はう)” の例文
よる大分だいぶんけてゐた。「遼陽城頭れうやうじやうとうけて‥‥」と、さつきまで先登せんとうの一大隊だいたいはうきこえてゐた軍歌ぐんかこゑももう途絶とだえてしまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
檜木ひのきさはら明檜あすひまき𣜌ねず——それを木曾きそはうでは五木ごぼくといひまして、さういふえたもりはやしがあのふか谷間たにあひしげつてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
少し気味が悪くなつたから、そのはうの相手を小林こばやし君に一任して、隣にゐた舞妓まひこの方を向くと、これはおとなしく、椿餅つばきもちを食べてゐる。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まへ講釈かうしやくのと読較よみくらべると、按摩あんまのちさむらひ取立とりたてられたとはなしより、此天狗このてんぐ化物ばけものらしいはうが、かへつて事実じゝつえるのが面白おもしろい。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白百合しらゆり紅百合べにゆり鳶尾草いちはつの花、信頼心しんらいしんの足りない若いものたちよりも、おまへたちのはうがわたしはすきだ、ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「おやもうそつちのはうつたのかい、それぢや彼處あすこたゝくんだよ」内儀かみさんはいつてわかれた。おつぎはすぐ自分じぶん裏戸口うらどぐちつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
四十一ねんぐわつ二十一にち午前ごぜんごろ水谷氏みづたにしとは、大森おほもり兒島邸こじまてい訪問ほうもんした。しかるにおうは、熱海あたみはうつてられて、不在ふざん
鹿しかおほきなをつくつて、ぐるくるぐるくるまはつてゐましたが、よくるとどの鹿しかのまんなかのはうがとられてゐるやうでした。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ニコライのドオムに面したはうの窓から私は家の中へはひると云ふのでした。私は何時いつも源氏の講義をした座敷の壁の前に立つて居ました。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
愛宕あたごさんのはうがよろしいな。第一大けおますわ。』と、お光は横の方にみすのかゝつたつぼねとでも呼びさうなところを見詰めてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
するととほくのはうでパタ/\とちひさな跫音あしおとのするのがきこえました、あいちやんはいそいでいてなにたのだらうかとてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
鍋町なべちやううらはう御座ございますかと見返みかへればいな鍋町なべちやうではなし、本銀町ほんしろかねちやうなりといふ、らばとばかりいだまた一町いつちやうまがりませうかとへば
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
昌作はヂロリとそのはうを見た。そして信吾が山内に挨拶して出てゆくと、不快な冷笑を憚りもなく顔に出して、自暴やけに麦煎餅を頬張つた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たちまち、なにおそろしいことでもきふおもしたかのやうに、かれかしらかゝへるなり、院長ゐんちやうはうへくるりとけて、寐臺ねだいうへよこになつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
越前守殿聞だまれ憑司汝は何を申すぞ早ははう吟味ぎんみなすに爰な出過者ですぎものめ今早が口より梅が體にきずなどは御ざらぬと申立たるになんぢ夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あたまも兄弟のうちではいいはうだと信じてゐる。次兄は毎日のやうに酒を呑んで祖母と喧嘩した。私はそのたんびひそかに祖母を憎んだ。
思ひ出 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
「あゝ奇麗きれいになつた。うもつたあときたないものでね」と宗助そうすけまつた食卓しよくたく未練みれんのないかほをした。勝手かつてはうきよがしきりにわらつてゐる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
陰気いんき燈火ともしびの下で大福帳だいふくちやう出入でいり金高きんだかを書き入れるよりも、川添かはぞひのあかるい二階洒落本しやれほんを読むはうがいかに面白おもしろかつたであらう。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
如何どうかんがへても聖書バイブルよりは小説せうせつはう面白おもしろいにはちがひなく、教師けうしぬすんでは「よくッてよ」小説せうせつうつゝかすは此頃このごろ女生徒ぢよせいと気質かたぎなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
わたし是非ぜひ怠惰屋なまけやになるのだ、是非ぜひなるのだ』と言張いひはつてかない。さくらかはくどころか、いへすみはうへすつこんでしまつて茫然ぼんやりして居る。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しかもそはそはしたB達はそれ以上言葉を交すいとまを持つてゐなかつた。その行くべきはうへと各自に行かなければならなかつた。
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
病人びやうにんはK夫人ふじんかほしたで、小兒こどものやうにあごうなづいてせた。うへはう一束ひとたばにしたかみが、彼女かのぢよを一そう少女せうぢよらしく痛々いた/\しくせた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
左樣さやう殘念ざんねんながら、西班牙イスパニヤや、亞弗利加アフリカはう今度こんど斷念だんねんしました。』と、わたくしがキツパリとこたへると、かれはポンとひざたゝいて
なるほど、それぢやア、マアたいしたおねつぢやアないおみやくはうは。「みやくはうおほうございます、九でうから一でうでう出越でこくらゐな事で。 ...
