄これまで醫學いがくたいして、またぱん專門學科せんもんがくゝわたいして、使命しめいかんじたことはかつたと自白じはくしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「お父樣とうさま、しばらくおいとまいただききたうございます」とおそるおそるちゝまへにでて、おねがひしました。そしてこゝろうちでは、どうか聽容きゝいれてくれるといいが。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
彼等かれらのしをらしいものはそれでも午前ごぜん幾時間いくじかん懸命けんめいはたらいてちゝなるものゝ小言こごとかぬまでにうまやそばくさんでは、午後ごご幾時間いくじかん勝手かつてつひやさうとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
日出雄少年ひでをせうねんをば眞個しんこ海軍々人かいぐんぐんじんゆだねんとせしかれちゝこゝろざしが、いま意外いぐわい塲所ばしよで、意外いぐわいひとよつたつせらるゝこのうれしき運命うんめいに、おもはず感謝かんしやなみだ兩眼りようがんあふれた。
ロミオ あゝ/\、味氣無あぢきな時間じかんながい。……いまいそいでんだはわしちゝでござったか?
道子みちこはゝのみならずちゝはかも——戦災せんさい生死不明せいしふめいになつため、いまだにてずにあることかたり、はゝ戒名かいみやうともならべていしつてもらふやうにたのみ、百円札ひやくゑんさつ二三まいかみつゝんでした。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
心持こゝろもちになつて、自分じぶん暫時しばらくぢつとしてたが、突然とつぜん、さうだ自分じぶんもチヨークでいてやう、さうだといふ一ねんたれたので、其儘そのまゝいそいでうちへり、ちゝゆるし
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それ其筈そのはづ実家さと生計向くらしむきゆたかに、家柄いへがら相当さうたうたかく、今年ことし五十幾許いくつかのちゝ去年きよねんまで農商務省のうしやうむしやう官吏くわんりつとめ、嫡子ちやくし海軍かいぐん大尉たいゐで、いま朝日艦あさひかん乗組のりくんでり、光子みつこたつ一人ひとり其妹そのいまうととして
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ちゝその手綱たづなはな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
それ程でなくつても、ちゝあにの財産が、彼等の脳力と手腕丈で、だれが見てももつともと認める様に、つくげられたとはうけがはなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
友造ともざう袖崎そでさきうちおんがあるとつたのもほかではない、けんきこえた蒔繪師まきゑしだつた、かれちゝとしつかへて、友造ともざう一廉ひとかどうで出來でき職人しよくにんであつたので。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくしちゝにはひど仕置しおきをされました。わたくしちゝ苛酷かこく官員くわんゐんつたのです。が、貴方あなたことまをしてませうかな。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ちゝにまで遠慮ゑんりよがちなればおのづからことばかずもおほからず、一わたしたところでは柔和おとなしい温順すなほむすめといふばかり、格別かくべつ利發りはつともはげしいともひとおもふまじ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かくゆめに見ると云はこれまさしくちゝ富右衞門殿がゆめの中に御座られたのであらうと涙とともはなし合けるが此後富右衞門の女房にようばうは一七日すぎて幸手宿へ立歸り親類しんるゐ中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いなちゝではありません。ともであります。ほんとにともでありたいと、それをせつねがふものです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
しばらくはそのまゝでたがつひ辛棒しんぼうしきれなくなり、少年こども眄目ながしめちゝを見て、にぶこゑ
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
日出雄ひでをや、おまへちゝとは、これから長時しばらくあひだわかれるのだが、おまへ兼々かね/″\ちゝふやうに、すぐれたひととなつて——有爲りつぱ海軍士官かいぐんしくわんとなつて、日本帝國につぽんていこく干城まもりとなるこゝろわすれてはなりませんよ。
ヂュリエットちゝまへひざまづく。
ちゝその手綱たづなはな
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
たとへば」と云つて、先生はだまつた。けむりがしきりにる。「たとへば、こゝに一人ひとりの男がゐる。ちゝは早く死んで、はゝ一人ひとりたよりそだつたとする。 ...
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
しん石崇せきそうあざな季倫きりんふ。季倫きりんちゝ石苞せきはうくらゐすで司徒しとにして、せんとするとき遺産ゐさんわかちて諸子しよしあたふ。たゞ石崇せきそうには一物いちもつをのこさずしてふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れはういふ子細しさいでとちゝはゝ詰寄つめよつてとひかゝるにいままではだまつてましたれどわたしうち夫婦めをとさしむかひを半日はんにちくださつたら大底たいてい御解おわかりになりませう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)