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
またよしんば上原が望んだとしても、肝腎の縣のはうが、上原の推薦をきかず、志村を囑託とすることをがへんじなかつたとしたらどうだらう。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
「おたがひに、明日あす生命いのちもしれない、はかないものなんだ。なんでも出來できるうちにはうがいいし、また、やらせることだ」と。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
今日こんにちこれ復興ふくこうするをべし、而してその復興ふくこうはうたるや、安楽椅子あんらくいすかゝり、或は柔軟じうなんなる膝褥しつぢよくうへひざまづ如何程いかほど祈祷きたう叫号きうごうするも無益むえきなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
つまはおみつつて、今歳ことし二十になる。なにかとふものゝ、綺緻きりやうまづ不足ふそくのないはうで、からだ発育はついく申分まをしぶんなく、どうや四釣合つりあひほとん理想りさうちかい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
おもひせまつて梅川うめかはは、たもとをだいてよろ/\よろ、わたしはうへよろめいて、はつとみとまつて、をあげたときしろゆびがかちりとつたのです。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
そんなはなし最中さいちうにサァーツとおとをたてゝうるしのやうにくらそらはうから、直逆まつさかさまにこれはまた一からすがパチパチえてる篝火かがりびなかちてきた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
旱の為に水のつた摺鉢形すりばちなりの四はうがけの土は石灰色いしばいいろをして、静かにたヽへた水の色はどんよりと重く緑青の様に毒々しい。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
象次郎曰ふ、復古はかたきに非ず、然れども門地もんちはいし、門閥もんばつめ、けんぐることはうなきに非ざれば、則ち不可なりと。二人の本領自らあらはる。
また此短針このたんしんと十とのあひだ半過なかばすぎて十はう近寄ちかより、長針ちやうしんすゝんで八ところきたればこれを十まへ二十分時ぶんじと云ふ。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
第十 常居ゐま濕氣しめりけすくな日當ひあたりよくしてかぜとほやうこゝろもちし。一ヶねん一兩度いちりやうどかなら天井てんじやうまたえんしたちりはらひ、寢所ねどころたかかわきたるはうえらぶべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
そうしづかにはちのこつたみづゆかかたむけた。そして「そんならこれでおいとまをいたします」とふやいなや、くるりとりよ背中せなかけて、戸口とぐちはうあるした。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
A フン、それは相談さうだんをしないはうわるいんだが、むかふで相談さうだんしなけりや此方こつちから相談さうだんしかけたらいぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
圖中凹み石のしたゑがきたるは石皿の例にして其發見地そのはつけんちは武藏青梅近傍日向和田なり。一はうにはふかき凹み有り、一方にはものすに都合好つがふよ構造かうぞうり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
りくはうると、いつしかふねみなと目近まぢかすゝんで、桑港さうかう町々まち/\はついはなさきえる。我等われらとまるべきフェアモント・ホテルはたかをかうへつてる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
山田やまだ出嫌でぎらひであつたが、わたし飛行自由ひぎやうじざいはうであるから、四方しはうまじはりむすびました、ところ予備門よびもんないあまねたづねて見ると、なか/\斯道しだう好者すきしや潜伏せんぷくしてるので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それにこの三つの山を結びつけたはうの京都、そのまざ/\とした現實の京都が三藏の鼻の尖にぶら下る。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
そして、しばらくものをもはずにかんがんだやうにしてゐると、きふみぢかくなつたやうに、けはなしてあるえんはうからうすくらかげはじめるのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
私のはいつのにかわきしたくゞつてゐました。私は東明館前とうめいくわんまへからみぎれて、わけもなくあかるくにぎやかなまち片側かたがはを、店々みせ/\うて神保町じんぼうちやうはうへと歩いて行きました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
... ただの江戸えどであるよりも生粹きつすゐとつけたはうよろこぶらしい)それから、その——(をつとといつていゝか、つばめ?——すこし、禿はげすぎてゐるが)あいする於莵吉おときちは十一も齡下としした
でも、ぼくはうからはさう手輕てがるには——きみがやつたやうにおもつてはきみのところへかけられない。だからきみから一てもらひいとおもふ——ゆめにでもうつつにでも。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
わし折々をり/\はらってもますのぢゃ、パリスどのゝはうが、ずっとをとこぢゃとうてな。すると、ほんことぢゃ、ぢゃう眞蒼まっさをかほにならっしゃる、圖無づな白布しろぬののやうに。
何しろ畫室は、約束やくそく通りに出來てあるから、四はう密閉みつぺいしたやうになつてゐる。暖爐ストーブころならば、其の熱で嚇々くわつ/\とする、春になれば春の暖氣だんきすやうにむつとする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
やくといふは、たとへば骰子さいかどがあり、ますにはすみがあり、ひとには關節つぎふしはうには四すみのあるごとく、かぜはうよりけば弱く、すみよりふけば強く、やまひうちより起ればしやすく
大入道おほにふだう、一つ小僧こぞうなどはそれである。しか復仇ふくきうはう鍋島なべしま猫騷動ねこさうどうのやうに隨分ずゐぶんしつこい。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
はう心配しんぱいして電報でんぱうまでけたのであるから其時そのとき返電へんでんをしてもらへば無益むえき心配しんぱいけつしてしません。一寸ちよつとしたことであるが日本にほん婦女子ふぢよしには往々わう/\斯樣かやう等閑なをざりおほいのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
「けれども理由のない救助は、救助するはうもされる方もをかしいぢやありませんか。」
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)